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レクサプロ内服中のお酒・アルコール-医師が教える抗うつ剤-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
レクサプロ内服中のお酒・アルコール-医師が教える抗うつ剤-

抗うつ剤もお酒(アルコール)もどちらも脳に作用してしまうことから避けたい組み合わせではあります。
ただ抗うつ剤を内服中にお酒を飲んでしまったからといって必ず問題になってしまうということではもちろんありません。

しかし添付文書上も主治医の先生も(もちろん私も)抗うつ剤を飲みながらのアルコールは避けるべきというのは言うまでもないでしょう。

患者さんからすればお酒を飲みたくて飲んでいるというより、飲むことによって不安や緊張が解消され楽になるという感覚で飲んでいたり、飲まないといけないシチュエーションがあったりなど様々な理由はあると思います。

Dr.G
ここでは抗うつ剤の中でもSSRIに属するレクサプロ錠(エスシタロプラム)とお酒・アルコールについてお話します。

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まずはレクサプロ錠錠の添付文書を確認してみましょう。
併用注意にアルコールの記載があります。

<3.相互作用-(2)併用注意(併用にちゅういすること)- 薬剤名等「アルコール(飲酒)」>
臨床症状・措置方法
本剤投与中は、飲酒を避けることが望ましい

機序・危険因子
他の抗うつ剤で作用の増強が報告されている。

引用元: レクサプロ錠添付文書

レクサプロ内服中にお酒を飲むとレクサプロの作用が増強する可能性を指摘しています。
「作用の増強」と聞くと、それならアルコールを摂って抗うつ効果を増強させようなんて考える人はいないでしょうがここでいう「作用の増強」というのは、副作用の増強としてとらえるのが良いでしょう。

レクサプロとお酒(アルコール)の併用を避けなければいけない理由

レクサプロとアルコールを併用しない方が良い理由はいくつかあります。
どちらも脳に作用することは大事な点で、「レクサプロとアルコールの相互作用」という観点と「うつ病に対するアルコールの作用」という2つの視点でとらえることができます。

考えられる起こりうるリスクは以下が挙げられます。


  1. うつや不安がより悪化する
  2. レクサプロ以外にもに併用する薬があるとアルコールによって危険な副作用を起こしやすくなる
  3. 認知や注意が障害される
  4. レクサプロの副作用が強くなりやすい
  5. アルコール依存症のリスク

それぞれ見ていきましょう。

1.うつや不安がより悪化する

レクサプロとの相互作用というより、うつ病に対するアルコールの作用です。
アルコールは一時的に症状を改善させたかのような感覚をもたらすことから、特に不安症状が強い方では意図的に飲んだり飲まないと眠れない人もいます。
実際うつになって不安緊張しやすい人ほどお酒を飲む量が増えたという方が多いです。

ただ長期的にはうつ症状や不安症状を増悪させる方向にいきますし、睡眠の質を落とす要因になってしまうのです。

つまりアルコールを日ごろから飲んでいた場合、いくら抗うつ薬をのんでいても悪い方向に進んでしまう可能性があるのです。

アルコールがうつに効いているような感覚があるのは、あくまで感覚であって長期的にはより症状は増悪していくことを知っておいてください。

2.レクサプロ以外に併用する薬があるとアルコールで危険な副作用を起こしやすくなる

抗うつ剤とよく一緒に処方されるお薬に、抗不安薬(デパスなど)や睡眠薬(レンドルンミン、サイレースなど)があります。
これらがアルコールにあわさると、血液中の薬の濃度が異常に上がることがあります。

レクサプロによる症例ではありませんが、同じSSRIに属する抗うつ剤「パキシル」を飲みながら、アルコールも飲んでいたことによる死亡例が日本であります。
この例ではパキシルだけではなく、サイレース(フルニトラゼパム)も同時に飲んでおりこれらがアルコールと相互作用をもたらし濃度が上昇しすぎたためと考えられています。

参考文献
Kinoshita H, et al. A fatal case of poisoning with ethanol and psychotropic drugs with putrefactive changes. Soud Lek. 2015;60(2):25-7.

3.認知や注意が障害される

アルコールを慢性的に飲んでいるだけでも認知や注意・反応速度が鈍くなりますが、抗うつ薬と合わさるとより障害されやすくなります。

4.レクサプロの副作用が強くなりやすい

とくにアルコールと関連するものは以下のものです。


  • 日中の眠気
  • 頭痛
  • 性機能障害
  • 不整脈

レクサプロは眠気の副作用があります。(逆に不眠になることもありますが)
日中の眠気は活動を大きく妨げますし、夜眠れないからと言ってアルコールとわざと併用する方もいらっしゃいますが、このことは余計に睡眠の質を悪化させ悪循環にはまっていってしまいます。
あくまで深く眠れた感覚があるだけで睡眠というより、気を失っているのと同じくらいの質かもしれません。

また頭痛や性機能障害(勃起障害、射精障害、オーガズムを感じないなど)が出ることもあります。

不整脈に関してはQT延長という心電図の異常から致死的な不整脈に発展することがあります。
QT延長という不整脈は無症状です。
心電図をとって初めてその形をとらえられるのですが、この状態は潜在的に危険な不整脈に移りやすい状態なのです。
アルコールもQT延長を起こすリスクがあり、抗うつ剤はそもそもQT延長をきたしやすいお薬でもあります。
ですからこれらの相乗作用は場合によって危険な不整脈を誘発させかねないのです。

参考文献
Otero-Anton E, Gonzalez-Quintela A, Saborido J, et al: Prolongation of the QTc interval during alcolol withdrawal syndrome. Acta Ca rdiol 1997; 52: 285-294.

