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ミルタザピン(NaSSA)の効果と副作用 -医師が教える抗うつ剤-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
ミルタザピン(NaSSA)の効果と副作用 -医師が教える抗うつ剤-

ミルタザピンは抗うつ薬の1つでNaSSAナッサという抗うつ薬の種類に分類されます。

抗うつ剤はうつ病・うつ状態、不安症状をはじめとする症状に作用するお薬です。
現在、うつ病・うつ状態に最初に処方されるお薬は「新規抗うつ剤」の中から選択されることがほとんどです。

新規抗うつ剤にはSSRI、SNRIが有名ですが最近はNaSSAナッサというお薬があり、ミルタザピンはそのNaSSAに分類されるお薬です。
ミルタザピンはお薬の成分の名前で、実際に処方されるお薬は「リフレックス錠」「レメロン錠」となります。

NaSSAはSSRI、SNRIなどとは違った機序でセロトニンやノルアドレナリンに作用するためこれらの抗うつ薬に効果がなかった場合でも反応することがあります。
しかし副作用ももちろんあり、これまたSSRIやSNRIとは少し違う副作用が目立ちます。

ここではそのNaSSAに分類される抗うつ薬「ミルタザピン」について「特徴・用法・飲み合わせ・妊娠授乳中について・作用機序」をわかりやすく解説します。
ミルタザピンの詳細な作用機序は難しいので最後に載せています。


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ミルタザピン(NaSSA)とはどんな薬?

Dr.G
まずは数ある抗うつ薬の中における位置づけについて見ていきましょう。

ミルタザピン(NaSSA)の抗うつ薬としての位置づけ

先ほどもお話ししました通り、一般的に使用される抗うつ薬の主流は「新規抗うつ薬」に分類されるお薬です。
新規抗うつ薬といっても、最新薬を示すのではありません。

日本では1999年に最初に登場したSSRIであるルボックス錠/デプロメール錠(一般名:フルボキサミンマレイン酸)以降のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、そしてミルタザピンすなわちNaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬, noradrenergic and specific serotonergic antidepressant)を指します。

新規抗うつ薬が登場した1999年以前のお薬と言えば、三環系抗うつ薬がその代表格ですが副作用が目立つため飲み続けにくいお薬だったのです。
ですから、新規抗うつ薬はうつ病治療に対する敷居を下げるのに一役買ったお薬なのです。

SSRIやSNRIが主流の中、新しい機序で作用するNaSSAが日本では2009年に登場しました。

まずはミルタザピン(NaSSA)が新規抗うつ薬に分類されているお薬の1つであることを確認しておきましょう。

<新規抗うつ薬:現在最初に処方される抗うつ薬>
SSRI:ルボックス/デプロメール(フルボキサミン)、パキシル(パロキセチン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)、レクサプロ(エスシタロプラム)
SNRI:トレドミン(ミルナシプラン)、サインバルタ(デュロキセチン)、イフェクサーSR(ベンラファキシン)
NaSSA:リフレックス/レメロン(成分名:ミルタザピン)

ミルタザピン(NaSSA)はどんな病態に有効か?

ミルタザピンは以下の症状に効果を発揮します。

  • うつ病・うつ状態
  • パニック障害
  • 全般性不安障害(GAD)
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)

日本で承認されているのは「うつ病・うつ状態」です。

ミルタザピン(NaSSA)の特徴

抗うつ薬は抗うつ効果を発揮するまでにタイムラグがあります。
SSRIやSNRIではおよそ2週間程度の時間を要しますが、ミルタザピン(NaSSA)はこれに比べて1週間程度とタイムラグは短いのが特徴です。

抗うつ効果も強く、新規抗うつ薬の抗うつ作用と副作用による飲みにくさを比較した研究でもミルタザピンの抗うつ効果は強いという結果がでています。
以下の図は、右にある薬ほど抗うつ効果が強いことを示します。
※リフレックス、レメロン=ミルタザピン

抗うつ剤の比較

ちなみに縦軸は薬の副作用による飲みにくさで、下に行くほど飲み続けにくいことを示しています。
この図で見るならミルタザピン(リフレックス、レメロン)の抗うつ効果は最も高く、飲み続けやすさで言えばSSRIのレクサプロやジェイゾロフトには劣るものの悪くはなさそうです。

ただミルタザピンの副作用はSSRIと少し違う側面もあるので場合にもよります。
もちろんこのデータが絶対的な指標として認められているわけではありませんので参考程度ですし、日本うつ病治療学会ガイドラインでは新規抗うつ薬は基本優劣なく同等の扱いになっています。

参考文献
Andrea Cipriani, et al.Comparative effi cacy and acceptability of 12 new-generationantidepressants: a multiple-treatments meta-analysis. Lancet. 2009 Feb 28;373(9665):746-58.

