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サインバルタによる眠気どうしたら?-医師が教える抗うつ剤-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
サインバルタによる眠気どうしたら?-医師が教える抗うつ剤-

抗うつ剤の中でも困りやすい副作用に眠気があります。
サインバルタの添付文書でも副作用として「傾眠」と眠気のことが記載されており、その頻度はうつ病・うつ状態に対する国内臨床試験の結果31.0%に認められており、かなりの頻度で眠気が副作用としてでてしまうことがお分かりいただけるかと思います。

抗うつ剤の1つであるSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)には、一方で不眠の副作用もあるのですが、ここではSNRIに分類されるサインバルタによる眠気とその対処法についてお話をします。


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サインバルタで眠気がでてしまう理由

サインバルタカプセルはSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ剤です。
「再取り込みってなんだろう?」と思われるかもしれませんが、「セロトニンやノルアドレナリンに作用する」というのはイメージしやすいと思います。

セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどを神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつと言いますが、これは脳をはじめ全身の神経の連絡に必要な物質で、セロトニンなどそれぞれの物質によって働きが違います。

サインバルタは神経伝達物質の中でセロトニンやノルアドレナリンが関連する神経系を強めることで賦活化ふかつか、すなわちアクティブな方向にもっていきます。
だとすると、「眠気」より「不眠」につながるイメージの方がしやすいかもしれませんが、実際には眠気の副作用が起こります。

不眠も1-5%の発生があるようですが、圧倒的に眠気の方が多いです。

ちなみにこの眠気という副作用、Web調査では抗うつ剤における最もつらい症状に挙げられています。(1位:眠気、2位:だるさ、3位:胃の不快感)

参考文献
渡邊衡一郎, 菊池俊暁. 臨床精神薬理 11:2295-2304,2008.

ではなぜサインバルタで眠気がでてしまうのか?
眠気に関しては2つの神経伝達物質が関与します。


  1. ヒスタミン(H1)
  2. ノルアドレナリン

うつと関連して有名なセロトニンという神経伝達物質に対して、セロトニンではなく別の神経伝達物質である「ヒスタミン」をブロックする作用が眠気に関与します。

そしてもう一つ眠気に関与するのは神経伝達物質「ノルアドレナリン」です。
実際にはノルアドレナリンそのものではなくノルアドレナリンを受け取るαアルファ1受容体をブロックする作用
が眠気に関与するのです。
しかしサインバルタはノルアドレナリンを増やす、つまり増強する方に作用しますからノルアドレナリンを弱める(α1受容体をブロックする)方向ではありません。
ですから逆に賦活化ふかつか(スイッチオンのこと)させてしまいそうですね。

ヒスタミンやノルアドレナリンと眠気の関係をもう少し詳しくみていきましょう!

難しければ次の章にここから飛ぶことができます。

1.ヒスタミンの作用と眠気の関係

ヒスタミンも神経伝達物質のひとつです。
先ほども述べましたが、SSRIによる眠気が起こる要因の1つはヒスタミンをブロックすることと関連します。

ヒスタミンというと、一般的には花粉症の薬や胃薬でよく聞く言葉です。
有名な胃薬「ガスター10」は「H2ブロッカー」に属する胃薬ですが、この「H」はヒスタミンのHなのです。
H2ブロックとは、ヒスタミンの2番(H2)をブロックして胃酸を抑えますということですね。

一方で、花粉症をはじめアレルギーで悪さをするヒスタミンは、H1といってヒスタミンの1番のことです。

このようにヒスタミンといっても1番とか2番とか3番とか存在する(ビタミンA、B、Cのような種類がある)のです。
胃薬(H2のブロック)は飲んでも眠くなりませんが、アレルギーの薬や風邪薬に入っている抗ヒスタミン薬(H1のブロック)は眠気がでますよね?

つまり、ヒスタミンの1番(H1)が眠気と関連しているのです。
それもそのはず、H1はアレルギー反応のような免疫に関与する以外に、脳では覚醒に関与している神経伝達物質なのです。
それゆえ、H1をブロックするとアレルギーもおさまるけど、覚醒レベルも落ちるので眠気が出てしまうのです。

それに対してヒスタミンの2番(H2)は胃で胃酸分泌に関与する神経伝達物質で、脳にもあるのですが脳での作用はまだ明らかになっていません。

2.アドレナリン受容体と眠気

神経伝達物質「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」などを受け取る神経のポストをアドレナリン受容体と言います。
アドレナリン受容体は、主に筋肉(心臓・血管・臓器)や脳、脂肪に存在しています。

