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パキシルによる吐き気と対処法【医師が教える抗うつ剤】

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
パキシルによる吐き気と対処法【医師が教える抗うつ剤】

抗うつ剤、特にSSRIを飲み始めたときによく問題になるのが胃腸の症状(消化器症状)です。
吐き気、嘔吐、食欲が出ない、胃もたれ、下痢、腹痛など様々ある胃腸症状はそのつらさから抗うつ薬をやめてしまう原因のトップにあがってきます。

パキシル(パロキセチン)はSSRIに属する抗うつ剤で、消化器症状(吐き気や嘔吐・下痢、胃もたれなど)を起こしてしまいやすいお薬です。
そのためにパキシルCR錠という副作用を起こしにくくするためのコーティングが施されたお薬が登場したほどです。

もし副作用がでてしまったとしても、つらい吐き気や嘔吐・下痢の副作用がずっと続くわけではありません。
おそらくこの症状に悩まされているときには「もしかしてずっと続くのでは?」と不安になっているかもしれませんが、幸いこの胃腸症状に対しては体がすぐに適応するので、数日から長くても2週間程度様子を見ていると落ち着いてくることが多いのです。

それでも仕事や家事ができないということもあるでしょう。
ここではパキシルによって起こる胃腸症状の副作用とその対応法について解説していきます。


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パキシルによって吐き気や胃もたれ、下痢が出るのはなぜ?

どの抗うつ薬においても胃腸症状は出るのですが、すべての抗うつ薬で同じ頻度で出るわけではありません。
この中で消化器症状がでやすいのがSSRIなのです。
パキシルがSSRIなのですが、SSRIってなにという方のために現在よく使用される抗うつ剤について解説しておきましょう。

現在最初に処方されることの多い抗うつ剤はSSRI、SNRI、NaSSAが多いです。

  • SSRIパキシル、デプロメール・ルボックス、ジェイゾロフト、レクサプロ)
  • SNRI(トレドミン、サインバルタ、イフェクサー)
  • NaSSA(レメロン・リフレックス)

副作用の出かたにはそれぞれの抗うつ剤で特徴があって、SSRIは吐き気・胃の不快感・不眠が多いのに対し、NaSSAは体重増加と食欲亢進(太る)・眠気が多いのです。
一方でNaSSA(レメロン・リフレックス)は吐き気など胃腸の症状は出にくいお薬です。
副作用だけみても一長一短ありますね。
どの抗うつ剤が一番良いというガイドラインはいまのところありませんので、個別に効果と副作用をみながら処方しています。

参考文献
Watanabe N, et al. Safety reporting and adverse-event profile of mirtazapine described in randomized controlled trials in comparison with other classes of antidepressants in the acute-phase treatment of adults with depression: systematic review and meta-analysis. CNS Drugs. 2010 Jan;24(1):35-53.

そもそもなぜ抗うつ剤は吐き気や胃もたれ・下痢を起こしてしまうのでしょうか?

抗うつ剤は「セロトニン」という神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつを増やすことでうつ症状に対する効果をもたらしますが、脳だけでセロトニンを作用させるわけではありません。

お薬は全身に効いてしまいます。
胃や腸など消化管の神経でもセロトニンは重要な神経伝達物質ですので、消化管にも作用してしまうことが吐き気や腹痛、下痢などの原因となってしまうのです。

つまり脳ではセロトニンはプラスに働き、消化管ではセロトニンの増強がマイナスに働いてしまうのです。
(厳密には吐き気は脳のセロトニンの作用で、下痢や腹痛が消化管のセロトニンの作用です。)

吐き気や下痢の詳しい機序(スキップできます)

もう少し詳細を知りたい方のために、詳しい内容をできるだけわかりやすく解説します。
難しい内容ですので「コチラからスキップ」をクリックすると次の章に飛ぶこともできます。

パキシルをはじめSSRIでは、前の神経から次の神経に伝達させる物質「セロトニン」を増やすことでセロトニン神経系を強めています。
イメージで言えば、セロトニンというお届け物を次の神経のポストにたくさん届けてくる感じです。

ここで重要なのは、セロトニンのポストにも色々種類があるということです。
この絵でいうなら届けるマンションの部屋が1A号室、2A号室、2C号室、3号室、4号室・・・と様々な部屋があり、どの地区のどの部屋にセロトニンを届けるかによって反応が異なるのです。

