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レメロンは太る?

「抗うつ剤 = 太る」というイメージは多くの患者さんが持たれていると思います。
実際「薬を飲みはじめて1年で10㎏以上太った!」という方もいます。

うつ病と診断されて最初に処方されるお薬には、副作用で飲めなくなってしまうことの少ない「SSRI」「SNRI」「NaSSAナッサの3種類があります。
これらを新規抗うつ薬と呼びますが、いずれの抗うつ薬も程度の差はあれ「太る」副作用があります。

レメロン錠はこれらの中で「NaSSA」に分類され、この新規抗うつ薬の中では最も太りやすいお薬と言えます。
ここではレメロンと体重増加について解説していきましょう。


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レメロン錠を飲んで「太る」頻度はどれくらい?

レメロン錠の添付文書(インタビューフォーム)によると、日本の承認に関する審査での体重増加の副作用報告は10.3%という高い頻度で起こることが報告されています。

また国内臨床試験の解析で理由は明確ではないものの男女差もあることが示されました。
実際に太ることや食欲が亢進してしまう割合は男性の二倍以上とされています。

つまり女性はレメロンを飲むと結構な確率で太るリスクがあるのです。

「太る」副作用の他剤との比較

抗うつ剤すべての中でみると、特に太るのは三環系抗うつ薬に分類されるトリプタノール・アナフラニールと、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)に分類されるレメロン・リフレックスです。


「NaSSA、三環系抗うつ薬 > SSRI、SNRI」

<太るという副作用頻度が特に高い抗うつ剤>

  • 三環系抗うつ薬(トリプタノール、アナフラニール)
  • NaSSA(レメロン・リフレックス)

現在多くの患者さんは新規抗うつ薬(SSRI・SNRI・NaSSA)を飲んでいることがほとんどです。

日本では1999年にSSRIが、2000年にSNRIがそしてレメロン(NaSSA)は2009年に登場しましたが、それ以前には三環系抗うつ薬などがうつ病治療の主流でした。

三環系抗うつ薬は副作用の頻度が高いので飲み続けることは容易なことではなかったのです。
そしてもちろん太ったわけですね。

その三環系抗うつ薬である「トリプタノール」というお薬と、この新規抗うつ薬の一つ「NaSSA(レメロン)」とを比較した研究があります。
それぞれのお薬を5か月間飲むと、レメロンを飲んだ13%の人に体重増加を認めたのです。

一方、三環系抗うつ薬「トリプタノール」では22%とレメロンよりもその頻度が高いばかりか、その他の副作用も多数認めたのです。
このデータも示す通りやはり三環系抗うつ薬は副作用が出やすいのですね。

【参考文献】
Montgomery SA, et al. Mirtazapine versus amitriptyline in the long-term treatment of depression: a double-blind placebo-controlled study. Int Clin Psychopharmacol. 1998 Mar;13(2):63-73.

一覧表に示してみましょう。

抗うつ剤体重増加抗うつ剤体重増加
SSRI三環系
ルボックス
デプロメール
フルボキサミン
+-トリプタノール
アミトリプチリン
+++
パキシル
パロキセチン
+トフラニール
イミドール
++
ジェイゾロフト
セルトラリン
+-アナフラニール++
レクサプロ+-ノリトレン+
SNRIアモキサン+
トレドミン+-四環系
サインバルタ+-テトラミド+
イフェクサー+ルジオミール++
NaSSAその他
リフレックス
レメロン
++デジレル
レスリン
+-
ドグマチール
スルピリド
+-
「今日の治療薬」より(一部改変)

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レメロンで太る薬理機序

まず一般的に抗うつ剤によって太ってしまう理由について説明しましょう。

動物実験でもわかっていますが、抗うつ剤をラットに投与するだけでは体重は増えません。

実は「食欲」と「脂肪の代謝」が関わっているのです。
つまり太るためには食事でカロリーをとるということも必要ということです。

具体的には以下の4つの要因があります。


  1. セロトニンやヒスタミンなど神経伝達物質やホルモンへの作用
  2. 活動量が下がり(鎮静作用)カロリー消費量が下がる
  3. 食事の嗜好が変わる
  4. 口が渇くために飴や甘い飲み物を飲んだり食べたりしてしまう

