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サインバルタが効かない!?減薬と断薬-医師が教える抗うつ剤-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
サインバルタが効かない!?減薬と断薬-医師が教える抗うつ剤-

抗うつ薬を十分な量かつ十分な期間飲んでもなかなか改善しないうつ病の存在があることは以前から知られています。
「もうサインバルタを結構な期間薬飲み続けているのに改善しないけど大丈夫なのか?」と思われる方がいる一方で、薬が効けば効いたで「サインバルタはいったいいつまで飲めばいいのか?」となる方もいるでしょう。

このような不安から主治医には直接聞いてみてももう少しと言われ仕方なく飲み続ける人や、自身の判断で自己調節してしまう人もいます。
しかし、抗うつ剤の減薬や断薬(中止)には注意が必要です。

当然のコメントですが、サインバルタを自身の判断で急には絶対にやめないでください

再発・再燃の可能性ももちろんなのですが、調整することによって不快な症状が起こる可能性が高まるからです。
これを薬の離脱症状と言います。

ここでは減薬するにあたっての方法や注意点を解説していきます。

もし、減薬したいのに主治医の先生は反対するからそれなら自分でと思ってもそれはやめましょう。
減薬を推奨する先生は意外といらっしゃいますのでその環境を整えて行うのが良いでしょう。
減薬可能な時期についてとなぜ自己判断でない方がよいのかその理由についても解説します。


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サインバルタカプセルの減薬・断薬で起こること

風邪薬や痛み止めなどのお薬は飲んでもせいぜい1-2週間程度で、本人も意識することなく病院に行かなくなって治療は終わることが多いでしょう。
普通なら特にそれで問題になりませんが、抗うつ剤となるとそうはいきません。
なぜならサインバルタを含むほとんどの抗うつ剤は突然の中止や、減薬スピードが急ですと離脱症状を起こしてしまうからです。

離脱症状は1度でも飲めばやめるときに症状がでる可能性があるわけではなく、ある程度の期間飲み続けるという前提があります。
具体的には、サインバルタカプセルを6週間以上飲み続けていたら減薬時に離脱症状のリスクがあることを考慮しなければいけません。

ですから、処方されたばかりであれば仮に数日でやめてしまっても、それによる離脱症状で困ることはまずないでしょう。
もし飲みだして副作用に困る場合、自己中断して次回の診察でやめたことをおっしゃってもらえれば、次の対策を打てますしやめてしまったことで問題が起こることはないでしょう。

一番気を付けなければいけないことは、風邪薬のように「もう良くなったから」と言って勝手にやめてしまうことです。
もしくは「効かないし飲んでいても仕方ない」と処方をもらわずに中断してしまうことです。
大抵は数か月飲み続けている状態でしょうから離脱症状を起こす危険性はきわめて高いのです。

またやめるつもりがなくても、処方切れには注意が必要です。
土日をはさむとお薬が完全にきれてしまい大変だったという方がいます。
たいていそういう場合は「お薬がきれたらうつ症状がでてしまって」と言いますが、それは再発ではなくて離脱症状なのでしょう。

もちろん、離脱症状だけが問題というわけではありません。

減薬・断薬をしたときに考慮しなくてはいけないことは2つです。


  1. 離脱症状
  2. うつ病など症状の再発・再燃

離脱症状は通常、サインバルタを減らしたり中断した数時間から数日以内に症状がでてきます。

抗うつ剤によって多少症状は異なるようですが、以下のような症状がでます。

<離脱症状の主な症状>

  • インフルエンザにかかったときのような症状(発熱・だるさ・節々ふしぶしの痛み)
  • 吐き気
  • 無気力
  • めまい
  • 運動の失調
  • 耳鳴り
  • 電気が走ったような感覚
  • 不安
  • イライラ
  • 不眠

シャンシャンする耳鳴りとビリっとくる電気ショックのような感覚を文字って「シャンビリ」と表現されていることもあります(医療従事者側には一般的ではないですが)。

サインバルタを減薬したり断薬してしまっていた場合には元の量に戻したり、再開すれば症状は和らぎます。
様子をみるのもひとつで、通常2週間程度で改善してきますが、中には数か月から数年にわたって苦しんでいる人もおり、結局再開しなければいけない方もいます。

離脱なのか再発なのか悩ましい症状のときもありますが、うつの再発では数日以内ではなく、2,3週間などもう少し時間が経ってから起こることも多く、さらに薬を再開してもコントロールできない場合があります。

症状によっては離脱症状なのか再発なのか区別は難しいというのが実際です。


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サインバルタの減薬(断薬)タイミングとは?

