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離脱症状は抗うつ剤を断薬・減薬(自己判断によるものが多い)したときにでるめまい、吐き気、頭痛、お腹の症状などをいいます。

通常は断薬・減薬して数日以内に症状が出始め、2週間程度でおさまりますが再度薬を飲むことで改善します。
ときに医師の指示で慎重に減薬したり、他の抗うつ剤に変更するときでさえも症状が出てしまうことがあります。

離脱症状には電気が走ったような感覚がくる独特な症状があり、医学的な用語ではありませんがネットやSNS上では「シャンビリ」という俗語があるほどです。
海外でも同じようにこの独特な症状を「brain zaps」「brain shock」などと俗語で表現しているところは「シャンビリ」と同様この感覚がやはり特徴的なことを示すのだと思います。。

ここでは離脱症状の頻度も高いことで有名なパキシル(パロキセチン、パキシルCR含む)について、離脱症状とその対処法について説明していきたいと思います。

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離脱症状とは

離脱症状というのは、抗うつ薬を減薬・断薬したときに出てしまう症状です。
一般的には急激な中断がそのリスクを高めますが、ゆっくり減らしているときにもみられることがあります。

具体的には、約2か月以上抗うつ薬を飲み続けている状態から、急激に抗うつ剤が体から抜けてしまうと20%くらいの人に、多くは中断後3日以内(早ければ数時間以内という報告もあります)に症状があらわれます。
逆に抗うつ剤を飲んでいる期間が1.5~2か月以内では離脱症状が起こることはまれです。

原因となる抗うつ剤として、SSRIは最も有名でWikipediaでも「SSRI離脱症候群」という言葉があるほどです。
SSRIを飲み始めて1週間以内に副作用が目立った症例では、特に離脱症状が起こりやすいといわれています。
パキシル(パロキセチン)はそのSSRIに分類される抗うつ剤です。

SSRIに限らず、その他SNRI(サインバルタや日本での新薬であるイフェクサー)、三環系抗うつ薬、トラゾドン(デジレル、レスリン)など様々な種類の抗うつ剤でも離脱症状の報告があります。

もう1点注意したいこととして、他の抗うつ剤(ジェネリック薬品も含む)に変更するときにも離脱症状が起こることが報告されています。
注目すべきは、本家のパキシル(グラクソ・スミスクライン社製)からジェネリック医薬品のパロキセチンに変更したときでも起こりうるのです。
パロキセチンという薬効成分は全く同じですが、ジェネリックとは薬のコーティングが違ったりするので身体の中での微妙な違いがあるのでしょうか。
添付文書的には本家と比較して薬の濃度の上がり方や代謝される時間は差がないようなデータにはなってはいますが・・・。
ちなみにパキシルCR錠は本家のグラクソ・スミスクライン社から出ていますが、こちらは溶け出していくスピードがさらに調整されゆっくりになったものです。

違う薬に変更したときは、医師から「もとの薬からスイッチした新しい方の抗うつ剤の副作用でしょう」と言われたり、またジェネリックに変えたときは「再発・再燃かもしれないです」と誤認されやすいので注意が必要です。

自身でも離脱症状の知識がないと、勝手に薬を止めていた場合はとくに主治医に言いにくいところもあるでしょうし、「うつの再発でしょうか?」と医師に聞いてしまえばそうとらえられてしまう可能性すらあるのです。

離脱症状による主な症状

  • めまい
  • 筋力低下
  • 吐き気
  • 頭痛
  • 抑うつ
  • 不安
  • 不眠
  • 集中力低下
  • インフルエンザ様の症状
  • 知覚異常

症状は多彩で、薬を急にやめたり減らしているときに起こるので、うつ病が再燃したかのようにも見えてしまいます。
区別がつきにくい時もありますが、症状の中でうつ病の再発と明らかに違う症状があります。
それは通称「シャンビリ」と呼ばれる症状です。

「知覚異常」と書きましたが、電気が走ったような感覚に襲われることがあります。
ネット上では、この電気ショックのような「ビリビリ」した感覚と、シャンシャンとした耳鳴りを合わせて「シャンビリ」という表現が多々見られます。
これについては後述します。

離脱症状が起こってしまう理由

離脱症状といえばアルコールや覚せい剤などではよく耳にすると思いますが、抗うつ剤も脳をはじめ中枢神経に作用する薬なので、これらと同じように身体依存ができあがってしまうのでしょうか?

