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サインバルタによる便秘

サインバルタはSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ剤です。
一般に抗うつ剤は飲み始めに副作用が起こることが多く、その中に便秘もあります。
しかも便秘の頻度は吐き気についで多く10%以上の頻度があります。

ここではサインバルタの副作用による便秘について解説したいと思います。


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サインバルタによる便秘とは

便秘とは「排便の回数が減ること」と定義されていますが、それに伴う症状(腹痛、お腹が張る、おならの回数やにおい、便が硬くて痛い)のことを指していっていることが多いでしょう。

それに便の回数が減っていれば便秘はわかりやすいのですが、便の回数はちゃんとあるのに1回の量が少なかったり、便が出た後もお腹がすっきりしないという便秘も存在するため純粋に便の回数だけでは判断できないのが実際には多々あります。

抗うつ剤には副作用が多々あり、その中でも吐き気や眠気についで問題になりやすいものに便秘があるのです。
後に詳細を書きますが、抗うつ剤の持つ抗コリン作用(自律神経のバランスを変える作用)が胃腸の動きを弱め便秘にさせるのです。

サインバルタにも抗コリン作用があり、これが便秘の原因になります。
この抗コリン作用は便秘以外にも口の渇き、尿閉(おしっこが膀胱から出てこない・出にくい)、動悸(脈が速くなる)、緑内障の増悪(眼圧が上がる)などの副作用を起こします。

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サインバルタで便秘になる理由

サインバルタはSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ剤です。

抗コリン作用(便秘を起こす作用)は現在頻繁に使用される抗うつ剤であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)では一部の薬を除いて弱めなのですが、今でも治療が困難な例に処方される古い抗うつ剤である「三環系抗うつ剤」はこの抗コリン作用が強いことが特徴です。

便秘は自律神経の機能と関連

サインバルタは三環系ではなくSNRIなのですが、SNRIにも抗コリン作用が少なからずあります。
そもそも抗コリン作用とはいったい何かなのですが、自律神経に関係します。

自律神経というと自分の意思とは無関係に働く神経です。
例えば心臓の拍動や胃腸の動き、汗や唾液などです。

心臓の動きをを自分でコントロールすることはできませんし、汗も勝手にでてきます。
胃腸の動きも意思では難しいですね。

これらの働きを支配しているのが自律神経です。
そして自律神経には交換神経と副交感神経とがありこのバランスが崩れて身体の症状がでてしまうものを自律神経失調症と言います。

副交感神経という神経は、リラックスしているときに働く神経です。
リラックスしているときは心臓の動きはゆっくりになるし、胃腸の動きは活発になり食べ物の消化は良くなるのはイメージしやすいと思います。

一方、交感神経は緊張しているときや興奮時に優位に働く神経系です。
例えばスポーツ時には心臓の動きは活発になり速く脈打つようになりますし、胃腸の動きは弱まります。

抗コリン作用に話を戻しますが、「抗コリン作用=副交感神経を抑える」という意味なのです。
つまり交換神経を優位にするので、(スポーツをしているときをイメージして)脈は速まり、胃腸の動きは抑えられ、汗が出る方向に働くのです。

コリンって何?

副交感神経の神経伝達に関連する物質を「アセチルコリン」と言います。
つまりアセチルコリンを増やせば副交感神経(リラックスしているときに強くなる神経)がよく働くようになります。

要は「抗コリン作用」とは「抗副交感神経作用」ということになります。

サインバルタと抗コリン作用

一方、交感神経(スポーツのときなど活動時に強くなる神経)の神経伝達物質は「ノルアドレナリン」です。

サインバルタは神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」を増強する抗うつ剤です。
神経伝達物質

抗うつ剤としての神経伝達物質の作用は上記のような感じですが、「ノルアドレナリン」は自律神経に対して特に交換神経の作用を強めます。
このことは逆の副交感神経の作用を弱め、結果「抗コリン作用=副交感神経を抑える作用」として働きます。

副交感神経は胃腸の動きと関連しますから、これが抑えられれば便秘になるというわけです。
これがサインバルタによる便秘のメカニズムです。

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サインバルタによる便秘の対処法

経過をみる

サインバルタに限らずほとんどの抗うつ剤で共通しますが、飲み始めの初期に副作用が目立ち1-2週間程度で副作用がおさまってくる傾向があります。
これは便秘も同様ですが、他の副作用とくらべて若干長くかかる場合もあります。
おおよそ1ヶ月程度は経過をみてみるのが良いでしょう。

