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ストラテラ(カプセル・内用液)の効果 -医師が教えるADHD治療-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
ストラテラ(カプセル・内用液)の効果 -医師が教えるADHD治療-

注意欠如多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder; ADHD)が一般に周知されるようになり、ADHDの患者さんは増加しています。

ADHDでは神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつであるドーパミンやノルアドレナリンの不足が指摘されており、コンサータはドーパミンに、ストラテラはノルアドレナリンを増加させるようにして作用します。

ドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質に作用するADHDの治療薬物には以下のようなものがあります。

<ADHDの治療薬>

Dr.G
ここではストラテラを取り上げて解説しましょう。

参考文献
・Stephen M.Stahl. 「精神科治療薬の考え方と使い方」 MEDSi
・功刀浩ほか. 「精神疾患の薬物療法講義」金剛出版


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ストラテラってどんな薬?効果は?

ストラテラは2009年6月に日本イーライリリー(株)から販売されているADHDの治療薬です。
「ノルアドレナリン再取り込み阻害薬そがいやく」に分類されるお薬ですが作用機序についてはあとにしましょう!

Dr.G
ストラテラの話の前にまずはADHDについて簡単に説明しておきましょう。
詳細を知りたい方は以下の記事を参照してください。

ADHDでは子供の場合には落ち着きがない、いつも身体のどこかを動かしている、待てない、順序だてて行動できない、気が散りやすいという症状が目立ち、大人のADHDの場合には順序だてて課題を遂行すること時間の管理が下手、感情のコントロールが難しい、リスクがあってもやってしまうなどの症状が目立ちます。

その原因は未だ分かっていないことが多いのですが、実行したり快楽を感じる報酬ほうしゅうに関する脳の機能的な問題と考えられています。
そしてこれらは神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつであるドパミンやノルアドレナリンによって調整されているのですが、ADHD症状の度合いに応じてこれらの働きの悪さが考えられています。

  • 実行系の脳の機能(主にドパミンとノルアドレナリンが関与)
  • ある目的を達成するために行動の計画を立てて、順序だててそれを遂行し、行動の結果をみながらまた次の行動を調整するという機能
    (症状:順序だてて効率よく行動できない)

  • 報酬系の脳の機能(主にドパミンが関与)
  • リスクが高いとか、もっと待てば大きな報酬が得られるなど待つべき時には待つという脳の働き
    (症状:待つことができず別の行動を始めてしまう)

つまりADHDのお薬というのは、こういった神経伝達物質(ドパミンやノルアドレナリン)の作用を強めることで効果を発揮するのです。

ADHDの治療薬物には以下のようなものがあります。

<ADHDの治療薬>

ADHDに対して最初に承認されたコンサータ(メチルフェニデート)は、迅速じんそくに効果を見込めるのですが、耐性たいせい(効果が出にくくなる)や依存性が問題とされています。
このためコンサータは登録された医師でないと処方ができないのです。

これに対してストラテラ(アトモキセチン)は効果が安定するまでに6~8週間と時間がかかりますが、依存性がないため乱用されることがなく規制もされていません(どの精神科・心療内科でも処方可)。

さらにコンサータは受診1回あたりの処方は30日分がMAXですが、ストラテラはその限りではありません。

半減期はんげんき(薬が代謝されて血液中の濃度が半分になってしまうまでの時間)は短いことから理論上は1日2回の内服を必要としますが、実際には1日1回の服用であっても同等の効果を示すようです。
つまり、ストラテラの特徴は半減期が短い割に終日にわたって効果が持続するところにあります。

ADHDの子供では朝なかなか起きれない、怒りっぽい、朝の支度にとりかかれないなど実は家庭内でも朝からドタバタ劇が始まることも少なくありません。
学校でも人とのトラブル、集中できない、うっかりミスが目立ちますし、帰宅してからも宿題にとりかかれない、テレビ・ゲーム・スマホを中断できない、昼夜逆転といった症状が1日中見受けられます。

ストラテラは効果が安定し始めれば終日作用しますし、入眠が早まることもわかっています。

またADHDの症状には不注意・多動・衝動性といった基本症状に加えて、不安・緊張が強いことも多くこれに対してもストラテラは有効性を示すのです。

もちろん大人のADHDにも適応があり承認されています。


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ストラテラの使われ方

ストラテラの有効な疾患と適応

  • 成人および6歳以上の小児におけるADHD
  • 治療抵抗性うつ病

このうち日本での適応は「成人および6歳以上の小児におけるADHD」です。
※6歳未満の患者における有効性及び安全性は確立していません。

ストラテラの剤型と薬価

ストラテラカプセルと内用液

剤型としてカプセル(2012年8月発売)と内用液(2013年11月発売)があります。
どちらも効能は同じで、内用液はカプセルが飲みにくい方のためと細かい計量が可能なので子供向けです。

味は甘めの味ですが後味が苦いです。
また薬価も液剤は高めですので、大人が使用するメリットはほぼないでしょう。

  • カプセル
  • 内用液
(2016年4月1日 薬価基準改定)

