
フルボキサミンマレイン酸塩錠は、先発品であるデプロメール/ルボックスのジェネリック医薬品です。
先発品は1999年に発売されており、これが抗うつ剤SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の最初のお薬です。
そこから遅れる事10年、フルボキサミンマレイン酸塩錠として2010年に後発医薬品が発売されました。
ここではこのフルボキサミンマレイン酸塩錠について、効果や特徴、用法、副作用について解説したいと思います。
目次
フルボキサミンマレイン酸塩錠の効果と特徴
フルボキサミンマレイン酸塩錠はジェネリック医薬品
ジェネリック医薬品というのは先発の薬剤(新薬)と同じ有効成分でつくられ、その特許が切れたのちに効果や安全性が新薬と同じと認められてから販売されます。
それではジェネリック医薬品の3つの特徴をみてみましょう。
①薬価が安い
先発品(デプロメール/ルボックス)に比べて、フルボキサミンマレイン酸塩錠のほうが薬価が安いというメリットがあります。
どれくらい違うか、飲み始めに処方される25mg錠で比較してみましょう。
- デプロメール/ルボックス錠25mg:32.50円
- フルボキサミンマレイン酸塩錠25mg:14.4‐18.5円
※2016年4月改訂の薬価
1錠で約15円弱違います。
このお薬は1日2回内服ですから1日30円、1ヶ月では900円(3割負担なので実質270円)違います。
これは最小量なので、最大量150mg(~300mg)となると結構な価格差があります。
ジェネリックへの切り替えは処方箋の「後発医薬品に変更不可」の欄にチェックと医師のサインがされてなければ、自動的に薬局でジェネリックに変更されて出されます。
②成分は同じでもコーティングは違う
「フルボキサミンマレイン酸塩錠」は「デプロメール/ルボックス錠」と基本成分は同じフルボキサミンですが、コーティングが異なるので苦みの感じ方や飲み安さが異なることがあります。
また薬物動態(最高血中濃度やどれくらいで排出されていくかなど)も先発品とほぼ同じですが、おそらく統計的に優位でないものの添付文書上は誤差範囲での差はありそうです。
③アメルは薬の名前ではない!
フルボキサミンマレイン酸塩錠は約15社の製薬会社から発売されており、すべて名称は「フルボキサミンマレイン酸塩錠」というように成分名がそのまま製剤名になっています。
つまり「デプロメール」や「ルボックス」だけが唯一名称を与えられている先発品の開発特権ですね。
その他は【フルボキサミンマレイン酸塩錠25mg「アメル」】とか【フルボキサミンマレイン酸塩錠25mg「サワイ」】などその錠剤のあとに「 」つきで製薬メーカーの名前がつきます。
よく外来で「なんていう薬を飲んでいますか?」とたずねると「アメルです」と答えてくれるのですが、気持ちはわかりますがそれは製薬メーカー名称なんですね。
フルボキサミンマレイン酸塩錠の効果
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類されます。
うつ病・うつ状態に対して最初に処方されることの多いお薬には「SSRI」「SNRI」「NaSSA」があります。
もともとうつ病に対しては、三環系抗うつ薬が使われることが多かったのですが、副作用も多く飲む側も処方する側にも治療のしにくさがあったものの、効果と安全性、副作用のバランスのとれたSSRIが1999年に初めて販売されたことはとても画期的なことだったのです。
しかし、米国ではフルボキサミンマレイン酸はうつ病に対して承認されていないことからもわかる通り、抗うつ効果よりも不安や強迫症状に対する効果が目立つため、翌2000年に登場した同じSSRIであるパキシルに抗うつ剤としてのSSRIとしての地位を奪われてしまいます。
