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大人の発達障害の治療

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
大人の発達障害の治療

かつて発達障害は、児童や思春期など主に未成年者の問題だと考えられていました。
しかし、「大人の発達障害」に対する認識が広がり、その対応についても議論されています。

「大人の発達障害」と切っても切れない関係にあるのは「アスペルガー症候群」というワードです。
特にマスコミによって広がった「アスペルガー症候群」は単に「空気が読めない」「対人関係が苦手」というだけで見なされてしまう風潮があります。
現在、正式にはアスペルガー症候群は自閉スペクトラム障害(ASD)とされています。

「大人の発達障害」を考えるうえで重要な病態はもう一つあります。
それが注意欠陥多動性障害(ADHD)です。
特に大人のADHDは、成人になってはじめて疑われるケースすらあります。

ここでは大人のASDとADHDの治療についてお話したいと思います。

参考文献
精神科治療学 32(12);1567-1571, 2017


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自閉スペクトラム障害(ASD)の治療

ASDには知的な能力にかなり幅があります。
発達障害の概念図
生活が全く送れていないもの、引きこもり状態、生活はある程度こなせるが就労となると困難なものまでさまざまです。

発達障害をめぐる法律の整備も進んでいます。
平成16年に施行された発達障害者支援法により、発達障害者支援センターが各自治体に置かれ、当事者やその家族に相談支援、発達支援、就労支援および情報提供が行われています。

平成28年4月には法改正もあり、就労定着の支援、発達障害者支援地域協議会の設立、発達障害者支援センターによる発達障害者地域支援マネージャーの設置項目が追加されました。

ASDの薬物療法

大人のアスペルガー(大人のASD)に対する治療は薬物療法と非薬物療法があります。
薬物療法が主体となるのは、精神症状があるために生活機能が大きく損なわれているときで、じっとしていられない(焦燥しょうそう)、興奮、易怒性(キレやすい)、衝動性、こだわり、強迫などに対してです。

薬物療法が劇的に効果を発揮するかといえばそれは難しく、あくまで対症療法(症状を緩和する)です。

同じ行動を繰り返したり、強迫症状がある場合には抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬;SSRI)が出されることが多いようですが効果はまちまちで、かえって衝動性や焦燥感(じっとしていられない感じ)が強くなってしまうこともあります。

ASDに使用されることのある抗うつ薬
セルトラリン(ジェイゾロフト):反復行動
フルボキサミン(デプロメール・ルボックス):強迫症状

焦燥感や自傷、興奮、衝動性に対しては非定型抗精神病薬(リスペリドン・アリピプラゾール)が有効と考えられています。

ASDの非薬物療法

薬物療法によって精神症状がある程度改善すれば、家庭内での生活はおおむね大丈夫になります。
ただ、他の人との関わりはせずに引きこもり状態になっていることも少なくありません。

ASDはどうしても人を避ける傾向があり、人に慣れることが重要です。
そのための集団精神療法、デイケア、作業療法などが各施設で独自に行われています。

ひきこもりが改善すれば本人が学校に行くもしくは仕事をする意欲があればそれに対しての支援を行います。
就学支援は生活や通学、学習、対人関係における問題点を話し合い、スクールカウンセラーや教員、発達障害者支援センターと協力します。

就労支援は知的な障害が強ければ保健所や発達障害者支援センターを通じて就労継続支援施設や地域活動支援センターを紹介してもらいます。

知的な障害がない場合には、一般就労か障害者雇用かを検討します。

大人のアスペルガー(大人のASD)においては通常、確認・管理・保守・点検・品質などを扱う職種がむいており、自治体のハローワークや地域障害者職業センター、障害者雇用支援センター、発達障害者支援センターの支援を受けながら向いている職種を探します。

各企業には厚労省が示している「合理的配慮の提供」が求められています。
ただあまりにも配慮しすぎると、かえって本人の負担になってしまいそのことが出社できなくなってしまう要因になることもあります。

注意欠陥多動性障害(ADHD)に対する治療

子供の疾患と考えられていたADHDですが、大人になっても症状は続いており、離婚などの家庭問題や職を失うなど社会的な問題として明らかになってきています。
発達障害者支援法や、ADHD治療薬の大人への使用が認められるようになり、大人のADHDの存在は理解されつつありますがそれでもまだ十分ではありません。

<ADHDの治療薬>

大人のADHDには様々なタイプの診断のされ方がいらっしゃいます。
主に以下の4パターンです。

  1. 小さいころから問題行動が目立ち、治療歴(受診歴)があるケース
  2. 小さいころから不適応はあったものの、大人になって明らかになってきたケース
  3. 小さいころにも特性はあったが特に問題はなく、大人になって進学・就職・昇進してから問題化したケース
  4. 抑うつ症状や不安症状で精神科・心療内科に受診して指摘されるケース

ADHDといっても大人の場合には、そのADHD特性にばらつきがあります。
どれくらいのストレスがかかると症状として表面化してくるのかも違いますし、普段は自分である程度制御できてしまっていたりする場合もあるのです。

