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イライラするのは人格障害!? ADHD(注意欠如多動症)の症状について

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
イライラするのは人格障害!? ADHD(注意欠如多動症)の症状について

注意欠如多動症(ADHD)は、不注意・多動性・衝動性を3大症状としている主に子供の疾患として注目されてきました。
しかし大人になってもその症状はやや表現型を変えて残存しており、およそ半数はADHDの診断基準を満たさなくなるものの日常生活に支障をきたすことも少なくありません。

またそういった大人のADHDはパーソナリティ障害(人格障害)と診断されていることも少なくありません。

パーソナリティ障害(人格障害)とは、年齢相応の対人関係を形成することが難しい、過度に不安になりやすい(自我が弱い)、衝動に対する制御能力が弱いなど社会適応が困難になりやすい状態をいいます。

特に大人のADHDではこういった特性を持って受診することが比較的多く、パーソナリティ障害の基盤にはADHDなど何らかの発達障害を秘めているという極論も一部にはあるほどです。

Dr.G
ここでは基本的なADHDの症状(多動・衝動・不注意)だけでなく、大人のADHDとそこに合併しやすい症状もふまえて解説します。

参考文献
「特集:大人のADHDの診断はどのようにあるべきか」精神神経学会雑誌2015 vol.117 No.9


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ADHDの基本的な症状

ADHDの3大症状

注意欠如多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder; ADHD)は不注意・多動・衝動性を3大症状としています。

細かくは不注意が優位に存在するタイプ、多動・衝動性が優位に存在するタイプ、すべて混合しているタイプと3つに細かくタイプ分けされています。


不注意

  • 課題から気がそれること
  • 忍耐がない
  • 集中できない

※決して反抗や理解力がないわけではない


多動性

  • (不適切な場面で)走り回る
  • しゃべりすぎる
  • 活動性が非常に高い

衝動性

  • 計画性がなく行動する
  • 自分に害になる行動でもすぐにやる(急に道路に飛び出す)
  • 満足を先延ばしできない(すぐ報酬を欲しがる)

就学前に目立つのは主に多動(じっとしていられない、急に走りだしたり高いところに上ったり)で、小学校に上がってからは不注意が目立ちだします。

このようにADHDは小児期に発症します(診断基準として12歳未満で症状が確認できることとしている)。
そして大人になるに従い、多動性が軽減しますが、不注意や落ち着きのなさと同時に衝動性が問題となり、中には反社会的行動へと発展してしまう場合もなくはありません。

大人のADHDの症状

従来ADHDは子供の疾患として考えられていましたが、児童期にADHDであったものは青年期に至っても75%は症状が継続していることが分かってきたのです。

このことから、最近は大人のADHDという言葉を耳にすることが多くなってきました。
ちなみに日本においての調査では成人期のADHDの有病率は2.09%と推定されています。

参考文献
内山 敏ほか. 日本における成人期ADHDの疫学調査. こどものこころと脳の発達 3;34-42,2012

大人のADHDでは、不注意症状が社会生活に大きな影響を及ぼします。
会議や事務処理で注意を持続できなかったり、やるべき仕事を先延ばししたり、仕事が遅く非効率であったり、ある業務をしていても別のことを思いつくとその業務を放り出してしまったり、物を失くしたり、約束を忘れたり、時間を守れなかったりするのです。

一方、多動症状は大人になるにつれて弱くなるか表現型を変えます。
具体的に大人のADHDでみられる多動症状はおしゃべりが止まらない、落ち着きがない、感情が高ぶりやすい、貧乏ゆすりなどが目立ちます。

衝動性に関しては、すぐに熱くなりやすく短気で、衝動的に転職したり、運転中にスピードを出しすぎたり、交通事故を起こしやすかったり、性的にアクティブになります。

これらの結果、ADHDの人には以下のような特性があることが多くなります。

  • 計画性がない
  • 落ち着きがなく注意散漫
  • 記憶力が悪い
  • 欲求不満になりやすい
  • ストレス耐性が低い
  • 自尊心が低下している

大人のADHDは上記のような特性が目立ち、子供の時から連続しておりそれがあたかも本人の個性のようにとらえられがちで見逃されやすいのです。
成人するまでADHDに気づかれないと留年、十代での妊娠、性感染症、物質乱用、交通事故、定職に就けない、逮捕歴などが多いとされています。


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大人のADHDと併存する症状

ADHDでは不注意・多動・衝動性が基本的な3大症状でそれをもって診断しますが、二次的にうつ症状や不安症状、ときにパーソナリティ障害のような症状を認めることもあります。

大人のADHDでは気分障害、不安症(社交不安・強迫・広場恐怖など)、依存症(アルコール、薬物)などが併存しやすいことが知られていますが、実はADHDの診断を受けるよりも前にうつ病などの気分障害や不安障害のために精神科に先に通院しており、その後の経過の中でADHDの存在が明らかになる例は比較的多いのです。

