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これで安心!サインバルタの効果と特徴【医師が教える抗うつ剤】

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
これで安心!サインバルタの効果と特徴【医師が教える抗うつ剤】
患者家族
サインバルタが処方されたけど、副作用大丈夫かな・・・・。
パキシルからサインバルタに変わったけど効くのかな?
Dr.G
精神科の薬って特にはじめて飲むとき怖いですよね?
内科の薬はすぐ飲めるのに・・・。
この違いは抗うつ剤は効果が出るまでに時間がかかることや、副作用が多いこと、飲むことでかえって悪くなる人もいるからです。

また抗うつ剤といっても、SSRI・SNRI・NaSSA・三環系抗うつ剤・・・・などなど多数の種類が存在し、しかもその中でも様々なお薬が特徴を持って存在しています。
どの薬も同じように効けばいいのですが、効果の出かた、副作用、薬を減量したり中止した時の離脱症状の出やすさも違います。

さらに妊娠中や授乳中、子供は飲んでいいかなど気になることはてんこ盛りだと思います。

ここではSNRIに分類されるサインバルタについて解説したいと思います。


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サインバルタの特徴

サインバルタ(サインバルタは商品名で一般名はデュロキセチン)は国際的には2004年に登場し、日本では2010年に販売されました。
抗うつ剤の中ではSNRIに分類されています。

SNRIと言えば、日本では2015年に新薬イフェクサーSR(ベンラファキシン)が発売されました。

ところが国際的にはイフェクサーは1993年に登場していたのです。
つまりSNRIの中での世界的にみた新薬はイフェクサーではなくサインバルタということになるのです。
実際、うつ病に対するSSRIとSNRIとの比較をした研究はイフェクサーの方が多く、サインバルタがSSRIより優れているかという研究はまだ少ないのです。

そもそも多数ある抗うつ剤の中でSNRIがどんな位置づけなのかみてみましょう。

SNRIは抗うつ剤の主力?~抗うつ剤市場からの視点~

まず、現在日本ではどの抗うつ剤が主力で使用されているのか見てみましょう。

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済の調べ(2013年)によると、抗うつ剤はこれまでSSRIが主力で拡大してきていたのですが、最近はSSRIよりもSNRIのサインバルタ(塩野義製薬、日本イーライリリー)、NaSSAのリフレックス(Meiji Seikaファルマ)やレメロン(MSD)が拡大してきています。
そして今後もSSRIは縮小し、新しいSNRIやNaSSAなどを主力に処方されていくと見られています。

はたしてSNRIやNaSSAが主力になっていくことで、飲む側としても恩恵があるのか?
そのあたりも含めて見ていきましょう。

サインバルタはいつ効果がでる?

サインバルタを飲んで6時間で最高濃度に達し、飲んでから8-17時間で濃度は半分になります。
3日連続で飲むとサインバルタの濃度は安定しますが、それでも実際に抗うつ効果が出るのは2-4週間かかります
効果よりも先に副作用(吐き気が多いです)が目立ちます。

効果が出だすまでのタイムラグの理由は説明していますが、やや専門的な内容なので飲み始めてすぐではなく2週間はかかることを知っておいてください。

サインバルタはうつ病と痛みにも効く!

うつ病の約40%程度に、身体の慢性的な痛みを自覚しているという報告があります(欧州での研究)。
サインバルタはうつ病患者のこの痛みも改善させることがわかっています。

日本でもうつ病の他、糖尿病に関連する神経障害性疼痛にも承認されています。

参考文献

サインバルタはSSRIより優れるのか?

サインバルタがSSRIより抗うつ効果が優れているという研究はたしかにあります。
ただサインバルタは、世界的には新しいSNRIであるため、SSRIと比較している研究は少ないです。
それに、サインバルタの内服量を多めに、SSRIは少な目に内服量が設定されていたりするなど、SSRIにやや不利な状況の研究のためこれだけでサインバルタがSSRIより本当に優れるのかは、意見がまだ分かれるところです。

一方で世界的には古い、日本では新しいSNRIのイフェクサー(ベンラファキシン)はSSRIよりうつ病患者の寛解率を高める可能性をもっているといわれています。


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カリフォルニアロケット!サインバルタとNaSSAのコンボ!

