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【アルコール依存症】お酒を飲まなくてよくなるための7つのコツ

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
【アルコール依存症】お酒を飲まなくてよくなるための7つのコツ

アルコール依存症で断酒を始めた方が再飲酒しやすい状況として、大きく分けると内的要因(例:飲酒欲求に耐えられなくて、イライラを解消するため)と外的要因(例:飲み友達や上司などに無理やり勧められて)がある訳ですが、このワークでは他から勧められてしまったときなど外的要因についてアプローチしていくことになります。


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断酒してから1年間にどんな人とどう付き合うか

ご紹介するのは「退院後一年間に付き合う人々」というグループワークのプログラムになります。まず次の個人作業をやってもらうことになります。

あなたが退院後一年間に付き合いがあるだろうと思われる人々の名前を思いつくだけ書き出してみて下さい。思いつかないときは、自分の人生をテーマにした物語を作る時にどんな登場人物が必要かという観点で考えてみて下さい。
  1. 付き合うであろう人々のうち、あなたに断酒が必要なことについて理解している人々に〇印をつけてみて下さい。
  2. 付き合うであろう人々のうち、今は断酒について理解していないけれども、話せばあなたに断酒が必要だと理解してくれそうな人々に△印をつけてみて下さい。
  3. 付き合うであろう人々のうち、あなたに断酒が必要なことについて理解してくれそうもなく、更にお酒を勧めてきそうな人々に×印をつけてみて下さい。

まずこの個人の作業で退院後交流がありそうな人々を以下のように分けてみます。

  • 断酒について理解している人
  • 話せば理解してくれそうな人
  • 理解してくれそうもないが酒は勧めてこなさそうな人
  • 理解してくれそうもなくむしろお酒を勧めてきそうな人

退院してせっかく断酒して頑張って仕事をしていたのに、理解のない職場の上司から「忘年会の時くらい、一杯くらい飲めよ。俺の酒が飲めないのか?」などと言われて再飲酒、そこから飲酒が止まらなくなり最終的に肝硬変になって命を落とした患者さんもいます。

まだまだ「酒は人間関係の潤滑油」という言葉も根強く、「アルコール依存症」という病気への一般の理解も乏しいわけです。
アルコール依存症の方にとっては危険に晒されている日本という国の中では、この外的要因に対してのアプローチも本当に大事です。

「酒は人間関係の潤滑油である」「みんなで酒を飲んで本音を話し合えば一層仕事での団結力が上がる」なんてことが言われていますけど、アルコールという依存性のある薬物を使わないと人間関係がスムーズに運ばない、意見を言い合えないような組織のあり方がそもそも僕は問題だと思いますよ、というのは毒舌ですかね。

断酒してから1年間にどんな人とどう付き合うか:解答例

さて、本題から外れてしまいましたがワークの話に戻ります。個人作業で自分に今後交流がありそうな人をカテゴリー分けした後はいよいよグループでの話し合いに入ります。

  1. 今後断酒を続けて行く上で、〇印の人々(断酒について理解している人々)とどのように付き合えばよいか、その対策を考えて答えて下さい。
  2. 今後断酒を続けて行く上で、△印の人々(話せば断酒について理解してくれそうな人々)とどのように付き合えばよいか、その対策を考えて答えて下さい。
  3. 今後断酒を続けて行く上で、無印の人々(断酒について理解してくれそうもないが酒は勧めてこないだろうと思われる人々)とどのように付き合えばよいか、その対策を考えて答えて下さい。
  4. 今後断酒を続けて行く上で、×印の人々(断酒について理解してくれそうもなく酒を勧めてきそうな人々)とどのように付き合えばよいか、対策を考えて答えて下さい。

要はそれぞれのカテゴリーの人々に対してどのように接するかをグループで話し合ってもらうのです。
個人作業の時点である程度具体的にイメージが出来ているので対策も考えやすいのです。

今回も患者さんから今まで出てきた対策の中で覚えているものを羅列したいと思います。

断酒に理解している人々(〇)に対して

  • 普通に接する。
  • 断酒について理解してくれるということはサポートもしてくれるはずなので、辛い場面で相談に乗ってもらう。
  • 飲み会などに出席しなきゃいけない時に○印の人と一緒に出席し、勧められても代わりに飲んでもらうもしくは、一緒にお酒を断ってもらう。
  • 代わりに飲み会に出席してもらう。

