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この薬は良い!?パキシル錠の効果・効き目と特徴【医師が教える抗うつ剤】

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
この薬は良い!?パキシル錠の効果・効き目と特徴【医師が教える抗うつ剤】

最も有名な抗うつ剤である「パキシル錠」は、最も処方されるお薬でもあります。

うつ病と診断されたときに最初に出される抗うつ剤は「SSRI」「SNRI」「NaSSA」の3種類の中から処方されることが一般的で、パキシル(パロキセチン)はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類されるお薬です。

おそらく精神科医ではない他科の医師でもパキシルの名前を知らない人がいないほど有名です。
実際、私が研修医で外科をまわっていたときにも販売会社のグラクソスミスクライン社主催のパキシルの説明会が外科なのにカンファランス前にあるほどでした。

このパキシルが有名で最も処方されている理由は、その切れ味にあると思います。
症例によってはてきめんに効果が出ますので、効果が出たときにはすっきり良くなります。
患者さんも嬉しいですが、処方した側としてもやっぱりパキシルは効くと思うほどです。

ただ、メリットもあれば副作用や減薬のしにくさなどデメリットもあります。
ここではパキシル(パロキセチン)の効果や全体的な特徴についてをお話します。


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パキシルはどんな特徴の抗うつ剤か?

ひとことで言えばとにかく切れ味の強いお薬です。
効果は効けばてきめんに出て、しかも1日1回の内服で十分効果が得られます。
最近は微調整が可能な少量の5㎎錠やゆっくり吸収されることで吐き気の副作用を抑えられるCR錠がでています。

逆にその切れ味ゆえに、「アクチベーションシンドローム(賦活化症候群ふかつかしょうこうぐん」を起こすこともあります。
アクチベーションシンドロームとは、抗うつ剤によって意欲や気分が改善されるのではなく違う方向に活性化した状態です。
具体的には、イライラ・不安・焦燥感しょうそうかん・パニック・攻撃性・衝動性・不眠・躁状態が引き起こされ不快な症状をきたします。
アクチベーションによって躁状態になったときには一瞬完全に治った感覚にさえなりますが、その後強いうつ状態に悩まされるようになります。

また、「眠気」と「太る」という嫌な副作用減薬やお薬をやめるときに離脱症状が出やすいのも特徴です。

<メリット>

  • 切れ味が良い
  • 抗不安効果がある
  • 1日1回の内服で良い
  • 5㎎錠やゆっくり吸収されるCR錠、ジェネリックなどラインナップが多い

<デメリット(他のSSRIと比べて)>

  • 眠気がでやすい
  • 太りやすい
  • 減薬時に離脱症状がでやすい
  • 切れ味が良すぎる(アクチベーションシンドロームのリスク高め)

SSRIの中で最も処方されているのがパキシルです。
SSRIも新しい薬が出てきている中、以前よりその処方数は落としているようですが、ジェネリックと合わせて首位にあるようです。
日経メディカルオンラインにこれに関する記事がありますので見てみましょう。

日経メディカルOnlineの医師会員を対象に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のうち最も処方頻度の高いものを聞いたところ、45.7%の医師がパロキセチン(商品名パキシル他)と回答した。


(対象は有効回答数は3252人。内訳は病院勤務医2330人、診療所勤務医413人、開業医455人、その他54人。)

引用元:日経メディカルオンラインSSRI:パキシルがシェアを落とすも1位を堅持

医師の処方理由も見てみましょう。
ズバリ!パキシルの特徴でもあります。

第1位の パロキセチンを処方する理由
(商品名パキシル他)

  • 主にパキシルCR錠を処方している。パキシルは離脱症状の問題があるが、CR錠ではそれが緩和できる。(50歳代病院勤務医、精神科)
  • パキシルしか使ったことはありませんが、長期服用による重篤な肝障害を見たことがあるので、気を付けなければと思っています。(40歳代病院勤務医、呼吸器外科)
  • 処方可能となってからずいぶん経つが、目立った副作用は見られず安心感がある。(50歳代病院勤務医、循環器内科)
  • 用量を厳格に決めなくてもよいため。非専門医でも外来で処方しやすく、重篤な副作用が少ないと感じる。(70歳以上病院勤務医、一般外科)
  • 自分では積極的に使っていない。継続処方で出す場合はパキシルが多い印象。(40歳代病院勤務医、脳神経外科)
  • 切れ味が良い。しかし吐き気の副作用をよく見る。(30歳代診療所勤務医、総合診療科)