5.アルコール依存症のリスク

レクサプロとの相互作用ではありませんが、うつ病ではアルコールを含む物質乱用のリスクが高く依存症になるリスクを秘めています(逆もあります)。
内服中に1回飲んだからといって依存症になるものではありませんが常習性がでてきます。

もし依存症になってしまった場合、アルコール依存症のケアも同時に行わなければなりません。
逆にアルコールを飲んでいる場合には抗うつ剤開始前に正直にお話していただいた方が治療はしやすくなります。


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レクサプロ服用中にアルコールを飲んでしまった場合

通常はすぐに悪影響を及ぼすことはないのですが、むしろ他の睡眠薬や抗不安薬との併用では問題が起こることがあります。

もしアルコールを飲んでしまっても、レクサプロはそのまま内服していた方が良いでしょう。
ただし抗不安薬や睡眠薬の服用を避けてください。

睡眠薬を服用しなくてもアルコールによって一時的に緊張や不安は落ち着いていることが多く、眠りの質は悪いものの寝つきには問題はないことが多いはずです。
中途覚醒することが多いかもしれませんがそれでもその時点での睡眠薬の服用も避けましょう。
翌日は、だるさなどがあるかもしれませんがそれはアルコールとパキシルとの相乗効果というよりは睡眠の質やアルコールそのものの影響と考えるべきでしょう。

先にも書きましたが、抗うつ薬と抗不安薬・睡眠薬とアルコールが合わさると危険な状態になった報告があることからアルコールを飲みつつ、普段飲んでいるすべての薬物も通常通り内服することには問題があります。
ですから、アルコールを飲んでしまった場合には、抗不安薬・睡眠薬を一度減量するかスキップするのが良いでしょう。

一方でアルコールを飲んでレクサプロ(エスシタロプラム)を飲まないとなると離脱症状のリスクがあるため、アルコールを飲んでしまってもレクサプロを中止してしまうのは症状をつくってしまうことになるでしょう。

ラットを使った動物実験でもアルコールだけを投与した場合と、アルコールとSSRI(抗うつ剤)をともに投与した場合とでは、肝臓や膵臓のダメージが小さい(臓器から放出される炎症反応の物質が少ない)ことが示されています。

もちろん動物実験での話なのでこれを即座にヒトに当てはめて良いわけではないですし、いくらアルコールによるダメージが小さいかもといってもジェイゾロフトを飲んでいたアルコール依存症の方が肝硬変にならなかったなどのデータはないですからね。

参考文献
Hu TM, et al. The use of a selective serotonin reuptake inhibitor decreases heavy alcohol exposure-induced inflammatory response and tissue damage in rats. J Psychopharmacol. 2013 Oct;27(10):940-6.

原則、アルコールと薬は併用しないことが大前提です。
ただ精神科・心療内科の特性上、アルコール依存になりやすい状況やアルコールに頼らざるを得ない方もいらっしゃるためこのような情報を書きました。

問題となるのはアルコールを1回飲んでしまったことより、これを長期的・常習的に繰り返すことです。
アルコール依存症が背景にありそうな場合、こちらの治療も一緒に行っていくことが大切になります。


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レクサプロを内服しているのにお酒を飲みたくなってしまったら

「レクサプロを内服中にアルコールを飲みたくなったらどうしましょう?」

この質問に「やめましょう!」と言うことは簡単ですが、本人はそれをわかっていての飲酒衝動がありますよね。
飲酒欲求におそわれた時の対策は以下の記事が参考になります。

ちなみに自分の意思ではなく、飲み会に出席しなければならなくなった場合はその対処法は以下の記事が参考になります。

まとめ「レクサプロ(エスシタロプラム)とお酒・アルコール」

レクサプロはもちろん抗うつ薬は原則アルコールを避けるようにと書かれています。
と言っても、実際問題アルコールと精神疾患は切っても切れない環境でもあってどうしても飲酒の問題は付きまといます。
今回は飲んでしまった場合、飲酒の欲求、飲み会での対応などふくめてお話しました。

アルコールを飲んだからといって、レクサプロを抜くことは避けてください。
ほとんどの場合で問題にならないことが多いでしょうが、むしろ抜くことで離脱症状のリスクがあります。

ただし長期に常習的にこれをやっている場合はうつ病や不安症状は悪化していくので、その場合飲酒衝動に対する治療アプローチが必要になるでしょう。

またアルコール常習者では、心電図でQT延長を認めることがありこれに抗うつ薬が加わると危険な不整脈を起こす可能性すらありますので、アルコールを1回のんでしまったことよりもアルコールを常習していて抗うつ薬も一緒に飲むことが大きな問題なのです。

 

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