またSSRI、SNRIと異なる点としてミルタザピン(NaSSA)はストレスホルモンを低下させる作用が報告されています。
ストレスホルモンとは具体的にはコルチゾールというホルモンで、高ストレス状態の方ではコルチゾール濃度が高いことが知られています。

うつ病患者の唾液中のコルチゾール(ストレスホルモン)を測定してもらい、その方たちにミルタザピン(NaSSA)もしくはイフェクサーSRカプセル(SNRI)を飲んでもらって治療したとき、ミルタザピン(NaSSA)ではコルチゾールが下がるのにイフェクサー(SNRI)ではコルチゾールが変わらないという結果が出ています。
逆に、唾液中のコルチゾールが高く出ている場合にはイフェクサーを飲んでも良い結果が出なかったようです。

ここで間違えないでいただきたいのは、唾液中のコルチゾールを測定しながら薬を選択して治療することが正しいというわけではありません。
今通院しているクリニックの先生は、一度も唾液の検査していないとは思わないでください。
むしろほとんどの場合、研究目的のはずですから。

そうではなくここで言いたいことは、SSRIやSNRIで改善がなかった例でもリフレックス(NaSSA)への変更・追加で効果を示すことは十分ありうるということです。

参考文献
Scharnholz B, et al. Antidepressant treatment with mirtazapine, but not venlafaxine, lowers cortisol concentrations in saliva: a randomised open trial. Psychiatry Res. 2010 May 15;177(1-2):109-13.

次にミルタザピン(NaSSA)の副作用の観点からの特徴を挙げておきましょう。
一般に抗うつ薬の気になる副作用には以下のものが挙げられます。

  • 吐き気
  • 眠気
  • 体重増加(太る)
  • 性機能障害

SSRIやSNRIでは上記の副作用はすべて認めますが、ミルタザピン(NaSSA)では吐き気や性機能障害の副作用は基本的に出にくいのです(これについては後述します)。
そのかわり眠気と体重増加(太る)はSSRIやSNRIより目立ちます

リフレックス・レメロンの副作用比較

ミルタザピン(NaSSA)の特徴

  • 効果の出始めが1週間程度と早い
  • 抗うつ効果は強く、SSRI/SNRIと作用機序が異なり変更や追加で効果を出せる可能性がある
  • 吐き気や性機能障害は起こりづらいが、眠気や太るという副作用は目立つ

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ミルタザピン(NaSSA)の用法と飲み合わせ

ミルタザピンは成分名で、実際に処方されるお薬は「リフレックス錠」もしくは「レメロン錠」となります。
リフレックスとレメロンは同じ成分で、販売している会社が違うだけです。

用法

15mg/30mg錠の2種類があります。

1日15mgを初期量として、1日1回就寝前に飲み、1週間以上の間隔をあけながら15mgずつ増量が可能です(MAXは45mg)。

半減期といって、薬が身体に取り込まれて最大の血液中濃度になってそこから半分に代謝されて出て行ってしまうまでの時間は32時間と長く1日1回の服用が可能です。
副作用で眠気が高い頻度で出現するために、内服タイミングは基本夜(夕食後や眠る前)になります。

飲み合わせ

併用そのものが危険である「併用禁忌」と、その性質から絶対ダメではないけれど併用するなら注意しつつという「併用注意」とがあります。


<併用禁忌>
他の抗うつ剤ともこれは共通ですがエフピー(セレギリン)というパーキンソン病のお薬です。
セロトニンの急激な作用によって起こる致死的な「セロトニン症候群」を起こすリスクがあります。

<併用注意>
ミルタザピンは肝臓の代謝酵素(チトクロームP)によって代謝されます。
このチトクロームPに影響を与える他の薬とあわせてお薬を内服すると、ミルタザピンが代謝されにくくなり効果が強く出すぎたりすることがあります。

  • カルバマゼピン(テグレトール®:てんかん薬)
  • フェニトイン(アレビアチン®:てんかん薬)
  • リファンピシン(リファジン®:結核の薬)
  • シメチジン(タガメット®:H2ブロッカー、胃潰瘍の薬)

