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エビリファイによる眠気

エビリファイは抗精神病薬の1つです。
抗精神病薬は主に統合失調症に使用される薬ですが、現在は双極性障害や通常の薬物に反応しないうつ病・小児の発達障害に対して適応があります。

抗精神病薬にはもちろん副作用がありますが、現在使用されることが多いエビリファイを含む新しい抗精神病薬(第二世代抗精神病薬・非定型抗精神病薬)は従来の抗精神病薬よりその頻度が低いのが特徴です。
とはいいつつもエビリファイには目立つ副作用として頭痛、不眠、吐き気、眠気、めまいがあります。

ここではエビリファイによる眠気の副作用について解説したいと思います。


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エビリファイによってどの程度「眠気」がでるか?

エビリファイによる「眠気」-添付文書では?-

添付文書では「眠気」について以下の記載があります。

重要な基本的注意
1.眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

つまり眠気が出て思わぬ事故につながる可能性があるから、危険なことはさせないようにという注意書きです。

Dr.GDr.G

あれっ?て方いますよね、きっと・・・

少し気になるのは「自動車の運転等・・・させないように注意すること」という部分。
そうです、エビリファイはいわゆる運転禁止薬の1つなんですね。

これについては賛否両論あり日本精神神経学会も「副作用の出現の仕方には個人差があり、処方を受けた者全員に運転を禁じなければならないほどの医学的根拠はない」とするガイドラインを発表しているほどです。
これについては別記事で書きたいと思います。

さて「眠気」としての記載は添付文書上ではこれだけですが、「傾眠けいみん」としてはところどころに記載があります。

副作用
副作用等発現状況の概要

  • 統合失調症
  • 傾眠の記載はなし、不眠(27.1%)

  • 双極性障害の躁状態の改善
  • 傾眠(12.5%)、・・・、不眠(9.9%)

  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
  • 傾眠(9.0%)、不眠(7.3%)

  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性
  • 傾眠(48.9%)、不眠の記載はなし

眠気の副作用について承認時や効能追加時の臨床試験データでは統合失調症患者では眠気よりも不眠の副作用が目立ち、双極性障害やうつ病においては10%前後、小児では約半数に眠気が出たという結果だったようです。

ちなみに「承認・効能追加の承認」においては、医薬品医療機器総合機構(PMDA; Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)が品質・有効性・安全性を審査して厚生労働大臣が承認します。
このときPMDAの審査は臨床試験をもとにしており、添付文書でもこの内容が記載されます。

医薬品を販売するためには、医薬品医療機器等法で規制されており規制当局(厚生労働省や各都道府県)の許可・承認を得なければいけないんですね。

ところで傾眠とはうとうとすることをいい、ときに意識障害を指します。
注意すべきこととしてエビリファイの副作用で低血糖になって傾眠を示した報告があり、低血糖による傾眠は単なる眠気というわけではありません。
これは意識障害による傾眠と言えます。

また海外の症例ですが、小児(9歳の女児)のエビリファイ15mgの服用で入院を要するほどの傾眠状態になった報告がされています。

【参考文献】
Jennifer D, et al. Excessive Somnolence from Aripiprazole in a Child. Pharmacotherapy 2004;24(4):522-525.

エビリファイによる眠気の出やすさ-他剤との比較-

現在、抗精神病薬と言えば非定型抗精神病薬が処方されることが多いですがエビリファイをはじめいくつかの抗精神病薬があります。
そしてそれらの種類によっても副作用を起こす頻度は違うのです。

エビリファイ以外にも抗精神病薬にはどんな種類があるのか全体像を見てみましょう。
非定型抗精神病薬には大きく3分類あります。

<非定型抗精神病薬の種類>

  • セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)
    • リスペリドン(リスパダール)
    • ペロスピロン(ルーラン)
    • ブロナンセリン(ロナセン)
  • 多元受容体標的化抗精神病薬(MARTAマルタ
    • オランザピン(ジプレキサ)
    • クエチアピン(セロクエル)
    • クロザピン(クロザリル)
  • ドパミン受容体部分作動薬(DSS:Dopamin System Stabilizer)
    • アリピプラゾール(エビリファイ

これらの抗精神病薬の中ではエビリファイは比較的眠気を起こしにくい方のお薬です。

では他のお薬との比較をみてみましょう。
(3つの非定型抗精神病薬とともに、第一世代の従来の抗精神病薬も載せてあります。)

分類系統薬剤
(主な製品名)
眠気
第一世代抗精神病薬ブチロフェノン系ハロペリドール
(セレネース)
フェノチアジン系クロルプロマジン
(コントミン・ウインタミン)
3+
ペルフェナジン
(ピーゼットシー)
第二世代抗精神病薬
(非定型抗精神病薬)
SDA
(セロトニン・ドパミン遮断薬)
リスペリドン
(リスパダール)
ペロスピロン
(ルーラン)
ブロナンセリン
(ロナセン)
0
パリぺリドン
(インヴェガ)
0
MARTA
(多元受容体作用抗精神病薬)
クロザピン
(クロザリル)
3+
オランザピン
(ジプレキサ)
クエチアピン
(セロクエル)
2+
アセナピン
(シクレスト)
DPA
(ドパミン受容体部分作動薬)
アリピプラゾール
(エビリファイ)

【参考文献】
浦部晶夫ほか.「今日の治療薬2017 解説と便覧」 南江堂.

