アルコールと認知症「ウェルニッケ脳症と肝性脳症」

研修医 Ji郎研修医 Ji郎

G先生!!最近よく60代くらいの患者さんから『アルコールをこのまま飲み続けたら俺、認知症になるのか?』と聞かれるのですけど、実際のところはどうなのでしょうか?僕は『適量の飲酒であったとしても脳全体の萎縮を促進してしまうので、当然なり得ます』と答えているのですけど・・・。

Dr.GDr.G

確かにその通りなんだけど、実はアルコールをずっと飲み続けている人が認知症のような症状を起こすものはたくさんあるんだ。

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あ、それそういえば離脱症状のコマでやりましたね。

アルコール依存症と離脱症状について【医師が教えるアルコール依存症】

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アルコールの離脱症状で一時的に起きている可能性もあるし、もちろんアルコール性の認知症(ウェルニッケ・コルサコフ症候群)の場合もあるし、後は脳出血とか肝性脳症まであり得るのか・・・。結構色々ありますね・・・。

Dr.GDr.G

そうだね。当然患者さん達は『私は離脱せん妄ですよー。』とか『私はコルサコフ症候群に伴う認知症ですよ。』なんて教えてくれるわけではなく、ただ疎通そつうが取れないとか興奮して暴れているとか、そういった状態でやって来る訳だからこれらを我々が見極めなくちゃいけない訳だね。

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難しいですけど、何か見極めるコツとかはあるんでしょうか?

Dr.GDr.G

そうだね。では簡単にポイントを見ていこう。


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ウェルニッケコルサコフ脳症(症候群)

ウェルニッケコルサコフ脳症の原因はビタミンB1不足

Dr.GDr.G

まずはウェルニッケ・コルサコフ脳症(症候群)についてだ。これらはアルコール依存症の患者さんでしばしば起こる中枢神経系の疾患で、ビタミンB1(チアミン)の欠乏が原因で起こる病気だよ。

研修医 Ji郎研修医 Ji郎

あれ?お酒が原因ではないんですか・・・・・?

Dr.GDr.G

うん。実はアルコールが直接作用して起こるものではないんだ・・。
アルコール依存症の状態にある人って、主に次の3つの理由によってビタミンB1が不足しやすいんだ。

    ウェルニッケコルサコフ脳症はビタミンB1の不足による病気

  • 食事を摂らずに飲み続けることで、ビタミンB1の摂取量が減る。
  • 下痢を起こすために消化管からのビタミンB1の吸収量が減る。
  • アルコールの分解にビタミンB1が消費され不足する。

ウェルニッケ脳症からコルサコフ症候群へ

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なるほど。アルコールを飲み続けている事はビタミンB1が不足する大きな原因となる、そして、その結果がウェルニッケ・コルサコフ脳症(症候群)となるのですね。

Dr.GDr.G

そうだね。初期はウェルニッケ脳症と呼ばれる、意識障害と歩行障害、眼振(眼球が左右や上下に細かく動く)を主症状とする状態で、もしこの状態であればビタミンB1の大量投与という治療で何とか戻るんだ。でも初期治療が遅れたりして、これが慢性化してしまうとコルサコフ症候群といういわゆるアルコール性の認知症と言われる状態に移行してしまうんだ。こうなると元の状態に戻る事は基本的に出来なくなってしまう。アルコール依存症の離脱せん妄と考えられる症状で入院した場合にビタミンB1の大量点滴をするのもこれをケアしてのことなんだ。

研修医 Ji郎研修医 Ji郎

コルサコフ症候群になるとどうなるんですか?

Dr.GDr.G

基本的な症状としては、記銘力障害、健忘、作話という症状が起こる。記憶の障害が慢性化してしまい、自分の記憶の抜け落ちている部分を無意識のうちに補完しようとして作話という症状が起こるような状態になってしまうんだ。でも、ご家族から見ると、ただ単に本人が確信犯で嘘をついているようにしか見えないから、その嘘を責め立てたりして結局お互いに消耗してしまう結果になりがちになってしまうんだ。

研修医 Ji郎研修医 Ji郎

そういえば、そんな患者さん、外来にもいましたね・・・。ご家族の方が『この人、いっつも嘘ばかりつくから信用しないで下さい!!』って。

Dr.GDr.G

まあ、実際には本当に嘘をついている場合もあるから、厳密な意味で見極めるには経過をしばらく見ていくしかないんだけどね。

アルコール性肝障害と肝性脳症

Dr.GDr.G

もう一つの代表的な状態として肝性脳症の特徴も解説していくよ。肝性脳症は肝硬変の進行したケースや劇症肝炎などで見られる意識障害を引き起こす病態で、これもアルコール依存症の多量飲酒を長く続けた方々でしばしば起こるんだ。

研修医 Ji郎研修医 Ji郎

確かに、アルコールをずっと飲み続ければ肝障害が進行していきますからね。

Dr.GDr.G

肝機能障害が進行していくと、通常は肝臓で代謝されるはずのタンパク質の分解生成物であるアンモニアなどの物質がうまく分解できずに残ってしまうことになり、それが脳に影響を与えてしまうのがこの肝性脳症の機序と言われている。アルコールの方の血液検査でアンモニアの値が上昇していたりすると、この肝性脳症を疑う場合が多いね。他には、腕を伸ばしたりした時に不規則な震えが起こる羽ばたき振戦という症状が特徴的ではあるけど、これはアルコールの離脱症状で見られる手指振戦と紛らわしいこともあるから、これだけを決め手に診断するのは難しいかな。ちなみにこの肝性脳症が進行していくと、最終的には意識障害から進んでいって昏睡状態にまでなってしまうことまであるんだ。

研修医 Ji郎研修医 Ji郎

そうなってしまうと厳しいですね・・・・。

Dr.GDr.G

そうだね・・・。でも、今まで僕が経験した症例の中では、アルコール依存症で肝性脳症を起こして、更にアルコール性末梢神経障害まで合併した事例でも初期治療をしっかりやって断酒のためのプログラムをしっかりやることで最終的に退院してから一般の会社に就労したというケースもあるから、本人が認知症のような状態になっているからといって決して諦めては欲しくないと思う。

研修医 Ji郎研修医 Ji郎

でも、今回改めて感じたのはアルコール依存症の方が認知症のような状態で入院してくるケースってたくさんありますが、原因として離脱せん妄を始めとして色々な病気を考えなくてはいけないということですね・・・。酩酊して転倒しやすいことによって頭部外傷からの意識障害とかもありますからね。

まとめ

Dr.GDr.G

今回、ちょっと複雑な話になっていっちゃったからまとめるよ。

  1. 「アルコールを飲み続けると認知症になる?」は本当?
  2. 本当。アルコールの影響で脳の萎縮が進んでいく他、アルコール性認知症と言われるウェルニッケ脳症、認知症に似た症状が出現するアルコール離脱せん妄や肝性脳症などが起こる。

  3. アルコールによる認知機能低下の区別方法
    • 一時的なもので数日で回復する:アルコール離脱せん妄
    • 記銘力障害・健忘・作話の症状:コルサコフ症候群
    • 肝機能障害&血中のアンモニア高値、羽ばたき振戦:肝性脳症
Dr.GDr.G

いずれの状況に対しても断酒の継続は非常に重要であることも付け加えておくよ。

研修医 Ji郎研修医 Ji郎

ありがとうございました。

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