これとは別に、アルコールも併用注意です。
ミルタザピンの鎮静作用が強く出すぎて、動けなくなったり意識レベルが落ちてしまうリスクがあります。

ミルタザピンと他剤のコンボ「カリフォルニアロケット療法」

ミルタザピン(NaSSA)もSNRI(サインバルタやイフェクサーSRなど)もセロトニンとノルアドレナリン両方に作用する抗うつ剤です。
この2つを組み合わせれば強力にセロトニンとノルアドレナリンの増強を行えるだろうという考えです。

この治療法をカリフォルニアロケット療法といい、SNRIとNaSSAの組み合わせで処方されることが多いです。

ただ基本は1つの抗うつ剤で治療をはじめましょうということになっていますから、最初からカリフォルニアロケットを行うということではありません。

カリフォルニアロケットに関しての有効性は2010年に、SSRIもしくはSNRIとNaSSAの組み合わせでの治療効果が検討された論文が出ております。
これに反対する意見もあるので、併用することによる増強療法は最初の治療で上手くいかなかったときの次の一手として考えます。
つまり次善の策というわけです。

<NaSSAとSNRIの組み合わせが有効であるとする文献>
SSRIはフルオキセチン(日本では発売されていない薬)を1種類だけ飲んだ場合と、SNRI(この文献ではサインバルタではなくベンラファキシン<商品名ではイフェクサーSR>)とNaSSA、フルオキセチン(日本未発売のSSRI)とNaSSA、ブプロピオン(日本未発売の薬でノルアドレナリン・ドパミン再取り込み阻害薬)とNaSSAの4グループで比較しています。
大うつ病と診断された105名の患者さんで、6週間の経過をみた研究です。

日本で発売していない薬も多いので、要はSSRI単独か、SNRI + NaSSAとどちらが効果が出るかをみたものと認識してください。

カリフォルニアロケット療法

このグラフは横軸が時間で、縦軸がうつの状態を表しています。
うつの状態に関しては下に行くほど正常になっていると考えて見てください。
この図のオレンジの線がSNRIとNaSSAの組み合わせです。
緑のSSRI単独で飲むのに比べて、組み合わせて飲んだ人たちの方が改善しているのがわかります。

もともと1種類の抗うつ剤でうつ病を寛解できるのは約30%に対し、組み合わせることでおよそ60%近くを寛解に導くことができたのです。
気になる副作用ですが、やはりミルタザピン(NaSSA)の目立つ副作用である体重増加(太る)と、眠気が強くでてしまうようでした。

この論文では示されませんでしたが、当然セロトニンはかなり増強されますから、アクチベーションシンドローム(自殺念慮)やセロトニン症候群といった副作用にも注意が必要です。
ちなみにこの論文は二重盲検(double-blind:研究者も薬を飲む対象もお互いにどの薬の組み合わせで治療しているか分からない状態)にて行っている研究ですのでエビデンスレベルは高いと言えるでしょう。

ただ2011年に同様の研究でもっと大規模なものが行われ、単剤でも組み合わせても治療効果に差はないとする結論となりました。
これを組んで現在のガイドラインではやはり1つの抗うつ剤で治療をしましょうというのが原則となります。

参考文献

ミルタザピン(NaSSA)の副作用

最初にも示しましたが、現在よく使用される新規抗うつ剤には3種類があります。


  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
  • SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
  • NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)

このうちミルタザピンはNaSSAに分類されるお薬ということになります。
いずれの新規抗うつ薬もセロトニン、ノルアドレナリンが関連していますがこのNaSSAだけはSSRI、SNRIと副作用の特徴が少し異なります。

<リフレックスでよく認める副作用>

  1. 眠気(傾眠)
  2. 体重増加(太る)
  3. 吐き気や性機能障害は出にくい

SSRIやSNRIで問題になりやすい副作用は吐き気などお腹の症状なのですが、ミルタザピン(NaSSA)ではむしろ消化器系の副作用はなく眠気が50%以上の高い頻度で認められます
もちろん抗うつ剤全般で傾眠(眠気)の副作用は起きるのですが、ここまでの頻度で起こるのはNaSSA(リフレックス)の特徴なのです。

それもあって飲み方は就寝前に服用となっています。

また太りやすいお薬である事も知っておく必要があるでしょう。
食欲が亢進しやすいということもありますが、同じ摂取カロリーであっても脂肪がつきやすくなる特徴があります。

