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ジェイゾロフトによる眠気はどうしたら良い?-医師が教える抗うつ剤-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
ジェイゾロフトによる眠気はどうしたら良い?-医師が教える抗うつ剤-

抗うつ剤の中でも困りやすい副作用に眠気があります。
薬の添付文書でも「傾眠」として記載されており、その頻度は国内の臨床試験の結果15.2%として報告されておりまあまあの頻度で出現してしまうことがわかります。

SSRIは不眠の副作用もある一方で、眠気もでるのです。
特に日中の眠気は日常生活に支障をきたしてしまいます。

ここではSSRIに分類されるジェイゾロフト錠(一般名:セルトラリン)による眠気の副作用についてお話をします。
ジェイゾロフトを飲み始め日中の眠気が出てしまい仕事などに影響がでてしまう場合、どんな対処法をとれば良いでしょうか。


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ジェイゾロフトによって眠気が出現する理由

ジェイゾロフト(セルトラリン)はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ剤です。
ですから、「セロトニンに作用する」というのはイメージしやすいと思います。

ちなみに、セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどを神経伝達物質といいますが、これは脳をはじめ全身の神経の連絡に欠かせない物質で、それぞれの伝達物質に役割が割り当てられています。

ジェイゾロフトはこのセロトニンが関連する神経系を強めることで賦活化ふかつか、すなわちアクティブな方向にもっていこうとするわけですから、基本的には「眠気」というより「不眠」につながることになります。

ところが実際には眠気がでてしまいます。
不眠も大変ですが、眠気はWeb調査で最もつらかったものに挙げられています。(1位:眠気、2位:だるさ、3位:胃の不快感)

参考文献【参考文献】渡邊衡一郎, 菊池俊暁. 臨床精神薬理 11:2295-2304,2008.

眠気に関しては2つの神経伝達物質が関与します。


  1. ヒスタミン(H1)
  2. ノルアドレナリン

ひとつはうつと関連して有名なセロトニンという神経伝達物質に対して、別の伝達物質である「ヒスタミン」をブロックする作用が関与します。

そしてもう一つは神経伝達物質「ノルアドレナリン」を受け取るαアルファ1受容体に対するブロックの作用も眠気に関与します。

ジェイゾロフトはセロトニンを増強する作用がもちろんメインですが、ヒスタミン(H1)をブロックする作用も持っているためこれが眠気を作ります
ヒスタミンやアドレナリンをブロックするとなぜ眠気がでるのか、詳しく説明していきましょう!!

1.ヒスタミンの作用と眠気の関係

SSRIによる眠気が起こる要因の1つはヒスタミンをブロックすることと関連します。

ヒスタミンというと、一般的には花粉症の薬や胃薬でよく聞くキーワードです。
有名な胃薬「ガスター10」は「H2ブロッカー」に属する胃薬ですが、この「H」はヒスタミンのHなのです。
H2ブロックとは、ヒスタミンの2番(H2)をブロックして胃酸を抑えますということですね。

一方で、花粉症をはじめアレルギーで悪さをするヒスタミンは、H1といってヒスタミンの1番のことです。

このようにヒスタミンといっても1番とか2番とか3番とか存在する(ビタミンA、B、Cのような種類がある)のです。
胃薬(H2のブロック)は飲んでも眠くなりませんが、アレルギーの薬としての抗ヒスタミン薬(H1のブロック)は眠気がでますよね?

つまり、ヒスタミンの1番(H1)が眠気と関連しているのです。
それもそのはず、H1はアレルギー反応のような免疫に関与する以外に、脳では覚醒に関与している神経伝達物質なのです。
それゆえ、H1をブロックするとアレルギーもおさまるけど、覚醒レベルも落ちるので眠気が出てしまうのです。

それに対してヒスタミンの2番(H2)は胃で胃酸分泌に関与する神経伝達物質で、脳にもあるのですが脳での作用はまだ明らかになっていません。

2.アドレナリン受容体と眠気

神経伝達物質「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」などを受け取る神経のポストをアドレナリン受容体と言います。
アドレナリン受容体は、主に筋肉(心臓・血管・臓器)や脳、脂肪に存在しています。

