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トレドミン錠の効果と特徴

うつ病・うつ状態に対して最初に処方される抗うつ剤にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が一般的です。

このうちトレドミン錠はSNRIに分類される抗うつ剤です。

トレドミンは抗うつ効果が強いわけではないのですが、副作用が他の抗うつ剤より少なく、薬の飲み合わせにおいても影響するものが少ないことから処方されることは多々あります。(特に高齢者に処方されることもあります。)

ここではトレドミン錠の効果と特徴について解説します。


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トレドミン錠の抗うつ剤としての位置づけ

トレドミンは商品名で、一般名はミルナシプランです。
2000年に旭化成ファーマから販売開始されたSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)に属する抗うつ薬です。

まず抗うつ剤の種類について簡単に見ていきます。
通常抗うつ剤として最初に処方されるお薬はSSRIかSNRI、もしくはNaSSAとなります。
これら3種類以外にも三環系抗うつ薬をはじめ数多く存在しますが、なぜ最初にこの3種類かと言えば副作用の少なさが挙げられます。


  • SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
  • ルボックス/デプロメール(フルボキサミン)、パキシル(パロキセチン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)、レクサプロ

  • SNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
  • トレドミン(ミルナシプラン)、サインバルタ、イフェクサーSR

  • NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
  • リフレックス/レメロン


他にも三環系・四環系抗うつ薬やその他の抗うつ薬として主に睡眠薬的な位置もあるデジレル/レスリン(トラゾドン)や食欲低下にも有効で胃薬的な位置にもあるドグマチール(スルピリド)などがあります。

これらの中でトレドミンはSNRIに分類されます。

では抗うつ効果の強さをみてみましょう。
抗うつ剤の比較

この表は、横軸が抗うつ効果の強さ(右にあるものほど抗うつ効果が強い)、縦軸が飲み続けやすさ(忍容性:上にあるものほど副作用のためにやめることにはなりにくい)を示す有名な表です。
トレドミンは中間的な位置にありますが、抗うつ効果と忍容性の面で優れるとされるSSRIのレクサプロやジェイゾロフト(セルトラリン)よりは劣ります。
また米国では抗うつ効果として定評のあるSNRIのイフェクサーに比べても抗うつ効果が弱いことがわかります。

ですからうつ病・うつ状態に対して抗うつ効果を純粋に狙う場合においてはSSRIやSNRIの中でもイフェクサーSRなどが有用かもしれません。

こんな論文データを載せておきながらも、一応世界的には第一に処方されるSSRIやSNRI、NaSSAにおいてどの薬品も治療に遜色ないというスタンスでガイドラインは存在しています。
しかし実際には処方医はちょっとした特徴の差を判断して処方しているのです。

【参考文献】
Cipriani A, et al. Comparative efficacy and acceptability of 12 new-generation antidepressants: a multiple-treatments meta-analysis. Lancet. 2009 Feb 28;373(9665):746-58.

ちなみにトレドミンは米国ではうつ病に対しての承認は得られていません
それよりも痛みに対して有効であることから線維筋痛症せんいきんつうしょうといって、全身に激しい痛みが生じる難治性の病気に対しての使用が承認されています。

これはSSRIでも抗うつ効果以外の面が有用のためうつ病に対する承認が米国で得られていないお薬としてルボックス/デプロメール(フルボキサミン)がありました(強迫症状などに承認)。

トレドミン錠は抗うつ効果以外に痛みに有効

先にも説明しました通り、抗うつ効果と副作用に関するバランスがとれたお薬ですがどちらかと言えば抗うつ効果は弱く米国ではうつ病に対しての承認はない変わった位置づけのSNRIです。
とはいえ米国以外ではトレドミンもSNRIとしてうつ病・うつ状態に承認されているお薬ですから、抗うつ効果がないわけではありません。

ではどんな場合に使用されるかと言えば、うつ病の診断基準にはありませんがうつ病・うつ状態においては身体症状、特に痛みがでることがあります。
この痛みに有効であることから、うつ病の症状として身体の痛みを自覚している場合にトレドミン錠は有効性が高いことになります。