以下は国内の臨床研究のデータです。
縦軸は副作用の数、横軸はサインバルタを飲み始めてからの週数です。
サインバルタカプセルによる吐き気

このグラフではシルバーの棒グラフが「便秘」の副作用を起こした人数で、「0-2」週間で最も多く認め、そこから時間の経過とともにその数は減っていることがわかると思います。

あとは基本ですが、生活習慣を見直すことや食物繊維をしっかりとることも重要です。
生活習慣に関してはうつが強い時にはわかっていてもできないことはあるかもしれませんが・・・。

サインバルタを減薬する

飲み始めてどうしても便秘が日常生活の支障になる場合(腹痛がつらい)には減薬を考えざるを得ません。

ただし、サインバルタは通常20mgカプセルを1日1回朝食後から内服スタートします。
この20mgカプセルが最小量なのでこの場合減薬はできません(カプセルを空けるのは吸収などの都合上NGです)。

減薬は増量してから便秘気味になった場合の対応法となります。

内服しはじめて1-2週間であれば問題ないですが、しばらくの期間(だいたい一か月半以上)飲んだあとに減らしたり断薬すると離脱症状を起こす可能性があるので注意を要します。
離脱症状とは抗うつ剤に共通してみられる特徴で、急に減薬したりお薬を中止することでうつや不安の症状がでたり、めまいや異常な感覚、だるさなど諸症状が出てくるものをいいます。

サインバルタから他の抗うつ剤に変える(スイッチする)

初期の投与量でひどく便秘になってしまった場合や減薬しても改善がない場合に行いますが、長く飲んでいる場合には抗うつ薬の変更時にも離脱症状がおこることがありうることを知っておきましょう。

サインバルタと同じSNRIならイフェクサーSRがありますし、SSRIの中で抗コリン作用が少ないものですとジェイゾロフトやレクサプロを通常考えます。(イフェクサーSRは量を増やせばよりノルアドレナリン量が増えるので便秘になるリスクはサインバルタより高い可能性も否定はできません。インタビューフォームによると便秘を含む腹部の不快な副作用は20%以上で認められています。)

便秘の主な原因である抗コリン作用が弱い抗うつ薬を示しておきましょう。
ただし基本どの抗うつ剤でも便秘の副作用は「0」ではありません。

  • SSRI:
  • ジェイゾロフト(セルトラリン)、レクサプロ

  • NaSSA:
  • リフレックス/レメロン

  • その他の抗うつ剤:
  • デジレル/レスリン(トラゾドン)、ドグマチール(スルピリド)

便秘薬を併用する

便秘薬とは下剤のことですが、いくつか種類があります。
ひとつは便を軟らかくして排便しやすいようにする作用のもの(機械的下剤)と、もうひとつは腸の動きを亢進させる作用(刺激性下剤)です。

下剤は基本的に副作用のない機械的下剤から使用します。
機械的下剤は便を軟らかくさせる作用のあるお薬(というより物質)です。
代表的なものに酸化マグネシウム(マグラックスなど)があります。

これで効果が薄い時は大腸刺激性の下剤が即効性もあり効果的にも有用です。
代表的なものにプルゼニド(センノシド)という錠剤がありますが、刺激することにより腸を動かすのでときに腹痛や吐き気の原因になることや、長期に連用すると効き目が落ちたりすることがあります。

同じ刺激性下剤にラキソベロン(ピコスルファートナトリウム)という目薬のような容器に入った液体のお薬やレシカルボンという坐薬ざやくもあります。

まとめ「サインバルタによる便秘と対処法」

サインバルタをはじめ抗うつ剤には便秘の副作用があります。
便秘の原因は主に自律神経機能を変化させることによります。

具体的には抗コリン作用といって副交感神経(リラックス時に優位に働き腸管の動きを亢進させる)が抑えられ交感神経が優位になることによります。

サインバルタはSNRIという抗うつ剤で、ダイレクトに抗コリン作用を起こすわけではなくセロトニンとともにノルアドレナリン系の神経伝達を強め交感神経を優位にさせ、腸管の動きを抑えます。

対処法としては経過観察で改善するのを待つか、下剤を使用することもあります。

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