アドレナリン受容体には大きくαとβに分けられ、さらにαでも細かくα1とかα2とかに分かれていきますが難しくなりすぎるので、ここでは眠気に関連するアドレナリン受容体の「α1」に注目します。

α1受容体は、血管を収縮させて血圧をあげたり、立毛筋といって鳥肌をたたせる筋肉、瞳孔を広げる筋肉に関連します。
このα1をブロックすることで有名なお薬はなんといっても血管の収縮をおさえることによる「血圧の薬」でしょう。

そしてこのα1受容体は脳でもアドレナリンやノルアドレナリンを受け取って「覚醒」に関与するのです。

三環系抗うつ薬やSSRIの一部ではこのα1をブロックすることによって眠気が誘導されますが、サインバルタはSNRIですのでノルアドレナリンが増強されこのことは眠気ではなくむしろ不眠の一要因になります。
サインバルタのようなSNRIに属する抗うつ薬はα1はむしろ刺激する方向ですから、この観点からは眠気の原因にはなりにくいお薬です。

3.ヒスタミン・アドレナリン受容体と抗うつ剤

抗うつ薬はH1やα1をブロックする作用が多少あるため眠気が出るというわけです。
しかし、サインバルタをはじめSNRIではα1をブロックする作用はないのでこの点からはブロックしてしまう薬に比べれば眠気の原因は1つ減ることになります。

抗うつ剤の中でも特にこの2つの作用、H1・α1ブロック作用の強い抗うつ剤があります。
三環系・四環系抗うつ薬」や「単環系抗うつ薬:デジレル・レスリン」、それから四環系抗うつ薬から派生したNaSSAという新しいクラスに属する「リフレックス・レメロン」などは特にH1をブロックする作用が強く、眠気の作用も強く「鎮静系の抗うつ薬」といわれます。

それに対してSSRIやSNRIなどはH1をブロックする作用はそこまで強いわけではないので「非鎮静系抗うつ薬」となるわけです。
ましてやサインバルタではα1のブロック作用もないので眠気はSSRIと比較しても弱めでしょう。

  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
  • ルボックス/デプロメール(フルボキサミン)、レクサプロ、ジェイゾロフト(セルトラリン)、パキシル(パロキセチン)

  • SNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
  • トレドミン、サインバルタ、イフェクサーSR


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サインバルタと他の抗うつ剤との眠気の比較

上記で説明した通り、抗ヒスタミン作用(ヒスタミンをブロックする作用)が強い抗うつ薬ほど眠気がでます
その他、ヒスタミン以外に覚醒に関わる神経伝達物質「ノルアドレナリン」をブロック(α1受容体をブロック)してしまう効果が強いほど眠気は出やすくなります

「三環系・四環系抗うつ薬」、「単環系抗うつ薬:デジレル・レスリン」、「NaSSA:リフレックス・レメロン(ノルアドレナリンはむしろ増強)」が睡眠作用をもたらす鎮静系の抗うつ薬です。
逆に言えば、不眠が目立つうつ病では有効に作用しますね。

SSRI、SNRI(サインバルタ)は非鎮静系ですので三環系やNaSSAに比べれば眠気の頻度も強さも低くなります。

下の図は鎮静(眠気も含む)の強さを表します。
セロトニンノル・アドレナリンへの作用と鎮静作用

右にいくほど眠気が強くなります。
上に行くほどセロトニン作用が強く、下ほどノルアドレナリン作用が強くなります。
SSRIのなかでは、左寄りにあるジェイゾロフトとレクサプロが眠気に関してはでにくい方に位置していますね。

抗うつ剤の中での眠気の強さの一覧表を載せておきます。

抗うつ剤 眠気 抗うつ剤 眠気
<SSRI> <三環系>
ルボックス
デプロメール
フルボキサミン
+ トリプタノール
アミトリプチリン
+++
パキシル
パロキセチン
+ トフラニール
イミドール
+
ジェイゾロフト
セルトラリン
+- アナフラニール +
レクサプロ +- ノリトレン +
<SNRI> アモキサン +
トレドミン +- <四環系>
サインバルタ +- テトラミド ++
イフェクサー +- ルジオミール ++
<NaSSA> <その他>
リフレックス
レメロン
++ デジレル
レスリン
++
ドグマチール
スルピリド
+-


今日の治療薬(一部改変)