吐き気に関連するのは脳(視床下部や脳幹)にある3号室のセロトニンのポストです(5HT-3)。
胃の不快感や腹痛、下痢などに関連するのは消化管にある3号室と4号室のセロトニンのポストです(5HT-3, 5HT-4)。

「ポスト」=「受容体じゅようたい「セロトニン」=「5HT」として専門的に言い換えてみます。
SSRIによるセロトニンの増強をすることで、脳の5HT3受容体への刺激が吐き気や嘔吐に関連し、消化管の5HT3および5HT4受容体への刺激がその他の消化管の副作用の原因となるということです。

つまりセロトニンの3番・4番に対して対策がうてれば、吐き気などの副作用を軽減させることができるのです。

※抗がん剤でよく使用される吐き気止めの1つに、セロトニンの3番(5HT3)を抑えるお薬が使用されています。


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パキシルと他の抗うつ剤の比較

次に胃腸症状の出やすい抗うつ薬はどれか比較してみていきましょう。
その前に、第一選択で使われることの多い抗うつ薬を列挙しておきます。
これは最初にあげたもので、抗うつ剤にはよく使用されるものはこの3種類があることはお話しました。

  • SSRI(パキシル、デプロメール・ルボックス、ジェイゾロフト、レクサプロ)
  • SNRI(トレドミン、サインバルタ、イフェクサー)
  • NaSSA(レメロン・リフレックス)

SSRIが総じて胃腸の副作用を起こしやすいのです。
パキシルはSSRIに属するので消化器系の副作用は起こしやすいのですが、一方でSSRIの中ではフルボキサミン(デプロメール・ルボックス)が最も吐き気や嘔吐症状を起こしやすいとされています。

SNRI(トレドミン、サインバルタ、イフェクサー)でも同じく吐き気の副作用は起こりますが、特に吐き気と嘔吐が目立つとされているのが、日本では新しく承認されたイフェクサーSRというお薬なのです。
ちなみにサインバルタが胃腸症状で目立つのは下痢ですね。

そして先にも書きましたがNaSSA(レメロン・リフレックス)では胃腸症状よりは太ることと眠気が問題になりやすく、胃腸の副作用は少ないのです。

参考文献
Carvalho AF, et al. The Safety, Tolerability and Risks Associated with the Use of Newer Generation Antidepressant Drugs: A Critical Review of the Literature. Psychother Psychosom. 2016;85(5):270-88.

最後に消化器症状に関して、一覧で示します。

抗うつ剤 胃腸症状 抗うつ剤 胃腸症状
<SSRI> <三環系>
ルボックス
デプロメール
フルボキサミン
+++ トリプタノール
アミトリプチリン
パキシル
パロキセチン
++ トフラニール
イミドール
ジェイゾロフト
セルトラリン
++ アナフラニール
レクサプロ ++ ノリトレン
<SNRI> アモキサン
トレドミン ++ <四環系>
サインバルタ ++ テトラミド
イフェクサー ++ ルジオミール
<NaSSA> <その他>
リフレックス
レメロン
デジレル
レスリン
ドグマチール
スルピリド


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パキシルによる吐き気や下痢症状への対応方法

吐き気や嘔吐・下痢、胃もたれ、腹痛は副作用としてはつらく、しかも飲み始め初期に起こるので数日飲んでやめてしまう方も少なくありません。
SSRIは胃腸の症状が出やすいのが特徴なのですが、対応方法もあります。
具体的にどう対応できるか見ていきましょう。

様子をみる

一般的にこの対処法が最もとられています。
とはいってもただだまって様子をみるのもつらいでしょうから、医学的根拠は定かではないですが、食直後に飲むようにしたり牛乳を飲むなどでやわらぐことがあるようです。
我慢できる程度の症状であれば様子を見ているうちに、数日から長くても2週間程度で落ち着いてくることが多いです。

我慢できるレベルでない場合はパキシル(パロキセチン)錠を飲み始めたばかりであれば、いったん中止して主治医と相談し以下の対策をとりましょう。(私はやむを得ない場合、飲み始めてすぐであれば中止は自己判断で可としていますが、必ずやめたあと一度受診してもらうように言っています。)