不安、強迫症状に対する作用に定評があることから現在でも現役のSSRIなのです。
フルボキサミンマレイン酸塩に適応のある疾患をみてみましょう。
効果が期待できる疾患は以下の通りです。(赤字は日本で承認されているもの)
- <フルボキサミンマレイン酸塩錠の効果が期待できる疾患>
- 強迫性障害(OCD)
- 社交不安障害
- うつ病・うつ状態
- パニック障害
- 全般性不安障害(GAD)
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
フルボキサミンマレイン酸塩錠の用法と効果がでるまでの期間の目安
飲み始めは、フルボキサミンマレイン酸塩錠50mgを1日2回に分割して食後に飲みます。
つまり初回は1回に25mg錠を1錠内服し、朝に飲んだのなら次は夕食後にも同じように25mg錠を1錠内服し、1日量として合計50mgとして開始するということです。
添付文書上は1日2回に分けて内服するように指示はありますが、実際は1日量75-100㎎くらいの少量のときには、就寝前に1回内服とする場合もあります。
これ以上量が多いときは2回にわけつつも夜に飲む量を多めに分割して工夫したりして使用します。
これは眠気が強く仕事や自動車の運転などに支障が出る場合があるからです。
薬効に関しては早ければ2週間後には効果を出すこともあります。
いずれにせよ特に抗うつ効果においては他の抗うつ剤と同様即効性はありませんので注意が必要です。
むしろ飲み始めは副作用だけが目立つこともしばしばあります。
副作用の詳細に関しては後述しますが、眠気を起こす副作用がある一方で逆に不眠になることもあります。
不眠になるようであれば朝飲むようにすると解消されることがありますので主治医と相談してみてください。
抗うつ剤は基本的に増量していくことで効果を出します。
増量はゆっくり行い、フルボキサミンマレイン酸の場合最高で1日 150mgまでです。(75mg錠を1日2回)
海外での最高用量はその倍の300mgで、日本でもここまで使用すると効果のある例もあります(特に不安や強迫に対して)。
ただ規定用量を超えての使用は保険診療上はルール違反です、とは言っても患者さん本人が3割負担でなくなることはありません(病院の持ち出し・病院の負担になるだけです。安い薬なので目をつぶってもらえているのかわかりませんが・・・)。
ただし副作用も強くなりますし特に相互作用しやすい薬ですから飲み合わせは注意が必要です。
不安が強い場合、フルボキサミンマレイン酸とともに抗不安薬を一緒に飲むと効果があるので、しばしば一緒に処方されていることがありますがこれは不安症状に対して有効な手立てです。
もともと、フルボキサミンマレイン酸はSSRIという抗うつ剤に分類されるにもかかわらず米国ではうつ病二は承認がなく強迫性障害や不安障害の治療に適した薬と考えられています。
フルボキサミンマレイン酸塩錠の特徴
大きく2つの特徴があります。
- 抗うつ効果よりも強迫や不安に対する作用が強い
- 抗うつ剤「SSRI」の中で他のお薬との相互作用は最も多い
フルボキサミンマレイン酸は、SSRIに属する抗うつ剤です。
ですからセロトニンを増強させることで抗うつ効果を発揮します。
まずSSRIに属する抗うつ剤にどんなものがあるか挙げてみましょう。
- レクサプロ
- ジェイゾロフト(セルトラリン)
- パキシル(パロキセチン)
- デプロメール/ルボックス(フルボキサミン)
抗うつ効果の強いものほど右に示すとこのような位置づけになります(Lancetという医学雑誌で発表されたデータをもとに作成しています。)
