医者が教えない精神科のこと |メンタルクリニックDr's INFO | 精神科・心療内科

医者が教えてくれない精神科のことを医師がわかりやすく解説

ジェイゾロフトと頭痛の関係-医師が教える抗うつ剤-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
ジェイゾロフトと頭痛の関係-医師が教える抗うつ剤-

ジェイゾロフトはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ剤です。
SSRIの副作用の1つに頭痛があります。

ジェイゾロフト錠の添付文書において副作用としての頭痛の頻度は5%以上(7.8%)で起こるとされており頻度的には比較的多い副作用になります。
またジェイゾロフトを急にやめたり減薬したときにも頭痛が起こることがあります。

海外でのデータでは、SSRIによる頭痛の頻度は18-20%に及ぶとも報告されています。

同時にプラセボ(偽物の薬)であってもほとんど同じくらいの頻度で頭痛がでていることから、もしかしたらうつ病そのものの症状としての頭痛もあるかもしれません。

ただ、おもしろいことにSSRIには片頭痛や筋緊張性頭痛(肩こりからくる頭痛)の予防にも効果があるともされています。
そして、単なる副作用ではすまされない危険な頭痛もあります。

ここではジェイゾロフトと頭痛の関係についてお話します。


スポンサーリンク


ジェイゾロフトによって頭痛が起こる理由

ジェイゾロフトは神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつ「セロトニン」を増強する抗うつ剤です。

神経の伝達は、前の神経から次の神経に神経伝達物質「セロトニン」を伝達することで行われます。
それは、セロトニンという郵便物を郵便受けに届ける、そんなイメージを持ってもらうと良いと思います。

セロトニンは主に脳においては「緊張の緩和」に作用し、その他の神経伝達物質(ノルアドレナリンやドーパミン)とともに「気分」「情動」「認知機能」や「食欲・性欲制御」などに関連します。

うつ病の原因の一仮説に、モノアミン仮説がありそれはこのセロトニンなど神経伝達物質の作用が減弱することがうつの原因とする考えです。
もちろんこれがすべてではないですが、理解はしやすい考え方ですね。
このセロトニンを増やすことができればうつ症状を改善できるそんなイメージです。

ここで注目してもらいたいのはセロトニンは脳だけに作用しているわけではなく、脳以外にも消化管や血管の神経にも作用することです。
それはまさに脳以外の違う地区のマンションの様々な部屋にセロトニンという荷物を届けてくるイメージです。
そして、セロトニンはどの地区のどの部屋に届けられたかで作用が異なるのです。

頭痛に話を戻しましょう。
頭痛の原因はまだ不明な点も多いですが、片頭痛と同じように脳の血管の収縮や拡張が関係していると考えられています。
そして、その脳の血管の収縮や拡張にセロトニンが関連しているのです。

参考文献
Griffith SG, et al. Immunohistochemical demonstration of serotonin in nerves supplying human cerebral and mesenteric blood-vessels. Some speculations about their involvement in vascular disorders. Lancet. 1983 Mar 12;1(8324):561-2.

つまり、ジェイゾロフトを飲むことでセロトニン系の神経の作用が増強すると、脳の機能だけでなく脳の血管の収縮や拡張が起きやすい状態になり頭痛が生じるというメカニズムなのです。

ジェイゾロフトの副作用によって生じる頭痛は、薬によってセロトニンの作用が増強するために起こる

スポンサーリンク


他の抗うつ剤との比較

頭痛は頻度としてはSSRIやSNRIに多いようです。
各種抗うつ剤の承認時や発売後の臨床試験をもとに発表されている副作用報告をまとめた表を見てみましょう。

抗うつ剤 頭痛の頻度 抗うつ剤 頭痛の頻度
<SSRI> <三環系>
ルボックス
デプロメール
フルボキサミン
1.1%
(2935人中)
トリプタノール
アミトリプチリン
1.1%
(1109人中)
パキシル
パロキセチン
9.3%
(1424人中)
トフラニール
イミドール
4.1%
(708人中)
ジェイゾロフト
セルトラリン
7.8%
(1478人中)
アナフラニール 1.2%
(1964人中)
レクサプロ 8.2%
(1099人中)
ノリトレン 1.7%
(2421人中)
<SNRI> アモキサン 2.7%
(625人中)
トレドミン 9.9%
(303人中)
<四環系>
サインバルタ 21.0%
(735人中)
テトラミド 0.85%
(8679人中)
イフェクサー 19.3%
(1255人中)
<その他>
<NaSSA> デジレル
レスリン
0.47%
(7419人中)
リフレックス
レメロン
6.4%
(330人中)
ドグマチール
スルピリド
0.35%
(17010人中)
(承認時・承認後の臨床試験データより)

この数字をそのまま見たり比較するのは、条件などの違いもあるので参考程度に見ていただければと思います。

ジェイゾロフトは頭痛の予防にもなる!?