太るという副作用に関しても、SSRIやSNRIという別の抗うつ剤にもあるのですがこれらのお薬はむしろ内服し始めの初期の数か月はむしろ体重が落ちることがありかえって痩せる人もいます。
ミルタザピン(NaSSA)に関しては圧倒的に太ることが多いのが特徴になります。

主な副作用と危険な副作用

主な副作用

ミルタザピン(NaSSA)のよくある副作用を頻度の高い順に並べてみましょう。

  • 眠気
  • 口の渇き
  • 食欲亢進
  • 便秘
  • 体重増加(太る)
  • めまい
  • 筋肉痛
  • 悪夢を見る

抗うつ剤と言えば、吐き気や腹痛など消化管の症状が初期に出やすいのですが、ミルタザピン(NaSSA)の場合はその作用特性から消化管症状はほとんど出ません。
それどころか、他の抗うつ剤とあわせてこのお薬を飲むことで消化器系の副作用を抑えられるとも考えられます。

飲み初めに困る副作用は眠気です。
眠気が多いお薬ゆえ眠前に飲むことになっていますが、この薬が効いて睡眠の改善があると感じられる反面、「日中が眠くてしょうがない・・・」と言う場合や、ノルアドレナリンにも作用することが原因と考えられますが悪夢を見てしまうこともあります。

また、非常に太りやすいお薬でもあり、血液検査でも血中コレステロールや中性脂肪が増加していってしまうことが多いのが難点です。

抗うつ剤はしばしば性機能障害がでてしまうことで頭を悩ませますが、ミルタザピン(NaSSA)は性機能障害も起こしにくいのは利点です。

危険な副作用

網羅すると以下のようになります。

  • セロトニン症候群
  • 無顆粒球症・好中球減少症
  • けいれん発作
  • 肝機能障害
  • 不整脈

これら危険な副作用の頻度はきわめて低いですが、注目すべきは無顆粒球症むかりゅうきゅうしょう(好中球減少症)肝機能障害です。

前者の無顆粒球症とは、白血球が極端に少なくなってしまう状態でばい菌に感染しやすくなってしまいます。
風邪などの原因になるウイルスは白血球の中でも顆粒球ではなく、リンパ球と関連するので風邪をひきやすくなるというイメージではなく、より重症な肺炎などになりやすくなるのです。

無顆粒球症も肝機能障害も重篤になる前の発見が望ましく、それには採血で白血球の数や肝機能をモニタリングする必要があります。
半年に1回は採血でチェックしてもらうことを自身でもこころがけるのが良いと思います。

頻度は低いものの、突然中止したり無理な減薬時に離脱症状を起こすこともあります。


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ミルタザピン(NaSSA)と妊娠・授乳について

妊娠・授乳中の情報が不要の場合はここをクリックして次章の「ミルタザピンの作用機序」に飛ぶことができます。

ミルタザピンの妊娠中に与える影響

まず、世界的にみたミルタザピンの妊娠中における服用の基準をみてみましょう。

<FDA(米国食品医薬品局)による妊娠中使用の評価基準>

  • (カテゴリーA)ヒトでの研究で胎児への危険性は示されていない
  • (カテゴリーB)ヒトでの研究で危険を示す証拠はない
  • 【カテゴリーC】動物実験で有害作用を示したものはあるが、ヒトでの研究はない
  • (カテゴリーD)胎児への危険性が高い

カテゴリーCと分類されていますが、要は「動物実験では有害作用を示したものもあるけど、ヒトではよくわかりません」ということです。

では添付文書ではどういう扱いになっているでしょうか?
ミルタザピンは成分名ですので、実際の商品である「リフレックス錠」の添付文書で確認してみましょう。
(難しく長く書かれていますので、よくわからなければ飛ばしてください。)

<妊婦、産婦、授乳婦等への投与>
1. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。妊娠及び授乳期のラットに100mg/kg/日を経口投与(ヒトに45mgを投与したときの全身曝露量(AUC)の約2倍に相当)すると、着床後死亡率の上昇、出生児の体重増加抑制及び死亡率の増加が観察された。]

引用元:リフレックス錠添付文書

リフレックス錠(成分:ミルタザピン)の添付文書は上記のようになっており、難しく書かれていますが、要は妊娠中の服用は望ましくはないとしています。

ただこれは予想通りの添付文書の記載であってこれではどう解釈していいか困ってしまいますね。
そもそも、飲まなくてよければ飲まないにこしたことはないことはわかっていることですので、飲むとしたらどんなリスクがあるのかが重要です。

大事なことは以下のことです!!