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エビリファイで眠気がでてしまう理由

非定型抗精神病薬で眠くなる理由は神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつの作用によります。

神経は脳だけでなく身体のいたるところに張り巡らされていますが、電車と同じく乗り換えなしでどこまででも行けるわけではありません。
運動に関連する神経であれば脳から始まり脊髄を通って手足の末梢まで伸びていますが、そこに到達するまでに何度も乗り換えるわけです。

神経は電気信号で伝っていきますが、乗り換え部分(神経と神経の接合部分)は神経伝達物質という物質でやり取りをしています。
その神経伝達物質で有名なのが、統合失調症ならドパミン、うつ病ならセロトニンなどです。
神経伝達

図でで囲ってる部分が神経接合部でここで神経伝達物質の授受をしています。

イメージしやすいように神経伝達物質の1つセロトニンを例にとってお話しましょう。
神経1から神経2にセロトニンを受け渡すイメージです。

抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み

セロトニンが郵便物で、その受け取り手(受容体じゅようたいといいます)が郵便受けで示されています。
実はその受け取り手である受容体がその後の作用に大きく関連します。

セロトニン受容体に関して言うなら、セロトニンを神経伝達物質として利用している神経は脳以外にも腸などの消化管にもあります。
さらに同じセロトニンでも受け取る受容体によって作用も異なりますし、様々な種類が存在しています。

セロトニン受容体の色々

数ある受け取り口(受容体)のどこをブロックさせるのかが薬の特徴となります。

非定型抗精神病薬はドパミンやセロトニン、アドレナリン、ヒスタミンなどに対する受容体のブロック作用(すなわち受け取れなくさせる)がメインです。

この中で眠気に関連するのはアドレナリン(α1)とヒスタミン(H1)のブロックです。
実はこの作用は抗精神病薬に限らずうつ病のお薬でも同じです。

このアドレナリン(α1)とヒスタミン(H1)のブロック作用の強さが眠気の強さとなるわけです。

ヒスタミン(H1)ブロックは鎮静作用として働き落ち着かせる効果があります。
ヒスタミンブロッカーというと、ガスターのCMでおなじみの用語で胃薬が思い出されてしまいますが、これも受容体には様々な種類があり抗精神病薬で作用するのはそれの1番(ヒスタミン1)に対するブロックなんですね。

一方で、ヒスタミン(H1)をブロックする一般薬は花粉症のお薬や風邪薬に入っています。
これらのお薬を飲むと、打ち勝てない眠気を感じたことがある人は多いはずです。

エビリファイのヒスタミン(H1)やアドレナリン(α1)に対するブロック作用は、相対的に他の抗精神病薬より強くないことから眠気は起こしにくい方であると考えられます。

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エビリファイによる眠気への対策は?

エビリファイはそこまで眠気が強く出るお薬ではありませんが、添付文書でも示されている通り「自動車運転などは×」としています。
もし眠気が強く日常に支障が出る場合どうすればよいでしょうか?

もちろん生活習慣に問題がないか見直すことは大事なことですが、薬を飲んでから明らかに眠気で困っている場合には以下の対応をしていくことになります。

様子を見る

薬を即座に中止したり変えたりを考えたくなるところですが、多くの場合で眠気は一時的な副作用であることが多いです。
飲み始めて2-4週間は様子を見ることは、他のお薬に変えて他の副作用が出得ることを考えても賢明かと思います。

服用する時間をずらしてみる

エビリファイは統合失調症では1日1-2回、それ以外には1日1回服用が通常の用法となっています。
内服タイミングが朝か夜かもしくは寝る前かで眠気がその人の生活にどう影響するかが変わってくるでしょう。

エビリファイには眠気どころか逆に不眠の副作用が出ることもあり、また薬効が日中にしっかりでるように朝に内服を指示されることがあります。
しかしこれによってかえって日中の眠気が強いとなれば夜や眠る前に内服した方が良いのかもしれません。

内服タイミングについては黙ってずらしていることもありますが、遠慮せず主治医にはしっかり報告しましょう!
勝手に中断で注意されることはあっても内服タイミングの調整に注意が入ることはないでしょう。

エビリファイの減量もしくは変更

エビリファイは抗精神病薬の中でもともと眠気が目立つ薬ではありません。
エビリファイから他の非定型抗精神病薬への変更であれば眠気の影響が少ないお薬にロナセン(一般名:ブロナンセリン)やインヴェガ(一般名:パリぺリドン)がありますが適応承認は統合失調症のみとなります。
ただこれらのお薬はエビリファイのように多くの疾患に対しての適応はありません。

抗精神病薬の効果や特徴がすべて一緒というわけではないので、主治医の先生がエビリファイを選択したことには意味があるはずです。
病気の治療を目的とした薬ですから眠気を避ける事だけに集中して本末転倒にならないよう主治医と相談するようにしましょう。

まとめ「エビリファイによる眠気の対策」

エビリファイをはじめ抗精神病薬は基本的に眠気の副作用があります。
しかし、エビリファイは非定型抗精神病薬の中でも眠気が多いわけではなく逆に不眠になることもあります。

一般に抗精神病薬は抗ヒスタミン作用、抗アドレナリン(α1)作用により眠気が誘発されます。
エビリファイはこれらの作用は強くないため、頻度的には少ないものの日中の眠気は仕事などに支障をきたします。

またこのことからエビリファイ服用時には運転しないように記載されています。
(運転の禁止に関しては賛否両論あります)

眠気に関しては飲み始めは様子見もしくは飲むタイミングを変えてみるのが良いでしょう(主治医と相談しましょう!)。
1ヶ月経過後も続く場合は減量や他のお薬への変更が検討されます。

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