断酒に対し理解してくれそうな人々(△)に対して

  • 「アルコール依存症という病気である」と説明し、理解してもらう。
  • 言いにくい場合、最低限「Drストップもあってアルコールが飲めない身体状況にある」ことはしっかり伝えて理解してもらう。
  • アルコール依存症であると理解してさえもらえれば○印の人と同じように接する。
  • なるべく△印の人々にはちゃんと話をして〇印の人になってもらえば、断酒をサポートしてくれる味方が増える。

断酒に理解はしなさそうだが、勧めてもこなさそうな人々(無印)に対して

  • 特に対策なし、普通に接する。
  • 自分の子供とかがこの無印にあてはまりそうだけど、ある程度の年齢になったらちゃんとアルコール依存症の話をしっかり伝えて理解してもらう。
  • 仕事上での付き合いなどで接する人の場合でも、最低限「自分が飲めないこと」だけはちゃんと説明する。

断酒に理解はしなさそうかつお酒も勧めてきそうな人々(×)に対して

  • 説明する努力はするが、それでも分かってもらえなかった場合、×印の人々とは連絡を完全に絶つ。
  • うわべだけで深い付き合いはしない。
  • ×印の人々から誘われた飲み会は全て断る、もしくは○印の人々もたくさん誘って、味方がたくさんいる中でのみ出席する。
  • 「再飲酒したら死に直結する」という旨の医師からの診断書まで持っていって、断る。
  • 無理やり勧められたら被害届を出す。
  • ×印の人自身も恐らくアルコールに問題があるはずなので、一緒に治療に行くよう誘う、もしくは自助グループに一緒に誘う。

飲み会に出席した時の対策

飲み会に参加しないことは現実問題無理なのでは!?

アルコール依存症の患者さんが入院治療を行って断酒を始めた頃、多くの専門治療外来では「断酒してしばらくは絶対に飲み会には出席しないようにして下さい。思わぬ誘惑があって再飲酒してしまう危険性がかなり高いですから。」ということが必ず言われます。

これは確かに理にかなった指導ですし、実際「飲まない」と強く決めていたとしても、飲み会の場というのは再飲酒のリスクが高いというのは確かです。
実際問題として、これだけアルコールというものが我々の日常生活に広まってしまっている日本社会の中で飲み会に絶対出席しないようにすることは本当に可能なものでしょうか?

定年退職した後でその後はあっても親戚の集まり程度という方であれば大丈夫かもしれませんが、実際のところ僕が診ていた患者さんのほとんどはどこかの場面で飲み会に出席せざるを得ない状況が多かったのです。
ですから「飲み会に絶対に出席するな。」とただ指導するだけではなく、「出席する状況になった時のための対策をちゃんと立てよう。」ということも必要なのです。

ちょうどグループワークの中でそうした外的要因についてのアプローチのセッションがあったので、良い機会だと思いこの「飲み会での対策」を組み込みました。

Dr.G
それでは、飲み会に出席することになった時の対策を紹介しましょう!

1.アルコール依存症であることをあらかじめカミングアウトしておく

可能ならばベストな選択です。病気の説明までちゃんと出来れば尚良いでしょう。
しかしまだまだ依存症に対しての誤解・偏見は根強くあるので、この方法がとりづらいということも多々あります。

本当は、当事者がこうした場面でちゃんと声を上げられて理解してもらえるような社会になればいいのですけどね。

2.運転手を買って出る

相手との関係を壊すことなく一番断りやすい方法です。
酒を勧めてくるということは相手も当然一緒に飲んで盛り上がりたいという心理がある訳です。

つまり、相手自身も飲んだ後にどうやって帰るかという心配はしているはず。
「俺が運転手やって家まで送りますから、どうぞ飲んで下さい。」という断り方にしたとすれば、ただ「飲めないです。ダメです。」と断るよりもうまく断れそうですよね。

3.飲まない人の近くに座る

最近では飲み会の席でも必ず飲む人ばかりではありません。
飲まない人の近くに座っておけば当然勧められるリスクは減ります。

飲まない人の集団に滑り込めるようにうまく立ち回りましょう。
不運にして飲む人の近くに座ってしまった場合は、トイレに立つふりをしてさりげなく別な席に回るという手もあります。