妊娠中に抗うつ剤を「飲むこと」と「飲まないでいること」のどちらが母親・子供にメリットがあるか?


すなわち「うつ症状が強いのに、うつ病を放置して妊娠出産したときの子供への影響」と「お薬を飲むことでうつ病を治療しつつ妊娠出産したとき」と、どちらがメリットがあるのかですが、一般的にはまだわかっていません。
その症例ごとに主治医が判断しましょうというのが見解です。

ではその判断をどうしていけばいいのか、飲む側としてもそのことを知っておくほうが安心かと思いますし、このことを知って主治医と相談した方が理解も深まります。
お薬が母体と胎児に与える影響についてお話します。

ミルタザピンの母体への影響

妊娠中の抗うつ剤の使用については主に2つの問題が指摘されています。


  1. 妊娠高血圧症候群にんしんこうけつあつしょうこうぐんになりやすい
  2. 出血のリスク

1.妊娠高血圧症候群

妊娠後期に、妊娠高血圧症候群のリスクが増大する可能性がいわれています。

妊娠高血圧症候群は以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていたものです。
では妊娠中毒症がどんな状態で、妊娠において何が問題になるのか説明します。

妊娠前には高血圧がなかったのに、妊娠後期になってはじめて高血圧がでてくるものをいいます。
高血圧がそんなに問題になるのかと思うかもしれませんが、お母さんや赤ちゃんにいろいろな障害を起こすことが多いため妊娠高血圧学会が存在するぐらい重要な合併症なのです。

詳しくは「妊娠高血圧学会によるQ&A」

2.出血のリスク

出産時には、母体からの出血がつきものです。

妊娠時には、血液は薄くなる傾向がありもともと貧血気味になります。
これは生理的なので良いのですが、ミルタザピンには1%未満で血液への副作用がでてしまいこのことが母体を危険にさらす可能性があります。

具体的には貧血になったり、血小板が減ることで出血がとまりにくくなることです。

ですから出産時出血が多くなる可能性について産科の先生に相談しておきましょう(意外と他の科の薬のマイナーな副作用についてはノーマークのこともありますので念のため)。
出産後、血が止まらないというのは輸血の必要性が高まり、あまりにも重篤な場合に輸血血液の準備がなければ母体の命にもかかわる問題にもなります。

定期的な採血で見つけることができますから、十分対処することが可能かと思います(貧血や血小板が少なくなりすぎるようであれば薬を中止するなど)。

ミルタザピンの胎児・新生児への影響

抗うつ剤の胎児への悪影響については報告がありつつも否定的な意見が多いです。
ここでは3つ取り上げます。

その中で、最も影響を考えなければならないのは産まれた直後の新生児の一過性の症状でしょう。

新生児に出現する可能性のある一過性の症状がある

産まれた直後、一過性ではありますが赤ちゃんの元気がない、逆に過敏性が増して泣き止まないなどの症状がでることがあります。

呼吸が弱く呼吸を補助する必要があったり、うまく母乳が飲めなかったりすると管から栄養をしなければいけない状況になり、新生児の退院までが長引く場合があります。

その他報告があるのは、抗うつ剤の中毒作用と、産まれてから急激に抗うつ剤の成分が母親から胎盤を介してこなくなってしまったことによる離脱症状の両方で、呼吸困難、チアノーゼ、てんかん発作、嘔吐、低血糖、力が弱い、落ち着かない感じ、泣きやむことがないなどの症状がでます。

参考文献
Sie SD, et al. Maternal use of SSRIs, SNRIs and NaSSAs: practical recommendations during pregnancy and lactation. Arch Dis Child Fetal Neonatal Ed. 2012 Nov;97(6):F472-6.

その他胎児に対する影響として他の抗うつ剤を参考に考えると、奇形性や呼吸器系(新生児遷延性肺高血圧症)などが挙げられるでしょうが、今のところミルタザピンを妊娠中に内服することで著しくこのリスクがあがるということはないようです。

参考文献
Smit M, et al. Mirtazapine in pregnancy and lactation – A systematic review. Eur Neuropsychopharmacol. 2016 Jan;26(1):126-35.

もし妊娠中にうつ病が増悪すると生活の質が下がるだけでなく、早産・発育不全・低出生体重といった子供へのリスクを高めます。

参考文献
Grote NK, et al. A meta-analysis of depression during pregnancy and the risk of preterm birth, low birth weight, and intrauterine growth restriction. Arch Gen Psychiatry. 2010 Oct;67(10):1012-24.