もちろん抗うつ剤にはアルコールや覚せい剤のように「ないと欲しくなってしまう」ような精神依存はありません。
抗うつ剤は一般的には依存性のない薬とされてはいますが、これはいわゆる中毒性のあるもの(アルコール、覚せい剤、たばこ)と処方された薬とは一線を画しているという意味なのでしょう。
それでも抗うつ剤をやめたときに離脱症状がでることがあるわけですから、これは依存なのかそうでないのかどうとらえるかは難しいものです。

この「離脱症状」という言いまわしは、英語ではどのように表現されているかというと、依存性物質のアルコール離脱症候群で使用される「withdrawal」という単語ではなく、抗うつ剤をやめたときの症状では「discontinuation; 中止」を使用して「discontinuation syndrome; 中止後発現症状」という言いまわしになっています。
やはり依存とは違うという意味合いが強くなっていそうですね。
日本語でわざわざ中止後発現症状と言っているのはあまり耳にしませんが、厳密に依存物質と区別するならこちらが正しいようです。

ところで離脱症状は「どれくらいの期間内服していたか」と抗うつ剤の「半減期」が関連します。

半減期」というのはなにか説明します。
抗うつ剤の濃度が薬を飲んで最高の濃度に達した後、半分の濃度に減ってしまうまでの時間です。
つまりどれくらいで薬の成分が弱くなってくるかという時間の指標ですね。
これが短いと、体内の変動が激しく離脱症状を起こしやすい要因になります。
以下に抗うつ剤の半減期一覧を示します。

抗うつ剤半減期(hr)抗うつ剤半減期(hr)
三環系四環系
アナフラニール21テトラミド18
ノリトレン27ルジオミール
マプロチリン
46
トリプタノール
アミトリプチリン
20-40テシプール
セチプチリン
24
アモキサン8NaSSA
トフラニール
イミドール
9-20レメロン
リフレックス
32
SSRISNRI
パキシル
パロキセチン
14トレドミン8.2
パキシルCR20サインバルタ10.6
ジェイゾロフト
セルトラリン
26イフェクサーSR3-13
レクサプロ30その他
デプロメール
ルボックス
フルボキサミン
8.9レスリン
デジレル
6-7
ドグマチール
スルピリド
8
【参考】今日の治療薬2016(南江堂), Christopher H, et al. Am Fam Physician. 2006 Aug 1;74(3):449-56.

SSRIのところに分類されるパキシル(パロキセチン)の半減期は14時間と比較的短めですので、この点においても他の抗うつ剤と比較して離脱症状の頻度は多いとされているのです。

ちなみに身体の中でのお薬の変化をゆっくりにするために改良されたパキシルCR錠でも半減期は20時間です。
CRといえど吸収がゆっくりになるだけで半減期が劇的に伸びるというわけではありません。

その他、年齢や性別、もともと何の疾患だったかは関係なく、離脱症状が起こる決定的な理由はいまだわかっていません。
とはいえ、薬が急に身体からなくなってしまう反動であることはイメージしやすいと思います。
これだけでも十分かと思いますがもう少し詳しい説明をしておきましょう。
難しければ飛ばしてください。

離脱症状が起こる原因の仮説

現在のところ離脱症状が起こる原因の有力な説は「セロトニン受容体の脱感作」が考えられています。
セロトニンは聞いたことあるけど、「受容体って?」「脱感作って何?」となってしまいますね。
ここをわかりやすく説明していきましょう!

ひとことで簡単に説明するなら、「せっかく身体が薬になれてきたところなのに急になくなるなよ!」ってことなのです。

一般に抗うつ剤は、飲んですぐに効果がでないことは処方された最初に主治医から聞いていると思いますが、通常は飲み始めて2週間くらいして抗うつ効果が出始めます。
ではなぜタイムラグがあるのでしょうか?

まず大前提をお話します。


パキシル(パロキセチン)をはじめSSRIの作用機序は神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつであるセロトニンを強めることにあります


どのようにセロトニンを強めるかと言えば、神経と次の神経との間でセロトニンという物質を介して行います。
最初の神経が、次の神経にセロトニンをお届けしますが、次の神経にはセロトニンを受け取るポストがいっぱいあるので、そのどれかに届ければいいのです。

荷物:セロトニン

同時に、最初の神経にはセロトニンをリサイクルする業者もいてポストに届けようと思ったらリサイクルで回収されてしまうこともあります。
つまりすべてのセロトニンをポストにお届けできません。

リサイクル業者:ヤギ

抗うつ剤はこのリサイクル業者を働かせなくさせます。
これによって多くのセロトニンを次の神経のポストにお届けすることができるわけです。

しかし、最初の段階では抗うつ効果よりもセロトニンがたくさん届けられることによる副作用の方が目立ってしまいます。

たくさんセロトニンが届けられて次の神経もびっくりするのか、身体も対抗してポストを徐々に減らし始めます。
これでダイレクトメールが届きにくくなったでしょうってことですね。