では、痛みに着眼点を置いて見てみましょう。
同じSNRIにサインバルタというお薬があり、こちらも痛みに有効で線維筋痛症にも処方されます。
日本では線維筋痛症という全身の痛みの疾患に承認がとれているSNRIはサインバルタだけで、トレドミンは日本では正式な承認はありません。
逆に米国ではトレドミンは抗うつ薬ではなく線維筋痛症のお薬としての位置づけなのと対照的です。

他に線維筋痛症に承認されているリリカ(プレガバリン)と、先のSNRIの2剤(サインバルタ、トレドミン)とで鎮痛効果や副作用を比較した研究があります。
リリカは抗うつ薬ではないので聞きなれないかもしれませんが、線維筋痛症など神経障害性の痛みの中では第一選択ともいえるメジャーな薬剤と、SNRIという抗うつ薬の比較です。

実はこれら3つのお薬において鎮痛効果や副作用の面で遜色ないという結果が出ているのです。

【参考文献】
Lee YH, Song GG. Comparative efficacy and tolerability of duloxetine, pregabalin, and milnacipran for the treatment of fibromyalgia: a Bayesian network meta-analysis of randomized controlled trials. Rheumatol Int. 2016 May;36(5):663-72.

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トレドミン錠の用法と薬価

トレドミン錠の薬価

  • 12.5mg錠:17.80円
  • 15mg錠:20.80円
  • 25mg錠:30.10円
  • 50mg錠:50.80円

(2016年改訂)

トレドミン錠の用法

最初は1日量で25mgから開始します。
つまり12.5㎎錠を2回にわけて朝夕などで内服します。
さらに15㎎錠に変えたり、3回内服にして増薬しながら問題がなければ1日最大量100㎎(高齢者では60㎎まで、腎機能障害のある方も調整が必要)まで増量します。

半減期(お薬が代謝され排泄によって血液中の濃度が最大時の半分になってしまうまでの時間)は8時間程度と短いため、1日2回以上に分けて飲む必要はあります。

うつ病・うつ状態に対して飲んでいる場合、効果が出てもすぐに減らしたり中止してはいけません。
うつ病学会のガイドラインにも記載されていますが、症状が改善したらその量を4~9か月飲み続けることが必要です。

こうすることで再発を防ぎ、その後ゆっくり減らしていくという方針になりますので、よくなったからやめるということにはなりませんのでくれぐれも自己中断しないようにしましょう。

トレドミンはどうやって作用するのか

神経は次の神経と連絡をとってやりとりしています。
その連絡に関連する物質に神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつが関与しています。
この神経伝達物質でとくにうつ病に関連のあるとされているものに「セロトン」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」があります。
なんとなく聞いたことはあるかと思いますが、これらがどのような役割をもつ神経伝達物質なのかみてみましょう!

神経伝達物質

トレドミンはSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)ですから、これらの中で「セロトニン」と「ノルアドレナリン」に作用し、神経の働きを増強します。
緊張や不安の緩和、意欲がでる、気分や感情、ネガティブな認知が改善してくるように作用させることができるイメージです。

トレドミンの具体的な作用機序

神経の連絡活動は主に電気信号ですが、「前の神経」と「次の神経」の連絡通路は物質を介します。
これが神経伝達物質です。

神経の伝達物質として、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンは有名であると同時に、うつの原因としての神経伝達物質にセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンが挙げられます。
これらは、単独でも機能を持ちますし、複数での機能も持ち合わせます。
神経伝達物質の関連図を再度載せます。

神経伝達物質

これらの神経伝達物質の異常がうつ病と関連しているという考えのもと、現在の抗うつ剤は開発されています。
この中で、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)はセロトニンとノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の作用を増強することで、うつ症状を緩和させます。

セロトニンを例にとってイメージしてみましょう。
前の神経から次の神経のポストにセロトニンという荷物を届けてくるイメージです。

ただ一部のセロトニンは回収業者に回収されて戻っていきます。
このようにして大量にポストに届けられて迷惑メール化するのを防いでいます。

抗うつ薬はこの回収業者を邪魔するお薬なのです。
これによって大量にセロトニンを届けることができるのです。

これはセロトニンのイメージ図でしたが、お届けものをノルアドレナリンに変えてもらえばこれもイメージしやすいと思います。

少し難しいですが具体的にみてみましょう。
セロトニン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質は通常連絡通路に放出されると、次の神経の中にはいっていくものと、回収されて前の神経に戻っていってしまうものがあります。