アドレナリン受容体には大きくαとβに分けられさらにαでも細かく分かれていきますが難しくなりすぎるので、ここでは眠気に関連するアドレナリン受容体の「α1」に注目します。

α1受容体は、血管を収縮させて血圧をあげたり、立毛筋といって鳥肌をたたせる筋肉、瞳孔を広げる筋肉に関連します。
このα1をブロックすることで有名なお薬はなんといっても血管の収縮をおさえることによる「血圧の薬」でしょう。

そしてこのα1受容体は脳でもアドレナリンやノルアドレナリンを受け取って「覚醒」に関与するのです。

これを抑えると眠くなるのは、「覚醒」がおさえられるからなんですね。

3.ヒスタミン・アドレナリン受容体と抗うつ剤

SSRIではこのH1やα1をブロックする作用が多少あるため眠気が出るというわけです。

抗うつ剤の中でも特にH1・α1ブロック作用の強い抗うつ剤があります。
三環系・四環系抗うつ薬」や「単環系抗うつ薬:デジレル・レスリン」、それから四環系抗うつ薬から派生したNaSSAという新しいクラスに属する「リフレックス・レメロン」などは特にH1をブロックする作用が強く、眠気の作用も強く「鎮静系の抗うつ薬」といわれます。

それに対してレクサプロをはじめとしたSSRIやSNRIなどはH1をブロックする作用はそこまで強いわけではないので「非鎮静系抗うつ薬」となるわけです。


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他の抗うつ剤との眠気の比較

上記で説明した通り、抗ヒスタミン作用(ヒスタミンをブロックする作用)が強い抗うつ薬ほど眠気がでます
その他、ヒスタミン以外に覚醒に関わる神経伝達物質「ノルアドレナリン」をブロック(α1受容体をブロック)してしまう効果が強いほど眠気は出やすくなります

「三環系・四環系抗うつ薬」、「単環系抗うつ薬:デジレル・レスリン」、「NaSSA:リフレックス・レメロン(ノルアドレナリンはむしろ増強)」が睡眠作用をもたらす鎮静系の抗うつ薬です。
逆に言えば、不眠が目立つうつ病では有効に作用しますね。

SSRI(ジェイゾロフト含む)、SNRIは非鎮静系ですので三環系やNaSSAに比べれば眠気の頻度も強さも低くなります。
SSRIの中では、眠気がでやすいのはパキシル(パロキセチン)とデプロメール・ルボックス(フルボキサミン)で、ジェイゾロフトやレクサプロは弱めです。

下の図は鎮静(眠気も含む)の強さを表します。
セロトニンノル・アドレナリンへの作用と鎮静作用

右にいくほど眠気が強くなります。
上に行くほどセロトニン作用が強く、下ほどノルアドレナリン作用が強くなります。
SSRIのなかでは、左寄りにあるジェイゾロフトとレクサプロが眠気に関してはでにくい方に位置していますね。

抗うつ剤の中での眠気の強さの一覧表を載せておきます。

抗うつ剤 眠気 抗うつ剤 眠気
<SSRI> <三環系>
ルボックス
デプロメール
フルボキサミン
+ トリプタノール
アミトリプチリン
+++
パキシル
パロキセチン
+ トフラニール
イミドール
+
ジェイゾロフト
セルトラリン
+- アナフラニール +
レクサプロ +- ノリトレン +
<SNRI> アモキサン +
トレドミン +- <四環系>
サインバルタ +- テトラミド ++
イフェクサー +- ルジオミール ++
<NaSSA> <その他>
リフレックス
レメロン
++ デジレル
レスリン
++
ドグマチール
スルピリド
+-


今日の治療薬(一部改変)

ジェイゾロフトを飲んで眠気がでてしまったら

2週間程度は経過をみてみる

ジェイゾロフトに限らずほとんどの抗うつ剤で共通しますが、飲み始めた初期に副作用が目立ち1-2週間程度で副作用がおさまってくる傾向があります。
これは眠気も同様です。