ここまでジェイゾロフトの副作用として頭痛のお話をしてきました。
しかし、うつ病そのものの症状にも頭痛はあります。
しかもその中には片頭痛筋緊張性頭痛きんきんちょうせいずつうと共存しているものがあります。


  • 片頭痛
  • 繰り返し起こる頭痛で、ズキンズキンと脈打つような拍動性の痛みを特徴とする。
    片頭痛といっても片側に起こるという意味ではなく全体の場合もある。

  • 筋緊張性頭痛
  • 肩や首のこりも強く、頭をしめつけるような痛みを特徴とする頭痛。


この片頭痛や筋緊張性頭痛の予防にジェイゾロフトが有用である可能性がいわれています。
予防だけでなく、筋緊張性頭痛で慢性頭痛に悩まされている方にとっても有効であることがしっかりと示されています。

参考文献
Singh NN, Misra S. Sertraline in chronic tension-type headache. J Assoc Physicians India. 2002 Jul;50:873-8.

実際にはジェイゾロフトをはじめとしたSSRIだけでなく、SNRI(2015年に日本で承認されたイフェクサーSRを含む)、NaSSAも有効であるとする報告があります。

ただ抗うつ剤の中で片頭痛に最も有効なのは「三環系抗うつ薬」です。
中でもトリプタノール(アミトリプチン)で、このお薬は2012年に片頭痛・筋緊張型頭痛に対する適応外使用が認められています。
ジェイゾロフトは片頭痛・筋緊張性頭痛だからといって処方することは承認されていません。

ジェイゾロフトの副作用としてかならずしも頭痛を誘発するというだけでなく、片頭痛・筋緊張性頭痛を共存するうつ病ではむしろ予防的に作用することもあるということを知っておいてください。

参考文献
Banzi R, et al. Selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) and serotonin-norepinephrine reuptake inhibitors (SNRIs) for the prevention of tension-type headache in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2015 May 1;(5):CD011681.

ジェイゾロフトによる危険な頭痛もある

通常のジェイゾロフトの副作用としての頭痛以外に注意すべき頭痛症状がああるので挙げておきます。
特に緑内障に関しては、失明のリスクもあるので知っておく必要があります。


  1. セロトニン症候群と離脱症状
  2. 薬の飲み合わせ(デジレル/レスリン)
  3. 緑内障

1.セロトニン症候群と離脱症状

まず通常の頭痛の副作用は神経伝達物質「セロトニン」が増えることで脳の血管の収縮や拡張が起こり、それが頭痛の原因になることを説明しました。

また、同じようにセロトニンを増強してしまう薬をジェイゾロフトと併用することで、より強い頭痛症状が起こってしまうことがあります。
セロトニンが作用しすぎることによって起こるため頭痛以外にも、発熱・発汗・動悸・筋緊張などの症状も一緒にでます。(セロトニン症候群)

離脱症状は、一方でジェイゾロフトを断薬したり急に減薬することで出てしまう症状です。
これによっても頭痛が起こることがあります。

2.デジレル/レスリンとの相性

薬の相性もあるのですが、その中で激しい頭痛症状をおこしてしまうリスクのあるお薬があります。

それはデジレル/レスリン(トラゾドン)です。
このお薬も抗うつ剤のひとつです。
主に不眠が強い時や悪夢を見てしまうときに処方されるお薬です。
しかも、SSRIやSNRIと併用して一緒に処方されるケースも多いので、ジェイゾロフトと一緒に飲むこともありえます。

具体的な激しい頭痛の報告は、このお薬とSSRI(報告の中ではパキシル)との併用で起こっており、デジレル/レスリンの中止で改善しています。
純粋に激しい後頭部を中心とした頭痛だけですので、セロトニン症候群(頭痛以外に汗をかいたり、発熱、せん妄など他の症状も一緒にでる)ではないようです。

頭痛の程度が激しく我慢できないときに、睡眠作用のある抗うつ剤(デジレル/レスリン)が出されていないか確認しましょう。

参考文献
Chen HC, et al. Trazodone-induced severe headache. Psychiatry Clin Neurosci. 2011 Dec;65(7):681-2.

