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レクサプロとパニック障害・社会不安障害-医師が教える抗うつ剤-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
レクサプロとパニック障害・社会不安障害-医師が教える抗うつ剤-

うつ病とパニック障害、うつ病と社会不安障害は高頻度に合併することのある疾患です(データによってばらつきはあります)。
パニック障害や社会不安障害など不安障害の治療には以前はベンゾジアゼピン系抗不安薬が処方されていましたが、現在はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を中心に抗うつ剤を治療薬としていることが多くなっています。

ここではSSRIに属するレクサプロの視点から不安障害について説明します。


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パニック障害と社会不安障害

これらの治療にレクサプロの効果が期待できるかというお話をしていくのですが、その前にこれらの疾患についてまず説明しましょう。

パニック障害とは

繰り返しパニック発作を起こすものをパニック障害といいます。

そもそもパニック発作とは、数分から数十分続くこともある激しい恐怖や不安をいいます。
その恐怖や不安は死ぬのではないかと思うくらいの勢いで差しせまり、混乱し呼吸困難や動悸、発汗などの身体の症状も併発します。
そしてその症状は突然やってくるので全く予期せぬときにおそわれることとなります。

社会不安障害(社交不安障害)でも、社交恐怖という状況によってパニック様の発作を起こしますが、このときにはその状況によって誘発されますのでいわゆるパニック発作の定義でもある「予期できない」に該当しないためこれをパニック発作とは呼びません。
また、内科的疾患や薬の副作用で出現することもあるためもちろん甲状腺機能異常や薬物中毒などに伴うパニック発作をパニック障害とは呼びません。

社会不安障害とは

正式には社交不安症(社交不安障害)と言います。

見られたリ、見知らぬ人と接するときに恐怖を感じやすく、具体的には社交的な集まりや口頭での発表、初めての人と出会うことなどの社交的な場面で恥ずかしい思いをすることを恐れます。
十分主張ができなかったり、他人と視線を合わせることができなかったり少なかったりします。
社交の場に出る前に、アルコールを飲んでからと自身でコントロールしているような例も見受けられます。

もちろんこのような事は一般的にどんな人でも潜在的にあるでしょう。
ですから具体的には、一過性ではなく本人はそれによって苦しんでおり、本当はその場に行きたいのに回避したりして社会的にも問題が出ていなければなりません

中でも、その場面が特定の場面だけ症状がでることがあります(公衆の面前で話すときだけなど)。
その場合、パフォーマンス限局型という名称がつけられます。

症状としてパニック発作となるときもありますが、社交不安症とパニック症との違いはなんといっても自身へのマイナス評価を過度に気にしているのか(社交不安症)、パニック発作が起こってしまわないかという恐怖に向いているか(パニック症)の違いです。

パニック障害と社会不安障害の位置づけ

精神障害の病名は、症状を医師が聴取してそこから診断名をつけるためどうしてもばらつきが出やすくなってしまうのが問題です。
そのため研究や公的な書類の中でその診断にばらつきが出ないようにするための指標がマニュアルとして出ています。

そのひとつにDSM-5ディーエスエムファイブというものがあります。
これはアメリカ精神医学会によって出版されている書籍なのですが、正式にはDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(精神障害の診断と統計マニュアル第5版)といいます。

DSM-5の「5」は第5版と言う意味で、2013年5月に刊行されました。
この中で病気は以下のようにカテゴリー分けされています。

  1. 神経発達症群/神経発達障害群
  2. 統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群
  3. 双極性障害および関連障害群
  4. 抑うつ障害群
  5. 不安症/不安障害群
  6. 強迫証および関連症群/強迫性障害および関連障害群
  7. 心的外傷およびストレス因関連障害群
  8. 解離症群/解離性障害群
  9. 身体症状および関連症群
  10. 食行動障害および摂食障害群
  11. 排泄症群
  12. 睡眠-覚醒障害群
  13. 性機能不全群
  14. 性別違和
  15. 秩序破壊的・衝動制御・素行症候群
  16. 物質関連障害および嗜癖性障害群
  17. 神経認知障害群
  18. パーソナリティ障害群
  19. パラフィリア障害群
  20. 他の精神疾患群
  21. 医薬品誘発性運動障害群および他の医薬品有害作用
  22. 臨床的関与の対象となることのあるほかの状態