サインバルタによる眠気の対処法

経過をみてみる

サインバルタに限らずほとんどの抗うつ剤で共通しますが、飲み始めの初期に副作用が目立ち1-2週間程度で副作用がおさまってくる傾向があります。
これは眠気も同様ですので2週間程度は経過をみてみるのが良いでしょう。

以下は国内の臨床研究のデータです。
縦軸は副作用の数、横軸はサインバルタを飲み始めてからの週数です。
サインバルタカプセルによる吐き気

このグラフでは青いバーが「眠気」の副作用を起こした人数で、「0-2」週間で最も多く認め、そこから時間の経過とともにその数は減っていることがわかると思います。

サインバルタの内服タイミングを変える

添付文書通り処方されればサインバルタは「1日1回朝食後」内服します。
朝1回ですが、どうしても日中の眠気が問題になる場合、夕や眠前に1回にすることもできます。

このようにするだけで日中の眠気が改善することがあります。
逆に不眠になったり悪夢をみるようになることもあるためこの場合は違う対処法を選びます。

サインバルタを減薬する

飲み始めてどうしても眠気が日常生活の支障になる場合には減薬を考えざるを得ません。
眠気が強く出て困るようであれば減薬がひとつの手になります。

ただし、サインバルタは通常20mgカプセルを1日1回朝食後から内服スタートします。
この20mgカプセルが最小量なのでこの場合減薬はできません(カプセルを空けるのは吸収などの都合上NGです)。

減薬は増量してから眠気が問題になる場合の対応法となります。

内服しはじめて1-2週間であれば問題ないですが、しばらくの期間(だいたい一か月半以上)飲んだあとに減らしたり断薬すると離脱症状を起こす可能性があるので注意を要します。
離脱症状とは抗うつ剤に共通してみられる特徴で、急に減薬したりお薬を中止することでうつや不安の症状がでたり、めまいや異常な感覚、だるさなど諸症状が出てくるものをいいます。

また、眠気はうつ病がよくなってきたころに目立つ場合もあります。
とくに長く飲んでいると睡眠が適度にとれていたとしても、あくびが多くなったり、疲労感を感じるようになったりすることもありますのでこの場合にも主治医と相談の上減薬を考えます。
この時には数か月以上内服しているはずですので、自己判断での減薬や断薬は厳禁です(離脱症状というつらい症状がでやすいのです)。

抗うつ剤では副作用(吐き気や眠気)が血液中の薬の濃度と関係なく出現したという報告もあります。
となると減薬しても改善しないかもと思うのですが、実際の臨床においては減薬によって改善が見られることが多い印象です。

参考文献
Härtter S, et al. Serum concentrations of fluvoxamine and clinical effects. A prospective open clinical trial. Pharmacopsychiatry. 1998 Sep;31(5):199-200.

サインバルタから他の抗うつ剤に変える(スイッチする)

減薬しても改善がない場合に行いますが、長く飲んでいる場合には抗うつ薬の変更時にも離脱症状がおこることがありうることを知っておきましょう。
サインバルタと同じSNRIならイフェクサーSRがありますし、SSRIの中で眠気が少ないものですとジェイゾロフトやレクサプロを通常考えます。

サインバルタがうつ状態・うつ病をメインターゲットとしていなくて主に痛みに対して処方されているときには、まだ疼痛に対して承認はありませんがイフェクサーSRという選択になるかもしれません。

サインバルタ以外の薬による可能性もある

抗うつ薬は単独で処方されていないことが多々あります。
例えば睡眠薬(特にベンゾジアゼピン系睡眠薬)や非定型抗精神病薬(エビリファイ、ジプレキサ、リスパダール、セロクエルなど)、他の抗うつ薬(三環系、NaSSAなど)があわせて処方されている場合があります。

また不眠症状が強いときには併用する抗うつ薬としてレスリン/デジレル(ジェネリック医薬品はトラゾドン)が処方されていることもありこれも眠気を誘発します。

そういった場合には、サインバルタよりもその併用している薬の副作用が怪しいでしょう。
どの薬が疑わしいか主治医の先生と相談して減薬・中断を考慮してもらいましょう。

「サインバルタの副作用による眠気」まとめ

  • 抗うつ薬による眠気の原因はヒスタミン(H1)ブロック作用による
  • サインバルタを飲み始めてすぐに眠気が出てしまった場合、飲む時間を夕や眠前に変えてみる
  • 眠気は経過をみていれば2週間程度でおさまってしまうことも多い
  • 飲み始めて時間が経ってから(1ヶ月以上)減薬をする場合は離脱症状の可能性があることから自己判断ではなく主治医と必ず相談する

 

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