すると上記の順に抗うつ効果が強いというのがわかります。
もちろんこのランキングが絶対的なものではありません。
現在SSRIの中で抗うつ効果や副作用を考慮してどの抗うつ剤が一番良いという考えはありません。
しかし、重要なのは同じSSRIの中でも少し特性は違うという暗黙の何かがあり、それを示したデータであるというイメージを持ってもらうのが良いのではないかと思います。
そして上記の研究の中で抗うつ効果は弱めなのがフルボキサミンマレイン酸塩錠なのです。
だからこそ、アメリカではSSRIにも関わらずうつ病に対する承認がないのかもしれません。
しかしフルボキサミンマレイン酸がだめな薬ということではありません。
今でもしっかりと処方されていますが、その理由としてはセロトニンに対する作用というよりσ-1受容体に対する効果(正確には親和性といいます)にあります。
フルボキサミンマレイン酸塩錠のセロトニン以外への作用による強みとは
σ-1受容体
セロトニンという言葉はいまやかなり有名になりましたが、σ-1受容体も重要な機能をもちます。
フルボキサミンマレイン酸はセロトニンに作用するだけではなく、σ-1受容体に対しても働きます。
そしてこれにより2つの効果が付与されます。
<σ-1受容体に作用することでの効果>
- 不安の改善
- 脳梗塞後の機能の改善
とくに不安の改善が着目点です。
「強迫性障害」「社会不安障害」に適応があるのもこれによります。
ちなみにこのσ-1受容体に対する効果はすべての抗うつ剤にあるわけではありません。
認められているのはSSRIではこの2つです。
- フルボキサミンマレイン酸塩錠
- ジェイゾロフト錠(セルトラリン錠)
σ-1受容体への効果の強さはジェイゾロフトよりもフルボキサミンマレイン酸のほうが強く、それが最も古いSSRIがまだ現役である理由でもあります。
薬物動態と相互作用
フルボキサミンマレイン酸はSSRIの中で相互作用のリスクが最も高いお薬です。
薬物動態
半減期(最高血中濃度から半分の濃度に減るまでの時間)は約9時間と短めです。(このため1日2回の服用になります。)
お薬は肝臓で代謝されますので、肝障害がある場合投与量は少なめにするほうが安全です。
腎機能障害に関しては、投与量の調整は原則不要です。
定常濃度(毎日服用して、一定の濃度で安定するまで)は1週間程度内服し続ければ達成できます。
フルボキサミンマレイン酸は肝臓の酵素で代謝され身体の外に排出されますが、その肝臓の代謝酵素(チトクロームP450)に対して作用をしてしまうため他の薬との相互作用を起こすことがあります。
他の薬との相互作用が多い
慢性疼痛のお薬に注意
癌による痛み、慢性の疼痛に対して処方されますトラマドール(トラマール®カプセル)によっててんかん発作を起こすリスクがあります。
トラマドールには、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを阻害する(セロトニン、ノルアドレナリンの回収を邪魔することで、これらの活性が増える)という抗うつ薬と同じ作用があります。
それゆえ、抗うつ剤と同時に飲むのは危険です。
三環系抗うつ薬と同時に飲むときは要注意
相互作用により、三環系抗うつ薬が思った以上に効いてしまうことがあります。
パーキンソン症候群の薬に特に注意
SSRI全般の話になりますが、抗うつ剤は主にパーキンソン症候群に対して使用されるエフピー®(MAOI:モノアミン酸化酵素阻害薬)と組み合わせると、激しい「セロトニン症候群」が誘発されます。
致死的な副作用になるので注意が必要です。