主治医の先生に確認しても「まだ続けないと」と言われてしまう・・・。
通常抗うつ剤は何を指標にいったいいつまで続ければ良いのでしょうか?

その指標としては日本うつ病学会のガイドラインで「うつ病が改善してきた時期(回復期・維持期)」の部分に示されています。

  • 早期に抗うつ薬を中止・減量することは再燃の危険性を高める
  • 欧米のガイドラインは、副作用の問題がなければ初発例の寛解後 4~9 ヵ月、またはそれ以上の期間、急性期と同用量で維持すべきとしている
  • 再発例では 2 年以上にわたる抗うつ薬の維持療法が強く勧められる
  • 抗うつ薬を減量あるいは中止する際には「中止後(中断)症候群」に注意が必要であり、緩徐に漸減することが原則となる
  • ※中止後(中断)症候群・・・離脱症状、シャンビリのこと

    引用元: 「日本うつ病学会治療ガイドライン Ⅱ.うつ病(DSM-5)/ 大うつ病性障害」 第2回改訂(2016.7.31)

    医療者向けのガイドラインなので少し難しかい内容ですが、要するに「改善した後も4~9か月はそのままの量で抗うつ剤を飲み続けましょう」ということです。
    うつ病の場合、再発率が高いですからそれを防ぐために症状がなくても良くなってもそのまま同じ量で1年近くは飲むことが必要であると示されているのです。

    さらに再発してうつを繰り返すような例には2年以上(あくまで「以上」であって具体的に何年ということはない)が推奨されています。
    海外の教科書などでは、「無期限に」と表現している本もあるくらいです。

    このことから飲み始めてから最低でも1年は必要で、長い場合いつまでということが決められない例もあるのです。

    このような維持療法の必要性は以前から言われており、私も良くなってから最低で3ヶ月、可能なら6ヶ月間は内服をしてもらい、その後に漸減していく方法を取っています。
    (※ここは医師の間でも流儀はかなり異なっているところで、これでは早いのではと考える先生もいらっしゃることと思います。)

    早く減薬・断薬した方が良いという意見もある

    通常は減薬を考慮するタイミングはゆっくりという見解で良いのですが、2011年にこれとは真逆の報告がされていますので挙げておきましょう。
    これは一つの意見であって、この報告があるから絶対というわけではありませんので注意してくださいね。

    なぜ早く減薬を開始した方が良いかと言うと「長期に抗うつ剤を飲むことによって、脳の中で過剰に修正(overcorrectオーバーコレクト)がかかって、その脳の過剰修正が次の新たなうつ病を生み出してしまう」すなわち、抗うつ剤によって新たに薬剤誘発性のうつ病ができあがる(?)というのです。

    どういうことかもう少しかみ砕いて説明しましょう。

    そもそも脳はセロトニンやドパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の調整を受けています。
    神経の働きを調整するこういった物質をモノアミンと言いますが、これらモノアミンはお互いバランスを取りながら働いているわけです。

    そこに抗うつ薬がきてセロトニンだけを過剰に修正したらそれはそれで問題でしょうと。
    仲良くやっていたところに、関係が崩れるようなことが起こるのですからね。

    もちろんそれによって抗うつ効果をだすので悪いことだけではないのですが、これを長期に続ければたくさんセロトニンのある状態が当たり前の状態になってしまうのです。
    これを脳の過剰修正といっており、これによって他の新たな問題がおこってもおかしくないという説なのです。

    この論文では抗うつ剤が投与されたケースと抗うつ剤が投与されなかったプラセボのケース(偽薬を抗うつ剤として飲んでいた人たち)との比較で、再発率が前者が42%、後者の偽薬(プラセボ)が25%であり、抗うつ剤を投与された方が圧倒的に再発率が高かったというデータを前提としています。