主に③「社会的な変化が加わってそのストレスによって表面化してきたケース」では、担当医師によってはADHDと診断されないでしょうし、適応障害と診断されているケースも多々見受けられます。
仮にそうであっても、治療としてADHDの薬を処方することはあまりないでしょうし、治療のメインは環境の調整であったり、心理教育や一時的に薬物療法を行うこともあるでしょう。

しかし、①や②など明らかにADHDの特性を持つケースにおいては環境の調整であったり、心理教育や一時的に薬物療法はもちろん、障害者就労など社会的な支援が必要なケースが多いです。

大人のADHDの治療において重要なことは以下の通りです。

  • 本人が自分自身の特性を理解する
  • 本人の特性を否定せずに肯定的に受け止める
  • 行動特性を修正する・立ち向かう勇気を持つ

何とも言えない困り感の正体、それは幼少期からADHD特性を持つがために経験した困難の連続の歴史なのです。
「困り感がある」と多くの方はおっしゃいます。

不注意・衝動性・多動性といったADHD特性によって、周囲から怒られることが多く自尊心の低下を招いていることも多々あります。
社会に対して反抗的になっていたり、逆に不登校や引きこもりの形をとることもあります。

仮に、大人になるまでADHD特性が現れていなくても、困り感と努力の連続であったはずで自身でうまくフォローしていただけということもあります。

このことを支援する周囲の人達が理解してくれるだけでも大人のADHDの治療をする上では重要なことなのです。

大人のADHDの心理社会的治療

とても大事なことは「自身はADHD特性を持っており、その特性によって様々な困り感を生んでいる」ということを自覚することです。
子供のADHDのように多動性(じっとしていられない)ことが問題になることはほとんどないでしょう。

それよりも注意障害や衝動性が問題になっているはずです。
うっかりが多くミスが目立ったり、キレやすくなり人と衝突しやすいなどです。

こういた特性は、ADHD特性を知れば「なるほど!」となりますが、特に幼少期にADHDというワードと出会ったことすらない場合、自分はなんてだめなんだというレッテルを張ってしまいかねません。
もしくは周りが悪いと周囲のせいになってしまいます。

自身のADHD特性が招く問題を認知するだけで、行動パターンは自ずと変化しますし、これまでと違った捉え方ができるようになります。

ADHD特性があると客観的にものごとをとらえることは難しくなります(とはいっても当の本人はまったくもってそんなことを思っていません)。
ですから問題に当たるとほとんど周囲のせいになってトラブルになっているケースが多々あります。

問題点が起こるたびに、他人の目線ではどう見えていたかを認知していくことで少しずつ教育されていきます(認知行動療法的なアプローチ)。

大人のADHDの薬物療法

ADHDの治療薬は存在しますが、基本的には子供向けです。
ADHDガイドラインも基本的に子供向けですから、大人のADHDが診断されてADHD薬が処方されれば楽になるわけではありません。

そもそも子供のADHDは多動性(じっとしていられない)ことが問題になりやすく、これによって学業に集中できないことがあります。
これにADHD薬は功を奏して、学校の勉強に集中できるようになったとなるわけです。

一方大人のADHDでは多動性が問題になるよりも、衝動性や不注意がメインです。
それだけでなく客観的にものごとをとらえられなかったり、変にこだわってしまったり、ADHD以外の発達障害の特性も併せ持ちます。

ですから大人の発達障害にこの薬を飲めば問題なく仕事していけるとはならないのです。
あくまで薬物療法は、その特性をコントロールして日常生活や仕事での支障を減らす一助でしかないのです。

大人のADHDに対しては2012年にストラテラ(アトモキセチン)、2013年にコンサータ(メチルフェニデート)が18歳以上に使用できるようになっています。
どちらの薬がより良いかというデータはなく、即効性を求める場合はコンサータ、24時間効果の持続を求める場合にはストラテラという程度の選び方です(コンサータは登録された一部の医師しか処方できないという制約もあります)。

まとめ

大人の発達障害(主にアスペルガーとADHD)は、特効薬となるような薬は存在しません。
むしろ二次的にうつや不安、パーソナリティ障害、依存などを引き起こしているケースも多々あり、それに対して抗不安薬、抗うつ薬や抗精神病薬が処方されていることが多いでしょう。

また病名も適応障害、うつ病、双極性障害、不安症、強迫性障害、パーソナリティ障害とつけられ発達障害特性については言及されていないことが多く、なんとなくしっくりこない病名の中で治療をし続けていることが多いのかもしれません。

背景に発達障害特性を持つ場合、二次的にうつや双極性障害などを併発しやすいので病名にこだわったり発達障害があるかどうかにこだわるよりも、自身で発達障害特性に気づくことも重要でそのことが何よりも治療の第一歩になります。
薬物も残念ながら奏功するわけではありません。

最近では主にうつ病において使用されるTMS治療もありますが、主に海外においてADHD特性を減弱させることに成功したような報告もなされています。


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