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ジェイゾロフトの効果と特徴

ジェイゾロフトは抗うつ剤の中でもSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類されるお薬です。
抗うつ効果と副作用の出にくさという点でバランスのとれた薬であるといえます。
また抗うつ効果に限らず、不安に対する作用や過眠などにも有効性を示すことがあります。

ここではジェイゾロフトに関する効果や特徴について説明します。


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1.ジェイゾロフトはどんな薬?

ジェイゾロフトは商品名で、一般名はセルトラリンです。
2006年6月に承認されたお薬で、ジェイゾロフト錠としてファイザーから販売されています。

現在はジェネリック医薬品(後発医薬品)も出ており、この成分の名前である「セルトラリン」がそのままジェネリック医薬品名になっています。(セルトラリン錠「製薬会社名」の表示でお薬手帳に記載されています。)

ジェネリック医薬品は同じ有効成分を含んだ割安のお薬で、通常は調剤薬局で後発医薬品に変更されて出されているはずです(処方箋に医師の指示で後発品変更不可の記載がない場合。)

ジェイゾロフトの抗うつ剤の中での位置づけ

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類されます。

うつ病・うつ状態に対して最初に処方される抗うつ剤は「SSRI」「SNRI」「NaSSA」のいずれかから選択されます。
いずれの抗うつ薬もガイドラインで「効果は同等」として扱われていますので、どれが一番良いなどといったことはありません。
SSRIの中でも反応は個人差があるので、内服してみてはじめて抗うつ効果や副作用が明らかになったりします。

それでも抗うつ剤をランキングした研究は存在しており、その中でのジェイゾロフトの位置づけは高いのです。
抗うつ剤の比較

横軸は抗うつ効果を、縦軸は飲み続けやすさを示しており右上にある薬ほど有用性が高いことを示しています。
この表で見る限り、ジェイゾロフトは抗うつ効果も高く副作用も出にくいことを示します。

【参考文献】
Cipriani A, et al. Comparative efficacy and acceptability of 12 new-generation antidepressants: a multiple-treatments meta-analysis. Lancet. 2009 Feb 28;373(9665):746-58.

ただこの番付には様々な反論もあります。
先ほども説明しました通り、現状でSSRI、SNRI、NaSSAという抗うつ剤のスタメンの中での優位性というのはないことになっています。

この研究メンバーの中には日本人もいますがほとんどが欧米で検証されたものであり、うつ病の特徴を一つとってもうつ病が関連していると思われる自殺率は日本が高くその文化的な背景や環境、価値観、そしてもちろん遺伝的なものなども欧米とは違うのではないか?
製薬会社との利益相反はないのか?

極めつけは同じように行った別の研究では、まったく違う結果になってしまったことなどです。

それでもこの表でも右上にあるジェイゾロフトやレクサプロは副作用がマイルドな印象は個人的にはあります。

ジェイゾロフトはこんな病気に処方されます

抑うつ気分、不安症状、不眠もしくは過眠(寝すぎてしまう)に有効です。

<効果のある病気>

  • 大うつ病
  • 全般性不安障害(GAD)
  • パニック障害
  • 強迫性障害(OCD)
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 社交不安障害
  • 月経前不快気分障害(PMDD)

臨床試験で、抗不安作用に効果があることが幅広く証明されているため、うつ病以外にも上記の病気に対して効果があるとされています。
うつ病に関連した不安症状にも効くことを報告している研究者もいます。
この不安症状への作用に関してですが、ジェイゾロフト特有の作用ポイントがあるのでこれは後程説明しましょう。

このうち、日本で承認されているのは、うつ病・うつ状態、パニック障害です。

月経前不快気分障害(PMDD)とSSRI

月経前不快気分障害(PMDD)は、生理前に気分の障害をきたすものです。
とくにイライラや攻撃性が増したり、自身でも気分の制御が効かない感覚を持っており自責の念にかられることも多いです。

このPMDDに対し、SSRIが有効なためジェイゾロフトが処方されているのを目にします(婦人科で処方されていることもあります)。
このときの内服の仕方で、生理前だけに服用するのか日ごろから飲んでいるほうがよいのかという質問がされることがあります。

