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アルコール依存症と離脱症状について【医師が教えるアルコール依存症】

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
アルコール依存症と離脱症状について【医師が教えるアルコール依存症】
患者家族
先生!!うちの人ね、朝からお酒ばっかり飲んで、しょっちゅう冷や汗かいたり、手が震えたりしているんだけど、絶対アル中でしょ?
患者
朝からなんて飲んでねえ、夜にちょっと飲むだけだよ!!
手が震えたり汗かいたりしているのは、人前に出ると緊張するからだし、昔からだよ!
俺は絶対、アル中なんかじゃねえからな!!
患者家族
うそばっかり!!
お酒ばっかり飲んでいる人はアル中で、ひどくなると手が震えたりするって聞いたことあるわよ?
あなたもきっとそれよ!!
患者
うるせえ!!
アル中、アル中って、俺を勝手に病気にして精神病院へ入れる気か!?
患者家族
先生、もうこの人一生入院させておいて下さい、お願いします!!

Dr.G
よくあるアルコール外来の一風景ですが、この家族の方が言う手の震えや発汗などの症状がどうして起こるかということについて説明していきたいと思います。

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アルコールの離脱症状

アルコールをやめて手が震えたり、発汗がでるという症状はアルコールの離脱症状として出現します。
この離脱症状の存在は逆にアルコール依存症の存在を強く示唆しさする所見となる訳です。(ICD-10という診断基準の中にも含まれています。)
それでは、どのようにしてアルコールは依存を形成するのでしょうか?

アルコール依存が形成されるしくみ

アルコールに脳が慣れた状態

よくお酒が弱い人に強い人が強引に勧めてくる口実として、「飲めないとか、弱いとかそれは嘘だ。少しずつ飲んでいけば肝臓も強くなるからどんどん飲めるようになっていくぞ?だから、飲んで肝臓を強くしろ。」というのがありますが、実は肝臓はダメージを受けるだけで強くなるわけではありません。(代謝自体は変わりません。)

でも、きっとその勧めてくる様な人達は言うでしょう。
「いやいや、俺も昔は弱かったが、先輩達に飲まされて吐いたり、つぶれたりという修行を繰り返して今みたいに飲める量が増えて、いくら飲んでも酔わなくなって、強くなったぞ?何事も繰り返しが大事だ。」

お酒の飲める量が増えた、いくら飲んでも酔わなくなった、という現象は、ただ単にアルコールへの「耐性たいせいができた」(要は慣れてしまった)というだけで、強くなったわけではないのです。

多量の飲酒をすると代謝しきれないため、その分は脳に蓄積していきます。
この飲酒が続いて行くと、段々と脳は「アルコールが存在しているのが当たり前の環境」となり、その当たり前の環境に適応するようにどんどん変化していきます。
これがアルコールに対しての耐性たいせいの増大ということになります。

アルコールに慣れたところから・・・

では、「アルコールが存在しているのが当たり前の環境」からアルコールが奪われたとしたらどうでしょうか?(飲めなくなった、もしくはやめた等の理由で)
脳の状態が何となく不安定になりそうなのは想像できますか?

なかなか想像がつかないという方は、冬にコタツでぬくぬくしながらみかんを食べつつテレビをのんびり見ている時のことを想像してみて下さい。
そして、そこへ口うるさいオカンが現れて「アンタ、いっつもゴロゴロしてちゃ体がなまっちゃうよ!!外に出て走ってきな!!」と言ってコタツをいきなりひっぺがしてきたらどうでしょう?
きっと激しく抗議しますよね?

この例のように、アルコールを奪われることに対して脳が激しく抗議している状態が、アルコールの「離脱症状」です。

アルコールに恋する脳の猛抗議

オカン相手だったら、せいぜい「何すんだよ!?人がいい気持ちでコタツに入ってるのに、邪魔すんなよ!?」という程度で済むかもしれませんが、脳の場合はそれだけでは済まず大暴動を起こすことがあります。
これが次に挙げる小離脱、大離脱というものになります。

小離脱

飲酒を中断して半日~3日くらいで出現します。
不眠(酒がないと寝付けない、眠りが浅い)、発汗、発熱、嘔気(何も食べていないのに吐きたくなる)、イライラ感、手の震え、動悸などがあります。
こういった症状が出ている時にアルコールが入ると、症状が消失したりします。
冒頭での外来の一例でもあるように、こうした離脱症状を患者さんが「否認」することも多いです。