    もちろんこのデータもそのまま鵜呑みにはできません。
    このデータの問題は抗うつ剤をやめたあとの症状が再発なのか離脱症状なのかどう見分けているのかに疑問の余地があるのです。
    先にも説明しましたが、再発と離脱症状の見分けは現実難しいことが多いのです。

    ただこれが本当だとするなら、抗うつ薬を長期に飲む理由はうつの再発を防ぐためではなく離脱症状が起きないように飲んでいるのかもわからないですね。

    お薬をやめたときの再発が離脱と区別がつきにくいというのは、ガイドラインで根拠としてる文献にも言えることですから、そもそもうつ病学会のガイドラインの言っている長期にお薬を飲み続けた方が再発率が低いというデータすらも、離脱症状と再発とをどう区別したのか怪しいですが・・・。

    私の考えをお話しします。
    一応私も回復した後も一定期間の内服が必要という立ち位置ではあるのですが、抗うつ剤を減薬したらより症状が良くなったり(特に睡眠や不安症状に関して)することもあるので、一部では抗うつ剤が悪影響を与えていることも少なからずあると思います。
    ですので、改善してから一定期間内服した後は減薬をトライすることは大事と考えます。

    参考文献
    Paul W. Andrews, et al. Blue Again: Perturbational Effects of Antidepressants Suggest Monoaminergic Homeostasis in Major Depression. Front Psychol. 2011; 2: 159.


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    サインバルタの減薬(断薬)の実際

    <注意>自己判断での減薬はしないでください。

    断薬にむかって、減薬を試みるタイミングは2つあります。


    1. 症状が改善してから4-9か月そのまま内服を続け終えた場合
    2. 何らかの理由でサインバルタをやめる必要がある場合

    1の症状改善後も数か月間の十分な期間を置いたのであれば、これはガイドライン通りの理想の減薬タイミングです。

    2の場合ですがサインバルタが効かないか、もしくは副作用が相当するでしょう。

    抗うつ効果が期待できなかった場合には、サインバルタに加えてSSRI以外のNaSSA(リフレックス/レメロン)や三環系抗うつ薬、非定型抗精神病薬を併用するのか(増強療法)、もしくは一旦減薬して双極性障害を考慮した気分安定薬を中心とした治療に切り替えていくのかということです。

    効果はあるが副作用に困る場合には他のSNRIやSSRI(パキシル、レクサプロ、ジェイゾロフトなど)に切り替えるという手もあります。

    いずれにしてもサインバルタは漸減ぜんげん、すなわちゆっくりと減らしていく必要があります。
    例外的に内服しはじめてすぐの場合には、一気に薬を中止することが可能です。

    サインバルタの減薬は原則漸減ぜんげんを行います。

    「漸減」として示されているだけで、具体的にこういうふうにゆっくり減らしなさいというガイドラインはありません。
    医師間でそのやり方はかなり異なると思います。

    それでも基本的に推奨される漸減の期間というものはあります。
    どれぐらいの期間をすくなくともかけて中止しなくてはいけないか、それは4週間です。
    つまり1ヶ月はかけたほうが無難です。

    いきなりお薬を中止して良いのは飲み始めてすぐだけですのでそこは知っておく必要があるでしょう。

    参考文献
    Taylor D, Paton C, Kapur S, editors. The Maudsley prescribing guidelines in psychiatry. 11th ed. London: Wiley Blackwell; 2015.