ジェイゾロフトを飲むタイミングを変えてみる

添付文書通り処方されればジェイゾロフトは「1日1回」内服するのですが、「朝」飲んで日中が眠いのであれば「寝る前」に変更してみるのも手です。

逆に「寝る前」に飲むと日中眠くなってしまう人は、「朝」に飲むと大丈夫というときもあります。
このあたりは、自己調整して主治医に報告するのもありだと思います。

この感覚は個人差があるので医師よりも飲んでいる本人の方がわかると思います。

減薬する

飲み始めてどうしても眠気が日常生活の支障になる場合には減薬を考えざるを得ません。
通常25mg錠から内服をスタートしますが、眠気が強く出て困るようであれば減薬がひとつの手になります。
ただジェイゾロフト25mg錠には割線がないので半分に割るのは一苦労ですがはさみで切れます。

将来的には増量するにしても、初期はこのようにして減らすことで主治医にも了承をとり、徐々に増量していくのが良いと思います。

一方で50mg錠以上の錠剤には割線がついていますが、おそらく最初は25mg錠で処方されることが多いでしょう。

はじめて処方されたときには「次は2週間後に来てください」と言われているはずですので、そのとき必ず主治医に減薬の報告をするようにしましょう。

内服しはじめて1-2週間であれば問題ないですが、しばらくの期間(だいたい一か月半以上)飲んだあとに減らしたり断薬すると離脱症状を起こす可能性があるので注意を要します。

また、眠気はうつ病がよくなってきたころに目立つ場合もあります。
とくに長く飲んでいると睡眠が適度にとれていたとしても、あくびが多くなったり、疲労感を感じるようになったりすることもありますのでこの場合にも主治医と相談の上減薬を考えます。
この時には数か月以上内服しているはずですので、自己判断での減薬や断薬は厳禁です(離脱症状というつらい症状がでやすいのです)。

抗うつ剤では副作用(吐き気や眠気)が血液中の薬の濃度と関係なく出現したという報告もあります。
となると減薬しても改善しないかもと思うのですが、実際の臨床においては減薬によって改善が見られることが多い印象です。

参考文献
Härtter S, et al. Serum concentrations of fluvoxamine and clinical effects. A prospective open clinical trial. Pharmacopsychiatry. 1998 Sep;31(5):199-200.

ジェイゾロフトから他の抗うつ剤に変えてもらう(スイッチする)

減薬しても改善がない場合に行いますが、長く飲んでいる場合には抗うつ薬の変更時にも離脱症状がおこることがありうることを知っておきましょう。
もともとジェイゾロフトはSSRIの中では眠気は少ない方ではあります。
同じように眠気が少ないものとなると、SSRIの中であればレクサプロ、SNRI(サインバルタ、イフェクサーSR)を通常考えます。

他の薬による可能性はないか考える

抗うつ薬は単独で処方されていないことが多々あります。
例えば睡眠薬(特にベンゾジアゼピン系睡眠薬)や非定型抗精神病薬(エビリファイ、ジプレキサ、リスパダール、セロクエルなど)、他の抗うつ薬(三環系、NaSSAなど)があわせて処方されている場合があります。

また不眠症状が強いときには併用する抗うつ薬としてレスリン/デジレル(ジェネリック医薬品はトラゾドン)が処方されていることもありこれも眠気を誘発します。

そういった場合には、ジェイゾロフトよりもその併用している薬の副作用の方が怪しいでしょう。
どの薬が疑わしいか主治医の先生と相談して減薬・中断を考慮してもらいましょう。

「ジェイゾロフトによる眠気」まとめ

  • 抗うつ薬による眠気の原因はヒスタミン(H1)やノルアドレナリンを受け取るα1受容体がブロックされることによる
  • SSRIの中でもジェイゾロフト(セルトラリン)は眠気のでやすい方の抗うつ剤ではない
  • ジェイゾロフトを飲み始めてすぐに眠気が出てしまった場合、半分にしてみるか飲む時間を変えてみる
  • ジェイゾロフト(セルトラリン)25mg錠は割線はないが割って飲むことはできる
  • 経過をみていれば2週間程度でおさまってしまうことも多い
  • 飲み始めて時間が経ってから(1ヶ月以上)減薬をする場合は離脱症状の可能性があることから自己判断ではなく主治医と必ず相談する

 

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