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パキシルの眠気の副作用

抗うつ剤の不快な副作用の1つに眠気があります。
特に日中の眠気は日常生活に支障をきたしてしまいますから、Web調査でも眠気の副作用が最もつらかったとして報告されています。(1位:眠気、2位:だるさ、3位:胃の不快感)

【参考文献】渡邊衡一郎, 菊池俊暁. 臨床精神薬理 11:2295-2304,2008.

SSRIは抗うつ剤の中では比較的頻度は低いものの、眠気がでることがあります。
(逆に不眠になることもあります。)
ここではSSRIに分類されるパキシル錠(パキシルCR錠、パロキセチン錠)の眠気についてのお話をしたいと思います。

パキシルを飲み始め、日中の眠気が出てしまった場合、どんな対処法をとることができるかについてもあわせてご紹介します。


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パキシル錠で眠気が出てしまう原因について

パキシル(パロキセチン)はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ剤です。
ですから、「セロトニンに作用する」というのはイメージしやすいと思います。

ちなみに、セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどを神経伝達物質といいますが、これは脳をはじめ全身の神経の連絡に欠かせない物質で、それぞれの伝達物質に役割が割り当てられています。

セロトニン、ドパミン、ノルアドレナリンはうつ病に関連してよく出てくる神経伝達物質です。
神経伝達物質

パキシルはこのセロトニンが関連する神経系を強めることで賦活化ふかつか、すなわちアクティブな方向にもっていこうとするわけですから、基本的な作用だけで見れば「眠気」というより「不眠」につながることになります。

ところが実際には眠気がでることがあります。
これはセロトニンという神経の伝達物質に対して、それとは別の伝達物質である「ヒスタミン」が関与するためです。

パキシルはセロトニンを増強する作用がメインですが、ヒスタミン(H1)をブロックする作用も持っているためこれが眠気を作ります。
ヒスタミンをブロックするとなぜ眠気がでるのか、詳しく説明していきましょう!!

眠気は神経伝達物質「ヒスタミン」を抑えることによる

ヒスタミンの作用と眠気

ヒスタミンというと、一般的には花粉症の薬や胃薬でよく聞くキーワードです。
有名な胃薬「ガスター10」は「H2ブロッカー」に属する胃薬ですが、この「H」はヒスタミン(Histamine)の「H」です。
H2ブロックとは、ヒスタミンの2番(H2)をブロックして胃酸を抑えますということですね。

一方で、花粉症をはじめアレルギーで悪さをするヒスタミンは、H1といってヒスタミンの1番のことです。

このようにヒスタミンといっても1番とか2番とか3番とか存在する(ビタミンA、B、Cのような種類がある)のです。
胃薬(H2のブロック)は飲んでも眠くなりませんが、アレルギーの薬としての抗ヒスタミン薬(H1のブロック)は眠気がでますよね?

つまり、ヒスタミンの1番(H1)が眠気と関連しているのです。
それもそのはず、H1はアレルギー反応のような免疫に関与する以外に、脳では覚醒に関与している神経伝達物質なのです。
それゆえ、H1をブロックするとアレルギーも治まるけど、覚醒レベルも落ちるので眠気が出てしまうのです。

それに対してヒスタミンの2番(H2)は胃で胃酸分泌に関与する神経伝達物質で、脳にもあるのですが脳での作用はまだ明らかになっていません。

ヒスタミンと抗うつ剤

SSRIではこのH1をブロックする作用が多少あるため眠気が出るというわけです。

抗うつ剤の中でも特にH1ブロック作用の強い抗うつ剤があります。
三環系・四環系抗うつ薬」や「単環系抗うつ薬:デジレル・レスリン」、それから四環系抗うつ薬から派生したNaSSAという新しいクラスに属する「リフレックス・レメロン」などは特にH1をブロックする作用が強く、眠気の作用も強く「鎮静系の抗うつ薬」といわれます。

それに対してパキシルをはじめとしたSSRIやSNRIなどはH1をブロックする作用はそこまで強いわけではないので「非鎮静系抗うつ薬」になります。

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他の抗うつ剤との眠気の比較

上記で説明した通り、抗ヒスタミン作用(ヒスタミンをブロックする作用)が強い抗うつ薬ほど眠気がでます。
その他、ヒスタミン以外に覚醒に関わる神経伝達物質「アセチルコリン」「ノルアドレナリン」をブロックしてしまう効果が強いほど眠気は出やすくなります。
「三環系・四環系抗うつ薬」、「単環系抗うつ薬:デジレル・レスリン」、「NaSSA:リフレックス・レメロン(ノルアドレナリンはむしろ増強)」が睡眠作用をもたらす鎮静系の抗うつ薬です。
逆に言えば、不眠が目立つうつ病では有効に作用しますね。

パキシルなどのSSRI、その他SNRIは非鎮静系ですので三環系やNaSSAに比べれば眠気の頻度も強さも低くなります。
ただSSRIの中ではパキシル(パロキセチン)やデプロメール/ルボックス(フルボキサミン)は眠気がでやすいほうで、ジェイゾロフトやレクサプロは弱めです。