3.緑内障

そして、最後にもう一つ注意すべき激しい頭痛は緑内障りょくないしょう発作です。
緑内障というのは眼圧が高まり、最悪の場合「失明」してしまうリスクのある病気です。

そもそもジェイゾロフトに限らず抗うつ剤には眼圧を上げてしまう副作用があります。
緑内障は目の病気だから当然目に症状がでるからわかるだろうと思いきや、激しい頭痛がメインの症状であることもありますので注意が必要です。

抗うつ剤をやめたときに緑内障発作を起こしたという報告もあるので、ジェイゾロフトを飲んでいるときだけでなく減薬時や自分で断薬してしまった時にも注意が必要です。

参考文献
AlQuorain S, et al. Bilateral acute closed angle glaucoma associated with the discontinuation of escitalopram: a case report. Open Access Emerg Med. 2016 Sep 8;8:61-5.


スポンサーリンク


ジェイゾロフトによる頭痛の対処法

ジェイゾロフトによって起こる頭痛は、単純にセロトニン作用が増強することによって出る頭痛と、それ以外にも飲み合わせの問題で激しい頭痛になってしまったり、頭痛が実は緑内障の症状としてでていることがあるということがお分かりいただけたと思います。

ジェイゾロフトを飲んですぐ頭痛が出始めたとき

うつ病や双極性障害、パニック障害などでは片頭痛などが共存していることも多いですが、それがあまりなく明らかに飲み始めてから頭痛が出始めた場合には、セロトニンが増えたことによる副作用を考えます。
耐えられる程度の頭痛であれば1,2週間程度でおさまってくる可能性が高いです。
(セロトニンが増えた状態に体が適応していきます)

対症療法として市販の鎮痛薬(バファリンなど)を飲んでも良いですし、主治医に頓服で痛み止めを処方してもらうのも良いでしょう。

頭痛の程度が強く我慢できない場合

もともとのうつ病としての頭痛症状の可能性や、脱水、睡眠不足、感冒(かぜ)など様々な要因で頭痛は起きます。
ジェイゾロフトの飲み始めの頭痛で、鎮痛薬でもおさまらず、1,2週間経過しても症状が持続している場合は他の要因を考えます。

  • ジェイゾロフトとの飲み合わせ
  • 睡眠薬・不安薬など副作用に頭痛のあるお薬はたくさんあります。

    特にSSRIの場合、不眠があると一緒に出すことの多い抗うつ剤の「デジレル/レスリン」を合わせ飲むことで激しい後頭部の頭痛を起こした症例があります
    デジレル・レスリンとの組み合わせはよくあるので頭痛がどうしてもおさまらないときはこちらの薬の中止が必要になります。
    一度飲んでいるお薬を確認し、ジェイゾロフト以外の要因を確認することは大事です。

  • 緑内障発作の可能性
  • 緑内障の場合、羞明しゅうめいといって強い光を受けたときに不快感や痛みを感じる症状を伴うことがあります。
    頭痛だけということもあるので目の症状がないからといって緑内障は否定できません。

    眼科で眼圧を測ってもらうことで緑内障の診断をすることができます。
    緑内障出ることが分かったときには減薬し中止に向かいますが、抗うつ剤の断薬で緑内障の悪化もあるので、主治医と相談しながらゆっくり減らしてジェイゾロフトを中止します。
    (救急外来で受診したときには一旦完全に中止の判断になるときもあります。)

まとめ「ジェイゾロフトと頭痛の関係」

ジェイゾロフトの副作用による頭痛の頻度は決して少なくありません。
しかしそのほとんどは薬を中断せざるを得ないくらい強い頭痛になってしまうことは多くはなく、経過をみるだけで良いことが多いはずです。
通常は1,2週間程度でおさまりますので鎮痛薬を飲みながらやり過ごせます。

しかし、中には緑内障や他の薬との飲み合わせ(特にデジレル・レスリン)などで起こった頭痛は症状がおさまらないためこれには注意が必要です。

 

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

コメントはこちらからお願いします

*
*
* (公開されません)

Return Top