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エビリファイによるアカシジア(そわそわ・落ち着かない)に注意!

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
エビリファイによるアカシジア(そわそわ・落ち着かない)に注意!

エビリファイは抗精神病薬の1つで、統合失調症をはじめ双極性障害、うつ病・うつ状態、発達障害に対する易刺激性に対して効果があります。
抗精神病薬は一般に錐体外路症状と呼ばれる副作用(自分では意図しないのに体が勝手に動いてしまったり、手足や口が動かしづらい感覚、ふるえなど)を起こしやすいのが特徴です。

エビリファイは非定型抗精神病薬と呼ばれる新しい抗精神病薬の1つで、錐体外路症状は起こりにくいお薬ですがここで取り上げる「アカシジア」は起こりやすいと考えられています。
アカシジアといってもイメージしづらいでしょうが、とにかく落ち着きがなくなり貧乏ゆすりや歩き回るなどの不安と焦燥感が認められる副作用で、一見もともとの精神疾患が悪くなったんじゃないかとさえとらえられます。

ここではエビリファイによって起こる副作用の1つ「アカシジア」について解説します。

参考文献
重篤副作用対応疾患別マニュアル「アカシジア」平成22年3月版(厚生労働省)


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アカシジアとはどんな症状?

アカシジア(akathisia)と言われても医療者でもなかなかイメージしにくいと思います。
まず簡単にまとめると以下のような症状を言います。

  • 「体や足がソワソワしたりイライラして、じっと座っていたり、横になっていたりできず動きたくなる」
  • 「じっとしておれず歩きたくなる」
  • 「体や足を動かしたくなる」
  • 「足がむずむずする感じ」
  • 「じっと立ってもおれず、足踏みしたくなる」

と、言ってもなかなか難しいですね。
You Tubeに外国人ですがアカシジアの様子が動画でupされていましたのでみてみましょう!
理由なくイライラ動き回る様子、貧乏ゆすりの様子がわかると思います。

アカシジアは日本語では静座不能症と言われますが、とにかく落ち着いてじっとしていることができません。
しかもこの状態だけを見ると、精神疾患が悪化してしまったと思ってしまうでしょう。
このアカシジアと言う状態は本人はとても苦しい状態でときに自分を傷つけたり、衝動的な行動に出てしまう場合もあるのです。

重要なことはこれがお薬によって起こっており、決して精神疾患が悪化しているわけではないのです。
これに対し、抗精神病薬を増量したり抗うつ薬を追加したりすればさらに悪化してしまうという事態にも陥りかねません。

とにかくアカシジアと言う症状がどんな症状で、しかもそれが薬によって起こることを知っておくことはとても重要なことなのです。

アカシジアにはどんな自覚症状がある?

強い不安感と焦燥感しょうそうかんで、手足や体を揺り動かしたくなる強い衝動が襲ってきます。
そわそわする感じが常にあり、軽いうちはじっと座っていることもなんとかできますが非常に辛いでしょう。

重度になってくると、数分も横になったり座っていたりは難しくあちこち歩きまわらないといられなくなります。

重度であればアカシジアの診断は難しくないのですが、不安や焦燥感のみではもともとの精神疾患が悪化しコントロールできていないだけと判断されかねません。
その場合には薬剤量は増え、結果さらに症状は悪化してしまいます。

また精神科のお薬ではむずむず足症候群(レストレスレッグ症候群)といって足がむずむずして不快感で眠れない状態になってしまう副作用があります。
これもまた夜中に落ち着かないことから歩き回ったり、足をよく動かしたりしますがアカシジアとは区別されますが実際には鑑別は難しいかもしれません。
(むずむず足症候群は主に夕方から夜間に、アカシジアでは眠気と関係なしに日中でも強く症状がでます。)

アカシジアの原因

脳炎や頭部の外傷などの中枢神経系の疾患でもでますが、多くはアカシジアの原因はお薬です。
エビリファイも当然その1つですが、抗精神病薬に限らずお薬にはアカシジアを起こす副作用のあるものがあります。