これは抗ヒスタミン作用以外にも、パキシルには副交感神経(リラックスと関与する自律神経)を抑える抗コリン作用も少しあることに関係しています。

下の図は鎮静(眠気)の強さを表します。
セロトニンノル・アドレナリンへの作用と鎮静作用

右にいくほど眠気が強くなります。
上に行くほどセロトニン作用が強く、下ほどノルアドレナリン作用が強くなります。

パキシルはSSRIでセロトニンに主に作用しますので左上に位置しています。
SSRIは黒字で示していますが、この中では一番眠気がきやすいのがわかると思います。

SSRIは鎮静系の抗うつ剤ではないが、SSRIの中でいうならパキシルは眠気の副作用は出やすい

抗うつ剤の中での眠気の強さの一覧表を載せておきます。

抗うつ剤眠気抗うつ剤眠気
<SSRI><三環系>
ルボックス
デプロメール
フルボキサミン
+トリプタノール
アミトリプチリン
+++
パキシル
パロキセチン
+トフラニール
イミドール
+
ジェイゾロフト
セルトラリン
+-アナフラニール+
レクサプロ+-ノリトレン+
<SNRI>アモキサン+
トレドミン+-<四環系>
サインバルタ+-テトラミド++
イフェクサー+-ルジオミール++
<NaSSA><その他>
リフレックス
レメロン
++デジレル
レスリン
++
ドグマチール
スルピリド
+-
今日の治療薬(一部改変)

パキシルによる眠気への対策法

2週間程度は経過をみてみる

パキシルに限らずほとんどの抗うつ剤で共通することですが、内服し始めた初期に副作用が目立ち1-2週間程度で副作用がおさまってくる傾向があります。
眠気も同様で、最初だけということも多いです。

パキシルの飲むタイミングを変えてみる

添付文書通り処方されればパキシル錠(パキシルCR錠、パロキセチン錠)は「1日1回夕食後」に内服するのですが、「寝る前」に変更してみるのも手です。
(人によっては「朝」に飲むと大丈夫というときもあります。)

減薬する

飲み始めてどうしても眠気が日常生活の支障になる場合には減薬を考えます。
パキシル錠(パロキセチン錠)は通常10mgから、パキシルCR錠で12.5mgから内服をスタートしますが、眠気が強く出て困るようであれば減薬がひとつの手になります。
パキシルは割れる仕様になっていませんし、CR錠は特に割ってはいけない錠剤です。
飲み始めならいったん中止して、より少量の5mg錠から再スタートを考えます。

ただパキシルにこだわる理由がなければこの場合他の抗うつ剤に切り替えた方が良いかもしれません。
中止したときにはおそらく初診日から2週間後に次来てくださいと言われているはずですので必ず主治医に報告するようにしましょう。(飲み始めて数週間たっている場合、かってにやめるとそれによる別の副作用のリスクがあるので、中止して相談して良いのは飲み始めのときだけです!)

また、眠気はうつ病がよくなってきたころに目立つ場合があります。
とくに長く飲んでいると睡眠が適度にとれていたとしても、あくびが多くなったり、疲労感を感じるようになったりすることもありますのでこの場合は主治医と相談の上減薬を考えます。
この時には数か月以上内服しているはずですので、自己判断での減薬や断薬は厳禁です。

パキシルの例ではないですが、副作用(吐き気や眠気)が血液中の薬の濃度と関係なく出現したという報告もあります。
となると、減薬しても改善しないかもと思うのですが、実際の臨床においては減薬によって改善が見られることが多いです。

【参考文献】
Härtter S, et al. Serum concentrations of fluvoxamine and clinical effects. A prospective open clinical trial. Pharmacopsychiatry. 1998 Sep;31(5):199-200.

パキシルから他の抗うつ剤に変えてもらう

減薬しても改善がない場合に行いますが、長くパキシルを飲んでいた場合には抗うつ薬の変更時にも離脱症状がおこりうることを知っておきましょう。
眠気が少ないものとなると、SSRIの中であればジェイゾロフト(セルトラリン)、SNRI(サインバルタなど)を通常考えます。

パキシル錠(パロキセチン錠)からパキシルCR錠に切り替えるという考えもあります。
しかし、CR錠は消化器系の副作用は優位に抑えますが、眠気に関しては通常の錠剤もCR錠もデータ的にはそんなにかわらないかもしれません。

【参考文献】
Higuchi T, et al. Paroxetine controlled-release formulation in the treatment of major depressive disorder: a randomized, double-blind, placebo-controlled study in Japan and Korea. Psychiatry Clin Neurosci. 2011 Dec;65(7):655-63.

他の薬による可能性はないか考える

抗うつ薬は単独で処方されていないことが多々あります。
例えば睡眠薬(特にベンゾジアゼピン系睡眠薬)や非定型抗精神病薬(エビリファイ、ジプレキサ、リスパダール、セロクエルなど)、他の抗うつ薬(三環系、NaSSAなど)があわせて処方されている場合があります。
どの薬があやしいか主治医の先生と相談して減薬を考慮してもらいましょう。

「パキシルによる眠気」まとめ

  • パキシル(パロキセチン)による眠気の原因はヒスタミン(H1)がブロックされることと、リラックスさせる副交感神経を抑えてしまう抗コリン作用による
  • SSRIの中ではパキシル錠(パキシルCR錠、パロキセチン錠)は眠気がでやすい
  • パキシルを飲み始めてすぐに眠気が出てしまった場合、まずは飲む時間を変えてみる
  • 経過をみていれば2週間程度でおさまってしまうことも多い
  • 飲み始めて時間が経ってから(1ヶ月以上)減薬をする場合は、離脱症状の可能性があることから自己判断ではなく主治医と必ず相談する
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