このようにして、過度なセロトニン受取りによる副作用を減らし、適度にセロトニンを増やすことに成功します。
こうなって初めて抗うつ剤による効果が出だして副作用がおさまるのです。
身体がセロトニンがたくさん来る環境にうまく適応するわけですね。

この一連の流れはこのように言い換えられます。


セロトニンを受け取るポスト=セロトニン受容体

時間をかけてポストの数を減らしていくこと・慣れていくこと=セロトニン受容体の脱感作


つまり離脱症状が起こる原因は、抗うつ薬をある程度の期間飲んでポストを減らした状態、すなわちセロトニン受容体の脱感作を起こさせた状態にしておきながら、抗うつ薬がなくなりセロトニンそのものも減ると、お届け物(セロトニン)が減り、それだけならまだしも、さらにポストも少なくなった状態(セロトニン受容体の脱感作)でありダブルパンチになることが問題なのです。
これでは過度にセロトニンが作用しなくなりすぎてしまうのです。

よく空港などで動く歩道(水平なエスカレーター)がありますが、あれの上を歩いているところから降りると「うわーっ」て前につんのめりそうになりますよね。
あれも動く歩道に身体が慣れた状態からの離脱によって一瞬だけおこるわけです。
まあだいぶ意味は違いますが、体は適応するってことです。

その他、セロトニン以外のお話をします。
特に抗うつ剤の中では三環系抗うつ薬が抗コリン作用は強く、抗コリン作用の反動も離脱症状には大きく関連していると考えられています。
抗コリン作用の反動としてはパーキンソン症状などの運動系の障害が目立ちます。
パキシル(パロキセチン)も抗コリン作用を持ちますので反動性のパーキンソン症状を認めることもあります。

また抗うつ剤は肝臓で代謝される(薬が分解される)という点からも離脱症状をみることができます。
特に離脱症状の頻度が高いパキシル(パロキセチン)では、強力な代謝酵素の阻害作用があります。
どういうことかというと、パキシル自身は肝臓の酵素で分解されるけど、その分解する酵素も邪魔するということです。
つまりパキシルを飲んでいることは、その有効な成分も落としにくくする作用が一緒にあるということですね。
(それでも半減期は短いですが・・・。)
パキシルをやめるということは、分解酵素を邪魔できなくなることでもあるので、理論的にはパキシルが抜けていくスピードがだんだん上昇していくイメージです。

専門的に言えば、パキシルの濃度が下がりこれまで邪魔していた肝臓の酵素の機能が戻って、急激に代謝酵素の活性を戻すことは、急激に抗うつ薬の成分を体から代謝して抜けさせてしまうことになります。

これはなんとなく離脱症状を起こしそうな感覚ですよね。

パキシル(パロキセチン)は以下の点から離脱症状を起こしやすい

  1. 半減期が短い
  2. 薬を分解する酵素への作用ももっており、やめると急激に身体から抜けやすい
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「いつまで続く?」離脱症状の対処法

通常、症状は重度まではいかないことが多いので早ければ1週間から2週間程度でおさまります。(仕組みでいうならポストがもとに戻れば、すなわち「セロトニン受容体の脱感作が戻れば」ということになります)
また、再度抗うつ剤を内服すれば症状は速やかに改善します。(慣れていた環境に戻してあげるという意味です)

とはいえ離脱症状は重度でなかったとしても本人の不快感は強く、仕事や学校を休まなければいけないこともありますし、ときに入院が必要になることもあります。

離脱症状を起こしやすい状況

特に慎重に減薬していかなければならない状況を確認しておきましょう。

  • 半減期の短い抗うつ剤を飲んでいる
  • 抗コリン作用の強い抗うつ薬(三環系抗うつ薬、SSRI)である
  • 2か月以上続けて抗うつ剤を飲んでいる
  • 抗うつ剤を飲み始めて不安や焦燥感が強くなった
  • 他に抗精神病薬を併用している
  • 若年者(子供や未成年者)
  • 離脱症状を過去に起こしたことがある

対処法1:減薬スピードはゆっくりと

基本は急な減薬・断薬をしないことです。
最低でも1ヶ月かけて薬を止めていくのが無難です。
とはいえゆっくりであっても離脱症状を完全に防げるわけではありません。
ひとたび離脱症状がでるようであればすぐに元の量に戻しましょう。

対処法2:半減期が長い薬に変更してもらう

減薬がなかなか離脱症状によってうまくいかないようであれば、半減期が長い薬にスイッチして変更するのも手です。

ただし、いくら抗うつ剤どうしでも薬のスイッチは離脱症状のリスクを上げます。
ですからA薬からB薬にぱっと切り替えると、A薬とB薬で半減期や代謝のされ方が違ってこれによって離脱症状が起こることもあります。
場合によってA薬は一旦そのままで、B薬を徐々に増やしていきながら時間をかけてA薬を減らしそこからB薬の減薬を考慮するなど、手間がかかりますがこのように徐々にスイッチしてから減薬するのも1つの方法です。

対処法:パキシルではどうか?

