危険な場面に出くわしたらどう対策するか

再飲酒

どんなに固い決心をして断酒に臨んだとしても、再飲酒してしまいそうな危険な場面というのは必ず存在します。その危険な場面を知って、それに対しての対策を立てて行くのが主旨です。このグループワークセッションでは主に内的要因へのアプローチを行いました。でも、解答編のセッションの時に時間が余ったら「飲み会での対策」をみんなで考えたりもしていました。

さて「危険に対しての対策」というと皆様は何を思い浮かべますか?色々なものが思い浮かぶと思いますが、一番ありそうなところで「火事」というのを例に取ってみましょう。火事に対しての対策を考える時、大きく分けると「火事が起こらないための対策」と「火事が起こったときに被害を最小限にする対策」があります。火事が起こらないための対策としては、火の元の確認(ガスの元栓を締めるなど)をちゃんとするとか、引火の危険性があるところで火を使わないといったことが考えられますし、火事が起こったときに被害を最小限にする対策としては、スプリンクラーの設置、消火訓練、避難訓練などが考えられます。これを再飲酒という危険に対してやるのが今回ご紹介するセッションです。

リスクに対する対策:問題と解答

セッションで使っていた問題文は次のようなものです。

  1. 今までどんな時にお酒を飲みたくなりましたか?思いつくだけ挙げてみて下さい。
  2. 退院後、どんな時にお酒を飲みたくなりそうでしょうか?1と重なってもいいので思いつくだけ挙げてみて下さい。
  3. 今後断酒を続けて行くために、2で挙げた時が来ないようにする対策を考えて答えて下さい。
  4. 今後断酒を続けて行くために、2で挙げた時が必ず来るあるいは来た時の対策を考えて答えて下さい。

1と2でまず断酒する上で危険な状況を洗い出して行き、それぞれの状況に対して3と4の問題で対策を考えて行くという流れになります。例えば、2で「風呂上がりのとき」というのが挙がったとしたら、3は風呂上がりが来ない対策なので、「風呂に入らない」(汚いですけど(笑))、4は風呂上がりに飲まないための対策なので、「ジュースなどソフトドリンクを代わりに飲む」ということになります。こんな感じで断酒する上で危険な時とそれに対する対策を2種類、挙げて行くような形になる訳ですね。
 
本当は患者さん達の解答例を出して行きたい所なのですが、あまりにも膨大になりそうなので、断酒する上で危険な時としてよく挙げられる「HALTハルトの法則」というのをご紹介したいと思います。

再飲酒しそうになる4つの状況とは

「HALT」というのは、頭文字をつなげた用語です。

  • H・・・Hungry(空腹の)時
  • A・・・Angry(イライラした)時
  • L・・・Lonely(寂しい)時
  • T・・・Tired(疲れた)時

この4つの状況のときに飲酒欲求が湧きやすく、再飲酒に至りやすいということを表した法則です。逆に言うとこの4つの状況があったときには、「飲みたい」という思いがなかったとしても、対策を早めに実行した方が良いということになります。少なくとも、この4つの状況に対しては来ないための対策、来てしまった時の対策の両方を自分なりに立てておく(例えば空腹なら、ちゃんとご飯を食べるとか)ことが重要になります。

実際に飲酒欲求におそわれた時の対策法

更に、実際に飲酒欲求が出現してしまった時の対策として簡単に実行できる二つの技法をご紹介します。思考遅延法思考ストップ法というものです。

思考遅延法

飲酒欲求が出現した時に「あと10分だけ飲むのを待とう」「あと10分後に飲むかどうか考えよう」というように結論を先送りする方法です。本当に強い飲酒欲求の持続はせいぜい10分~15分程度であることが多いので、この10分という時間を稼ぐことは意外と飲まなくて済む方向につながることが多いです。

ちなみに「この見ているドラマが終わるまで飲むのを待とう」という具体的な目標があるとやりやすいですし、患者さんが考案した方法として「飲む前に物を30個数えて片付ける」という方法は、部屋もきれいになるし30個数えて片付ける作業に集中している間に飲酒欲求から意識が外れるし、一石二鳥の方法だと思われます。

思考ストップ法

先送りしてもどうしようもない飲酒欲求が持続している時、思考をストップしてしまう方法です。方法としては色々ありますが、紹介していたのは輪ゴムを手首に巻いて「ストップ」と言いながら弾き、その痛み刺激によって一旦物理的に飲酒欲求への意識を逸らす方法でした。元々は強迫性障害の強迫観念に対して行っていた方法だったのを飲酒欲求にアレンジした方法のようです。

「断酒する上で危険な時」まとめ

このセッションは割とわかりやすく直接的な対策になるため、患者さんの反応が一番良いセッションだったように思います。特に思考ストップ法なんかは、輪ゴムを使って実際にみんなで実演したため、退院後通院してからも記憶に残っていて、「俺、飲みたくなった時にあのゴムパッチン法をやっているよ」と言ってくれる人も結構いました。中には輪ゴムを配られた時にふざけて僕に向けて輪ゴムを飛ばしてくる患者さんもいましたけどね。

 

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