引用元:日経メディカルオンラインSSRI:パキシルがシェアを落とすも1位を堅持

全体的にやはりパキシル(パロキセチン)への効果に対する信頼感は強そうです。
たしかに副作用はSSRIの中では多い方ですが、それでも三環系抗うつ薬など古いタイプのお薬に比べれば少な目ではあります。

飲み始めの初期に吐き気は出やすいのですが、現在はゆっくり吸収されるタイプの「パキシルCR錠」もありますし、離脱症状についてはパキシル錠の5㎎(通常はパキシル錠10㎎と20㎎が使用されている)を使用すればゆっくり減薬ができるようになっています。


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パキシルはどんな病態に効くか

基本的に効果が期待できる疾患は以下の通りです。(赤字は日本で承認されているものです。)

    <効果の期待できる疾患>

  • 大うつ病
  • 強迫性障害(OCD)
  • パニック障害
  • 社交不安障害
  • 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 全般性不安障害(GAD)
  • 月経前不快気分障害(PMDD)
  • 血管運動症状(更年期障害の症状)

※パキシルCR錠は「うつ病・うつ状態」のみ

パキシルの処方の実際

抗うつ剤は一般的に効果を出すための大前提のお約束があります。


効果(副作用)を見ながら十分な量まで増やしていき、十分な期間(6~8週間)飲み続けること


そしてこれは医療者側の抗うつ薬処方に関する大前提のお約束ですが、


抗うつ薬はできるだけ単剤(1つ)で処方すること


以上をふまえたうえで処方しています。

処方例不安症状に対して
パキシル(パロキセチン)10㎎・1錠 1日1回夕食後からスタート
(パニック障害では30㎎まで、強迫性障害では50㎎まで、社会不安障害やPTSDには40㎎まで増量していく)

処方例うつ病・うつ状態に対して
パキシルCR錠 12.5㎎・1錠 1日1回夕食後からスタート
(1,2週間後25mgに増量し、様子をみながら最大50㎎まで増量していく)

パキシルCR錠は徐放製剤じょほうせいざいといってゆっくり吸収されるタイプのお薬です。
これによって吐き気など消化器系の副作用が抑えられますが、いまのところ承認は「うつ病・うつ状態」だけです。
吐き気が強く出てしまうならCR錠に変えてもらいましょう!
(あまり大きな声では言えませんが、パキシルとパキシルCRとで薬価は1円程度しか変わらないため基本CRで処方してしまっている医師は現実どれくらいいるでしょう!?)

あまりにも不安症状が強い場合や不眠がある場合には薬の効果が出だすのにタイムラグがあるため、抗うつ剤はパキシル(パロキセチン)単剤ですが抗不安薬・睡眠薬を一緒に処方されていることもあります。

どれくらいの期間で効果が発現するか

早ければ2週間後には効果を出すこともあります。
研究でも抗うつ薬の優位な効果が出だすのに6週間後からというデータもありますし、実際4か月以上を要した例もあります。

逆に飲み始めてすぐに調子がよくなってしまう場合、先にも説明しましたアクチベーションシンドローム(賦活化症候群)による躁状態の可能性もあります。
飲み始めて不安が強まったり、不眠や攻撃性が出始めるのもアクチベーションシンドロームですが、このような不快な症状と違って、(軽)躁状態に躁転した場合、その爽快感がまさかパキシルの副作用と思っていないことが多いです。
この場合、パキシルから他の抗うつ剤へ変更するか、抗うつ剤そのものから気分安定薬という違う薬に切り替える必要があります。

増量で悪くなる例もある

パキシル錠なら10㎎、パキシルCR錠なら12.5㎎からスタートして1,2週間ずつ増量しながら様子をみていくことが実際の使用方法として多いと思いますが、中には増量したところから悪くなる例もあります。
特に不安や焦燥が目立つ例があり、これがアクチベーションシンドローム(賦活化症候群)です。
アクチベーションシンドロームの特徴は増量で悪くなることにあります。
他の副作用と違って様子をみても改善しません。

増やしたのに悪くなるはずはないと思いこんでいると、これを見逃すことがあるので注意が必要です。

抗うつ剤の合わせ技「カリフォルニアロケット」って良いの?

数ある抗うつ剤の中で、最初に使用される抗うつ剤のクラスには「SSRI」「SNRI」「NaSSA」の3種類があります。
パキシル(パロキセチン)はこの中でSSRIに分類されています。


SNRI:トレドミン、サインバルタ、イフェクサーSR
NaSSA:リフレックス/レメロン


今パキシル(パロキセチン)も飲んでいるのに、リフレックス/レメロンも飲んでいるならそれがカリフォルニアロケット療法です。

いずれもセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質を増やす方向に作用するお薬ですが、NaSSAという最新のクラスのお薬は「SSRI」「SNRI」とは少し違った方向から作用します。
それなら「SSRI+NaSSA」、「SNRI+NaSSA」という合わせ技もありだろうという考えますよね。
この合わせ技を俗に「カリフォルニアロケット療法」と言うわけです。

さすがに抗うつ剤を2種類を合わせたら効くだろう!