1の神経伝達物質に関してですが、「セロトニン」「ヒスタミン」と「レプチン」という3つのキーワードが関連します。
どれも「食欲」と「脂肪の代謝」に関わる神経伝達物質です。
これらにお薬が作用してしまうので「太る」というわけです。

食欲は増えて、しかも脂肪は代謝されにくくなるのですね。

ここからは詳細な機序を説明します。
少し難しい内容なので、スキップする場合はこちらをクリックして「副作用の対処法」へ飛ぶことができます。

神経ヒスタミンには抗肥満作用、すなわち太りにくい作用があります。
具体的にはヒスタミンによって食欲の抑制や脂肪の分解を促すわけです。

食欲が抑えられることと、脂肪分解促進にはヒスタミンという神経伝達物質が関わっているのです。

そしてレプチンも食欲を抑える方向に働く脂肪で作られるホルモンで、具体的には上記の神経ヒスタミンを助ける働きです。


ヒスタミン(H1):抗肥満作用(食欲を抑える、脂肪の分解を促す)のある神経系の神経伝達物質
レプチン:食欲を抑えるホルモン


つまりヒスタミンをブロックすると食欲は出てしまいますし、脂肪の分解も悪くなり太ってしまうわけです。
(厳密にはヒスタミン自身が食欲に作用するというよりは、胃で多く分泌される強力な食欲増進ホルモン「グレリン」をヒスタミンによって増やしてしまうことが太りやすさと関連しています。)

ちなみにここで言っている「ヒスタミン」は胃薬で有名なガスターがブロックしているヒスタミン(H2)ではなく、神経ヒスタミン(H1)ですから胃薬のヒスタミンブロックで太る心配はありません。

さて抗うつ剤に話を戻しますと、抗うつ剤によってモノアミン(セロトニン、アドレナリン、ヒスタミン、ドパミン、ムスカリンなど)に作用します。
もうお気づきかと思いますが、この中に「ヒスタミン」いうワードが入っていますね。

太りやすい抗うつ剤である三環系抗うつ薬やNaSSA(レメロン・リフレックス)は特にヒスタミン(H1)をブロックする作用が強いのが特徴で、ヒスタミンが抑えられて食欲が出てしまい、脂肪の代謝も抑えてしまうのです。
(実はこの2種類の抗うつ薬が他より太りやすいのは、他に抗肥満作用をもつアディポネクチンを抑えることも関連しますがここでは省略します。)

一方、神経伝達物質の「セロトニン」に注目してみましょう。
レメロンはNaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)という名の通り、セロトニンを増強するお薬です。
ただ「特異的セロトニン作動性」というところがポイントです。

神経から次の神経にセロトニンという物質を介して伝達するので、イメージとしてはポストにセロトニンという荷物を届けてくるイメージです。

そしてセロトニンのポストは脳にだけではなく消化管など全身の神経に存在し、さらにマンションのように部屋番号が振り分けられており、その部屋のどこにセロトニンが届くかで作用が異なります。

「太る」副作用は主にセロトニンの「2c」番の部屋に関連します。

「セロトニン2c」の部屋(5HT2c受容体)は食欲を抑える働きをもつ作用です。
具体的にはレプチン(食欲抑制ホルモン)を上昇させることで食欲をおさえます

そしてレメロンはこのセロトニン2cの受け取り口をブロックします。
レメロンが「特異的セロトニン作動性」なのは、他の抗うつ剤のようにすべてのセロトニンを増強するのではなく、セロトニン1Aの受け取り口にだけたくさんセロトニンをお届するように作用するという意味で「特異的」なんですね。

リフレックス・レメロンの作用機序

セロトニン1A以外の2番や3番の受け取り口はブロックして、その分セロトニン1Aに多くを届けて抗うつ作用を出すのがこのお薬の機序です。
セロトニン2cの直接ブロックが食欲増進につながるということですね。

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レメロンで太ってしまったら?