時間をかけて減らすのが大原則です。
特に、パキシル(パロキセチン)を飲み始めてすぐに副作用が目立った例では、効率に離脱症状を起こしますので注意が必要です。
もし断薬したり減薬して症状が出ている場合は、まずいったん再開して離脱症状をおさえましょう。

パキシルに関しては離脱症状をおきにくくするために2つの視点があります。
1つはパキシルCR錠を使用することです。
通常のパキシルと違いCRは半減期も長いのです。
ただし、CR錠は吸収をゆっくりにする作用であって、離脱症状を劇的に軽減させるものではありません。

もうひとつは5㎎錠をうまく利用して減薬すること。(5㎎錠はCRにはありません。)
パキシル錠・パロキセチン錠には10㎎、20㎎の他、現在5㎎の製剤があります。
これをうまく利用して、例えば40㎎から30㎎にいっきに10㎎減らすのではなく、35㎎を経て30㎎まで落とすというようにするのがいいでしょう。

あとはもちろん離脱症状を起こしにくい抗うつ薬への変更も選択肢になります。

離脱症状はうつ病の再発と区別が必要

抑うつ、不安、食欲の変化、吐き気、不快などはうつ病と同様な症状です。
しかし、薬をやめて数日以内に症状がでたり、特有のシャンビリが見られたり、再度薬を飲むことですぐに症状が軽くなったりするようであれば離脱症状と考えます。

うつ病の再燃であれば通常薬をやめて2,3週間後から症状がみられ徐々に増悪していきますので、離脱症状のように即座に増悪することは考えにくいでしょう。

もし自己中断して症状に悩んでいるようなら、疑わしくは再開することをおすすめします
医師の指示に従いつつ減薬したり変更して症状がでたときは一旦もとにもどして主治医に相談しましょう。

決して再発したのかもと落胆はしないようにしましょう!
落ち着いて対応することが肝心です。
このままやめられないかもという不安も出るかもしれませんが、さらにゆっくり減薬したり他の半減期の長い薬にスイッチして減薬するなど時間はかかりますが他にも手はあります。

離脱症状後にも続く症状がある?

ここはややトピックス的な内容で議論の余地はありますが、一応説明しておきます。

通常、抗うつ剤の離脱症状といえば上記の通り抗うつ剤をやめて数日くらいででる症状で通常は2週間程度で、長くても2か月くらいでおさまるものをいいます。

ところが、抗うつ剤をやめてから1ヶ月以上して症状が出現してくる持続性の離脱後症候群(原文ではpersistent postwithdrawal symptoms)が報告されています。
薬をやめた後で、しかも数か月たってからの症状の出現になりますので、患者さんは医療機関にも受診していないことも多いようで、正確に把握することは難しいので論文も患者さんが抗うつ薬をやめたあとに悩んでいるセルフレポートをGoogleで検索してのリサーチになっています。

それによると、ほとんどがSSRIによるものでしたが、やはりシャンビリのことは共通して書かれています。
中止してすぐに出始めた人、2週間くらいしてからこの症状が出た人・・・。
ちなみにこの文献で紹介されている中にパキシル(パロキセチン)は含まれています。

その他、睡眠障害、頭痛、不安発作、パニック発作、抑うつ症状、指先の異常な感覚などを訴えていますが通常の離脱症状と違うのは数か月から数年も続いていることです。

これが単なるうつや不安発作の再発なのか(患者さん本人たちはもともとこうではなかったと言っています)、本当に離脱症状の後の薬の後遺症状なのか、不明点は多々ありますが遅れて症状が出てしかも比較的長く続くことはあるようです。

「抗うつ剤の離脱症状」まとめ

  1. 離脱症状は抗うつ薬を減薬・断薬、ときに薬の変更をしたときに出てしまう症状
  2. 離脱症状はまだ正確な機序はわかっていないものの、急激なセロトニンをはじめとした神経伝達物質の変化に身体が対応しきれないことによると考えられる
  3. それゆえ離脱症状は薬の半減期と関連している
  4. 離脱症状は2週間(長くても6週間)程度で落ち着くが、抗うつ剤を再開すればすみやかにおさまる
  5. 離脱症状を起こさないために、断薬を勝手にしないことはもちろん、減薬のときもゆっくり行うことが重要
  6. 離脱症状はときにうつ病や不安症状の再発と勘違いしやすいが、薬をやめてすぐに症状がでたり、薬をもどせばすみやかに改善するという特徴がうつ病の再発との違いである
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