Dr.G
SSRIとサインバルタの単純な比較では、どちらが優れるかまだ検討の余地はありそうです。
でも、コンボで使った場合はしっかりと差がでた治療法がありました。
患者家族
たしかにコンボならすごく聞きそう。
副作用も強そうだけど・・・。
どの抗うつ剤の組み合わせのコンボで結果がでたんですか?
Dr.G
それはSNRI + NaSSAの組み合わせです。
通称、カリフォルニアロケット!!

強力にセロトニンとノルアドレナリンの増強を行う方法で、SNRI(イフェクサーSRやサインバルタ)とNaSSA(リフレックス、レメロン)の組み合わせで処方されることが多いです。
2010年に、SSRIもしくはSNRIとNaSSAの組み合わせでの治療効果が検討された論文が出ております。

もともと1種類の抗うつ剤でうつ病を寛解できるのは約30%に対し、組み合わせることでおよそ60%ちかくの人を寛解に導くことができたのです。
気になる副作用ですが、体重増加(太る)という副作用と、眠気が強くでてしまいます

参考文献
Pierre Blier, M.D., Ph.D.et al.Combination of Antidepressant Medications From Treatment Initiation for Major Depressive Disorder: A Double-Blind Randomized Study. Am J of Psyciatry;Volume 167, Issue 3, March 2010, pp. 281-288.


サインバルタの副作用

副作用としてよくある反応は、吐き気、口の渇き、めまい、便秘、倦怠感、食欲低下、眠気、発汗です。

実際に服用してすぐに吐き気がでることは実際によく聞きますし、臨床研究でも内服を中断せざるを得なかった理由の第一位です。
吐き気はサインバルタを飲み始めた初期にみられるだけですので、ある程度のみ続けることができれば2週間程度ではおさまってきます。
ただ、もし最初に吐き気のことを主治医から聞かずに飲んでいたら間違いなく不安になることが多いであろう副作用です。

吐き気による食欲低下とは別個に、食欲低下もよくみられる副作用です。
かえってサインバルタを飲んでからやせたという声も聞きますが、一方で過食になって太ったという方もいます。
現在のところ体重の増減については長期でサインバルタを飲んだときの影響はまだわかっていません。

また、頻度は不明ですが性機能障害(男性は射精の障害、男女ともにオーガズムを感じられないなど)も出ることがあります。

  • 消化器系(悪心・下痢・食欲低下・口渇・便秘)
  • 不眠・鎮静・ふらつき
  • 性機能障害(射精遅延、勃起不全、性欲減退(男女)、オーガズムを感じにくい(男女))
  • 中枢神経(不眠、振戦、頭痛、緊張)
  • 自律神経(発汗が目立つ)
  • 血圧上昇
  • 尿閉(膀胱に尿が溜まっているのに出ない)

妊娠・授乳中にサインバルタは服用していて良いのか?

Dr.G
妊娠中も授乳中も、添付文書では、できるだけ飲まないように書かれています。
患者家族
そうなの?急いでやめないと!
Dr.G
いやいや勝手にやめてはいけません!
正確には添付文書にはこう書いてあります。

治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること


患者家族
えっ結局飲んでいいってこと?
Dr.G
この判断は迷いますね。
要は、各患者さんごと主治医の判断にゆだねるというのがその意図だと思います。

まずサインバルタを飲んでいて良いのか安全性から見てみましょう。

妊娠・授乳中に服用したサインバルタの母親と赤ちゃんへの影響

母親への影響

母体への影響は、サインバルタそのものの副作用ですが高血圧出血傾向、すなわち血液がさらさらになりやすくなることが出産に影響します。

どう影響するかと言えばひとつは妊娠高血圧症候群を起こす可能性が高くなることです。
これはいわゆる妊娠中毒症といって、母体がきわめて危険な状況になりやすくなるため妊娠後半であれば早産でもいいので妊娠を中断せざるを得なくなる場合があることです。

もうひとつは出血が止まりにくいことで出産時の出血に注意を払う必要があることでしょう。
出血が止まらなければ母親に輸血する必要がでるかもしれません。

赤ちゃんへの影響

妊娠初期はあらゆる薬が胎児に影響をおよぼすおそれがあり、サインバルタも例外ではありません。
ただし、SNRIはサインバルタも2015年に発売されたイフェクサーSRも妊娠(初期)中に内服していても先天奇形との関連がないことが報告されています。

参考文献
Lassen D, et al. First-Trimester Pregnancy Exposure to Venlafaxine or Duloxetine and Risk of Major Congenital Malformations: A Systematic Review. Basic Clin Pharmacol Toxicol. 2016 Jan;118(1):32-6.