このときトレドミンは回収業者を邪魔して、より多くのセロトニンとノルアドレナリンが次の連絡口(受容体じゅようたい)に入って行けるように作用するのです。

SNRIの作用機序

トランスポーターというのが回収業者です。
SSRIはセロトニンだけのトランスポーターを邪魔していたのに対し、SNRIはセロトニンだけでなくノルアドレナリン(ノルエピネフリン)の回収業者も邪魔するのです。
このようにしてセロトニンとノルアドレナリンの神経伝達を増強させます。

トレドミンの作用機序から見た効果と副作用

これがSNRIのメカニズムなのですが、トレドミンが他のSNRI(サインバルタ、イフェクサーSR)と違うのは「セロトニン < ノルアドレナリン」とノルアドレナリン再取り込み阻害の方がセロトニンサイドより強いことにあります。
その結果、抗うつ効果よりも痛みに対する効果が目立つのです(何度も言いますがトレドミンはSNRIですが米国ではうつ病に承認されていないというユニークなお薬です)。
先にも示しましたが、だからと言って疼痛を抑える効果がサインバルタよりも有効などという臨床的な意味はなさそうですが・・・。

ノルアドレナリン系の増強は痛みに対して有効ではありますが、それに準じた副作用も出ます。

ノルアドレナリン系は自律神経の中でも交感神経系を強めます。
それにより自律神経バランスが崩れると口の渇き(唾液量が減る)、発汗(汗が出やすくなる)、尿が出づらいなどといった副作用を認めることもあります。

トレドミン錠の飲み合わせ

他の抗うつ薬と比べ、肝臓の代謝酵素にほとんど影響しないため飲み合わせの悪いお薬は少ないです。
※精神科のお薬は基本アルコールと一緒に服用はしてはいけません(他の抗うつ剤で相互に作用を増強しあう可能性があるため)。

絶対に一緒に飲んではいけないお薬:エフピー(セレギリン)

併用禁忌とされているお薬は、他の抗うつ剤とも共通ですがエフピー(セレギリン)というパーキンソン病のお薬です。
セロトニンの急激な作用によって起こる致死的な「セロトニン症候群」を起こすリスクがあります。

血液さらさらの薬に注意

抗うつ剤には副作用に出血のしやすさ(内出血しやすい、あざができやすい)があるので、血液さらさらのお薬(ワーファリン®、バイアスピリン®。プラビックス®など)を飲んでいる場合、注意しましょう。

<血液さらさらの薬はどんな時に処方されているか>
心臓の手術後で人工の心臓弁の手術をしたり、心房細動しんぼうさいどうといわれる不整脈がある場合、脳梗塞のうこうそくの既往がある場合に処方されていることがあります。
ワーファリンはビタミンKが含まれる食品(納豆やクロレラ)を食べてはいけないと言われているので、そういえば言われたかもとピンとくる場合は確認しましょう。

トレドミンのノルアドレナリン増強に関連して

ノルアドレナリンは交感神経を高めることから血圧は上昇する方向に作用します。
高血圧の方にとっては、普段より高くなるリスクが上がること、他に交感神経が高まるお薬を使用している場合には脈拍が上がって動悸などを感じやすくなる恐れもあるでしょう。

前立腺肥大のある方にとっては尿が出にくくなる(尿閉)ことも知っておく必要があります。

まとめ「トレドミン錠の効果と特徴」

トレドミン錠は日本で最初に販売されたSNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という抗うつ剤です。
トレドミンのユニークな特徴は、米国ではうつ病に承認がないことからもわかる通り、抗うつ効果よりも神経性の痛み(うつ病に伴ってでるような慢性の痛みや線維筋痛症などの痛み)に対する効果が目立つことです。

とはいっても米国以外ではうつ病・うつ状態に承認はされています。
その観点からみた特徴は、他の抗うつ剤に比べ副作用が少ないこと、肝臓の代謝でないこと、相互作用してしまうお薬が他の抗うつ剤より少ないことが挙げられます。

以上の特徴を考えると、真っ先に処方される抗うつ剤ではないでしょうがうつ病の治療中に慢性の痛みが症状として目立つ場合や他のお薬が副作用が問題になりやすかったり、肝機能に問題がある場合に使用されることになります。

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