生理周期の中で排卵期が終わってから次の生理が始まるまでの間の期間を「黄体期」といいます。
生理の2週間前、つまり黄体期に症状が出る月経前気分不快症に関しては、この期間だけSSRIを飲む方がずっと飲んでいるより効果的とする報告もたしかにあります。

しかし最近のデータのまとめでは、飲み方によらず(ずっと飲んでも黄体期だけ飲んでも)効果があるとされています。

【参考文献】
Marjoribanks J, Brown J, O’Brien PM, Wyatt K. Selective serotonin reuptake inhibitors for premenstrual syndrome. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Jun 7;(6)

ジェイゾロフトの作用機序

どんな作用機序?

神経伝達物質であるセロトニンを増やし、セロトニン系神経伝達を増強します。
セロトニンが脳でどのような作用をしているのか見てみましょう。

神経伝達物質

右上の緑の枠がセロトニンです。
主に緊張の緩和、そして他の神経伝達物質と共同で衝動性や気分の制御に関わっていることがわかります。

セロトニン系の神経を強めることで緊張の緩和や衝動性・気分の制御をするのですが、ではどうやってセロトニンを増やしているのでしょうか?

通常、神経と次の神経の間で神経伝達物質「セロトニン」をやり取りをしています。
ここではイメージしやすいようにセロトニンを郵便物に例えて、次の神経の受け取り口を郵便ポストとしてみてみましょう。
抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み

実際には、すべてのセロトニンが郵便ポストに届くのではなく、一部のセロトニンは回収されています。
この絵ではヤギが回収しているイメージになっています。
抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み2

ジェイゾロフトはこのヤギ(回収業者)に働きかけます。
セロトニンの回収を抑えることでより多くのセロトニンを次の神経にお届けできます。
抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み3

このようにして大量のセロトニンが届くようになると、非生理的な状態ですのでどちらかというと副作用が目立ちます。
抗うつ剤が、飲み初めに効果より副作用が目立ってしまうのはこのためなのです。

この状態からセロトニンのポストの脱感作だつかんさが起こります。
脱感作というのはポストを一部なくしてしまうことです。

これによってセロトニンが増えても適度に届くようになり、副作用もおさまりこのころから抗うつ効果が出るようになるのです。
これを脱感作といっているわけです。
抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み4

抗うつ剤がセロトニンの回収業者を邪魔することで多くのセロトニンを届けていたのですね。

やや専門的な内容です

それでは概要がわかったところで、今のをちょっと専門的にみてみましょう。
わかりづらい場合はここから次の章に飛ばすことができます。

下の図は脳の神経が次の神経に繋がっている部分を示します。
そこではセロトニンなどの神経の伝達のための物質がやり取りされています。

SSRI作用機序

前の神経から放出されたセロトニンは次の神経に搬入され取り込まれていきます。
このときセロトニンが過剰に伝わりすぎないように一部のセロトニンを回収しています。
この回収をしているセロトニントランスポーターをジェイゾロフトが邪魔することで神経と神経の接合部(接続している部分)でのセロトニンの量を増やします。

効果がでるまでに何週間か必要なもうひとつの理由

Dr.GDr.G

ジェイゾロフトがうつに作用するまでに最低2週間はかかります
その理由について見ていきましょう!

セロトニンを受け取るポストの数が減る現象(脱感作)に関しては先に説明した通りです。
ジェイゾロフトによって急激にセロトニンが届くようになると副作用が目立ちますが、次の神経ポストが適度な数に調整される(これを脱感作といいます)ことで副作用がおさまってくるのでした。

ところがもう一つの場所でも脱感作は起こっていたのです。

実は、回収業者(先の絵ではヤギ)を邪魔することで増やしたセロトニンに反応して、自分で多くなってしまったセロトニンを感知して自己コントロールしてしまう機序もあるのです。
その自己コントロールするスイッチをオートレセプタといいます。


セロトニンオートレセプタ:セロトニンの放出を自己コントロールする


難しく言えば、セロトニン再取り込みを阻害する結果(すなわちセロトニンを回収させないようにした結果)、神経と神経の間で増えたセロトニンは、セロトニン神経のオートレセプタ(5-HT1A自己受容体)に作用し、今度は逆にセロトニンの遊離(放出)を邪魔します。(セロトニンが増えすぎていることを教えるわけですね。賢い機能!!)

