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何故診断されない?大人の発達障害の診断について

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
何故診断されない?大人の発達障害の診断について

最近、大人の発達障害の人たちの診断需要はとても増えています
これに対し、「いやいや容易に診断しすぎでしょう」と過剰診断かじょうしんだんを批判する医者も増えています。

一方で、インターネットや本の情報から「自分はもしかしたら発達障害なのではないか?」、こう考えて病院を受診しても「違います」と言われて「結局自分は何でこんなに困っているのだ?」とより自身の困り感の正体が迷宮入りしてしまう例も増えています。

「生きづらさの正体は発達障害だと思ったのに・・・」

発達障害の診断をめぐっては様々な問題があります。
決して診断基準を眺めないでください

そこに大人の発達障害の場合には落とし穴があります。

さて、ここでは「大人の発達障害の診断」に焦点を当てて解説していきたいと思います。


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大人の発達障害を知る

大人の発達障害についてお話する前に、まず簡単に発達障害について説明しておきましょう!

発達障害とその特徴

発達障害というと、通常は子供の障害というイメージです。
発達の度合いが平均より遅れて、周囲と同じことが同じようにできないというものです。

その周囲と同じことがどのようにできないのかで、以下の3つに大きく分けて説明されていることが多いでしょう。
発達障害の概念図

  1. 自閉スペクトラム障害
  2. 主に対人コミュニケーションが難しい。相手の気持ちや空気を読むことが難しかったり、相手の発言の意図を理解できなかったり(言っていることはわかっても、その背景にある裏の意味がとれない)、過度にこだわりが強かったりなど固執しやすい傾向がでる。

  3. 注意欠陥多動性障害
  4. 注意が散漫でうっかりミスが多い。また多動の症状としてじっとしていることができない、ずっとおしゃべりするなどがみられる。衝動性も強くキレやすさも持っていることがある。

  5. 学習障害
  6. 全般的な知的発達に遅れはないのに、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」などの特定の能力において学んだり、行ったりすることが通常通りにできない状態

よくこの中のどれなのかを知りたがるかたもいますが、分類より大事なのはこの3つの特徴はあわせ持っていることが多いのです。

例えば、こんな感じです。

  • おしゃべりさんでコミュニケーションは問題なし。
  • うっかりミスが多い。
  • 絵はすごく上手く描くことができるが、字を読むことや計算は苦手
  • ときに過剰にこだわって、そのことで人とトラブルになったりときにキレて物を壊すこともしばしば。
  • これは以下のように発達障害の成分を分けることができます。

    • おしゃべりで、うっかりミス(ADHDの成分)
    • 絵はうまいのに、字や計算は苦手(学習障害の成分)
    • 過度にこだわる(自閉スペクトラム障害の成分)
    • キレやすい(ADHDの成分)
    • もしかしたらおしゃべりでしゃべりすぎて、相手の反応や空気は読めていないかもしれない(自閉スペクトラム障害)

    このように、純粋に〇〇障害となるよりもそれぞれの成分をあわせ持っていることが多いのです。

    では大人の発達障害ではどうでしょうか?
    実はまったく同じです。

    ではなぜ、発達障害に対してわざわざ大人の発達障害とする必要があるのでしょうか?

    ここに大人の発達障害とその診断における問題が隠されています。

    大人の発達障害の診断の重要性

    基本的には先ほど説明した通り、大人の発達障害とは「自閉スペクトラム障害(ASD)」「注意欠陥多動性障害」「学習障害」の特徴をもつ大人のことをいいます。

    ただ実は大人の発達障害の問題は、発達障害として認識されていない・診断されていないところにあります。
    そうなると何が問題なのでしょうか?

    大人の発達障害は集団行動の中でその牙をむき、その多くは就職して仕事先で問題を起こします。

    学生時代は問題があっても友人との喧嘩程度で済みます。
    先生から注意される頻度が高かったり、逆に学業は完璧にこなして発達障害の成分をカバーしてしまっていることもあります。

    ところが就労するようになると、対人関係は親・友人から広くなり相手の隠れた意図を読まなくてはいけなかったり、学生時代のように決まった教科書を進めるのではなく広い範囲の仕事をこなさなくてはならず融通を利かせることが要求されます。

    すると途端にミスが目立ち始め、良かれと思ってしたことが裏目に出るようになり、上司からも叱られるという悪循環に入っていきます。

    当然、学生時代は発達障害とは無縁だったにもかかわらず、社会に出たらいきなり「できない人」のレッテルが貼られ始めてそこに困惑していくのです。

    周囲からは本人の問題として否定的に評価され、「真面目に取り組んでいない」「仕事にやる気がない」、あるいは「能力不足」とみなされ、その結果、うつ病やパニック発作などの症状を併発する人もでてきます。
    周囲ができることをできないダメな人認定されてしまい、自分を追い詰め、結果として生きづらくなっているのです。

    大人の発達障害の人たちは、よくわからない生きづらさを自覚しています。
    ですから「大人の発達障害の診断」はとても重要なのです。

    上司や知人から指摘されたり、インターネットや本の情報から「発達障害」というワードに行き着いて、医療機関を受診し「発達障害であるかどうか?」「発達障害ではないか?」の判断を求められることが増えてきました。
    またうつ病や双極性障害、不安障害、強迫性障害、人格障害、統合失調症と診断されながらも、実は背景にある発達障害が原因だったという例も最近ではよく目にしています。

    それほど今、発達障害の診断需要は確実に増えてきています。

    しかし、子供時代に発達障害と無縁だったということはそれほど症状が軽いか、もしくは自身が一生懸命になってカバーしてきた証拠です。
    それを簡単に診断できるでしょうか?