5mgカプセル

0円(1カプセルあたり)
10mgカプセル

0円(1カプセルあたり)
25mgカプセル

0円(1カプセルあたり)
40mgカプセル

0円(1カプセルあたり)
3割負担で1ヶ月内服時の目安(成人・薬価のみ):約4150 – 12452円
(2016年4月1日 薬価基準改定)

100ml瓶

0円(1ml/4mgあたり)
3割負担で1ヶ月内服時の目安(成人・薬価のみ):約18828 – 56484円

ストラテラカプセル・内用液の用法・用量

18歳以上か未満かで変わります。

  • 18歳未満(小児)
  • 18歳以上(大人)
ストラテラカプセル
1日0.5mg/kgから開始(体重30kgの子なら0.5×30で15mgという計算)します。
その後1日0.8mg/kgまで増量し、1日1.2~1.8mg/kgで調整します。

最大量は1.8mg/kg(体重30kgの児なら1.8×30で約55mg)となります。

ストラテラ内用液
100ml入った瓶からスポイトで測り取ります。
ストラテラ内用液は1mlがストラテラの成分(アトモキセチン)として4mgです。

1日2回の服用で、1日量として0.5mg/kg(0.125ml/kg)で開始します。

その後1週間以上あけながら増量して経過をみていきます。
内服開始して1週間以上したら1日0.8mg/kg(0.2ml/kg)とし、さらに1週間以上あけて1日1.2mg/kg(0.3ml/kg)まで増量します。

最終的には1日1.2~1.8mg/kg(0.3~0.45ml/kg)となります。
最大1日量は1.8mg/kg(0.45ml/kg)又は120mg(30mL)のいずれかを超えないようにします。

体重30kgの子供であれば15mg(3.75ml)を1日量とします。
その後、24mg(1日6ml)→ 36mg(9ml)まで徐々に増量し、最大1日量54mg(13.5ml)を超えないように調整します。

ストラテラカプセル
1日40mgから開始します。

1週間以上間をあけて1日80mgまで増量し、最大量は1日120mgまで。
服用は1日1回でも2回に分けても大丈夫です。

ストラテラ内用液
100ml入った瓶からスポイトで測り取ります。
ストラテラ内用液は1mlがストラテラの成分(アトモキセチン)として4mgです。

1日2回に分けて1日量40mg(10mL)より開始し、その後1日80mg(20mL)まで増量した後、1日80~120mg(20~30mL)で維持します。
ただし、1日80mg(20mL)までの増量は1週間以上、その後の増量は2週間以上の間隔をあけて行うこととし、いずれの投与量においても1日1回又は1日2回に分けて内服します。

最大1日量は120mg(30mL)なのはカプセルと同様です。

ツイッターでみるストラテラに関する評判

Dr.G
効果の感じ方には個人差があり、そのときの状況によっても変わりますのでこういう声があるという程度に参考にしていただくのが良いと思います。

ストラテラの副作用

ストラテラの目立つ副作用としては、腹痛・食欲低下・吐き気・便秘などのお腹の症状(消化器症状)、ねむけやだるさなどの鎮静ちんせい症状などがあります。

これらの副作用は飲み初めた最初のころに多いのが特徴で、長期に飲んでいるうちに気にならなくなることが多いです。
また血中の濃度が一気に上がりすぎないように、食後に飲むことでも症状は軽減できます。

ストラテラの主な副作用

  • 心拍数が上がる
  • 血圧が上がる
  • 不眠
  • 眠気
  • めまい
  • 不安
  • イライラ・攻撃性が上がる
  • 口が渇く
  • 吐き気・嘔吐
  • 腹痛
  • 食欲減退
  • 排尿障害
  • 発汗(異常に汗が出る)
  • 性機能障害(性欲減退、男性では勃起不全)

詳しくは以下の記事が参考になります。

ストラテラの作用機序

Dr.G
最後にやや難しいですがストラテラの作用機序について説明しましょう!

ストラテラは薬の製品としての名称で、成分名を示す一般名は「アトモキセチン」です。
そしてこれはノルアドレナリン再取り込み阻害薬に分類されるお薬です。

ちなみに「再取り込み阻害」というお薬の作用機序は抗うつ薬のSSRIやSNRIと同じです(したがってストラテラも抗うつ効果があると示唆する報告もあります)。
同時に、「再取り込み阻害」という作用機序の特徴として効果を発揮するまでにタイムラグ(ストラテラの場合、長いと6週間程度)があることも大事な特徴です(即効性があまりない!)。

Dr.G
ではもう少し細かく見ていきましょう!