    サインバルタの減薬の例

    サインバルタカプセルの最小量は20mg錠です。
    1日に飲める最大量は60mgです。

    最大量の時は30mgカプセルを2カプセル内服している状態です。
    これをいきなり1カプセルに減らすと離脱症状の出る人がいますので、私は20mgカプセルと30mgカプセルで50mgに減量します。
    次は20mgカプセル2つで40mgを1日量と10mgずつの減量が可能です。

    このように一気に減薬はできないので20mgカプセルと30mgカプセルの剤型を利用した減薬が必要になりますので、それを処方してもらいます。
    ですから自己判断での減薬では一気に減りすぎてしまうリスクが伴うのです。


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    サインバルタから他の抗うつ剤への変更法

    サインバルタが効かないときや副作用に困るときに他の抗うつ剤に変更することがあります。
    ただ単純に、スパッと他の薬に変えるのでは、離脱症状を起こしてしまうことがありますので注意が必要です。
    (この変更方法も医師によってかなり方法は異なります。)

    他の抗うつ剤への変更は意外と複雑です。
    前の薬から特徴が変わるので、離脱症状を起こすことも薬の相互作用を起こすことも、合わさってセロトニンの作用が強くなりすぎてしまうこともあるからです。

    どんな変更方法があるのか、オーストラリアの文献に詳しく書かれているので見てみましょう。
    日本ではスイッチの仕方にガイドラインはないので、変更の仕方は各医師の判断にゆだねられています。

    今回紹介するガイドも、絶対守らなければならないわけではありませんがひとつの指標にはなります。


    1. 順序を守ってスイッチ(Conservative Switch)
    2. かぶせてスイッチ(Moderate Switch)
    3. 一気にスイッチ(Direct Switch)

    順序を守ってスイッチ(Conservative Switch)
    まずサインバルタを減量していって断薬します。
    その後、薬が身体から抜けるのをみはからって次の抗うつ剤を開始する順序を守った方法です。

    サインバルタを減量していく中で離脱症状のリスクはありますが、薬同士の相互作用はありません。

    かぶせてスイッチ(Moderate Switch)
    サインバルタをゆっくり減らしつつも、同時に新しい抗うつ剤を少しずつ増量してはじめていく方法です。
    サインバルタを減量していく中で次の抗うつ剤を始めているので離脱症状は起きづらいかもしれませんが、離脱症状の起こるリスクはあります。
    薬が抜け切る前に次の薬を飲んでいるのでさらに薬の相互作用のリスクもあります。

    一気にスイッチ(Direct Switch)
    サインバルタを一気に中止して、翌日から新しい抗うつ剤を通常の量でスタートする方法です。
    次に使用する抗うつ剤の薬理学的な特性によって離脱症状が起こりやすいかどうか決まります。
    しかも次のお薬も最初から通常量ですから、その薬の副作用も強く出てしまうことがあります。

    サインバルタからの具体的な変更方法

    →ジェイゾロフト、パキシル(パロキセチン)、レクサプロ
    サインバルタをゆっくり減らしつつ、新しい抗うつ薬を少量で開始(かぶせてスイッチ)

    →デプロメール/ルボックス(フルボキサミン)
    サインバルタをゆっくり減らしていったん中止する。
    完全に中止できたタイミングから新しい抗うつ薬を1日量50mgから開始。(順序を守ってスイッチ)

    →SNRI(トレドミン、イフェクサーSR)
    サインバルタをゆっくり減らしつつ、少量で開始(かぶせてスイッチ)

    →リフレックス/レメロン
    サインバルタをゆっくり減らしつつ、少量で開始(かぶせてスイッチ)

    →三環系抗うつ薬
    サインバルタをゆっくり減らしつつ、少量で開始(かぶせてスイッチ)

    参考文献
    Nicholas Keks, et al. Switching and stopping antidepressants. Aust Prescr. 2016 Jun; 39(3): 76–83.

    まとめ「サインバルタの減薬・断薬について」

    サインバルタの減薬・断薬では「離脱症状」、「うつの再発」の2点に注意しなければなりません。
    特に自己中断による断薬は離脱症状のリスクが非常に高いのです。

    減薬に関しても、注意深く行う必要があり、主治医と相談してもなかなかOKしてくれないときもあります。
    それにはガイドラインにもある通り、効果が出だしてうつが改善してからもそのときの抗うつ薬の量を4~9か月は続けることが推奨されているからです。

    自身で断薬できる例もあるかもしれませんが、たまたま大丈夫であった可能性は高いです。
    サインバルタカプセルの剤型の種類は2種類あるのでその2種類をうまく処方してもらうことによってゆっくり減らすことが可能になります。

     

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