エフピー®も半減期は長いので、もしこのパーキンソン症候群の薬を飲んでいた時には中止しても2週間は抗うつ剤を飲まないのが賢明でしょう。
逆にフルボキサミンマレイン酸塩錠を中止したあともある程度の期間(1-2週間)はエフピー®は飲まないほうが安全です。
ちなみに、エフピー®のジェネリック薬品は「セレギリン」ですのでこの名前にも注意しましょう。
血液さらさらの薬に注意
副作用に出血しやすさ(内出血しやすい、あざができやすい)があるので、血液さらさらのお薬(ワーファリン®、バイアスピリン®。プラビックス®など)を飲んでいる場合、注意しましょう。
心臓の手術後で人工の心臓弁の手術をしたり、心房細動といわれる不整脈がある場合、脳梗塞の既往がある場合に処方されていることがあります。
痛み止め(非ステロイド系抗炎症薬)に注意
主に整形外科で処方されるような非ステロイド系の鎮痛剤(ロキソニン®など、最近は市販のロキソニンもあります)は、上記の、出血のしやすさを助長するのと同時に抗うつ剤そのものの効果を減弱する可能性があります。
市販薬ならバファリン®、処方薬ならカロナール®などアセトアミノフェンの鎮痛剤なら安心です。
肝臓の酵素に作用することによる薬の飲み合わせが良くない薬の例
- 抗不安薬の濃度が上がってしまう
- <注意すべき抗不安薬>
- <安全に使用できる抗不安薬>
- コレステロールを下げるお薬(リピトール®)の濃度が上がってしまう
- アトモキセチン(ストラテラ®、注意欠陥多動性障害:ADHD)の濃度を上昇させる
- 抗精神病薬のオーラップ®(ピモジド)との併用で危険な不整脈を起こす(併用禁忌)
アルプラゾラム(コンスタン®、ソラナックス®)、トリアゾラム(ハルシオン®)
ロラゼパム(ワイパックス®)
→筋肉が融けてしまうという副作用「横紋筋融解」が起こることがあります。
フルボキサミンとカフェイン、喫煙
- カフェインや喘息で使用されるテオフィリンと一緒に飲むと、落ち着かなさや、てんかん発作が起こりやすくなる場合があります。
- フルボキサミンマレイン酸は喫煙者では増強され体からの排出が早くなる傾向があるので、通常より多めに内服しなければ効果が期待できない場合があります。
フルボキサミンマレイン酸塩錠の副作用
抗うつ効果そのものも副作用もどちらもセロトニンが関与します。
治療作用をもたらしてほしい部位以外の脳や全身の臓器にフルボキサミンマレイン酸が作用し、セロトニン濃度が高まるのです。
セロトニンとは神経伝達物質のことです。
神経は次の神経に連絡するためにセロトニンをはじめノルアドレナリンやドパミンなどの神経伝達物質を介するのです。
このようにそれぞれ役割があるのですが、これらの神経伝達物質が望まない部分で作用してしまうとそれが副作用となります。
例えば、睡眠中枢で働いてしまえば不眠になりますし、腸で不必要に働いてしまえばセロトニン作用により下痢を生じるなどです。
セロトニンを介する神経は脳に限らず胃腸などの消化管にも存在するのです。
また感情が平板化したり(淡々とした印象)、認知機能が悪くなったり(忘れっぽい)、アパシー(意欲が出ない)などの副作用が出る方がいますが、これはセロトニン作用ではなくセロトニンの増加によって相対的にドパミンが減少するために起こります。
そしてSSRI全般に言えることですが飲み始めてから治療効果が出だすのに最低でも2週間はかかり、それよりも先に副作用は出るのです。
このことは処方された抗うつ薬を飲むことに難色を示しやすくなったり、やめてしまいたくなる原因なのです。
どんな副作用が起こり得て、それがどのくらい続くなどの情報がわかれば多少安心はできると思うのでそれらを説明していきます。
フルボキサミンマレイン酸の作用点はセロトニンだけではない!!
