実は、ご家族の本人への接し方次第で、「俺はアルコールには何の問題もねえよ!!」と否認バリバリだった人が治療につながった例は数多く存在するのですよね。

そのための家族の接し方のコツとして元々アメリカで開発されたCRAFT(Community Reinforcement And Family Trainingの略)というプログラムがあり、その研修会がこの間アルコール関連問題学会という学会の中であったのですが、その研修会の内容の中からすぐに実践できそうなエッセンスをご紹介したいと思います。

それぞれのコツの後にはサンプル例題を用意してありますが、もしこれができたら今度は実際にご本人に対してやってみましょう。ご本人に対してやりづらければまず別なご家族とロールプレイをやって練習してみても良いかもしれません。
あと、もう一つ大事なこと・・・・それは、すぐに実践できなかった、うまくいかなかったからと言って自分を責めたりしないことです。ここで挙げたことは全部完璧に出来るわけではありません。出来なかった場合、どうして出来なかったのかを振り返って次に生かせば良いのです。

そして、完璧にやってもそれでもご本人の気持ちが変わらない挫折感を味わうこともあります。それがアルコールの魔力ではありますが、そういうときにはアルコール依存症の家族会の例会などで気持ちを吐き出してみましょう。何かアドバイスももらえるかもしれませんよ・・・?


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①「私」を主語にして話す

(例)

  1. 「何で早く帰ってこないのよ!!」

  2. 「私は、あなたが早く家に帰ってきてくれるとうれしいわ。」

アル中で帰宅遅い
お酒を飲んで毎晩酔っ払って帰ってくる旦那さんに対して、「何で早く帰ってこないのよ!?」と言いたくなる気持ちはわかりますが、そこをぐっとこらえて「私は」という言葉で切り出してみましょう。そうすると、案外感情的にならない言葉がその後から出てきます。
今までご本人に対してこういった感情的な言葉をかけてしまっていたとしたら、今後「私は~」という言葉に言い換えてみましょう。サンプル例題として一つ出しておくので、やってみて下さい。

「何でこんなに体をボロボロに悪くしているのにお酒飲んでるのよ!?」

②簡潔に話す

(例)

  1. 「あなた、昨日酔っ払って何したか覚えてる?あんな醜態見せて恥ずかしいったらありゃしない!!後始末しなきゃいけないのは私なのよ?もう、何考えてるのよ!?ホント、あなたはだらしないわね!!」

  2. 「ゆうべ、どうだったか、説明しておきたいけどいい?」

アル中の失態
ご本人が酔っ払って帰ってきてその後ご家族に対して声を荒げたり、ふらついて転倒したり、場合によっては失禁したり、ご家族からしたら「ひどい醜態」と思われるような状況になること、ありますよね?
そんな苦労をしても翌日になるとご本人はケロっとしていたり・・・・。そんな様子を見て憎たらしくなって一気に感情を爆発させたくなる気持ちはわかりますが、そこはぐっとこらえて、言いたいことを簡潔にまとめてみましょう。誰だって一気に色々なことをまくし立てられたら、その内容を全て頭に入れるなんてことは出来ません。
それより、ひとまず簡潔に問題をまとめてズバっと話し、そこから少しずつ話していった方がご本人には響いていきます。

「昨日、あんたのために病院に行って相談を受けてきたの。やっぱりあんたってアルコール依存症なんだってよ!!?専門医の先生がそう言ってるのよ!?だから断酒しなきゃいけないのよ!!もうお酒なんて金輪際飲ませませんからね!もし飲んだら離婚するからね!!」

③肯定的に言う

(例)

  1. 「あなた、お酒をやめないと肝硬変になっちゃうわよ!?それでもいいの!?」

  2. 「今、お酒をやめることができれば肝硬変にならずにすむわよ?」

アル中から肝硬変
よく、我々の医療現場でも、「あなたの肝障害の程度は非常にひどいです。ここでお酒をやめないと肝硬変になって死んでしまいますよ?」という言い方がされることはよくあります。医者側からしたら当然の言葉なのですが、残念ながら依存症の方々にはこの言い方だと届かないことがあります。むしろ、「あ、どうせ俺は肝硬変になって死ぬんだから、だったら死ぬ前にたくさん飲んでしまえ。」という考えに至ってしまうことの方が多いようです。

僕は「今肝障害がこれだけあります。でも、まだ肝硬変には至っていないので、今お酒をやめることができれば肝硬変まで進まずに回復することができますよ。」という言い方をなるべくするようにしていますが、どうやらこの方が断酒へのモチベーションが高まるようです。
「~しなさい、さもなくば〇〇になりますよ。」といった否定表現に否定表現を重ねるような言い方はなかなか響きづらく、希望も持てなくなるようですね。ではサンプル例題です。

「あなた、このままお酒を飲み続けたら脳がどんどん萎縮して認知症になっちゃうんだってよ!?そうなったら離婚だからね!!」

④具体的な行動に言及する

(例)

  1. 「休みの日くらい、何か父親らしいことしたら?」

  2. 「休みだし、子供を連れて公園に遊びに行ってくれるとうれしいな。」

アル中
休みの前日からお酒を飲み始めて翌朝にはベロンベロンになってずっといびきをかいて寝ている姿を見ると、「休みの日くらい家族サービスしてよ!?」という気持ちにもなると思いますが、そこはぐっとこらえて、少し要求を具体化してみましょう。
「父親らしいことしたら?」とただ言われても、「父親らしいことって何だよ!?」という反発になります。それよりは具体的にして欲しいことを明確化して伝え、更に命令形でなくて提案形にできるとベストな訳です。では、サンプル例題です。