数週間内服しているときには、中止することで離脱症状を起こすことがありますのでやめる前に一旦主治医と相談しましょう。

吐き気止めや胃薬を飲む

  1. 吐き気止め:プリンペラン、ナウゼリン、ガスモチンなど
  2. 胃薬
    • 胃酸を抑える:プロトンポンプ阻害薬(オメプラールなど)、H2ブロッカー(ガスターなど)
    • 胃粘膜保護:セルベックス、ムコスタなど
    • 消化管運動改善:ガスモチン、ドグマチール

胃薬といっても色々ありますので医師によって出す胃薬は様々です。
パキシルによる消化管の副作用はセロトニンによる作用ですから、胃酸を抑える薬より吐き気止めを飲んだり、消化管運動の改善を狙うのが良いと個人的には思います。

ガスモチンという胃薬はセロトニンの4番(5HT4)のポスト(受容体)に作用するお薬で、これが有効な例は多いですし、副作用の仕組み的にも合目的々です。
ただし、下痢がひどい場合にはガスモチンは逆効果になりますので注意が必要です。

胃薬が抗うつ薬と一緒に最初から出されている場合もあるでしょうが、最初から一緒に飲まずにお守りとして胃薬は残しておいて、様子をみながら必要かどうか判断するのが個人的には良いと思います(あとで飲んだ方がプラセボで症状がおさまる場合もありますし、胃薬を一緒に飲んでもだめだと胃薬を増やすことにもなります。またやめどきがわからなくて抗うつ薬と一緒にずっと飲むことになりかねないです)。

パキシルCR錠に変更する

パキシルには大きく3つのお薬があります。


  1. パキシル錠
  2. パキシルCR錠
  3. パロキセチン錠

このうち「パキシル」の名前があるものはグラクソスミスクラインから販売されているオリジナル製剤で、「パロキセチン」というパキシルの成分の名前で販売されているものは現在30社くらいから出ているジェネリック医薬品です。

この中で「2.パキシルCR錠」というものがありますが、これは吸収がゆっくりになっているお薬で、特に吐き気などの消化器症状をおさえることを目的とした製剤なのです。
これを最小量である12.5mg錠で始めれば吐き気の頻度はかなり下がるはずです。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。

パキシル(パロキセチン)から変更する

同じSSRIのクラスであっても薬が変わると症状が改善することがありますので、SSRIやSNRIないしは消化器症状の少ないNaSSA(リフレックス/レメロン)に切り替えるのもありです。
SSRIの中ならレクサプロやジェイゾロフト(セルトラリン)は副作用は少な目です。
ただしNaSSAは「眠気」と「太る」という副作用が特徴でもあるのでそこは知っておきましょう。

最初に出すことの多い抗うつ薬の副作用の特徴を示しておきます。

  • SSRIの中でデプロメール・ルボックス(フルボキサミン)は吐き気が出やすい
  • SNRIの中でサインバルタは下痢症状が出やすく、イフェクサーは吐き気がでやすい
  • NaSSAは消化管の副作用は少な目だが、眠気や体重増加の副作用がでやすい

上記には分類されませんが、その他の抗うつ薬としてドグマチール(スルピリド)は抗うつ効果もあり胃薬でもあるというハイブリッドな特徴がありますので、特に胃腸の症状に敏感な場合にはこれに変更するのも方法です。(切れ味はSSRIの方が良いです。)


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まとめ「パキシルによる吐き気や下痢の副作用」

  • パキシルはSSRIに分類される抗うつ剤で、このクラスの抗うつ薬の副作用として胃腸症状の頻度が高い
  • 胃腸の症状は数日から長くても2週間以内にはおさまることが多いので様子をみるのも1つ
  • その間、個人でできることは食直後に飲むようにしたり牛乳を飲むようにすることで改善することがある
  • どうしても飲むのが難しい場合、いったん中止して主治医と相談せざるを得ない
  • その場合には胃薬を併用するか、抗うつ薬そのものの変更になる
  • CR錠は消化器の副作用を抑える効果があるので、パキシル(パロキセチン)錠からパキシルCR錠12.5mgにしてもらうのも有効

 

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