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入院プログラムの中のグループワークというプログラムで行っていたセッションをご紹介したいと思います。

グループワークがどんなものなのかについては、こちらを参照して頂ければと思います。

一つのワークにつき、「問題編」と「解答編」で2回セッションを行うことになり、問題編では課題文の提示とグループに分かれてのその課題に対しての討論そして解答のまとめというところを行い、解答編ではそれぞれのグループで出た解答を元に解説を行っていくという内容です。

セッションを重ねて行くごとにその時に入院していた患者さんの意見なども取り入れながら段々と内容が充実していったプログラムです。

今回はその第一回目として、「見かけ上無関係な決断」というセッションをご紹介します。


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【アルコール依存症再飲酒】見かけ上無関係な決断:問題編

まずは、次の文章を読んでみて下さい。

アルコール依存症のAさんは、ある日奥さんと大喧嘩をしました。

その後、むしゃくしゃして気分転換に外の空気を吸いに行こうと思い、家を出て散歩に行くことにしました。

いつもは決まった散歩コースがあり、普通に帰ってくるのですが、その日はいつもと違う、にぎやかな繁華街の散歩コースを通ろうと思い、繁華街の方に向かいました。

その繁華街にはよく昔飲みに行っていた飲み屋がありましたが、そこで昔の飲み仲間とばったり会い、久しぶりに会ったので食事でも、という話になって近くの馴染みの飲み屋に入りました。

そこで、その飲み仲間がビールを二人分注文しました。

最初は断ろうとしましたが、仲間から『一杯ぐらいいいだろうよ?』と言われ、断りきれずに飲んでしまいそのまま飲酒が止まらなくなり大量飲酒してしまいました。

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さて、Aさんが再飲酒しないためにはどうしたら良かったのでしょうか?

「〇〇の時に△△すれば良かった」という表現でいくつか挙げてみましょう。

そして、どうしてAさんはそのように行動できなかったのか、その理由を考えてみましょう。

この問題の話とは関係ありませんが、まだまだ一般社会ではアルコール依存症への理解は乏しいようで、せっかくアルコール依存症治療のために3ヶ月入院して、退院して断酒を続けていたのに会社などで「もうアルコール依存症は治ったんだろ?忘年会の時くらい、一杯位大丈夫だから飲めよ。」と無理やり勧められて再飲酒してしまい、そのまま止まらなくなってしまうという例がかなり存在します。

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依存症の方に「アル中治ったのだろうから、一杯くらい。」と言ってお酒を勧めるのは殺人行為ですよ・・・?

【アルコール依存症再飲酒】見かけ上無関係な決断:解答編

さて、この問題のポイントは、最終的にAさんは「お酒を飲むか、飲まないか。」の選択肢に対して、「お酒を飲む」という決断をしていますが、実はそこに至るまでにいくつも再飲酒につながる選択肢を選んでしまっているのです。

ゲームでいうと、再飲酒フラグを立ててしまっている、という表現になるでしょうか?

Aさんが選んでしまった再飲酒につながる選択肢としては、

  1. むしゃくしゃした時に外に出ることを選んだ。
  2. 散歩コースとして繁華街の道を選んだ。
  3. 飲み仲間と会った時に一緒に食事することを選んだ。
  4. 食事する場所として、馴染みの飲み屋を選んだ。
  5. 飲み仲間にビールを注文された時、無下に断らないことを選んだ。

ざっと見るとこんなところです。

実は目の前にお酒が置かれた段階で「お酒を飲まこと」を自分の意志の力で選ぶのは想像以上に困難なのですが、お酒に近づくような選択肢を予想してそれを選ばないこと、もしくは自分の選んだ選択肢が飲酒に近づかないかどうか常に先を考えること、というのは自分の意志で行うことが出来るという訳です。

少なくとも、「酒飲んでしまえよ。」と言われている状況の中、目の前に置かれたお酒に手を出さないよりは簡単に出来るはずのことなのです。

「これは再飲酒フラグかもしれない!」と自分の心にアラームを鳴らすことが本来は大事、だけどそのアラームを鳴らすためには危険センサーが感知しないといけないから、その危険センサーを鋭くしなきゃいけない。

Aさんにはもしかしたら、この危険センサーがまだ弱かったのかもしれません。更に言うなら、奥さんと大喧嘩してイライラして外に出てしまった時点で、実は無意識の飲酒欲求がAさんの中に渦巻いていたのかもしれませんね・・・。

このワークは入院プログラムでやっていましたが、退院して外来通院になった患者さんが再飲酒してしまった時、このワークをその患者さんの再飲酒の事例にあてはめて、どこで危険が察知できるか、今後どの時点で飲酒に近づく選択肢にブレーキをかけられそうか、ということを振り返ったりするのにも有用でした。

グループワークでの実際のやりとり

Dr.GDr.G

〇〇さん、今回飲んでしまったけど、入院中、『見かけ上無関係な決断』というのをやってのを覚えていますか?

pt♂

ああ、あれか。覚えているよ。あの、妻と喧嘩して繁華街行って飲んじゃったやつだろ?

Dr.GDr.G

そうです。入院で、あのワークをやっていた時、○○さん、なんて言ってましたっけ?

pt♂

あー、確か、酒をやめるという強い意志を持っていたら、繁華街に行くとか、飲み仲間に誘われるとか、そんなことやるはずねえよって。実際Aさんは飲みたかったんじゃねえか?って言ったような・・・。

Dr.GDr.G

さて、今回の〇〇さんはどうですか?

pt♂

うん、入院してあの文見たときは、『こんなの、問題文のために作った文章だろ?』って思っていたけど、実際にあるんだな・・・。俺も結局酒の誘惑に勝てなかったしな・・・。

Dr.GDr.G

あの時〇〇さんって、Aさんに対して今後どうしたらいいって言ってましたっけ?

pt♂

うん、そういえば、『飲んだことを断酒会でちゃんと話さなきゃダメだろ!』って言っていたな・・・。

Dr.GDr.G

では、これからどうしましょうか?

pt♂

そうだな、あの時の俺が言ったとおりのことをするしかねえよな。

意外と、入院中のセッションの時には患者さん自身が鋭い意見、答えを出してくることが多いので、僕はそれを解答編で解説するだけで事足りることが多いんです。

そして、今回の診察の場面では、僕の方から何もアドバイスしていないのも一つのポイントです。

患者さん自身が入院中に出した答えを思い出させているだけです。

まとめ

上から目線で頭ごなしに言われたことって、あんまり聞きたくないですけど、自分で決めたこと、自分で考えたことって実行しようとしますよね?

皆様の中にもそういう方は多いと思います

グループワークのセッションは基本的にこういった、患者さん自身に答えを見つけていってもらうことに大きな主眼を置いています。

そのために、いかにワークに注意を向けてもらうか、いかに興味を持ってもらうかがセッション担当としての手腕の見せ所ということです。

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