出産後、鎮静が強くかかって元気がなかったり、呼吸の補助や哺乳をうまくできなくて管から栄養をしたりする必要がある場合、しばらく入院が必要な赤ちゃんもいます

授乳中の赤ちゃんへの影響

サインバルタは母乳中に成分は移行しますので、赤ちゃんは母乳からサインバルタを摂取することにはなります。
しかし、その濃度はとても低いのでほとんど副作用を認めるレベルではありません

まれに、鎮静がかかって大人しく元気がないようになってしまう可能性はあります。

また、母乳中には様々な菌やウイルスから赤ちゃんを守るための免疫(抗体こうたい)が含まれています

  • 母親へのリスク
    • 妊娠高血圧症候群
    • 出血
  • 赤ちゃんへのリスク
    • 奇形はそこまで考えなくて良さそう
    • 出産後に入院が必要になる可能性が0%ではない
  • 母乳
    • リスクはそこまではなさそう
    • 免疫やコミュニケーションのメリットの方が高そう

結局のところ妊娠・授乳中はサインバルタは中止したほうがいい?

メリット・デメリットはわかったような気がしますね。
では実際どう判断したらよいでしょうか?

飲む飲まないよりも、現実問題としてサインバルタをやめることができるのかが問題となります。
今までうつ病で長く内服してきた方が、妊娠したから「サインバルタを、はいやめましょう」と言ってすぐにやめるのは難しいことが多いのです。
そこには2つの理由があります。


  1. サインバルタ中断による離脱症状の危険性
  2. うつ病そのものの症状の悪化

抗うつ剤はいきなりの中断で離脱症状を起こす可能性があります。
具体的には、急激に減量した場合や飲むのをやめると、めまい、口渇、不眠、吐き気、神経過敏、発汗、食欲低下といった症状がでます。
しかも2週間以上続く場合もありえます。
そうなると、薬の量も離脱症状がなくなる量にもどさなくてはなりません。
薬の減量のつもりがかえって多くなてしまう場合もあります。

もう一つの「うつ病そのものの悪化」ですが、これも初期には離脱症状と見分けがつきにくい場合も多くこちらも結果的にもとより増薬になるリスクがあります。

結果的に、減薬を図るつもりが増薬になってしまうことがあり得ることを念頭にいれる必要があります。

僕個人としては妊娠がわかった段階で可能な限り減薬はします。
しかし、深追いはしないようにしています。
結果的に減薬しても離脱症状やうつ症状が出ないこともありますが、もし深追いして症状が出てしまえば抗うつ剤が増薬になりそれでは意味がありません。

結果、薬が「0」にできなかったとしてもそのまま妊娠出産し、授乳中は薬を減量・中止することなく継続してもらっていることが多いです。


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サインバルタを子供が内服しても良いか

日本において未成年者のうつ病において安全性・有効性について示されている抗うつ薬は存在しません。
ですから日本のうつ病学会ガイドラインでも、

抗うつ薬を使用する際には、本人、家族に対し安全性・有効性が臨床試験で検証されていないことを説明し、リスクとベネフィットを十分に検討した上で、インフォームド・コンセントを得ることが必要である。

引用元: 日本うつ病学会ガイドライン

として「効果がない」可能性があることを説明するようにいっています。

そしてアクチベーションシンドロームといって逆に焦燥感しょうそうかん(そわそわ落ち着かない)や攻撃性、衝動性が出て、自殺念慮が高まる危険性もあるぐらいです。

子供に対する抗うつ薬はそれゆえ慎重にということになります。

まとめ「サインバルタは良い薬?」

サインバルタは抗うつ剤以外に痛みに注目されているお薬です。

しかも、サインバルタはSNRIとしてはイフェクサーより新薬だったのは意外だったのではないでしょうか?
それゆえ日本での新薬であるイフェクサーのほうが世界的に研究がたくさんされています。