セロトニンの放出が増えすぎると、セロトニンそのものの放出を自分でおさえてしまうのです。

ですから飲み始めは一時的にセロトニンが増えて、その後に自己コントロールしてしまうのであまりセロトニンが増えなくなるのです。
ところがある程度ジェイゾロフトを飲むと、このオートレセプタの脱感作だつかんさも起こり再びセロトニンが増えだすのです。

これによってセロトニン放出の抑制が解除され、やっと安定的にセロトニンが増えるのです。
それゆえ、SSRIが効果を発揮するのには数週間の投与を必要とするのです。

    <効果が出だすまでに最低2週間はかかる理由>
    それは単純にセロトニンが増えることで効果がでるわけではないからなのです。
    脱感作とよばれる現象が特定の部分で起こるのを待って抗うつ効果と副作用が弱まるのです。

    ちょっと難しいですが・・・

  1. ジェイゾロフトは神経と神経の伝達部分でセロトニンを増やす。
  2. 一時的にセロトニンがは増えても、自己コントロールでセロトニンは放出されなくなる(オートレセプタが増えたセロトニンを検出してセロトニンにブレーキをかける)。
  3. 同時に次の神経でもセロトニンのポストは調整される(セロトニン受容体の脱感作、これにより副作用は落ち着きだす)
  4. それでもしばらく(2週間以上)ジェイゾロフトを飲み続けると再度セロトニンが増えてくる(オートレセプタにも脱感作が起こる)

ジェイゾロフトの強みはセロトニンへの作用だけではない!?

Dr.GDr.G

ジェイゾロフトにはセロトニン以外に注目されているものを2つ挙げましょう。

1.σシグマ-1受容体

セロトニンについて説明しましたが他にも強みがあります。

ジェイゾロフトはセロトニンに作用するだけではなく、σシグマ-1受容体に対しても働きます。
そしてこれにより2つの効果が付与されます。


<σ-1受容体に作用することでの効果>

  1. うつ・不安の改善
  2. 脳梗塞後の機能の改善

このσシグマ-1受容体に対する効果はすべての抗うつ剤にあるわけではありません。
認められているのはSSRIではジェイゾロフトとデプロメール/ルボックスの2つです。


  • ルボックス/デプロメール(フルボキサミン)
  • ジェイゾロフト(セルトラリン)

ただしσ-1受容体への効果の強さはジェイゾロフトよりも、デプロメールのほうが強いです。
これが不安に対しての作用が強まる理由です。

2.ドパミンへの作用

セロトニンを強める作用、σ-1受容体に対する作用ともうひとつドパミンも再取り込み(回収)を邪魔して、ドパミン系も強める作用があります。
つまり見方によっては3つの側面から症状をカバーしています。

ドパミンの作用を強めることは、非定型うつ病にみられるような過眠や気力の低下に対しても有効です。

効果が出るまでにかかる時間はどのくらい?

SSRIの薬物動態

通常セロトニンの作用なら飲み始めてすぐには効果は出てきません。
でも飲み始めてすぐに不眠が改善したり、不安が軽減することを自覚する患者さんもいるのは先に説明しましたσ-1受容体シグマワンじゅようたいによる効果なのでしょう。

効果が出だすのは普通は大体2-4週間くらいかかります。
ジェイゾロフトを飲み始めると、セロトニンはすぐに神経間で増えます。
ただし飲み初めでは抗うつ効果よりも先に副作用が目立ってしまいます