SSRIといえば基本的にはセロトニンを増やす方向に働くのがイメージだと思いますが、フルボキサミンマレイン酸にはセロトニン以外にもう一つの作用があります。
それは先にも説明した通りです。
σ-1受容体に対する作用
セロトニンだけならまだしも「シグマって何?」と思うかもしれませんね。
σ-1受容体は神経の細胞にとってとても大事な機能を持っており、SSRIの中ではフルボキサミンマレイン酸以外にもやジェイゾロフト(セルトラリン)などにσ-1受容体と親和性のあるお薬があります。
これによるメリットは、抗うつ効果以外に抗不安作用を持つことでした。
しかし、σ-1受容体を強めることによるデメリットも同時にあるわけです。
σ-1受容体を強めることによるデメリット
- 鎮静作用
- 疲労感
つまりフルボキサミンマレイン酸の副作用は、セロトニンそのものによる副作用の他、σ-1受容体による副作用もあるのです。
フルボキサミンマレイン酸の主な副作用
[char no=1 char=”Dr.G”]副作用は多種にわたります。まずはどんな副作用があるかみてみましょう。[/char]
- 性機能障害(射精遅延、勃起不全、性欲減退(男女)、オーガズムを感じにくい(男女))
- 消化器系(食欲不振、吐き気、下痢、便秘、口の渇き)
- 中枢神経(不眠、振戦、頭痛、ふらつき)
- 自律神経(発汗が目立つ)
- 内出血(あざ)ができやすくなる、出血しやすくなる
- 電解質バランスの異常(ナトリウムが低くなる=「SIADH」と呼ばれます、症状はふらつきなど)
とにかく飲み始めの初期に問題になるのは消化器系の症状です。
具体的には、吐き気・胃の不快感、お腹のはりなどです。
食欲も落ちるので初期には痩せることもあります。
ただし、SSRIは初期にはこういった理由で痩せても徐々に太っていくことが多い薬です(何か月かかけて)。
次に、他の抗うつ剤(三環系抗うつ薬やSNRI、NaSSAなど)と比べてみましょう。
ここからもフルボキサミンマレイン酸塩錠の目立つ副作用の特徴は胃腸症状であることがわかります。
日本人でのデータをご紹介しましょう。
社会不安障害の日本人の患者さん1790名を対象にフルボキサミンマレイン酸を飲んだときのデータです。
何らかの副作用が出た割合:326名(18.2%)
- 胃腸障害が出た割合:173名(9.66%)
- 中枢神経症状が出た割合:112名(6.26%)
約10%の患者さんで胃腸症状があることがわかります。
その内訳をみてみましょう。
胃腸症状の副作用の中では、以下の3つが目立ちます。
- 吐き気
- 便秘
- 下痢
胃腸症状の多くは時間とともに改善しますが、耐え難い場合他の抗うつ薬への変更がいいでしょう。
胃腸薬を併用することもあります。
次に、中枢神経系の副作用を見てみましょう。
フルボキサミンマレイン酸による中枢神経系の副作用の中で多いのは以下の3つです。
- 眠気
- めまい
- 頭痛
一般にSSRIでは眠気が問題になることが多いですが、「不眠」の副作用が「眠気」と同じくらいの頻度で起こることが言われています。
不眠の場合は睡眠薬を使い、眠気では量の調整や他のSSRIを検討することもあります。
SSRI全体の中で、頭痛の副作用は頻度が高いものと見られていますが、実際うつ病の患者さんを対象として「プラセボ薬」でも頭痛の副作用がでることから、もしかしたらうつ病の症状そのものの可能性もあります。
また逆に片頭痛の予防効果があることもいわれています。
フルボキサミンマレイン酸の特に注意すべき副作用
3つの症候群(アクチベーション、離脱、セロトニン症候群)があります。
アクチベーションシンドローム
アクチベーションとは、活性化・賦活化のことです。
これによる症状は、良い感覚になることも不快な感覚になることも両者を含めて言います。
良い感覚になるなら良いのではと思われるかもしれませんが、それは程度の差こそあれ躁状態であり、周囲からは普通と違うと感じますし非常に衝動的になりやすく攻撃的なこともあるため取り返しのつかない行動(自殺も含め)に出ていることもあります。
不快な面としては、不眠や焦燥感(じっとしていられない)、不安が出たりします。
この場合はリチウムやデパケン、ラミクタールなどの気分安定薬の方が有効で、逆にベンゾジアゼピン系の抗不安薬が一緒にでていた場合これがすごく効く感覚が強くなります。