この22項目に大きく分類されていますが、パニック障害と社会不安障害(社交不安障害)は「5.不安症群/不安障害群」に分類されます


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レクサプロによるパニック障害・社会不安障害の治療

レクサプロとパニック障害の治療

パニック障害の治療で有効性が高いのは薬物治療認知行動療法です。

日本でパニック障害に適応がある抗うつ剤は、パキシル(パロキセチン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)です。
一応このように決まっていますが、レクサプロをはじめSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はパニック障害に有効です。

一応抗うつ剤について全体をお話しますと、抗うつ剤は当然うつ病に処方されるお薬なのですが様々なクラスがあり、それによって抗うつ効果や副作用に違いがあります。
うつ病・うつ状態に最初に処方されることが多いのが、副作用と抗うつ効果のバランスのとれた薬剤でそれがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)なのです。
その他、SNRI(選択的セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)やNaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)も最初から使われることの多いお薬です。

そして少し古いお薬で抗うつ効果も強いものの副作用も目立てしまうのが三環系抗うつ薬です。
その他にも抗うつ剤はありますが、このあたりがメジャーな抗うつ剤です。

そしてパニック障害にはSSRI、SNRI、NaSSA、三環系抗うつ薬いずれも有効です

参考文献
Andrisano C, et al. Newer antidepressants and panic disorder: a meta-analysis. Int Clin Psychopharmacol. 2013 Jan;28(1):33-45.

ただパニック障害ではその発作が本人にとってはとても深刻で薬の即効性は重要視される因子です。
即効性はお薬の鎮静作用によるものですが、SSRIの中ではパキシルが最も鎮静作用があります。

抗うつ剤のSSRIの中でレクサプロは抗うつ効果と副作用の面で非常にバランスのとれたお薬なのですが、パニック障害に対する即効性と言う意味ではパキシル(パロキセチン)や三環系抗うつ薬にはかないません。
もちろん三環系は副作用が多いので、結局はSSRIの中でパキシル(パロキセチン)が選択されることになります。

日本ではジェイゾロフト(セルトラリン)もパニック障害への適応がありますが、パキシル(パロキセチン)の副作用に耐えられない場合の選択肢となるでしょう。

抗うつ剤と同様、効果が現れたらそのまま1年ほどは継続して飲むことが再発予防として大事です。
ただ再発率は非常に高いため、治療が中止できない例もあります。

実は即効性という観点からは抗うつ剤よりも抗不安薬(特にベンゾジアゼピン系抗不安薬)が最も即効性があります
しかし、長期的な使用になるため依存性・認知機能障害・乱用のおそれから現在はパニック障害のキーとなるお薬は抗うつ剤「SSRI」となります。

レクサプロはパニック障害に有効ではあるが、即効性の観点からはパキシル(パロキセチン)が勝る

レクサプロと社会不安障害の治療

社交不安症に対して有効な治療は精神療法と薬物療法とされています。
薬物療法においてはこちらもパニック障害と同様に基本的には抗うつ剤のSSRIが有効です。

日本で社会不安障害に適応のあるSSRIはパキシル(パロキセチン)、レクサプロ、デプロメール/ルボックス(フルボキサミン)です。

SNRIではイフェクサーSRが社会不安障害に有効であることは世界的には認められているのですが、まだうつ病で承認がとられたばかりの状態ですから当然日本では未承認です。

一方で、NaSSAは社会不安障害への治療効果はいまひとつですから基本的にはSSRIが処方されることになります。

参考文献
Schutters SI, et al. Mirtazapine in generalized social anxiety disorder: a randomized, double-blind, placebo-controlled study. Int Clin Psychopharmacol. 2010 Sep;25(5):302-4.

