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パキシルCRとは?

パキシル(パロキセチン)は抗うつ剤の中でも「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬そがいやく)に分類されるお薬でSSRIの中では最も処方されているお薬の1つです。

パキシルには通常のパキシル錠の他、「パキシルCRシーアール」が存在します。
パキシル錠には後発医薬品(ジェネリック医薬品)としてパロキセチン錠がありますが、この「CR錠」にはまだジェネリック医薬品は存在しません。

パキシルのあとにアルファベットがついたから、改良されているのはわかるけどどんな改良がされているのかというのがここでのお話です。

結論的には、効果が上がっているわけではなく、副作用を抑える改良が施されているのです。

それでは「パキシルCR錠」について解説していきましょう。


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パキシルCRとは?

基本的にはパキシルと成分は一緒です。
改良されているのはお薬の吸収のされ方です。

もっと言うと、パキシルにコーティングを施してゆっくり吸収されるようになっており、これによって副作用が出にくく設定されているのです。
コーティングされていますのでかみ砕いたり、割って飲んではいけません

パキシルCR錠の外観

そもそもCRというのはControlled-Releaseコントロールドリリースの略で、「制御された薬の溶出」という意味で、意訳すると「徐々に放出される:徐放製剤」を示します。

パキシルCR錠の用法

添付文書上は、適応疾患が違います。
通常のパキシル錠は「うつ病・うつ状態」以外にも、「パニック障害」「強迫性障害」「社会不安障害」「PTSD」に承認されているのに対して、CR錠は「うつ病・うつ状態」のみです。
(医療費の問題でなるべくCRではなくジェネリックの「パロキセチン」を処方してもらいたいという意図もあるのか!?)

CR錠が不安障害に効果がないという意味ではありません
基本、効果は一緒ですからね。
(実際は不安障害であっても「うつ状態」として処方されているケースは多いはずです・・・。)

パキシル一般の効果と特徴についてはこちらで説明しています。

この薬は良い!?パキシル錠の効果・効き目と特徴【医師が教える抗うつ剤】

また、吸収の度合いが通常のパキシルと異なるため、規格も異なります。
CR仕様の錠剤では吸収がゆっくりなので、同じ薬効成分をだすために量が微調整されて多くなっています。


  • 「パキシル錠10mg」(92.30円) =「パキシルCR錠12.5mg」(92.90円)
  • 「パキシル錠20mg」(160.70円) = 「パキシルCR錠25mg」(161.50円)

※( )内は2016年改訂の薬価で1錠の値段です。


一回で内服するパキシルの量は若干CR錠の方が多めですが、この量を飲んで12時間以降には結局通常のパキシル錠とCR錠で同じ血液濃度になります。

パキシルCR錠の用法

  • 1日1回夕食後、初期用量としてパキシルCR錠12.5mgを内服
  • 1週間以上かけて1日用量で+ 12.5mgずつ増量できる
  • 最大量は1日50mgまで

抗うつ薬の中でCR仕様があるのはこのパキシルだけですが、他にも高血圧の薬にもCR錠は存在しており、画期的なのはCR仕様にすることで副作用を減らすというメリットがあるのです(血圧の薬の場合は、薬効がきれたときの反動の高血圧を防ぐ)。

効果が出だすタイミングは通常のパキシル錠と同じで2-6週間後になります。

ではどの程度副作用を抑えることができるのかについて次にお話しましょう。

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通常の錠剤とパキシルCR錠との副作用の違い

基本的に通常のパキシル錠もCR錠も副作用はまったく同じです。
SSRIとしての副作用がでることがあることに違いはありません。

<主な副作用>

  • 性機能障害(射精障害、勃起不全、性欲減退、オーガズムを感じにくい)
  • 消化器系(食欲不振、吐き気、下痢、便秘、口が渇く)
  • 中枢神経系(眠気、不眠、頭痛、ふらつき)
  • 自律神経系(発汗)
  • 出血しやすい(あざができやすくなる)
  • アクチベーションシンドローム(自殺企図、躁転、不安、焦燥、不眠)

違うのは、内服を始めた最初のころの消化器系の副作用(特に吐き気)が出にくいことです。

パキシルCR錠の最小の12.5mg錠で飲み始めたときの吐き気の頻度は6%と報告されています(日本人を中心とした約400名のデータ)。
そして、偽物の薬(プラセボ)をパキシルと思って飲んでいた場合の吐き気の副作用頻度が5%で、CR錠と遜色そんしょくないのです。

一方、通常のパキシル錠10mgでは吐き気の頻度は10%以上で出たので、ここからもCR錠の吐き気を抑える効果は明確だと思います。

そして、抗うつ剤で問題になりがちな減薬の際の離脱症状ですが、実はパキシルCR錠ではその離脱症状のリスクも抑えられるのではと考えられています。
もともとパキシルは離脱症状を起こしやすいSSRIとして位置づけられているのでこの点は注目すべきところです。