ちなみに世界保健機構(WHO)が成人期ADHDワーキンググループと作成した大人のADHDセルフチェックがあります。

ADHDと合併しやすい症状

例えばうつ病でも落ち着かないという症状はでますし、双極性障害のしゃべりすぎてしまう(多弁)という症状など、ADHDの症状の多くが他の疾患ともオーバーラップして似たような症状を認めます。
そのためADHDと合併して存在する(併存へいぞん)ともとれますが、ADHDから二次的に出た症状ともとらえられ明確に区別することはなかなか難しいのです。

  ADHD症状 ADHD関連症状 ADHD以外の症状
多動性 衝動性 不注意 気分変動
多弁 落ち着きがない 競い合う考え 衝動的言動 集中できない 注意散漫 怒りの発作
うつ病・うつ状態 抑うつ症状
双極性障害(躁状態)
不安症 緊張、不眠
反社会性パーソナリティ障害 嘘つき、無慈悲
境界性パーソナリティ障害 見捨てられ不安
不安定な対人関係と自己像
依存症
睡眠障害 眠気、だるさ

ADHDでは、つい素直に言ったことが悪口になってしまって相手を傷つけたり、衝動的に人を叩いてしまったり暴力的な発言をしてしまったりなど対人関係上の失敗を重ねてしまい、叱責されることが多くなると自己評価が低くなり抑うつ症状が強くなることがあります。

これはうつ病とは異なります。
ADHDから二次的に出たうつ症状になります。

うつ病では気晴らしでも症状の改善は少なく、何かしらの作業をしているときに一時的に気がまぎれたとしてもすぐに集中は途切れて疲労感、倦怠感がでてしまいます。
うつ病における集中のできなさは思考が止まってしまっていることによるのです。

それに対してADHDに伴ううつ症状では、関心のあることにとりかかっている最中は症状は改善します。
またADHDに伴う集中力の欠如は主に興味の有る無しで決まり、自分でも気が散って集中できていないことを自覚しています。

また、ADHDのおしゃべり・すぐに行動にうつすなど活動的・注意散漫などの症状が、双極性障害における躁症状として解釈されていることもあります。
双極性障害での多弁、多動はADHDとは異なり、そのことが問題のあることだったと自覚できないことが多いのです(一方ADHDではしゃべりすぎてたりやりすぎたことなどをあとから内省できる)。

ただし、双極性障害に関してはうつ症状のように二次的にADHDから派生して出現するわけではありません(単純に多弁・多動が躁症状と間違ってとらえられやすい)。

大人のADHDの症状とパーソナリティ障害

大人のADHDに気分変動が伴うとパーソナリティ障害と区別が困難で、いずれも焦燥感が高まって、自傷行為や他者への攻撃性があらわになることがあります。

その行動だけを見ると背景がADHDなのか人格障害なのか鑑別が難しいわけです。

ADHDでは、自尊心が低くなっており不安も強く、今後の見通しにヘルプを求めるものの相手が応じない場合に衝動性が高まって攻撃性が出ることがあります。

一方、例えば境界性パーソナリティ障害の患者では自らが傷つくことに過敏になりそれを避けるために意図を持って行動します。
「見捨てられることに対する過度の不安」が根底にあるのです。

反社会性パーソナリティ障害と大人のADHD

大人のADHDでは違法薬物を使用したことがある患者さんと出会うことがときにあります。

しかしほとんどの場合でアウトローな社会に生きてきたという雰囲気はなく、一般社会の中で生活できており様子をみていると自らその薬物を断ち普通の生活に戻っていることもあります。

反社会性パーソナリティ障害と違うのは、大人のADHDでは相手を無慈悲に利用してやろうという計算や残酷さはないのです。

境界性パーソナリティ障害と大人のADHD

大人のADHDでも激しい怒りとともに、拒食・過食、大量服薬、リストカットなど境界性人格障害ともとれる行動を起こすことがあります。

ただパーソナリティ障害と違うのは、友人・親・恋人・医療者との間での対人関係的な感情や観念、不安葛藤が背景にあるのかそれとも単純に衝動性だけが表立っているかの違いがあります。

ADHDでは、怒りがあっても激しい憎悪を感じているわけではないのです(ただ筋が通ってないことに対する怒りや、不注意などのミスによって引き起こされる自己嫌悪などが引き金になります)。

一方で境界性パーソナリティ障害では見捨てられることへの不安から、激しい憎悪とともに怒りをあらわすようになるのです。

まとめ「ADHDの症状」

ADHDは不注意・多動性・衝動性を3大症状とする疾患で、従来ADHDは子供の疾患として考えられていました。

ところが最近ではその症状は大人になっても持ち越していることがわかっており、特に不注意症状を中心に社会生活において支障をきたすようになります。
多動・衝動性は少し形を変えて特に対人関係において生きづらさを感じさせることが多いのです。

また二次的に気分障害(双極性障害を除く)、不安、依存症をきたしやすくADHDの基本症状を超えた症状をしばしばみかけます。

さらに、大人のADHD患者では覚せい剤問題、いわば反社会性パーソナリティ障害と拒食・過食、自傷行為などの衝動的行動をみせやすい境界性パーソナリティ障害でもみられるような特性があり、ときにパーソナリティ障害と診断されることも少なくありません。

このように基本的な3大症状を超えた症状がADHDでは認められるところが診断を難しくしているところでもあるわけです。

 

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