特に25歳未満での発生が多いのが特徴です。
飲み始めてすぐにこれらの変化が出た場合にはアクチベーションシンドロームと考え注意が必要です。
特に調子がよくなった時には、まさか副作用であるなんて思いもしないかもしれませんね。
離脱症状
正式には中止後発現症状といいます。
6週間以上抗うつ剤をつづけて内服している場合に起こり得ます。
急激に減薬したり、断薬することで身体症状(インフルエンザにかかったときのような症状)や耳鳴り、電気ショックのような感覚が襲います。
耳鳴りや電気ショックのような感覚があまりに独特なことからシャンビリなどと言われたりもしています。
通常、薬をもとの量にもどすか、数週間がまんしておさまることも多いですが、その症状の不快感も強くしばしば問題になります。
薬が体からでていってしまう時間(半減期:厳密には血中濃度が最大時の半分になってしまう)が短いのでこのことは離脱症状を起こしやすい特徴になります。
1日2回飲むお薬ですが、半減期が短いことから2回目飲むまでに離脱症状が出てしまうこともあります。
セロトニン症候群
セロトニン作用が増強しすぎたときにでる症状です。
アクチベーションや離脱症状に比べて頻度は低いですが、症状は強く過量服薬したときにも認めます。
全身の筋肉の緊張と交感神経による症状として発熱、発汗などが目立ちます。
重篤な場合、意識障害やけいれんをきたします(過量服薬の場合)。
フルボキサミンマレイン酸の副作用に対する対処法
基本的には飲み始めて経過とともにある程度おさまってきますので「じっと待つ(経過観察)」が対処法になります。
眠気がでやすい特性があるため、どうしても眠気が強くなるようであれば夕食後や就寝前に内服するようにするといいでしょう。(1日2回飲むお薬ですが、量が多くなければ夜1回だけにまとめてしまうこともあります。)
その他の副作用については、副作用は時間とともにおさまってくる傾向もあるのでそこまではデプロメールの服用量を初期は少な目にして、その後副作用が耐えられるもしくは落ち着いてきたところで増量してみるという方法も有効です。
ただそれでも大変な時は、他の抗うつ剤に変更したり他の薬を追加したりして飲むこともあります。
症状 | 併用することがある薬 |
---|---|
不眠 | 睡眠薬、抗うつ剤のトラゾドン(レスリン®、デジレル®) |
性機能障害 | バイアグラ®やシアリス®は効果を期待できますが、心臓血管系の副作用もあるので精神科でこの副作用に対し処方することはまれです。 |
食欲不振 | 抗うつ剤の中でもNaSSAに属するミルタザピン(レメロン®、リフレックス®)は食欲を増進させる方向に効きます。 |
排尿障害 | ハルナール®などのα1ブロッカー |
落ち着かない・不安 | 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系) |
ほとんどの副作用はデプロメールの服用量が多いほど、また飲み始めほど起こりやすいですが、ある程度の期間服用することによって副作用が軽くなることが多いです。
それでも、特に若い方でアクチベーションシンドロームによって躁状態になったり、自殺の衝動が強くでてしまうという症状が出るときは、薬を中止するか、抗うつ剤ではなく気分安定薬やリチウム、非定型精神病薬を飲む必要があります。
まとめ「フルボキサミンマレイン酸塩錠」
フルボキサミンマレイン酸塩錠は「デプロメール」「ルボックス」のジェネリック医薬品です。
抗うつ剤の中ではSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類されます。
ジェネリック医薬品は、効果は一緒ですが安価である点が魅力です。
フルボキサミンマレイン酸は抗うつ剤なのですが、抗うつ効果よりも強迫や不安症状に対する有用性に着目されます。
実際にアメリカではSSRIなのにうつ病での承認がないほどです。
副作用については、胃腸症状が多く、半減期の短さから減薬時には離脱症状にも注意が必要です。
最初に発売されたSSRIのジェネリック医薬品ですが、その特徴から今でも処方されることが多いお薬の1つです。
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