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エビリファイを飲むと痩せる

エビリファイは抗精神病薬の1つです。
特に新しい抗精神病薬は非定型抗精神病薬と言われます。

非定型抗精神病薬はもちろん抗精神病薬ゆえ統合失調症に対して使用されるお薬ですが、エビリファイはそれ以外にも双極性障害の躁状態の改善、うつ病・うつ状態に抗うつ薬がうまく作用しない場合、小児の発達障害の易刺激性に処方されます。

患者さんから「エビリファイは痩せるのですか?」と聞かれることが多く、確かにグーグル検索するとエビリファイと入力するだけで予測変換で「エビリファイ 痩せる」と表示されます。
たしかに、エビリファイに変えてから痩せたという声を聞くことがありますが、医療者側にはエビリファイが痩せる薬という認識を持っている人は少ないと思います。

しかしなぜエビリファイに痩せるというイメージがあるのか、これについて考察してみましょう。


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エビリファイで痩せる報告はどのくらいある?

そもそも抗精神病薬は痩せるお薬ではない

まず大前提として抗精神病薬は太るお薬です。
抗精神病薬の副作用として有名なのは肥満ですし、コレステロールや糖尿病には気を付けながら処方するのが基本です。

現在、抗精神病薬と言えば非定型抗精神病薬が処方されることが多いですがエビリファイをはじめいくつかの抗精神病薬があります。
そしてそれらの種類によっても肥満やコレステロール異常を起こす頻度は違うのです。

<非定型抗精神病薬の種類>

  • セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)
    • リスペリドン(リスパダール)
    • ペロスピロン(ルーラン)
    • ブロナンセリン(ロナセン)
  • 多元受容体標的化抗精神病薬(MARTAマルタ
    • オランザピン(ジプレキサ)
    • クエチアピン(セロクエル)
    • クロザピン(クロザリル)
  • ドパミン受容体部分作動薬(DSS:Dopamin System Stabilizer)
    • アリピプラゾール(エビリファイ

これらの抗精神病薬の中ではMARTAマルタ(ジプレキサ、セロクエル、クロザリル)が最も太りやすく、次いでSDA(リスパダール、ルーラン、ロナセン)、一番太りにくいのがエビリファイなのです。

エビリファイの添付文書では?

添付文書では「体重減少」については、エビリファイの適応のある各疾患ごとに以下の記載があります。

4.副作用

  • 統合失調症
  • 国内臨床試験において安全解析の対象となった743例中、副作用が452例(60.8%)に認められた。
    主な副作用は・・・中略・・・体重減少(9.2%)、・・・

  • 双極性障害における躁症状の改善
  • (体重減少に関する記載なし)

  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
  • (体重減少に関する記載なし)

  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性
  • (体重減少に関する記載なし)

承認時や効能追加時の臨床試験データを見てみましょう。


<体重減少の副作用報告>

  • 統合失調症:743例中68例(9.15%)
  • 双極性障害の躁状態の改善:192例中3例(1.56%)
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る):467例中1例(0.21%)
  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性:88例中1例(1.14%)

合計:1490例中73例(4.90%)


一方逆に体重増加はどうかというと、


<体重増加の副作用報告>

  • 統合失調症:743例中22例(2.96%)
  • 双極性障害の躁状態の改善:192例中18例(9.38%)
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る):467例中47例(10.06%)
  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性:88例中16例(18.18%)

合計:1490例中103例(6.91%)


体重減少して痩せる副作用がないわけではないですが、基本的には太る副作用の方が一般的であることがわかります。

統合失調症以外の病態では基本的に痩せる事よりも太る割合が高く、統合失調症にだけが体重減少と体重増加の割合が逆転しています。
これはおそらく統合失調症患者さんではすでに他の抗精神病薬を飲んでいたため、他の抗精神病薬よりも太りにくいエビリファイに変更することで相対的に体重が落ちたり、太る割合が少なくなったのでしょう。

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エビリファイで体重減少する理由

おそらくいくつかの原因が考えられます。
そもそも抗精神病薬は通常太る方向に作用する薬理作用であって、痩せるようにはできていません。
しかし、様々な状況が折り重なることで痩せることがあるのではないでしょうか?


  1. 他の抗精神病薬からの切り替え
  2. エビリファイの副作用から二次的に痩せる場合
  3. もともとの精神疾患の影響

では、1つずつ解説していきます。

他の抗精神病薬からの切り替え

エビリファイを含め一般に抗精神病薬は肥満の副作用を起こすことにフォーカスされています。
特に小児でその傾向が強く指摘されているため、各抗精神病薬による体重増加を調べた研究があります。


  • オランザピン(ジプレキサ):3.8-16.2Kg(353名)
  • クロザピン(クロザリル):0.9-9.5Kg(97名)
  • リスペリドン(リスパダール):1.9-7.2Kg(571名)
  • クエチアピン(セロクエル):2.3-6.1Kg(133名)
  • アリピプラゾール(エビリファイ):0-4.4Kg(451名)

【参考文献】
Maayan L, Correll CU. Weight gain and metabolic risks associated with antipsychotic medications in children and adolescents. J Child Adolesc Psychopharmacol. 2011 Dec;21(6):517-35.

小児の統合失調症および双極性障害におけるデータですが、3か月でこれだけ体重変化が起こっています。
そして同じ非定型抗精神病薬の中でも体重の増え方にばらつきがあり、エビリファイはそれが軽度であるのもわかります。

エビリファイが太りにくいのは、太るのに主に作用しているであろう抗ヒスタミン作用や抗セロトニン(5HT)2c作用がないためと考えられています。

つまり、他の抗精神病薬からエビリファイに切り替えて痩せるのは、相対的な太る副作用効果の差であることが予想できます。

エビリファイの副作用から二次的に痩せる場合

エビリファイは非定型抗精神病薬の中でも少し特殊な位置づけにあります。
非定型抗精神病薬と言えば第二世代の新しい抗精神病薬なのですが、エビリファイはその中でも第三世代と位置付ける考え方もあります。

それゆえ副作用の出方が他の抗精神病薬と異なる特徴があり、胃腸症状が飲み初め初期に目立ってしまうことがあります。
具体的には吐き気や食欲不振、下痢などです。

これにより特に飲み始めは体重が減少しやすくなります。

もともとの精神疾患の影響

エビリファイは統合失調症、双極性障害の躁状態の改善、うつ病・うつ状態に抗うつ薬がうまく作用しない場合、小児の発達障害の易刺激性に適応があり処方されています。
双極性障害や非定型の特徴を伴ううつ病などでは過食になることや逆にそれがおさまって体重が落ちることもあります。

統合失調症では陰性症状が強まればあまり活動しなくなりますし、病状がコントロールされると陰性症状が弱まり活動できるようになり結果的に体重が落ちることもあるでしょう。

まとめ「エビリファイで痩せるのは本当?」

エビリファイをはじめ抗精神病薬は基本的に体重増加の副作用があります。
しかし、エビリファイは非定型抗精神病薬の中でも体重は増えずらい特徴があるため、主に他の抗精神病薬からの切り替えによって体重が落ちると考えられます。

エビリファイ単独で体重減少が起こるという機序は考えられず、様々な要素が重なった結果痩せることがあると考えるのが良いでしょう。

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