<アカシジアを起こす可能性のあるお薬>

  • 抗精神病薬
    • 第一世代抗精神病薬
    • ウィンタミン/コントミン(クロルプロマジン)、ベゲタミン、ピーゼットシー(ペルフェナジン)など

    • 第二世代(非定型抗精神病薬)
    • リスパダール(リスペリドン)、ルーラン(ペロスピロン)、ロナセン(ブロナンセリン)、ジプレキサ(オランザピン)、セロクエル(クエチアピン)、エビリファイ(アリピプラゾール)など

  • 抗うつ薬
    • 三環系
    • アナフラニール、ノリトレン、トリプタノール(アミトリプチン)、アモキサン、トフラニール(イミドール)など

    • 四環系
    • テトラミド、ルジオミールなど

    • SSRI
    • ルボックス/デプロメール(フルボキサミン)、パキシル(パロキセチン)、ジェイゾロフト(セルトラリン)など

    • SNRI
    • トレドミン(ミルナシプラン)、サインバルタ、イフェクサーSR

    • NaSSA(ただしアカシジアを抑えるという報告もあり)
    • リフレックス/レメロン

  • その他
  • ドグマチール(スルピリド)、デジレル/レスリン(トラゾドン)など

  • 抗けいれん薬・気分安定薬
  • デパケン(バルプロ酸)、ラミクタール

  • 抗不安薬
  • セディール(タンドスピロン)
    ※ベンゾジアゼピン系抗不安薬はアカシジアの治療に使用されます。

  • 認知症薬
  • アリセプト(ドネペジル)

  • 消化性潰瘍薬
  • H2ブロッカー(ガスター、ザンタック、)、ドグマチール(スルピリド)

  • 消化器用薬(吐き気止めなど)
  • プリンペラン(メトクロプラミド)、ナウゼリン(ドンペリドン)、ガナトン(イトプリド)、ガスモチン(モサプリド)

  • 抗アレルギー薬
  • H1ブロッカー

  • 高血圧薬
  • 抗がん剤

エビリファイとアカシジア

アカシジアの起こるタイミング

エビリファイを飲み始めたり増量した数日以内にあらわれることがほとんどです(通常は3日から2週間以内)。

またエビリファイは抗精神病薬の中でも副作用としてパーキンソン症状を起こしにくい方のお薬なのですが、このパーキンソン症状の副作用予防に出される抗コリン薬(アキネトン、タスモリンなどがよく処方されます)を減薬したりやめたときにもアカシジアが起こります。
パーキンソン症状予防の抗コリン薬の場合には中止してすぐでることもありますが、中には6週間というスパンで忘れたころにアカシジアがでることもあるので注意が必要です。

エビリファイを数か月飲んでもなんともなかったのに、急に症状がでてくる遅発性ちはつせいのアカシジアもあります。

大事なことは飲み初めでなくてもアカシジアは現れることがあることを知っておくことでしょう。

エビリファイによってアカシジアはどの位の頻度で起こる?

文献によって差があるものの非定型抗精神病薬の方が少ない印象はあります。
そもそも抗精神病薬には従来の第一世代抗精神病薬と、第二世代の非定型抗精神病薬があります。

非定型抗精神病薬のアカシジアの発現率が2.3%とされる中、非定型抗精神病薬の中でもエビリファイは8.9%と高いアカシジアの発現率があります。

参考文献
重篤副作用対応疾患別マニュアル「アカシジア」平成22年3月版(厚生労働省)

エビリファイの臨床試験においては、統合失調症に対する使用の承認時(用量6-24㎎)に743例中87例(11.71%)、双極性障害の躁状態の改善(用量12-30mg)に対する承認時に192例中58例(30.21%)、うつ病・うつ状態(用量3-15mg)の承認時に467例中131例(28.05%)、小児期の自閉症スペクトラム障害の易刺激性(用量3-15mg)に対する承認時に88例中3例(3.41%)にアカシジアの副作用報告があります(全体では1490例中279例、18.72%)。