これに関する研究の結果は、副作用(特に眠気と太るが目立つ)だけが目立つようになりメリットは少ないという結論でした。
ですから現在のスタンダードはカリフォルニアロケットではなくどれか1つ、単剤でいきましょうというのが原則になっています。
ただ、最初からではなく治療途中でパキシルにリフレックス/レメロンが加えられた場合にはうつの重症度によって考えられた処方である可能性もあるのでそのまま飲み続けることが間違いというわけではありません。
確かに、カリフォルニアロケットが単剤より抗うつ効果が優れるという報告もありますからね。

参考文献
Bobo WV, et al. Randomized comparison of selective serotonin reuptake inhibitor (escitalopram) monotherapy and antidepressant combination pharmacotherapy for major depressive disorder with melancholic features: a CO-MED report. J Affect Disord. 2011 Oct;133(3):467-76.

パキシルの副作用

抗うつ薬は全般に飲み始めの初期に副作用が出る特徴があり、一番多いのは消化器系(特に吐き気や便秘)が多いです。
ただしこれらの副作用は長くても2週間程度でおさまりますので、様子をみたり薬の量を調整したり、パキシルでしたら通常の錠剤からゆっくり吸収されるCR錠に切り替えることで対応できます。

働いている方にとって眠気の副作用はつらいですし、女性にとっては「太る」という体重増加の副作用は悩ましいところです。
実際には内服し始めた初期にはむしろ痩せることが多く、数か月後から太ることが多いです。


<主な副作用>

  • 性機能障害(射精障害、勃起不全、性欲減退、オーガズムを感じにくい)
  • 消化器系(食欲不振、吐き気、下痢、便秘、口が渇く)
  • 中枢神経系(眠気、不眠、頭痛、ふらつき)
  • 自律神経系(発汗)
  • 出血しやすい(あざができやすくなる)
  • アクチベーションシンドローム(自殺企図、躁転、不安、焦燥、不眠)

パキシル(パロキセチン)はSSRIの中では副作用は出やすい方で、特に性機能障害(射精障害、勃起不全、性欲減退、オーガズムを感じにくい)が統計的にも多いとされています。

参考文献
Gartlehner G, et al. Comparative benefits and harms of second-generation antidepressants for treating major depressive disorder: an updated meta-analysis. Ann Intern Med. 2011 Dec 6;155(11):772-85.

なお副作用の詳細は別の記事でお話します。


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パキシル(パロキセチン)と他の抗うつ剤の比較

日本で発売されているSSRIにはパキシル(パロキセチン)以外にもデプロメール/ルボックス(フルボキサミン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)、レクサプロ(エスシタロプラム)とありますが、どのSSRIが最も優れているという一致した見解はありません。
ただ、「抗うつ効果」と副作用からみた「飲み続けやすさ」とをランキングした研究はあります。

参考文献
Andrea Cipriani, et al.Comparative effi cacy and acceptability of 12 new-generationantidepressants: a multiple-treatments meta-analysis. Lancet. 2009 Feb 28;373(9665):746-58.

右上にある薬ほど抗うつ効果や飲み続けやすさに優れるという意味になります。
つまりSSRIではレクサプロやジェイゾロフト(セルトラリン)が優れるとしているのです。

患者家族
急いでパキシル(パロキセチン)からレクサプロやジェイゾロフトに変更してもらわなきゃ!
Dr.G
これだけみると確かにそう感じてしまいますし、パキシル(パロキセチン)はあまり優れない薬なのに最も処方されているという矛盾が出てきてしまいますね。

同じような抗うつ剤ランキングの別の研究では、今度はパキシル(パロキセチン)が1位で、先のランキングで上位にあったレクサプロは7位になってしまっています。

参考文献
Turner EH, et al. Selective publication of antidepressant trials and its influence on apparent efficacy. N Engl J Med. 2008 Jan 17;358(3):252-60.

