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パキシルとアルコール(お酒)

パキシルに限らずですが、抗うつ剤とお酒(アルコール)は避けたい組み合わせではあります。

ただ、お酒を飲みたくて飲んでいるというより不安や緊張が解消され楽になるという理由で飲んでいたり、飲まないといけないシチュエーションがあったりなど様々な理由はあると思います。

ここではSSRIの中でも使用頻度の高いお薬であるパキシル錠とアルコールについてお話します。


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パキシルの添付文書では当然ながら併用注意のひとつに挙がっています。
しかし、明確に何がだめかは示されてません。

<併用注意-16. 薬剤名等「アルコール(飲酒)」>
臨床症状・措置方法
本剤服用中は、飲酒を避けることが望ましい

機序・危険因子
本剤との相互作用は認められていないが、他の抗うつ剤で作用の増強が報告されている。

パキシルを飲みながらアルコールを飲むことの何が問題なのかまずは説明します。

なぜパキシルとお酒を一緒に飲んではいけないの?

アルコールと併用してはいけない理由はいくつかあります。


  1. うつや不安がより悪化する
  2. パキシルの他に併用する薬があるとアルコールで危険な副作用を起こしやすくなる
  3. 認知や注意が障害される
  4. 眠気が強くなりやすい
  5. アルコール依存症のリスク

1.うつや不安がより悪化する

アルコールは一時的に症状を改善させたかのような感覚をもたらすことがあります。
特に不安症状に関しては軽快しやすく、実際うつになって不安緊張しやすい人ほどお酒を飲む量が増えたという方が多いです。
ただ長期的にはうつ症状や不安症状を増悪させる方向にいきますし、睡眠の質を落とす要因になります。

2.パキシルの他に併用する薬があるとアルコールで危険な副作用を起こしやすくなる

抗うつ剤とよく一緒に処方されるお薬に、抗不安薬(デパスなど)や睡眠薬(レンドルンミン、サイレースなど)があります。
これらがアルコールにあわさると、血液中の薬の濃度が異常に上がることがあります。

これに関してはパキシルを飲みながら、アルコールも飲んでいたことによる死亡例は日本での報告があります。
この例ではパキシルだけではなく、サイレース(フルニトラゼパム)も同時に飲んでおりこれらがアルコールと相互作用をもたらし濃度が上昇しすぎたためと考えられています。

【参考文献】
Kinoshita H, et al. A fatal case of poisoning with ethanol and psychotropic drugs with putrefactive changes. Soud Lek. 2015;60(2):25-7.

3.認知や注意が障害される

アルコールを慢性的に飲んでいるだけでも認知や注意・反応速度が鈍くなりますが、抗うつ薬と合わさるとより障害されやすくなります。
このことは仕事における能率を落としたり、特に運転する人にとっては危険な事態になりやすくなります。

4.眠気が強くなりやすい

パキシルはSSRIですので鎮静系抗うつ薬ではありませんが、SSRIの中でも眠気を起こしやすい抗うつ剤です。
アルコールと合わさることでこの症状は如実にでやすくなることがあります。
(パキシルでは鎮静作用に影響を及ぼさないというデータもあります。)

日中の眠気は活動を大きく妨げますし、夜眠れないからと言ってアルコールとわざと併用する方もいらっしゃいますが、このことは余計に睡眠の質を悪化させ悪循環にはまっていってしまいます。
あくまで深く眠れた感覚があるだけで睡眠というより、気を失っているのと同じくらいの質かもしれません。

「アルコールを飲むとよく眠れる」は本当? 【医師が解説します】

5.アルコール依存症のリスク

うつ病ではアルコールを含む物質乱用のリスクが高く依存症になるリスクを秘めています(逆もあります)。
もし依存症になってしまった場合、アルコール依存症のケアも同時に行わなければなりません。
逆に抗うつ剤開始前に、アルコールを飲んでいる場合には正直にお話していただいた方が治療はしやすくなります。