まずセロトニンを受け取る次の神経のセロトニンの受け取り口(受容体)の数は減って調整されます。
これによって副作用は次第におさまってきます。

同時に上記で説明しましたセロトニンオートレセプタによる作用で、前の神経から放出されるセロトニンにブレーキがかかってしまいいます。(このままでは副作用はおさまっても抗うつ作用がでてきません)
このオートレセプタによるセロトニン放出の自己ブレーキはお薬を飲み続けるとオフになり、再度セロトニンは放出されるようになってきます。

これらの経過が起こるのを待つのでSSRIの服用が何週間も必要になるのです。

それでも1.5-2か月以内に効果がでなければ、薬の量を増やすことを考えなければなりません。
また症状の再燃・再発を防ぐには、何年も飲み続けなければならないこともあります。

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ジェイゾロフトの効果

治療効果がでてきたら?

薬による治療の目標は症状が寛解かんかいすることですが、再発を防ぐことも重要な目標です。
寛解というのは、一般の病気で言う完治と同じことですが、うつ病をはじめ精神科・心療内科の病気は再発率が結構高いためにこの「寛解」という言い回しを使います。

ジェイゾロフトにより仮にほとんどの症状が軽減、消失したとしても、飲むのを止めると症状が再燃・再発しうるので、うつ症状が改善してもまだ治癒したとは言い切れません。
すべての症状が消失(寛解)する、もしくはかなり楽になるまではかなり長く飲むことも念頭に置いておきましょう。特に強迫性障害(OCD)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)では長期戦になります。

うつ病も寛解したら、最低でも4~9か月はそのままの量を維持して飲むことを日本うつ病学会のガイドラインでも推奨しています。
ですからおよそ1年は継続して飲む必要があります。

再発したうつ病の治療である場合、また不安障害に対する治療である場合には無期限に続ける必要があることもあります。

治療効果が出なかったときは?

ジェイゾロフトを十分な時間(2か月以上)、しかも最大量まで増量しても効果が全く出ないとなると、治療抵抗性の状態を考えなければなりません。
中には、飲み始めた初期は効いていたんだけど、だんだん効果がなくなって症状が悪くなってきているという例もあります。

この場合薬物療法なら他の薬との組み合わせや、非薬物療法(磁気刺激治療や認知行動療法など)を考慮します。
また、躁うつ病(双極性障害)である可能性も考えなければなりません。(この鑑別のための補助診断に光トポグラフィー検査は有用とされています。)

躁うつ病(双極性障害)といっても必ずしも躁状態(ハイテンションで気分がいい状態)が目立つわけではなく、潜在しているタイプでは色々な状態(ハイテンションまではいかないが調子が普通のとき、イライラしているとき、あきらかなうつ状態のとき)が日によって、ときには1日の中で混合しているような症状のときもあります。

ジェイゾロフト®を補強する薬の組み合わせ

病態併用するとよい薬
不眠睡眠薬、抗うつ剤のトラゾドン(レスリン®、デジレル®)
不安症状抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)。これでも十分な効果が得られないときガバペン®(ガバペンチン)などの抗てんかん薬を併用することもあります。
強迫症状アナフラニール®(クロミプラミン)など三環系抗うつ薬を追加する。
疲労感、眠気、集中できない精神刺激薬(ベタナミン®10㎎錠 -軽症うつ病、抑うつ神経症に適応あり)
躁うつ病(双極性障害)の潜在・混在気分安定薬(デパケン®、ラミクタール®)や非定型抗精神病薬

まとめ「ジェイゾロフトの効果と特徴」

ジェイゾロフトはSSRIに属する抗うつ剤です。
最初に処方される抗うつ剤「SSRI」「SNRI」「NaSSA」ではどれが一番という位置づけはないのですが、抗うつ効果や副作用の出にくさではバランスのとれた抗うつ薬です。
ただし、その効果や副作用の出方には個人差はあります。

効果が出るまでには2週間以上を要するので飲み続けないといけません。
通常SSRIはセロトニンを増強することで抗うつ効果を出しますが、ジェイゾロフトに関してはσ-1受容体やドパミンへの作用もあるためパニック障害のような不安の症状や過眠などに対して有効に作用することもあります。

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