実際に臨床ではパキシルの切れ味は良いと感じていますし、ゆっくり吸収されるタイプのパキシルCR錠のある今、副作用の頻度も取り立てて多いとは感じていません。
ですから現在も多く処方されているのだと思います。

そしてまた別の研究では、「パキシル(パロキセチン)」対「ジェイゾロフト(セルトラリン)」、「パキシル」対「イフェクサーSR(日本で2015年販売開始のSNRI)」、「パキシル」対「サインバルタ」のタイマン勝負で遜色そんしょくない結果となっている報告もあります。

参考文献
Gerald Gartlehner, et al. Comparative Benefits and Harms of Second-Generation Antidepressants for Treating Major Depressive Disorder: An Updated Meta-analysis. Ann Intern Med. 2011 Dec 6;155(11):772-85.

パキシルをはじめSSRIに分類されているお薬がすべて薬理学的にまったく同じ性質を持つものではないですから、同じSSRIの中でも副作用頻度や半減期などにも違いが表れています。
一緒なのは「セロトニン神経の系統を強める」ということですが、それでもその効き方には遺伝子的な個人差があるのです。

つまりこの人にはパキシルが効いたけど、この人には効かないとか副作用が目立ったなどあるわけです。
研究レベルでは、どの遺伝子タイプでパキシルが効きやすいとかある程度はわかるようですが、実際には飲んでみるまでわからないのが現実と言えそうです。

先の抗うつ剤ランキング研究は「Lancet」という権威ある雑誌に投稿された研究ですから信頼性はそれなりにあります。
ただ99%が欧米人で日本人は1%弱含まれているだけですから、日本人にこのままこのランキングが適応できるかは不明なところも多いですね。

  • 同じSSRIの中で優劣はつかない
  • 効果には個人差があり飲んでみないと分からない面もある

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パキシルの作用機序

最後にやや難しい内容かもしれませんが、パキシルの作用機序についてお話します。
パキシルはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)といっておきながら、セロトニンだけに作用するお薬ではないのが作用機序における特徴です。

パキシルの作用機序の特徴は3つあります。

1つ目は他と共通しますが、①セロトニンの神経系を強めるところです。
そして他と違う作用機序の特徴は、②抗コリン作用を持つことと、SNRIのように③ノルアドレナリン系を強める作用もあることです。

セロトニンとノルアドレナリン系を強めることが、他のSSRIのようにセロトニンだけを増強することより優れるという結論ではないのですがこのことによって利益が得られる例は存在します。
(基本セロトニンだけを強めるようなSSRIと、セロトニンとノルアドレナリンの両方を強めるSNRI・NaSSAとでは効果の差はないとされています。)
神経伝達物質

そしてさらにパキシル(パロキセチン)は、弱いながら抗コリン作用をもち、このことは落ち着かせる効果を持つということになります(これも不安に効きやすい特徴の1つ)。

より詳細な機序

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害)の再取り込み阻害について説明して終わりにしたいと思います。
基本はセロトニンを増強させる方向に働くお薬ですから、セロトニンを増やしにかかります。
ちなみにセロトニンは神経伝達物質ですから、前の神経から次の神経にセロトニンを運びます。
それはセロトニンという荷物を、次の神経ポストに配達してくる感覚です。

同時に、セロトニンの配達量を調整するために一部回収する業者もいます。

抗うつ薬はこの業者を邪魔することで配達するセロトニン量を増やすのです。

このとき大量にセロトニンが運ばれますから、体はびっくりして副作用を起こしやすくなります。
しばらく時間が経過するとたくさん運ばれるセロトニンに対して、身体はポストを減らすことでちょうどいい量のセロトニンがとどくように調整されます。

このころ、抗うつ効果もでて副作用もおさまった状態になります(専門用語で言うと「セロトニン受容体の脱感作」)。

まとめ「パキシルの効果と特徴」

現在最初に処方される抗うつ剤には「SSRI」「SNRI」「NaSSA」の3種類があります。
パキシル(パロキセチン)はこの中でSSRIに属します。
これら3種類のお薬は、薬理学的な特性の違いはあれど効果に差があるわけではなくどれが一番良いというものではありません。
効果や副作用に個人差があり、主治医の判断と使用後の様子で使い分けられていきます。

この中でパキシル(パロキセチン)は「抗うつ効果」と「抗不安作用」を持ちます。
切れ味の強さが特徴で、効果がてきめんにあらわれる場合とアクチベーションシンドロームによって不安がかえって強まったりする例とがあります。

副作用としては他のSSRIと比べて性機能障害がでやすく、この場合には他の薬剤に変更するのが良いでしょう。(なかなか言い出せない方も多いですが遠慮なく申し出てください。)

また離脱症状を起こしやすいという観点からやめにくさもありますが、現在は5㎎錠やCR錠もあるのでこれらを使用して減薬していくのが良いでしょう。

 

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