大離脱

飲酒を中断して3日~7日くらいで出現し、長引くこともあります。
小動物幻視げんし(虫が見える、など)、興奮、意識消失発作(てんかん発作のような状態)、全身の震え、血圧の急上昇(脳出血のリスクとなることも)などがあります。
こういった状態が合わさった「アルコール離脱せんもう」と呼ばれる意識障害を起こし、時に暴れてご家族の手に負えない状態になって警察や保健所が介入して病院に受診することもあります。


離脱症状は、患者さんにとって非常に苦痛を伴います。
特に大離脱の激しい症状については、本人のみならず、周りで見ているご家族にとっても非常に不安の強いものです。
実際、この離脱症状の苦しみを二度と味わいたくないという思いが断酒への動機付けとなった患者さんは数多くいます。

離脱せん妄状態になってしまったら

もし興奮や幻覚などの精神症状がそこまで強くない状況なら、ビタミンB群などの栄養の点滴など、何とか内科的な身体管理のみでいけるのですが、精神症状も伴っていて本人が暴れていたり、治療を拒否していたりするケースは内科でというわけにはいきません。

以前に「アルコール依存症は何科で診るか?」というコラムでも書きましたが、離脱せん妄の状況は身体的にも精神的にも限界の状況であり、本来この状況こそがまさに内科と精神科の連携の力の生かしどころになります。
でも現実はどうかというと、

内科医
せっかく本人の状態を治療しようとしているのに、我々医療者に悪態をついたり、点滴をしていても夜中暴れて外してしまったりするし、その後やっと良くなって退院しても、どうせまた飲んで同じことを繰り返すのだから、意味がない。他にも内科的に重症な患者さんはいっぱいいて、こういう人達に割ける時間はあまりないのだから、もう、こういう方々は精神科に任せておいた方が良いと思う。
Dr.G
精神症状を何とかコントロールするのは我々の仕事だけど、アルコールの方々は今までの多量飲酒の影響での臓器障害がひどくて、糖尿病やら膵炎やら、肝硬変やら、精神科ではコントロールしきれない身体合併症が多すぎるし、お薬を使って精神症状をコントロールしようにも、肝臓がやられていて代謝が困難な状況では使いづらいんだよな・・・。せめて身体合併症だけでも内科で診てもらえないかな・・・?

実際のところこうしたボヤキの声は多くの病院で存在しているのではないでしょうか?
そして、連携がうまく行っていないと実は重大な身体合併症を見逃す事態にもなりかねないのです。

「離脱せん妄の疑い」として興奮状態でアルコール外来を受診される患者さんは数多くいます。
当然のことながら「私はアルコールの離脱せん妄ですよ。離脱症状が出ているから暴れているんですよ。」なんて、教えてくれる患者さんはいません。
ただ単に、手が震えていたり、幻覚症状を訴えたり、場合によってはただ空中に何か見えているかのような仕草をするだけだったり、医療者や家族に対して興奮して声を荒げたり、疎通が取れない状態で病院にやってくるだけなのです。

ということは、アルコールの離脱症状以外の原因で起きている、もしくはアルコールの離脱症状と同時に別な原因がある可能性というのも十分考えられるわけです。

アルコール依存症の方で、暴れたり不安定な状態を起こす原因は様々なものがあります。
単純にアルコールの飲みすぎで酩酊めいていしている(酔っぱらっている)状態、肝性脳症、アルコール性認知症(ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群など)、酩酊してふらついて転倒して出来た頭の血腫(血のかたまり)、低血糖etc・・・。

特に、離脱せん妄の診断で入院してきたけど意識がなかなか回復せず、何度も入院中痙攣けいれん発作を起こしているのでおかしいと思ってCTを撮ってみたら血腫が増大していたなんてことは良くあります。

入院したもののなかなか不良な状態から回復しない場合には、精神科の医師と身体科の医師がしっかり連携出来ていないといけません。
僕の場合、前任の病院に外科がなかったので近くの脳外科のある救急病院に一時的に治療のための入院をお願いしたりしていました。(手術が終わったらまた自分の病院に戻って入院というお約束で。)

ちょっと本題のアルコール離脱症状の話から離れてしまったかもしれませんが、離脱症状だと思っていたら実は重大な身体合併症がかぶっていたということもあるので、離脱と一緒に絡めて書いてみました。

 

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