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「自助グループに行けばお酒をやめられる?」【医師が教えるアルコール依存症】

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
「自助グループに行けばお酒をやめられる?」【医師が教えるアルコール依存症】

アルコール依存症の治療に重要な「自助グループ」

アルコール依存症の治療の中で、非常に重要な役割を持つのが「自助グループ」と呼ばれる当事者の方々が集まって自分の酒害の体験談などを語り合うグループです。

日本ではAA(アルコホーリクス・アノニマス)や断酒会などがアルコール依存症自助グループの代表的なものになります。

ちなみに、アルコール依存症以外にも、薬物依存症、摂食障害、AC(アダルトチルドレン)、うつ病など様々な自助グループが存在します。

アルコール依存症を専門とする病院やクリニックでも、よく「自助グループに行きなさい。」という指導をされたり、「抗酒剤(お酒に弱い体質を作り出すお薬)」、「通院」、「自助グループ」がアルコール依存症治療の三本柱と言われたりということがあるので、断酒を続けて行く上でとても大事なのは確かなのですが、一体何故自助グループは必要なのでしょうか?

以前勤めていた病院のアルコール治療では、僕が断酒治療に携わる前、2年間の断酒率は全体で30%弱だったのが、自助グループにつながっている方々の中で断酒率を取ってみると何と70%強まで上がるというデータが残っていました。

だから、患者さんに自助グループにつながることをお勧めしていましたが、ただ「自助グループに行きなさい。断酒率が圧倒的に違うから。」と言っただけではなかなか患者さんは行きたがらないのですよね。

ではそもそも自助グループがどんなところか、ということをお話しします。

自助グループは一体どんなところか?

自助グループでは例会(もしくはミーティング)といって、定期的にメンバーが集まって自分の酒害について語る会が開かれますが、そこではルールがあります。

一つは、「言いっぱなし、聞きっぱなしであること」です。仲間の体験談には反論や批判をしたりせず、黙って聞くということですね。(面白い内容の時に笑いが起きるときはあります。)

もう一つは、「話された内容については、絶対に外部に洩らさないこと」です。

時にその仲間の個人情報が入ったり、デリケートな内容のことが語られたりすることがありますので、それを外部に洩らさないということは大事なルールです。このルールが守られることによって、反論されたり批判されたりということがない安心感の中、ありのままの自分を自由に、正直に話すことができます。

例えば、お酒をやめようと決意したけれども、ついお酒に手が出てしまった時、それを正直に話せるようになることは非常に大事な第一歩です。また、話しているうちに心の中で思っていたことが整理できたり、「あ、こんなことを自分は感じていたんだ」と新しく気づいたりすることもあります。

更に、断酒している先輩の体験談を聞くことで、「あ、こうやって回復して行くんだ」というイメージができ、これが断酒への更なるモチベーションにつながっていくことになります。断酒している先輩が、かつて今の自分と同じような苦労(もしくはそれ以上の苦労)をしていたことを聞くことにより、共感できたり、「自分もこうなりたい」と目標を持てたりすることもあるでしょう。

アルコール依存症当事者だけではなく、ご家族のための自助グループ(家族会、アラノン)もありますので、アルコール依存症の当事者の方だけでなく、ご家族のアルコール問題に悩んでいる方も是非自助グループにつながってみて下さい。

自身が感じた自助グループの魅力

石川慧璃
ちなみに、僕自身(僕自身は前に述べたようにアルコール依存症当事者家族ではありますが)も自助グループに助けられた部分がたくさんあったので、本当にこの良さを伝えたいと思っています。

前の病院で、自分が中心となってアルコール依存症専門治療に携わることになった時、自分のアルコール依存症の父親が亡くなったという連絡が入りました。

それを聞いたときにショックを受けたというより、何とも言えない不思議な気分になったことを覚えています。ただ、胸の中に何となくもやもやしたような重いようなつかえるものが残っていました。

ちょうどその時、茨城県内のAA(アルコホーリクス・アノニマスという自助グループ)からオープンスピーカーズミーティング(全国のAAに繋がっている方々が集まり、大きな会場で体験談を話すという会)で医師の立場として話して欲しいという依頼が届きました。

しかし、その当時、自分はアルコール依存症の治療に関しては新人、ある程度携わってはいたもののわからないことだらけという状況で、そんな大勢の前で専門的なことなんて話せるスキルは持っていませんでした。

それでも、AAの方で自分の外来に通院している患者さんから「何でもいいですよ?」と言われ、自分の体験談をお話することにしたのです。

実際に会場に着いたとき、そこには全国からたくさんのAAのメンバーの方々が集まっていました。

そしていよいよ会がスタートしました。全国から集まったAAのメンバーの方々が次々と自身の体験談を話して行く中、段々と自分の番が近づいてきました。

ついに壇上に上がり、自分が話す番。その時になって周りを見渡すと、うちの病院のスタッフもいましたが、AAのメンバーの皆さんがどの方もすごく真摯な目でこちらを見ていました。

そんな中「あ、自分も仲間として受け入れられたんだ・・。」という不思議な感覚になり、そして自分の中でずっと重いトラウマとなっていた体験を初めて人前で少しずつ言語化していくことができました。

きっと、ここにつながっている皆さんも僕が体験したような「仲間として温かく受け入れてもらえる感覚」を一度は感じたからこそ、つながっているのかなあと思ったりします。なかなかうまく説明できないけど、本当に心地よい感覚なんですよね。

その後も何度かAAのミーティングには足を運びました。

よく、「アルコール依存症専門治療に関わるなら援助職は必ず自助グループに自ら足を運べ。」なんて言われますが、僕はその幼い頃の傷を少しずつ自分の中で清算していって、自分が楽になるためという側面が強かった気がします。

そして臨床をやっていく中で、父と同じアルコール依存症の患者さんを目の前でたくさん診ていくことで「きっとうちの父親も本当はお酒をやめたかったのかもしれない、だけどなかなかやめられなくて結局どうしようもなくて暴力という手段に出たのかもしれない、本当は苦しかったのかも・・・。」と父の気持ちが少し分かったような気がしました。

きっと、AAのオープンスピーカーズミーティングで自分の気持ちを整理できていなかったら、多分父親に対しては恨みつらみの感情を抱いたままだったと思いますが、あの場でAAの仲間の前でお話しできたことで、他の講演等でも話せるようになり、そのうちに段々と自分の中でも整理できるようになってこれたかなあと思っています。

以上、僕が感じた「自助グループの魅力」でした。

東京都内のアルコール自助グループのご紹介

断酒会、AAはアルコール依存症当事者の方々の集まるグループ、アラノンは当事者家族が集まるグループになります。アルコール問題で悩む皆様、是非勇気を持って足を運んでみて下さい。

 

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