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アルコール依存症は治らないのか?【医師が教えるアルコール依存症】

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
アルコール依存症は治らないのか?【医師が教えるアルコール依存症】

アルコール依存症は一生治らないというイメージをもっているひとは多いと思います。
アルコール依存症を治療するというのはどんなイメージを持てばいいのか、ここではDr.Gと研修医Ji郎君の会話の中からそのとらえ方を見ていきましょう。

研修医Ji郎
G先生!この間外来でアルコールの患者さんに『アルコール依存症って一生治らない病気なんですよね?』って聞かれたんですけど、どう答えたらいいですか?
もし『治ります』って答えちゃったら、場合によっては『再飲酒しても大丈夫』という認識になってしまうかもしれないし、かといって『治りません』って答えたらせっかく頑張っている患者さんの希望の芽を摘んでしまうような気がして・・・。
Dr.G
なるほど。ちなみにJ郎君自身はどう思っている?
アルコール依存症は治ると思う?
研修医Ji郎
うーん、難しいですね・・・。
断酒を続けられている方であれば、少なくともとりあえず何の問題もなく経過している訳だから治っていると言えそうですけど。
でも、再飲酒してしまったら、また元の問題のある飲み方に戻ってしまうんですよね?
そこをどう伝えていくかって難しいですよね。
やっぱり治らないんですかね・・・。
Dr.G
うん、確かに一旦アルコールに対しての依存が形成されてしまうと『健康を害しないように、量をセーブして飲む』ということは出来ないというのは事実だね。
ブレーキの壊れた車によくたとえられるけど、もしJi郎君はブレーキが壊れた車があったとして『その車でドライブして下さい』って言われたら乗る気になる?
研修医Ji郎
えー!?
そんなのとてもじゃないけどおっかなくて出来る訳ないじゃないですか?
ブレーキが壊れていたら止まれないですよね?
Dr.G
そうだね。
でも、アルコール依存症の方はお酒という車のブレーキを失っている訳だけど、それでも運転する時の快感(飲酒した時の快感)が忘れられず、危険を顧みずに車に乗ってしまう(お酒を飲んでしまう)わけだ。
研修医Ji郎
ひいいいいいいい!
怖いいいいいい!!
Dr.G
だけど、ブレーキが壊れていると分かっているのなら、そこで車に乗らないという選択は出来る。
つまり、いかに車に乗らないという選択肢を選び続けることが出来るかということがアルコール依存症の治療であるとも言える。
研修医Ji郎
そっか!
車だったらブレーキを修理するという選択肢があるかもしれないけど、アルコール依存症の場合そのブレーキというのは修理できないって事なんですね?
Dr.G
そういうことだね。
研修医Ji郎
結局はその場、一日一日を断酒でしのぐというだけですよね。
それで治っているという考えはやっぱり持てないような気がするんですけど?
Dr.G
そしたら別な病気で考えてみようか?
Ji郎君、風邪って治る?
研修医Ji郎
え?
そりゃあ治りますよ。
熱が下がったり、咳や鼻汁などの症状が治まったりすれば、ひとまず治ったと言えますよね?
Dr.G
なるほど。
風邪の場合、治ったら基本的には元のように動けるね。
研修医Ji郎
そうですね。
Dr.G
では糖尿病はどうかな?
研修医Ji郎
えーっと、まずは食事療法と薬で血糖値を下げることが治療ですよね?
Dr.G
そうだね。
じゃあ、血糖値が正常になったら糖尿病が治ったと言える?
研修医Ji郎
あっ、そうか。
血糖値が一旦正常になっても、結局はそれを維持するために食事療法は続けていかなくちゃいけないから『糖尿病そのものは治ってない』ですね。
あくまで『血糖のコントロールがついた』というだけですね。
Dr.G
そういうことだね。
高血糖の状態が続けば目や腎臓、神経に合併症が出現してくるのだから、合併症を防ぐために『血糖値を正常に維持する』ということが糖尿病の治療になるわけだ。
研修医Ji郎
何か、段々精神科の話題じゃなくなってきたような気がしますが・・・・?
Dr.G
大丈夫、本題からは離れてないよ(笑)。
あと他には高血圧なんかも同じ事が言えます。
厳密には『血圧を正常に維持し続ける』ことが治療となるわけだ。
こうした疾患は慢性疾患まんせいしっかんと呼ばれていて、アルコール依存症も慢性疾患の仲間だと考えれば分かりやすいかもね。
研修医Ji郎
確かに。
高血圧や糖尿病の方が普段から食事療法を続けるのと同様に、アルコール依存症では断酒療法を続けるということになりますね!
Dr.G
そう。
だから、先ほどの質問に答えるなら『アルコール依存症は糖尿病や高血圧などと同じ慢性の疾患です。アルコールに対してのブレーキを失っている状態で、このブレーキを取り戻すという事は出来ませんが、断酒の日々を一日一日積み重ねていくことで、問題なく生活していくことは出来ます。断酒を続けていくと言う事は辛いかもしれませんが、お酒に溺れていた生活の中では見えてこなかった色々な喜び、絆を得て、むしろ病前よりも精神的に豊かな生活を送れている人もたくさんいます。○○さんも、そんな風になれるよう、これから治療していきましょう。』なんて感じで言えるといいんじゃないかな?
研修医Ji郎
なるほど、それなら断酒の必要性はちゃんと説明しつつ、希望も失わなくて済みますね!
今度からそうやって説明するようにします。
Dr.G
われわれ医師もアルコール依存症という病気に対しては無力だから、せめて治療のモチベーションだけでも維持できるように後押しサポートしてあげるということは大事だよね。
研修医Ji郎
そうですね。
この前、R崎先生が・・・

Dr.R崎
あなたはアルコール依存症という一生治らない病気になりました。
断酒しないとこの先の人生、また同じような問題が起こります。
むしろエスカレートしていくばかりです。
本人が断酒する気にならないのならいくら入院治療しても意味がありません。
もし本人が治療する気にならないのなら、奥様も離婚とかを考えてみてはどうでしょうか?

研修医Ji郎
って言っている光景を目にしたのですけど、そんな言葉を受ける患者さんからしたら辛いですよね・・。
Dr.G
まあ、R崎先生の言っている事はある意味真実だし、実際よくそのような説明がなされている事例はあるんだけど、やはり言い方ってのは大事だね。
我々も診療の現場で肯定的な表現をなるべく使うように心掛けたいところだね。
研修医Ji郎
はい。
ありがとうございました!!

まとめ

アルコール依存症は、高血圧や糖尿病などと同じ慢性疾患というイメージで治療をしていくことが大事です。
慢性疾患の治療はそれによって問題ない生活を送れるようにすることにあります。

 

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