Dr.G
最後にSNRIのなかでもイフェクサーとサインバルタの相違点を2点あげておきましょう。

  1. 抗うつ効果と続けやすさ
  2. 抗うつ効果以外の有効性

Dr.G
医学の世界で超有名な雑誌「Lancetランセット」に、世間を騒がせる記事が載りました。
通称「MANGAマンガ研究」。
患者家族
Lancetって雑誌がスゴイのはわかったけど、漫画研究して何がわかったの?
Dr.G
漫画じゃなくてMANGAですね。
何がスゴイかって、抗うつ薬をランキングしてしまったところです。

抗うつ剤の比較

Dr.G
横軸が抗うつ効果、縦軸が飲み続けやすさです。
右に行くほど抗うつ効果が強くて、上に行くほど副作用でやめてしまう可能性が低いってことですね。
患者家族
右上にある薬ほどいいってことね。
でも先生SNRIがSSRIより抗うつ効果が優れる可能性があるって言ってたような・・・
Dr.G
そうそう、だからちょっとこの研究にも色々意見があるんですよ。
患者家族
だってこの研究、いろいろな論文をかきあつめて「NAVERまとめ」みたいにしてやったメタアナリシスっていう有効な研究手法なんでしょ?
今話題のキュレーションサイトみたいな。
Dr.G
そう、だから超有力雑誌Lancetに載ったんだね。
でもね、飲み始めた2か月だけの結果をみていたり、製薬会社が資金提供している研究が多いってことも指摘されているんです。
ちょっと色眼鏡があるんじゃないかってね。
患者家族
ふーん、じゃああまり見てもしょうがないってこと?
Dr.G
いいや、僕は逆にすごく参考になったと思っているよ。
この抗うつ効果や忍容性が仮に本当だとして、何がスゴイと思う?
患者家族
右上ににあるレクサプロとかジェイゾロフトが売れたこと?
Dr.G
たしかに影響したかもしれませんね。
大事なことは抗うつ効果がすべてではないことだね

車で考えてみましょう。
スポーツカー、4WD、乗用車、ワゴン色々あります。
乗りやすさなら乗用車、ワゴンでしょうね。
海や雪山にいくなら、4WD。
カッコよさや加速性、自己満足でならスポーツカー。

じゃあどれが一番いいでしょう?
一概には答えられませんね。


抗うつ効果と飲み続け安さがわかっただけで、どの抗うつ薬を処方したらいいかわかったわけではないということ。
つまり大事なのは、不安が強いタイプ・不眠が強いタイプ・痛みを伴うタイプなどそのうつ病の特徴に合わせて使っていくというのが良いということです。

サインバルタとイフェクサーの位置づけを見てください。
抗うつ剤の比較

これをみるとサインバルタはイフェクサーより劣っているとなります。
じゃあみんなサインバルタからイフェクサーにしましょうとはなりません。

個人的にこれはサインバルタの特徴を表しているのかと思っています。

サインバルタのイフェクサーとの違いは、薬の量と抗うつ薬が必ずしも相関関係しないことです。
どういうことかというと、例えば日本ではサインバルタは20㎎から開始して最大容量は60㎎です。
20-60㎎までは量と抗うつ効果の関係は上がりますが、これ以上増やしても効果が上がるわけではないのです。
サインバルタの量60㎎を倍の120㎎にしたからといって効果が強まるということはないのです。
かえって副作用だけが目立ってしまいます。

一方でイフェクサーは飲む量と抗うつ効果が相関しています。
増やせば増やすほど抗うつ効果の増強が望めるのです(もちろん定められた量までです)。

サインバルタは一定量以上(60㎎以上)に増やしても増強する効果が期待できないけど、イフェクサーは量を調整するとより効果が出る可能性がある

Dr.G
でもさっきの車の話じゃないけど、用途が大事、つまりどんなタイプのうつなのかも大事って事です。

サインバルタは痛みに対しての有効性が特徴なのに対して、イフェクサーは不安に対しての有効性が高いのです。
(とは言ってもイフェクサーに痛みに対する作用がないわけではありませんけどね。)

サインバルタは痛みに、イフェクサーは不安に有効

なんとなくサインバルタのことわかっていただけたでしょうか?
もっと詳しく知りたい方は以下も参考にしてくださいね。

 

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