アルコール依存症をわかりやすく理解する【本人家族のためのガイド】

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パキシル服用中にアルコールを飲んでしまった場合

通常はすぐに悪影響を及ぼすことはないのですが、むしろ他の睡眠薬や抗不安薬との併用では問題が起こることがあります。

もしアルコールを飲んでしまっても、パキシルはそのまま内服してください。
同時に抗不安薬や睡眠薬の服用を避けてください。

アルコールによって一時的に緊張や不安は落ち着いていることが多く、眠りの質は悪いものの寝つきには問題はないことが多いはずです。
中途覚醒することが多いかもしれませんがそれでもその時点での睡眠薬の服用も避けましょう。
翌日は、だるさなどがあるかもしれませんがそれはアルコールとパキシルとの相乗効果というよりは睡眠の質やアルコールそのものの影響と考えるべきでしょう。

パキシル(パロキセチン)はアルコールによる薬物動態の変化も鎮静作用などへの影響は認められていません。
しかし先にも書きましたが、抗うつ薬と抗不安薬・睡眠薬とアルコールが合わさると危険な状態になった報告があることからアルコールを飲んですべての薬物も通常通り内服することは問題があります。

アルコールを飲んでパキシルを飲まないとなると、パキシルの離脱症状のリスクがあるため万が一アルコールを飲んでしまっても即座にパキシルを勝手に抜くということはしないでください。

ラットを使った動物実験でも、アルコールだけを投与した場合とアルコールとSSRI(実験ではパキシルを使用)をともに投与した場合とでは、肝臓や膵臓のダメージが小さい(臓器から放出される炎症反応の物質が少ない)ことが示されています。
もちろん動物実験での話なのでこれを即座にヒトに当てはめて良いわけではないですし、パキシルを飲んでいたアルコール依存症の方が肝硬変にならなかったなどのデータはないですからね。
でもアルコールとパキシルの組み合わせが暗黙で悪いというイメージでもないのかもしれませんね。

【参考文献】
Hu TM, et al. The use of a selective serotonin reuptake inhibitor decreases heavy alcohol exposure-induced inflammatory response and tissue damage in rats. J Psychopharmacol. 2013 Oct;27(10):940-6.

原則、アルコールと薬は併用しないことが大前提です。
でも精神科・心療内科の特性上、アルコール依存になりやすい状況やアルコールに頼らざるを得ない方もいらっしゃるためこのような情報を書きました。
大事なことはアルコールを1回飲んでしまったことより、これを長期的に繰り返す場合です。
アルコール依存症が背景にありそうな場合、こちらの治療も行っていくことが大切になります。

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パキシルを内服していてアルコールを飲みたくなったら

「パキシルを内服していてアルコールを飲みたくなったらどうしたらいいですか?」
この質問に「やめましょう!」と言うことは簡単ですが、本人はそれをわかっていての飲酒衝動がありますよね。
飲酒欲求におそわれた時の対策は以下の記事が参考になります。

飲酒してしまう4つの状況と今日からできる対策【アルコール依存症】

ちなみに自分の意思ではなく、飲み会に出席しなければならなくなった場合はその対処法は以下の記事が参考になります。
もし、幹事さんや周囲の人に自信が向精神病薬を飲んでいることを言える環境ならそれが一番安心ですね。

【アルコール依存症】お酒を飲まなくてよくなるための7つのコツ

まとめ「パキシル(パロキセチン)とアルコール」

パキシル自体がアルコールによって薬物動態に影響を及ぼすことはないようですが、それでも抗うつ剤の中には影響のある報告があるものもあるため原則アルコールは避けるようにとなっています。
とはいいつつも、実際問題アルコールと精神疾患は切っても切れない環境でもあってどうしても飲酒の問題は付きまといます。
今回は飲んでしまった場合、飲酒の欲求、飲み会での対応などふくめてお話しました。
原則、パキシルはアルコールを飲んだからといってやめないことが大切です。

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