離脱症状とは簡単に言えば、抗うつ剤を急にやめたり減薬の際に身体が薬がなくなったときの変化についていけなくて起こる不快な反応で、めまい、耳鳴り、感覚の異常(電気が走ったような)などさまざまな症状がでます。

(パキシルの離脱症状の詳細は以下で説明しています)

パキシル錠(CR・パロキセチン)による離脱症状と対処法【医師が教える抗うつ剤】

ただこれも様々な見解があります。
ちなみに日本人を中心とした先ほどの報告の中では、離脱症状の頻度は通常のパキシル錠とCR錠とで変わりはなかったようです。

CRは吸収を遅くさせる効果であって、薬の抜け方と関連のある離脱症状の軽減に関しては、個人的にはパキシル5mg錠を使用して細かい減薬をしていくのが得策ではないかと考えています。
(5mg錠はCR仕様はありません。)

【参考文献】
Higuchi T, et al. Paroxetine controlled-release formulation in the treatment of major depressive disorder: a randomized, double-blind, placebo-controlled study in Japan and Korea. Psychiatry Clin Neurosci. 2011 Dec;65(7):655-63.

パキシルCRはどのような機序で副作用を減らすのか!?

CR錠のように、ゆっくり吸収されると副作用がなぜ軽減されるのか?

そのイメージはお酒を考えてもらうとわかりやすいと思います。
例えば同じアルコール量を飲むにしても、一気飲みした場合とゆっくり飲んでいった場合とで同じ酔うにしてもどちらの方がつらい症状がでやすいでしょうか?

一気飲みしてしまうと、アルコール濃度が急激に上がり、その後ある一定の濃度に落ち着いてからアルコールが抜けていくのはイメージできると思います。
最終的に一気飲みとゆっくり飲んだのと同じアルコール濃度で安定するにしても、一気飲みでは一過性に高いアルコール濃度を形成してしまうので、急性アルコール中毒の危険性が高いのです。

パキシルに話を戻しましょう。
通常のパキシルもパキシルCRも飲んでから8~12時間後に一定濃度に落ち着くのですが、飲んだ後に急激に濃度が立ち上がって、その後下がって落ち着くのが通常のパキシルです。
つまり一度高い山を作ってしまうので、一気飲みしたアルコールのような感じです。

一方CR錠は、ゆっくり上がっていってあまり山をつくらずに一定の濃度に落ち着きます。
お酒ならゆっくり飲んだのと同じイメージです。

これでお分かりいただけると思いますが、同じ効果を出しつつも副作用を抑えられるのはこの機序によるのです。
もちろん、パキシルCR錠は吸収がゆっくりだからといっても効き始めも遅くなるということはないのです。

「パキシルCR錠とは」まとめ

パキシルCRは12.5mg錠という最小量から始めていけば、抗うつ剤を飲みたくなくなってしまうような吐き気の副作用を抑えるメリットがあります。

ただCR錠にはジェネリック医薬品はないので、ジェネリック医薬品のように廉価でということになると「パロキセチン錠」という通常の錠剤を選択することになります。(ジェネリックなら半値以下です。)

ではCR錠を使うのに適するのはどんな人かということを最後に考えてみましょう。
基本、CRのメリットは治療初期の消化器系の副作用を抑えることにあります。
離脱症状を抑えることができるかどうかは、5mg錠をうまく利用した場合とCRとでどちらに軍配が上がるか分かりませんが、ゆっくり減らすことに意義がある私としては5mg錠が好きです。

すでに通常の錠剤で安定しているならわざわざCR錠にする必要はないでしょう。
むしろ、薬物の動態が違う薬に変更するときこそ調子を崩したり離脱症状がでることすらあります。

ではCR錠のメリットはどこにあるか。
実は、高齢者に使用するときに意義があるのではないかと思います。

薬を医師が処方しても、飲まないとか勝手にやめたという経験はみなさんあると思います。
風邪の薬などであればいつのまにか治っていることも多く、それが理由でやめたりするでしょう。

うつ病や不安障害のような慢性の疾患の場合、よくなったからやめるより副作用でとか副作用が怖くて飲んでないということがあります。
このように処方された薬をきちんと飲むということ、遵守するということを服薬コンプライアンスとかアドヒアランスなどと言ったりします。

海外のデータにはなりますが、65歳以上の方では抗うつ剤、特に通常のパキシル錠のアドヒアランスが非常に悪いことがわかっています。
しかし、パキシルCR錠ではそのアドヒアランスがあがりしっかり内服してくれるのです。

だったら違う抗うつ薬にすればよいという声も聞こえてきそうですが、パキシルの切れ味は非常に強く効果がでやすい実感もあるため、高齢の人が飲むのにパキシルCR錠が適するのではないかと思っています。

【参考文献】
Keene MS, et al. Adherence to paroxetine CR compared with paroxetine IR in a Medicare-eligible population with anxiety disorders. Am J Manag Care. 2005 Oct;11(12 Suppl):S362-9.

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