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認知行動療法にんちこうどうりょうほう」は聞いたことがありますでしょうか?精神科の分野でも最近注目を集めていますので、用語だけは聞いたことがあるという方も少なくないかもしれません。当然、色々な理論もある訳ですが、大雑把な説明をします。


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認知行動療法とは?

認知行動療法・道路は左折専用だが

認知を変えることで行動も変わる!?

認知行動療法とは、認知(考え方)を変えることで行動を変える治療法です!!そもそも我々人間が何か行動を起こす時というのは、意識している意識していないに関わらず必ず次のようなステップを経ることになります。

  1. 何か出来事が起きる

    例:上司に怒られる

  2. その出来事を頭の中で認知する

    例:上司は自分のことを無能だと思っているに違いない

  3. 感情が浮かんでくる

    例:悲しい、気分が沈む

  4. 行動する

    例:上司に会いたくないから会社を休む

何か出来事が起きたときにそれをどう捉えるかは、人によって色々なパターンがあります。例えば「ポジティブに捉えるタイプの人」、「ネガティブに捉えるタイプの人」などです。こうした捉え方の傾向を専門用語で「認知の歪み」と言います。この認知の歪みを修正していくことで、行動を変えていくというのが認知行動療法の基本的な考え方なのです。

認知を変えてみると・・・

それでは先ほどの例で、認知の部分をちょっと変えてみましょう。

  1. 上司に怒られる

  2. 上司は自分のことを無能だと思っているに違いない
    上司は自分のことを評価してくれているから怒ってくれているんだ。評価していなかったら相手にもされないだろう。

  3. 悲しい、気分が沈む
    次は頑張ろうという使命感

  4. 頑張って会社に行き、反省点を生かして仕事をする

あら不思議、上司に怒られて会社にいけなかった人が仕事できるようになりました♪

この「認知の歪み」を修正していく方法として色々な技法が行われています。ちなみにアルコール依存症の治療も全てが広い意味で認知行動療法ということになります。

お酒の害などを知ってお酒に対しての「自分にとって気持ちの良い、欠かせないもの」という捉え方を「やめなくてはいけないもの、自分にとって害の大きいもの」という捉え方に修正して断酒という行動につなげる訳ですからね。抗酒剤の内服ということも、一つの原始的な認知行動療法です。(飲酒という望ましくない行動に対して罰を与える 望ましくない行動と認識させて断酒の行動に向かう)

アルコール依存症患者での認知行動療法の例

前置きが長くなってしまいましたがこのセッションの中では、アルコール依存症の方が再飲酒した問題文の事例からその人の認知の歪みのパターンを見つけ出し、それをどう修正して行けばよいか考えるということを行います。

では問題文です。

Aさんは断酒して数ヶ月が経っていた。そして新しい仕事に就いて一週間が経っていたが、ある土曜日に出勤しようといつものように家を出ると、平日会社に行くのに利用していたバスが土曜日のその時間帯には運行していなかった。遅刻してしまうことがはっきりしたため、Aさんは次のように考えた。

♂患者

  1. 時刻表も読めないなんて、私は大馬鹿者だ。そんなやつはどこにもいないだろう。
  2. きちんと出勤することもできない駄目な人間だ。
  3. 無遅刻・無欠勤でやっていくつもりだったのに失敗した。私は何をやっても何も出来ない人間に違いない。
  4. 一週間も経っていないのに遅刻なんて、私はクビになるに違いない。今月どうやって生活していけばよいのだ。
  5. 私の人生はいつもこうだ。いいことがあったと思うと必ず悪いことが起きてめちゃくちゃになってしまう。
  6. お酒をやめて頑張ってきたけれど、もう駄目だ。いっそのこと飲んでしまえ。

このような考えがAさんの頭の中をぐるぐる回り、結局Aさんは会社に行くこともできず、その場で再飲酒してしまった。

どう認知するのが良いか

さて、皆様はこの文章を見てどう思いましたか?なんてネガティブな人なんだろうと思いましたか?それとも、考えてみたら自分もこういう考え方をすることがあるかもと思いましたか?実際のセッションでは、まず①~⑥の考え方それぞれについて「〇〇のところが△△なので問題である」という言い方でまとめてもらい、その後①~⑥の考え方をどのように変えたらAさんが再飲酒せずに済んだかということを考えてもらう形にしていました。

今回は解答例を全部出すと大変なので、キーワード的なものだけご紹介しておきます。

決めつけ思考

起こってもいない結果を勝手に「起こる」と決めつけることで不安になってしまっています。問題文の例だと、時刻表を読み違えるやつなんてどこにもいないとか、一週間で遅刻するなんてクビに違いないとか、いいことが起こっていると思うと必ず悪いことが起きてしまうとかですね。

白か黒か思考(全か無か・0か1か思考)

物事を白か黒かで考えてしまっています。何か出来ないところが一つでもあったりすると、「私は〇〇は出来ていたが、△△だけ出来なかった。」ではなく、「私は何1つ出来ていない。」という思考になってしまいます(完璧主義)。問題文の例だと、「無遅刻無欠勤でやっていくつもりだったのに失敗した。自分は何をやっても何も出来ない。」とか、物事を「いいこと」と「悪いこと」の2つだけで考えてしまっている点などですね。

高すぎる目標設定

自分に対して実現できないような目標を課してしまいます。問題文の例でいうと「無遅刻・無欠勤」ですね。
 

問題のすり替え

起こっている問題を別のものとすり替えてしまいます。例えば問題文の例で言うと、「酒をやめて頑張ってきたけれどもう駄目だ。いっそのこと飲んでしまえ。」の部分です。本来、「会社に遅刻した」ことと、「自分が飲酒すること」は全く別問題のはずですね。

認知の歪みをなくすことが目標ではない

「認知の歪み」という言葉だとあたかもとても悪いもののように聞こえてしまいますが、実は大事なのは必ずしも「認知の歪みをなくすこと」ではなくて、「自分の中にどんな認知の歪みのパターンがあるのかを知って、より前向きな方向に適応し修正していくこと。」なんですね。「こういう風にも考えられるよ?」みたいな感じですね。

患者さん達も、このセッションを通して自分の中にある「認知の歪み」のパターンについて見つめるきっかけになったようでした。そして退院して外来通院になった時に、この問題文のAさんと同じような思考パターンに陥ってネガティブになっている時に、「そういえば、あの時BさんはAさんにこんなアドバイスしてましたよね?」と言って、状況を打開するきっかけにしてもらっていました。

この問題文の例だとアルコール依存症の事例ですけれども、少しアレンジすればうつ病などにも応用できますね。

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