さらに、妊娠が判明したあとも抗うつ剤を続けていた場合のうつの再発・再燃は26%であった一方、妊娠前に抗うつ薬を中止した場合には68%にも上昇したという報告もあります。

参考文献
Cohen LS, et al. Relapse of major depression during pregnancy in women who maintain or discontinue antidepressant treatment. JAMA. 2006 Feb 1;295(5):499-507.

つまり妊娠中もお薬を継続しておくことはうつの再発を防ぎ、そのことは胎児の発育にとっても良い可能性が高いのです。
母体の影響としては妊娠高血圧、出血のリスクがありますがこれはしっかりリスクコントロールできるものでもありますし、胎児に対する抗うつ剤の影響はそこまでないとする否定的な意見も多いのです。

結論として、個人的にはお薬は妊娠前に無理してまで止めることを考えるよりも、妊娠前もしくは妊娠が発覚した時点で最大限減薬をしていくことを第一にするのが現実的ではないかと考えます。

主治医の意見もあると思いますし、それでも薬がない状態で妊娠出産したいという希望が強い方もいると思うので以上のメリットデメリットを考慮していずれの選択をしても間違いではないと思います。

授乳中にミルタザピンは飲んでいいの?

こちらもまずミルタザピン(リフレックス錠)の添付文書を確認してみましょう。

<妊婦、産婦、授乳婦等への投与>
2. 授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合には、授乳を避けさせること。[動物及びヒトで乳汁中に移行することが報告されている。]

引用元:リフレックス錠添付文書

もちろん母乳中にミルタザピンは移行してしまうと考えられます。
ですから添付文書も当然避けるように書かれています。
妊娠中の服用と一緒です。

授乳中にお薬を母親が内服することで、まれに子供の落ち着かない様子が目立ったり、鎮静がかかって大人しくずっと寝ていて泣くことも極端に少なくなる様子が見られるときがあるかもしれません。
このときは薬を中止すべきか相談したほうがいいでしょう。

しかし、母親にとって出産直後はもともとうつ病になりやすい時期です。
もともとうつ病で治療歴があったり、母親の産後うつ病の可能性が高い時は授乳中でもお薬を始める(もしくは再開する)ことを考えなければなりません。

それでも薬を飲んだからと言って、絶対に母乳栄養をやめなければいけないわけではありません。
母乳の研究が進んだことで母乳栄養が粉ミルクに比べて優れている点がたくさん分かってきたのです。

感染症の予防、免疫や神経発達を促す優れた効果、また母児間の愛着形成を促す効果、その他多くの優れた点が科学的に証明されてきました。
赤ちゃんや母親にとって母乳をあげるというスキンシップはオキシトシンというホルモンを放出させ、これが母親にとっては幸せホルモンでもあるのです。
ひとたび母乳をやめてしまうと、ホルモンの変化などにより母乳を再開することは困難になります。

ここまでみるとあくまで個人的な印象ですが、ミルタザピンを内服していても原則は授乳をしていることは必ずしもリスクではないと考えています。
ただ授乳とミルタザピンの関係についての報告は数が少ないですし、それぞれのケースによるところもありますので主治医の先生とよく相談して心配のないようにしましょう(抗うつ剤はやめたくても簡単にやめれるものではありません)。


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ミルタザピン(NaSSA)の作用機序と副作用機序

不要な場合ここをクリックして「まとめ」に飛ぶことができます。

ちなみにSSRI、SNRIと作用機序は違うものの最終的にセロトニン・ノルアドレナリン増強を促進するという点では同じ方向です。

さてもうおわかりでしょうがミルタザピンはNaSSA(ノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤)と呼ばれる新規抗うつ剤の1つです。
ノルアドレナリンへの作用とセロトニンへの作用があるというのはお分かりいただけると思いますがどのようにして作用するのでしょうか。

神経伝達物質「ノルアドレナリン」と「セロトニン」は脳では以下の役割を持ちます。
神経伝達物質

神経と神経は神経伝達物質を介して情報をやり取りしています。
神経伝達

赤丸で囲った部分を拡大してみましょう。
神経伝達物質
神経伝達物質を次の神経に送っている様子がわかります。
この物質が増えることで、うつ症状を改善させます。

ではこれを郵便物をポストに届けるイメージでお話しましょう。
神経1から神経2へ運ばれます。

郵便物が神経伝達物質で、ポストが郵便物を受け取る次の神経の受け取り口、すなわち受容体じゅようたいです。

抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み

まずセロトニンについてお話しましょう。
実はセロトニンを受け取るポストは1種類ではありません。
しかも脳だけでなく消化管などのほかの臓器にも存在します。
セロトニンの受け取り口は5-HT受容体(セロトニン受容体)と呼ばれ、さらに番号が割り振られています。