4.冠婚葬祭の席でグラスを伏せておく・ソフトドリンクで満たしておく

冠婚葬祭の場面も再飲酒のリスクが高い場面です。
患者さんから聞いたのですが「グラスを伏せる」ということは「私はお酒を飲みませんよ!」という意思表示になるということなのでこれは対策となります。
あとはもう自分のグラスにはウーロン茶などをあらかじめ取ってきてしまいましょう。

5.飲み会の会場の店と内通しておく

意外と、店員さん達はうまく対応してくれることがあります。
もし飲み会の会場の店が決まっているのなら、あらかじめ電話して「僕がウーロンハイと頼んだらウーロン茶を出して下さい」という取り決めを作っておくといいかもしれません。
少人数の飲み会の時に有効になり得る対策です。

6.デザートにも注意

飲み会の場で出されるデザートの中にはアルコール分を含むものがあったりします(飲み会に限らず、デザート以外の食べ物でもあるのですが・・・)。
抗酒剤を飲んでいる方にとっては少量であってもアルコールは危険物となりますから、デザートにも気をつけましょう。
 

7.飲み会が終わった後にも注意

いざ飲み会でちゃんとお酒を飲まずに済んで家に帰ってきた時、そこで気が緩んで飲んでしまうという患者さんはかなり多いです。
どうやら飲み会の場でみんなが飲んでいるのを横目にしながら「前は飲めたのになあ」と思いながら我慢していて、帰ってきたときにそれを思い出してお酒に手を出してしまうようです。
できれば、飲み会に出席する時の心構えとして「お酒を我慢する」というよりは「飲み会の雰囲気を楽しむ」つもりで行けるとある程度楽なのかもしれません。

飲み会出席時の対応「おまけ」

 
アルコール依存症の方々で飲み会にどうしても出席せざるを得ない状況になった場合、これらの対策を参考にしてみて下さい。
もちろんこれで毎回うまくいくとは限りませんが、無策よりははるかにマシです。

こんな感じで前回やった「退院後一年間に付き合う人々」の後に「飲み会での対策」として紹介したり、患者さんから対策を出してもらったりしていました。
今回はおまけコーナーも載せておきます。

おまけ1

内科医
お前何飲む?
Dr.G
味噌汁

「ドリンク何飲む?」と聞かれたときに「味噌汁!」と即答してやるとウケが取れる時があります。そのままの勢いで味噌汁で乾杯して乗り切ってしまいましょう。・・・というのは冗談です。

おまけ2
アルコール病棟に新人の看護師さんが入った時の歓迎会の席でのこと。僕はいつも病棟の飲み会の時にはソフトドリンクのいちごミルクが大好きで飲んでいたのですが、いつものようにいちごミルクで乾杯しました。そしてしばらく談笑していた時のことです。

その新人看護師さんは歓迎会の日に日勤で仕事がなかなか終わらず、歓迎会には我々が乾杯を終えて談笑している時に遅れて入ってきました。その新人看護師がメニューを見ながら自分の飲むドリンクを必死で探していたのです。

看護師B男
うーん・・・、えーと・・・
看護師K子
どうしたの?〇〇君、何飲むの?
看護師B男
えーと、僕アルコール弱くて飲めないんですよ。
看護師K子
結構この病棟にはそういう人いるから大丈夫よ。ほら、このページがソフトドリンクのコーナーだから選んでみて。
看護師B男
はい!えーと、えーと・・・。
看護師K子
どうしたの?何じーっとメニュー見ているのよ?
看護師B男
僕いちごが大好きで、このいちごミルクっていうのを飲みたいのですけれど、こういう場でこんなふざけた飲み物とか頼んじゃダメですよね?
看護師K子
そんなふざけた飲み物飲んでいる人が、あそこにいるよ。(僕を指差す)
Dr.G
ふざけた飲み物・・・・・(;゚Д゚)
看護師B男
え?いや、あの、その。先生がふざけているとか、そういうことを言いたいんじゃないんです。あ、あの、すみません!!
Dr.G
(´・ω・`)しょぼーん

 

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