ベンゾジアゼピン系抗不安薬もパニック障害同様有効です。

レクサプロは社会不安障害に有効なSSRIで、日本で承認もされている

まとめ「レクサプロとパニック障害・社会不安障害」

ベンゾジアゼピン系抗不安薬はパニック障害や社会不安障害といった不安障害に有効がありしかも即効性もあるのですが、その依存性などが問題で抗うつ剤(特にSSRI)にとって代わってきています。

また不安障害はうつ病との合併頻度も高く、SSRIが選択されることには非常に意味があります。

レクサプロは抗うつ効果と副作用のバランスがとれた優れたSSRIのひとつで、承認としては社会不安障害しかありませんがパニック障害および社会不安障害に有効な薬剤です。

 

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  1. 社会不安障害で半年ほどレクサプロを10mg(一錠)飲んでいます。その前は断薬したり飲んだりと5年ほどしています。最初に会った極度の不安や憂鬱感はすっかりなくなりましたが、まだ定例の会議前等でも不安があり、ロラゼパム0.5mgを毎日のように飲んでいます。安定剤は眠くなりますし耐性もあるのであまり飲みたくないのですが、どのような治療法が考えられますか?レクサプロ増量が1番スタンダードでしょうか。病院は30秒診察で、なかなかじっくり相談できるところが見つかりません。メールでも構いませんのでお返事いただけるとありがたいです。

    • コメントありがとうございます。
      Dr.Gです。

      不安が不安を呼ぶ悪循環がこの疾患の本態です。
      お薬はその中で不安を軽減し悪循環を断つために用いますが、基本的には認知に対してもアプローチすることも重要です。

      まずお薬のお話をしますと、基本的に推奨されるお薬はレクサプロをはじめとするSSRIやその他SNRIといった新規抗うつ薬が第一選択となります。
      そしてロラゼパムなどのベンゾジアゼピン系の抗不安薬を短期的に併用し症状をコントロールしていきます。

      レクサプロに代表されるSSRIの社会不安障害に対しての医学的なエビデンスは確立されていますし、このお薬が処方されていることに関しては特にもんだいないどころか、通常こういった抗うつ薬はある程度の量(ときに最大量)を飲まなくてはいけませんが、レクサプロの最大の利点は10mgという開始量ですでに十分量であることです。
      とはいっても十分な効果が望めない場合には1日量を20mgに増量するメリットはあると思います(副作用とのバランスで)。

      おっしゃる通り、ロラゼパムなどの抗不安薬には即効性がいくらか期待できますが耐性や依存性の観点を考えるとお薬をいじるならおそらくレクサプロの増量が教科書的な回答となります。

      そして社会不安障害に対する精神療法も薬物療法に並んで重要な治療アプローチです。
      最も推奨されているのは認知行動療法(CBT)ですが、実際には一般の外来では人的にも時間的にも制約があることから、残念ながらこのCBTをやっている施設もまだ多くはありません。

      基本的に精神療法でお伝えしたいメッセージは「不安」に対する過度なとらわれや過敏性から悪循環の回路、空回りがはじまっているので、どれだけ不安を「0」にするのではなく共存しスルー出来るかがポイントになります。

      身体症状は不安からくる自律神経症状であって、自律神経症状を治せば不安がなくなるわけではなく、過度に考えすぎてしまう不安が症状を悪化させそのことからまた不安が出て・・・の繰り返しなのです。

      「不安を完全に取り去ること」「不安はあってはいけない」「身体症状はあってはいけない」という極端な感覚から、誰でも不安というものはあるがそれと共存し他のものに意識が向いている間はそのことをスルー出来ていることに気づくことが重要なのです。

  2. とてもご丁寧に答えていただきありがとうございます。
    精神療法が大事なのはわかっているとはいえ、なかなか機会もなく効果の即効性もわからないので薬に頼ってしまっています。
    レクサプロの増量も相談して見つつ、こちらでいただいたアドバイスを意識して生活していきたいと思います。
    本当に感謝いたします。

    • 返信ありがとうございます。

      精神療法のアドバイスは端的で申し訳ありません。
      言うは易し、もしくはそんなことはわかっているがその感覚になれないというのもよくわかります。

      最近はそういった強迫的な感覚に対する治療として磁気刺激療法(TMS)というものもでてきています。
      表向きは大うつ病の治療機器ですが、磁気刺激の種類によっては強迫的な観念(ぐるぐる思考)を治療することもできるという報告がちらほらあるようです。

      まだ保険適応はなく敷居が高いのでおすすめできるわけではありませんし、たんにうつ病治療としてのTMSでは効果が期待できないですが、症状による困り度との天秤では選択肢の1つではあるのかもしれません。

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