アカシジアが起こりやすい人

統合失調症ではエビリファイ以外にも他の抗精神病薬も併用される場合が多いですが、基本的に抗精神病薬の処方量が多くなるほどそのリスクが増します。

また、エビリファイは通常のうつ治療に反応しない場合に抗うつ薬と合わせて処方されることが多い薬でもあります。
つまりエビリファイ以外でも抗うつ薬の副作用である吐き気に対する吐き気止めや、胃薬としての特徴も持ち合わせる抗うつ薬の1種でもあるスルピリド(ドグマチール)もまたアカシジアを起こしやすいお薬です。

背景に貧血(鉄欠乏)糖尿病がある人もリスクが高いとされています。
(抗精神病薬誘発性アカシジアの鉄剤治療の報告がありますが一般的ではありません。)

参考文献
Kuloglu M, et al. Serum iron levels in schizophrenic patients with or without akathisia. Eur Neuropsychopharmacol. 2003 Mar;13(2):67-71.


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エビリファイによるアカシジアにどう対応する?

まず大前提として、アカシジアの原因が薬剤であることを知ることから始まります。

もしアカシジアの症状をもともとの精神疾患が悪くなったと考えると180度逆の対応になってしまいます。
そしてエビリファイの飲み初めだけでなく、遅れてアカシジアがでることがあることを知っておかなければ見過ごしてしまうでしょう。

エビリファイの減薬・中止

薬の副作用に薬で対応していくのはなかなか難しい場合もあるので、原則としてはエビリファイの減薬や変更が第一になります。
エビリファイは非定型抗精神病薬に分類されるお薬ですが、アカシジアに関してはその他の非定型抗精神病薬の方が発生頻度は低いので薬の変更も手です。
一般的にはエビリファイも多量になるとアカシジアのリスクが上がるので減薬して症状が改善するかをみていきます。

それでアカシジアは改善しても、もともとの精神疾患が悪化しては困るのでそのときに対症療法としての薬を飲むことになります。

アカシジアに対する薬物療法

アカシジアに対してよく使用されるお薬は抗コリン薬(アーテン、アキネトンなど)です。
アカシジアももちろんですが、抗精神病薬による錐体外路症状(パーキンソン症状など)の副作用を予防する目的で一緒に出されている場合も多いお薬です。

β遮断薬ベータしゃだんやくと呼ばれる、一般には循環器系で使用されるお薬ですがこれも有用です。
具体的にはインデラル(プロプラノロール)と呼ばれるお薬です。
血圧や脈拍が落ちるので、めまいがでやすいため増薬時には注意が必要です。

その他、ベンゾジアゼピン系抗不安薬(セルシン/ホリゾン、リボトリール/ランドセンなど)も使用されます。

一方で、抗うつ薬のNaSSA(商品名:リフレックス/レメロン)がβ遮断薬より有効にアカシジアを抑制したという報告もあります。(予防的に飲むことが有効なのかは不明です。)
エビリファイと併用して抗うつ薬が使用されているときにNaSSAが処方されている場合、アカシジアに対する対策を意図して出すことはありませんが結果的にはプラスになっている可能性もありますね。
しかし、NaSSAもまたアカシジアを起こしうるお薬としての認識もあります。

参考文献
Poyurovsky M, et al. Low-dose mirtazapine: a new option in the treatment of antipsychotic-induced akathisia. A randomized, double-blind, placebo- and propranolol-controlled trial. Biol Psychiatry. 2006 Jun 1;59(11):1071-7. Epub 2006 Feb 21.

まとめ「エビリファイによるアカシジア」

アカシジアは一見薬の副作用というより、もともとの精神疾患が悪い状態になったように見える症状です。
落ち着きがなくなり、不安と焦燥感でたえずじっとしていられない感覚があります。

エビリファイはアカシジアを起こしうるお薬で、飲み初めや高容量に増やしたとき、中には数週間おいてから症状がではじめることもあります。
このアカシジアが薬によって誘発されることを理解しておくことが重要です。

対応としては基本は減薬・中止になりますが、抗コリン薬やβ遮断薬・抗不安薬など薬物療法で対処されることもあります。

 

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