セロトニン受容体の色々

ミルタザピンはこの中で1番のポストにセロトニンをできるだけ多く届けるように働きます。
具体的には2番と3番のポストを塞いでしまいます(厳密には2A/2C)。
これによって本来2番と3番に届けられるはずだったセロトニンは、その分1番に多く届けられることになります(ライバルが減るから当然ですね)。
リフレックス・レメロンの作用機序

つまりセロトニンは1番のポストに特異的に多く届けられるという「特異的セロトニン作動」をするのです。
1番のセロトニンポストは主にうつや不安に関連するのでここを増強することは重要です。


  • 2Aのブロック⇒睡眠回復(眠気強い)
  • 2Cのブロック⇒体重増加(食欲増加、脂肪代謝↓など)
  • 3のブロック⇒吐き気はでない(3は消化管にも多くあるので刺激すると吐き気がでます)

次にノルアドレナリンに話をうつしましょう。
ノルアドレナリンを郵便物として運んでいる郵便局では、郵便物であるノルアドレナリンがあまり多くなりすぎないように仕事量が調整されています。

少し難しいですが、α2自己受容体アルファツージコジュヨウタイというノルアドレナリンが多すぎないかを監視している部分があり、ここに作用します。
具体的にはミルタザピンはこのα2自己受容体を邪魔してノルアドレナリンが多くなりすぎないように仕事しているその調整できないようにしてしまいます。
すると次第にノルアドレナリンがたくさん出回り始めます。(ノルアドレナリンup)

ちなみにノルアドレナリン系の神経は、セロトニン系神経に働きかけてセロトニンを調整する作用があります。

リフレックス・レメロンの作用機序

ややこしいですが、再度セロトニンに話を戻します。
ノルアドレナリンを減らしにかかる部分をブロックしてノルアドレナリンが増えて作動すると、その効果でセロトニンの神経活動も活性化します。(セロトニンup)

さらにノルアドレナリンの時と同様、ここにもセロトニンが多くなりすぎないように監視・調整しているα2ヘテロ受容体という部分があり、ミルタザピンはなんとノルアドレナリンの監視機構だけでなくここにも作用してセロトニン量を減らさないようにします。(さらにセロトニンup)
リフレックス・レメロンの作用機序

ややこしいですが、まずノルアドレナリンを増やし、このことがセロトニンを増やすだけでなくセロトニン分泌を調整する部門を邪魔して勝手にセロトニンを増やさせます。

さらに先にも述べましたがセロトニンを受け取るポスト側でも、ミルタザピンは作用していましたね。
セロトニンの受容体側でも一部をブロックして抗うつ効果を最大限発揮する部分以外をシャットアウトすることで、効率的にかつしかるべきポストにセロトニンを運ばせます。

これがNaSSA、すなわちノルアドレナリン作動性特異的セロトニン作動性抗うつ剤たるゆえんです。

ミルタザピン(NaSSA)の副作用が起こる機序

ミルタザピン(NaSSA)は、SSRIやSNRIなど他の抗うつ剤と同様に神経伝達物質(セロトニン・ノルアドレナリン)に作用するわけですが、その作用機序が異なるため特徴が他と違うのは説明した通りです。

一般に、)以外の新規抗うつ剤では、治療作用をもたらしてほしい部位以外の脳や全身の臓器でセロトニンやノルアドレナリン(ノルエピネフリン)濃度が高まり作用してしまうことが原因と考えられます。

例えば、セロトニンが睡眠中枢で働いてしまえば不眠になりますし、腸で不必要に働いてしまえばセロトニン作用により下痢を生じます。
ノルアドレナリンによる望ましくない作用は便秘や口渇こうかつ(ドライマウス)、食欲減退、血圧上昇、尿閉にょうへいを生じてしまいます(抗コリン作用といいます)。

もちろんミルタザピン(NaSSA)も大枠はこれによって望ましくない部分でセロトニンが働いてしまうことで副作用を出すわけですが、その作用機序が他の抗うつ剤と異なるために抗うつ剤の代表的副作用である胃腸の症状を出してしまうということはありません。