ここまでで抗うつ剤によって太る理由は食欲増進脂肪の代謝が落ちてしまうことが原因であるのがおわかり頂けたと思います。

しかもその原因は、セロトニン、神経ヒスタミンなどの神経伝達物質、レプチン・グレリンなど食欲を調整するホルモンも関連しているので、どうにも自身の意識で抵抗できるものではないのです。

そして抗うつ剤だけで勝手に太るわけではなく、食事の摂取が増えることが一因になるのです。
また、脂肪の代謝が落ちるので、いつもと同じ摂取カロリーであっても、もしかしたら太りやすい体質になっていることは知っておかなければなりません。

それでは対処法を見ていきましょう。

1.レメロンから他剤へ変更する

レメロンはそもそも太りやすいお薬です。

逆に同じ抗うつ薬でもSSRIやSNRIは飲み初め初期の数か月は逆に痩せることすらあります。
長期的には体重は増えていくことが多いですが、その度合はレメロンよりは低いです。

とにかくレメロン(NaSSA)という抗うつ薬は太るため、どうしても体重が問題であるならば変更するしかありません。

医療者側は体重増加しても糖尿病や高血圧が目立たなければ、見た目的な美容の観点の問題では太ってきていること気付いていないときもありますので、もし気になれば自分から言うことも大切です。

うつ病に併発して摂食障害を認めることがあります。
衝動の発散として過食がみられるときは、抗うつ薬の太る副作用というよりアクチベーションシンドロームの可能性もあります。
アクチベーションシンドロームは、要は活性化された状態で過食になったり、不眠になったり、攻撃性が増したりする副作用です。
このときにはうつ病と診断されていても、双極性障害(躁うつ病)が背景に潜在していることも考慮に入れ、主治医と相談の上、抗うつ剤から気分安定薬にしたほうが良いときもあります。

2.生活習慣を見直す

間食が多くなっていないか、一回の食事量が多くなっていないかは注意しましょう。
適度な運動も大事です。

筋力が落ちてしまってはこれだけで基礎代謝が落ちてしまい、薬とは無関係に太りやすい体質になってしまいます。

よく過度なダイエットをしているとあとで反動で太るのはこの基礎代謝が落ちるためかえって以前より太りやすい体質になっているのです。
筋肉は太りにくい体質に重要な要素です。

また、神経伝達物質のヒスタミンが薬でおさえられていると、脂肪の代謝が落ちているため、薬を飲む前と同じ食事量でも比較的高カロリーな食事をもともとしていた場合には、以前はあまり体重がかわらなくても薬をのんでいると太ることがあります。
飲み始めた時にはやはり日頃の食事量やカロリーに意識を払う必要があります。

よく噛むことはダイエットになる!

抗うつ剤によってヒスタミン、レプチンなどの食欲をコントロールするホルモンの働きが、中枢から変化してしまい食べ物を求めるようになってしまいますから、こうなると食欲が自分のコントロール下にはなく制御できずに太るようになってしまいます。

食事をするときに咀嚼そしゃくをしっかりすることは健康に良いことは聞いたことがあるかもしれませんが実は科学的に根拠のあるお話です。

実際、咀嚼しているときの口の中の感覚をよく脳に伝えることは、なんと神経ヒスタミンがよく作用する方向に働くのです。
神経ヒスタミンは食欲をおさえ、脂肪の代謝を上げる方向に働く作用があるので満腹感を促進させるようにはたらくのでヒスタミンをブロックする抗うつ剤の作用に対抗するには合理的なのです。

抗うつ剤を飲んでいるときこそよく噛んで食べよう!

【参考】
第124回日本医学会シンポジウム「肥満症治療のアプローチ」吉松博信

まとめ「レメロンによる『太る』副作用について」

  1. レメロンは抗うつ剤の中で最も太りやすいお薬の1つである
  2. 太ることに関連しているのはヒスタミンをブロック作用と一部のセロトニンはブロックされることによる
  3. 食欲に関するホルモンが影響するため自分の意思だけでコントロールするのはかなり難しい
  4. 太ってしまったとき、もしくは太らないための対応法は間食をしないこと・食事の摂取量を意識することが大事
  5. よく噛んで食べることで満腹感を得ることは、抗うつ剤の副作用の機序からは合理的に太ることを抑える効果がある
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