脳の神経細胞は次の神経に情報を伝達するのに、電気信号とともにセロトニン・ドパミン・ノルアドレナリンなどの神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつを介します(下図のの中で神経伝達物質が関与します)。

神経伝達

ADHDではドパミンやノルアドレナリンが不足することからうまく脳の機能が働かないと考えられており、ストラテラは主にノルアドレナリンを増強することで効果を発揮します。

(再掲)

  • 実行系の脳の機能(主にドパミンとノルアドレナリンが関与)
  • ある目的を達成するために行動の計画を立てて、順序だててそれを遂行し、行動の結果をみながらまた次の行動を調整するという機能
    (症状:順序だてて効率よく行動できない)

  • 報酬系の脳の機能(主にドパミンが関与)
  • リスクが高いとか、もっと待てば大きな報酬が得られるなど待つべき時には待つという脳の働き
    (症状:待つことができず別の行動を始めてしまう)

ストラテラとは対照的なADHD薬である依存性のある中枢神経刺激薬「コンサータ(メチルフェニデート)」のようにダイレクトにドパミンを増強させるわけではありませんが、ストラテラはノルアドレナリンに直接作用しつつ間接的に前頭前野でのドパミンを増強させることがいわれています。

神経伝達を下図のようにイメージ化してみました。
ストラテラの作用機序

神経伝達は神経1から神経2に郵便物(ノルアドレナリン)を配達するイメージです。

ストラテラの作用機序

しかし、郵便物の一部はヤギによって回収されて神経1に戻されています。
これによってお薬がないときにはちょうど良い量の郵便物が配達されているのです。

ADHDではこの郵便物がいまいちうまく届かない状況になっているので、ヤギが働くのをやめてもらいます。
ヤギが働かないようにするお薬が「ストラテラ」というわけです。

ストラテラの作用機序

こうすることで郵便物(ノルアドレナリン)が多く神経2に配達されるのがわかると思います。

専門的にまとめると、ストラテラはヤギ(ノルアドレナリントランスポーター)を阻害そがいし、ノルアドレナリン系の神経伝達を増強します!

結局ADHD薬はどのように使い分ける?

ここではストラテラについて解説しましたが、ADHDのお薬は全部で3剤あります。
もう一度示しましょう。

<ADHDの治療薬>

2017年5月に新しいADHD薬であるインチュニブ(一般名:グアンファシン)が登場するまで、ADHD薬としてはこれまでコンサータ(一般名:メチルフェニデート)とストラテラ(一般名:アトモキセチン)の2剤が用いられてきました。

ADHDは神経伝達物質であるドパミンとノルアドレナリンの不足が関与しているという考えの元、脳の実行系の機能と報酬系の機能が上手く働かずADHDの基本症状(不注意・多動性・衝動性)が出ると考えられています。

コンサータは脳の中枢神経を刺激して主にドパミンを増加させ、ストラテラは前頭葉に作用してノルアドレナリンとドパミン両方を増やします。

一方2017年5月に登場した(米国ではインチュニブはストラテラが日本で登場した2009年から販売されています)3つ目のADHD薬であるインチュニブは、α2Aアルファツーエーアドレナリン受容体じゅようたいに作用し、交感神経を抑制するとともに、神経間の情報伝達を増強させることでADHDの症状改善をもたらすと考えられています。

ただコンサータやストラテラと違い、2017年11月現在まだ大人のADHDに適応はなく子供用のお薬となっています。

コンサータは中枢神経に直接働きかけるため効果が速やかに現れるのが特徴ですが、耐性や依存性のリスクがあります。
ストラテラは効果が安定するまでに6~8週間くらい、3つ目のお薬インチュニブで1~2週間とされていますが依存性の心配はありません。

さて、どのようなADHD症状があるときにどのお薬が良いのかいまのところは公式な見解はありません。

重要なことは、ひとつのお薬を十分量まで使用してその効果を見たうえで、不十分であれば他のお薬に切り替えるもしくは併用するとなります。
ただし無用にお薬を併用して増やすことは効果を上げるどころか副作用だけが目立つことになりますので基本は単剤とすべきでしょう。

ただ経験的・理論上は攻撃性が強かったりする場合にはコンサータが有効で、睡眠障害や終日効果を持続させたい場合、不安が強い場合にはストラテラが良いかもしれません。
チックや薬物依存がある場合にもストラテラは推奨されるでしょう。

インチュニブの強みは反抗的で攻撃性が高い子供の特性がやわらぐところにあります。

まとめ「ストラテラの効果と特徴」

ADHDの治療目標は不注意、多動、衝動性をコントロールすることで社会(学校や職場など)適応しやすくすることにあります。

ストラテラはADHDに対して使用されるお薬の1つで、ADHDの基本症状である不注意・多動・衝動性に対して作用します。
代表的なADHD薬であるコンサータと比べ、依存性がないことや処方医師の登録制でない(どこの精神科・心療内科でも処方は可能)ことがメリットになります。

一方ノルアドレナリン再取り込み阻害によって神経伝達物質の働きを助けることで効果を発揮しますが、効果発現こうかはつげんには数週間のタイムラグがあります。

剤型はカプセルと細かい容量調整の可能な内用液が存在します。

 

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