この作用機序について説明していきましょう。
少し詳しい内容になりますので、機序に興味がない方はこちらをクリックして飛ばしてください。

さて、まずはミルタザピン(NaSSA)以外の新規抗うつ剤の作用の仕方を理解しましょう。

ミルタザピン(NaSSA)以外の抗うつ剤の機序

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を例に解説します。

通常、神経と次の神経の間で神経伝達物質「セロトニン」をやり取りをしています。
ここではイメージしやすいようにセロトニンを郵便物に例えて、次の神経の受け取り口を郵便受けとしてみてみましょう。
抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み

実際には、すべてのセロトニンが郵便ポストに届くのではなく、一部のセロトニンは回収されています。
このセロトニンの自己回収をセロトニントランスポーターと呼ばれる部位が行うのですが、この絵ではヤギが回収しているイメージになっています。
抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み2

すべてのSSRIの作用ポイントはこのヤギ(回収業者)です。
セロトニンの自己回収を抑えることでより多くのセロトニンを次の神経にお届けできるようになるのです。
抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み3

このようにして大量のセロトニンが届くようになると、非生理的な状態ですのでどちらかというと副作用が目立ってしまいます。
SSRIが、飲み初めに効果より副作用が目立ってしまうのはこのためなのです。

この状態からセロトニン受け取り口の脱感作だつかんさが起こります。
脱感作というのはポストを一部なくしてしまうことです。

これによってセロトニンが増えても適度に届くようになり、副作用もおさまりこのころから抗うつ効果が出るようになるのです。
これを脱感作といっているわけです。
抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み4

SSRIはセロトニンの回収業者を邪魔することで多くのセロトニンを届けていたのですね。
これをSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の「再取り込み阻害」といっているわけです。

ミルタザピン(NaSSA)の場合

続いてミルタザピン(NaSSA)の作用機序は先に説明した通りです。
ポイントはミルタザピン(NaSSA)のセロトニンの増強の仕方にあります。

簡単に言えば、セロトニンの中でも抗うつ効果に重要な部分を活かし、それ以外を切るような作用の仕方をするのです。

1番の受容体にセロトニンを届けるために2番と3番の受容体をブロックするのです(厳密には2A/2C)。
これによって本来2番と3番に届けられるはずだったセロトニンはその分1番に多く届けられることになります。

2番と3番はミルタザピン(NaSSA)以外の抗うつ剤では、そこにも多く伝達されるのにこのお薬の場合そこはカットしてしまいます。

セロトニン受容体のブロックと作用

  • 2Aのブロック⇒眠気が出やすい、性機能障害はでない
  • 2Cのブロック⇒体重増加(食欲増加、脂肪代謝↓など)
  • 3のブロック⇒吐き気はでない(3は消化管にも多くあるので刺激すると吐き気がでます)

これでおわかりいただけたと思います。
SSRIやSNRIといった抗うつ剤はとにかくセロトニンを増やすのが作用機序なのですが、ミルタザピン(NaSSA)はセロトニンそのものを増やす以外に特定のセロトニン受容体に届かなくさせることで抗うつ効果を狙います。
その特定のセロトニン受容体(5HT-2Aと2c、3受容体)をブロックすることがミルタザピン(NaSSA)の副作用の特徴につながるのです。

まとめ「ミルタザピンの効果と副作用」

ミルタザピンは、NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ剤)と呼ばれる新規抗うつ剤のひとつです。
これまでの抗うつ剤(SSRIやSNRI)と違う働き方でノルアドレナリン、セロトニンを増やす方向に働きかけるのが特徴です。

ミルタザピンは成分名で、実際に処方されるお薬は「リフレックス錠」ないしは「レメロン錠」となります。

一般に抗うつ剤は原則は併用せずに単剤で使用されるのが推奨されていますが、作用機序が異なることからSSRIやSNRI単独で効果がないときにも併用されることがあります。

副作用は吐き気や性機能障害といった他の抗うつ剤ではよく出る症状はかえって目立たないのですが、かわりに太ったり眠気が問題になることが多いのが特徴です。

通常抗うつ剤と言えば初期に困ることになるのは「吐き気」ですが、ミルタザピン(NaSSA)では眠気が強いことが問題になり逆に吐き気などの消化器症状はでにくいのです。
また、抗うつ剤で地味に問題となる性機能障害も起こしにくいのが利点です。

 

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