「休みの日だからって酒ばっかり飲んで朝からゴロゴロしていたらボケちゃうわよ!?もうだらしないったらありゃしない!!」

⑤自分の感情に名前をつける

(例)

  1. 「あなたは人の気持ちがわからないの?私がどんな気持ちで毎日毎日夜遅くまで起きてあなたのことを待っているのかわかる?」

  2. 「私、毎晩遅くまで一人でいるのが寂しいんだ。待っているといつも心配になっちゃうのよ。」

アル中の帰り待つ
旦那さんの帰りを食事の支度をした上で夜遅くまでご飯も食べずに待っていたのに、毛局酔っ払って帰ってきたら、本当に怒り心頭になってしまいますよね?
でもその気持ちをぐっとこらえて、自分の気持ちにちゃんと名前をつけて伝えてみましょう。感情的に声を荒げるだけだと、ご本人にはうまく伝わらず、むしろ言い争いの種になってしまいます。一気に感情を爆発させる前に、その感情に名前をつけて(「悲しい」「うれしい」「心配」など)冷静に伝えてみましょう。それではサンプル例題です。

「何でいっつもいっつもお酒飲んでトラブル起こして来るの!?毎回毎回警察に迎えに行かされて、どんな気持ちだか分かってる!?ホント恥ずかしいったらありゃしないわよ!!」

⑥思いやりのある言い方

(例)

  1. 「あなた、また忘れ物したの?本当にいっつもあなたはそそっかしいわね。ちゃんと次の日持っていくものはメモしておきなさいって言ったでしょ!?」

  2. 「忘れ物したの?私も最近はメモしておかないと何でも忘れてしまうから、お互い気をつけないとね。カレンダーにでも書いておいたら忘れないかな?」

アル中今度からしっかり
前日にお酒を飲んで何か忘れ物などミスをしてしまったとき、ご本人もそのミスについては少なからず後悔、反省の気持ちはあります。そんな時に奥様からそのミスについて攻め立てるような言葉を一気にまくし立てるように言われたらどうでしょうか?
気持ちとしては、そう言ってしまいたくなるのはわかりますが、ここはぐっとこらえて、ご本人の立場に立って考えてみましょう。ご本人のミスをフォローした上で、具体的な改善策を示してあげることが出来れば、「今度はそのとおりにしてみようかな?」という気持ちになれそうです。それでは、サンプル例題です。

「え!?また深酒して仕事今日休むの?仕事が次の日にあると分かっていて何で飲んだの!?信じられない!!これでクビになったらどうするのよ!?」

⑦部分的に責任を受け入れる

(例)

  1. 「あなた、またお薬飲んでないの!?せっかく先生があなたのためにお薬を出してくれているのに、それも飲まないなんて何考えているの!?」

  2. 「お薬飲み忘れたの?私も最近色々忘れっぽくて自分の薬飲み忘れることがあるのよ。たまに副作用で飲みたくないなあって思う薬もあるのよね。もし、お薬を飲みたくない理由とかあったら、私も一緒に行って先生とお話ししてみようか?」

アル中 薬飲み忘れ
ご本人がやっと治療につながって病院からお薬をもらってきたのに、それを全く飲みたがらない。「治療する気あるの!?」と責め立てたくなりますが、ここはぐっとこらえて、ご本人の問題に対してご自身が協力できそうなことについて考えてみましょう。
意外と今までやれていなかったことが一つや二つは見つかるはずです。そうしたら、それをご本人に伝えてみましょう。きっとただ責め立てるよりもご家族に見捨てられた、という思いが薄れ、ご本人の中に「どうしたらいいだろう?」ということが少し具体化されるのではないでしょうか?それではサンプル例題です。

「また、飲酒運転でお酒買いに行って事故に遭ってきたわね!?お酒飲んで運転するとか、信じられない!!そのうち人身事故とかになったら、取り返しがつきませんからね!?」

⑧支援を申し出る

(例)

  1. 「あなたのお酒のせいで私たち家族がみんな迷惑しているのよ。もうほとほと困り果てているんだから、何とかしてよ!!

  2. 「もし、何とかしたいと思っていたら言ってね。私たちもできるだけの協力はするから。」

アル中説得
お酒の問題を否認しながら飲酒を続けるご本人を見ていると、本当にうんざりしてくることも多いと思います。「もう見捨ててやろう!」と思うときも幾度となくあるでしょう。
ただ、見捨てる前に出来ることとして、まずは支援することを申し出て提案(命令でなく)してみましょう。その前に一度家族相談に行って「ご本人に対して家族が出来ること」「実際に治療したいときに治療につなぐための流れ」を聞いておいて、それを具体化して話してみるのもいいかもしれません。その方がご本人の否認の気持ちは変わりやすくなります。命令や脅迫のような言い方ではなく、提案する言い方を心がけてみましょう。最後のサンプル例題です。

「結局お酒やめられなくて、家で朝っからゴロゴロしてもう馬鹿みたい!本当、呆れるわ!!」
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