    答えは「No」です。
    なぜなら、厳密な診断基準には当てはまらないことの方が圧倒的に多いのです。

    小児の行動特徴を念頭に作られた発達障害の診断基準は大人には適用することが難しい!

    最近では、ADHDの診断基準も大人に対応させるために以前のものより緩めにしていますがそれでも完全にマッチしてきません。

    ADHDの診断基準はこちら


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    大人の発達障害は様々な病名で誤診されてきた

    現在は発達障害の啓発が進んだので、誤診されることは少なくなりました。
    しかし一昔前は大人の発達障害が「強迫性障害」「統合失調症(単純型)」「パーソナリティ障害(シゾイド)」などと診断名がつけられていたことが少なくありません。

    例えば何かにとらわれ強く固執する特性が、強迫性障害(何回も確認したりする)と診断されることがあります。
    ここに抗うつ剤のひとつSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が処方されても症状は改善しないばかりか副作用に悩まされることになってしまいます。

    慢性的に精神科に通院していて薬もしっかり服用しているのに症状の改善がない場合には、実は背景の発達障害が見逃されている場合もあるのです。

    厳密な診断は重要だが、発達障害としておいたほうがいい場合もある

    「大人の発達障害」の診断需要が多い中で、過剰診断かじょうしんだん(診断基準に厳密には当てはまらないグレーゾーンだが診断してしまう)を批判する声もあります。
    しかし、あまりにも厳密に診断しすぎるとこんなことが起こります。
    (日本精神神経学会の学術総会の中でも「自閉スペクトラム症の過剰診断と見逃しのジレンマ」というセッションがあるほどです。)

    昔ほどではありませんが、精神科に行くというのはとてもハードルが高いでしょう。

    「ずっとよくわからない生きづらさで困っていた・・・」

    その原因が発達障害かもしれないと気付いても、まず受診するまでに時間を要する方も少なくありません。
    どこに行けばよいのかと調べて予約しても受診するのに何か月か先になることもしばしばです。

    そしていざ受診しても、厳密な診断基準に当てはめられ「あなたは発達障害ではありません。頑張ればできるのでは?」と言われてしまうのです。

    障碍者差別解消法がありますから、もし診断されていれば周囲は配慮してくれます。

    しかし、診断されなかったら配慮されません。
    ダメなレッテルが貼られ、また生きづらさの中で頑張り続けていくことを続けなくてはいけないのです。

    医学的に困っていることと、環境的に困っていることとは違います。

    発達障害の診断基準はすべて第3者からみた行動的な特徴の強弱で決まります
    ですので一見目立つ人は診断されやすいですし、目立たない人は診断されにくいのです。

    目立たないのは本人たちが一生懸命カバーしているからということも少なくありません。

    診断されたかどうかで、今後の生きづらさが変わる人は確実にいます。
    会社や親兄弟の理解が得られぬまま、ダメな人のレッテルを張り続けられてはどんな環境でも適応できないことが続き、そのうちうつ病と診断されいつのまにかうつの治療が始まってしまいます・・・。


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    大人の発達障害の診断はどうすればよい?

    発達障害の診断については精神科医もまさに過剰診断と診断した方がよいかもしれないというジレンマの中にあることはよく理解していただけたと思います。
    つまり医師によって意見が割れやすいことになります。

    本人も周囲も発達障害の存在に全く気付いておらず、気持ちの落ち込みや不安だけで来院してもその背景にある発達障害の特性に気づけたとしましょう。

    例えば不眠で、意欲が出ない、食欲がでない、死にたいと来院しても、安易にうつ病とは診断せず背景にある発達障害特性があり、興味があるものは普通にできて、興味がないことにおいて全く活動できないといういわゆる非定型タイプのうつ病の形を呈していることがあります。

    単なるうつ病ではなく、これは背景に発達障害の特性があると気付ければ事前に抗うつ薬が聞きづらい可能性があること、さぼっているわけではないことを自覚してもらうこともできやすいはずです。
    そのうえで周囲が本人をサポートし理解していけば、生きづらさが少し緩和しうつ症状も改善していくことになります。

    しかしもしこのことに気づかなければ、薬を増やすか、「本人が怠けているのだから良くならない、もっと動きなさい!」と言ってしまうことになります。

    発達障害の診断うんぬんよりは、発達障害の特性を考慮してくれる医師も最近は多いですからそういう先生に出会えると通院がおっくうではないかもしれません。

    まとめ「大人の発達障害の診断について」

    大人の発達障害の診断は今まさに過渡期かときにあります。

    これまでは、「発達障害か否か」に焦点が当てられていました。
    これでは診断が厳密化し、生きづらさで困っている人たちにとって何の解決にもなりません。

    しかし現在は診断そのものより、「発達障害の特性がどの程度ありそのことがどんな問題を起こしているのか?」というグレーなものをありきとしてみていく段階に進化してきています。

    とはいえまだすべての精神科医がその考えではありません。
    セカンドオピニオンも積極的に利用していくことも現段階では重要だと思います。

     

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