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エビリファイで体重増加?太るのは嫌! -医師が教える抗精神病薬-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
エビリファイで体重増加?太るのは嫌! -医師が教える抗精神病薬-

エビリファイは抗精神病薬に分類されるお薬です。
精神病薬や抗うつ薬というと一般に「太る」イメージが浸透していますが、エビリファイももちろん基本的には太るお薬です。

ただ他の抗精神病薬と比べて太りにくくはあり、それゆえ一部では「エビリファイは痩せる」という声もありますが、基本的には太る方向の薬と解釈しておいた方が無難です。

抗精神病薬は主に統合失調症に対して、最近ではその使用の範囲も広がってうつ病や双極性障害、小児期の発達障害にも処方されています。
そのときに最も出されることが多いのが非定型抗精神病薬というグループに属するお薬でエビリファイもその1つです。

この中ではエビリファイは太りやすいわけではないのですが、ここではエビリファイと体重増加の関係、その他のお薬との比較について解説します。


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エビリファイはなぜ太る?

エビリファイによる「体重増加」-添付文書では?-

添付文書では「体重増加」についてエビリファイの適応のある各疾患ごとに以下の記載があります。

副作用

  • 統合失調症
  • (体重増加に関する記載なし)

  • 双極性障害における躁症状の改善
  • 国内臨床試験及び国際共同試験において安全性解析の対象となった192例中(日本人87例を含む)、臨床検査値の異常を含む副作用が144例(日本人71例を含む)(75.0%)に認められた。
    主な副作用は、アカシジア(30.2%)、振戦(16.7%)、傾眠(12.5%)、寡動(10.9%)、流涎(10.4%)、不眠(9.9%)、体重増加(9.4%)、悪心(8.9%)、嘔吐(7.8%)及びジストニア(筋緊張異常)(5.2%)であった。(効能追加時)

  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
  • 国内臨床試験において安全性解析の対象となった467例中、臨床検査値の異常を含む副作用が320例(68.5%)に認められた。
    主な副作用は、アカシジア(28.1%)、体重増加(10.1%)、振戦(9.4%)、傾眠(9.0%)、不眠(7.3%)、ALT(GPT)上昇(7.1%)、便秘(5.6%)であった。(効能追加時)

  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性
  • 国内臨床試験において安全性解析の対象となった88例中、臨床検査値の異常を含む副作用が64例(72.7%)に認められた。主な副作用は、傾眠(48.9%)、体重増加(18.2%)、流涎(9.1%)、食欲亢進(9.1%)、悪心(6.8%)、食欲減退(6.8%)、 倦怠感(5.7%)であった。(効能追加時)

体重増加の副作用について承認時や効能追加時の臨床試験データを見てみましょう。

ちなみに「承認・効能追加の承認」においては、医薬品医療機器総合機構(PMDA; Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)が品質・有効性・安全性を審査して厚生労働大臣が承認します。
このときPMDAの審査は臨床試験をもとにしており、添付文書でもこの内容が記載されます。

医薬品を販売するためには、医薬品医療機器等法で規制されており規制当局(厚生労働省や各都道府県)の許可・承認を得なければいけないんですね。


<体重増加の副作用報告>

  • 統合失調症:743例中22例(2.96%)
  • 双極性障害の躁状態の改善:192例中18例(9.38%)
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る):467例中47例(10.06%)
  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性:88例中16例(18.18%)

合計:1490例中103例(6.91%)


添付文書では統合失調症における使用において体重増加の副作用に関する記載はありませんでしたが、実際には3%弱の報告があります。

一方で体重減少についても見ておきましょう。
なんと臨床試験では統合失調症では体重増加より痩せる割合の方が高くでています。


<体重減少の副作用報告>

  • 統合失調症:743例中68例(9.15%)
  • 双極性障害の躁状態の改善:192例中3例(1.56%)
  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る):467例中1例(0.21%)
  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性:88例中1例(1.14%)

合計:1490例中73例(4.90%)


これはおそらく統合失調症患者さんではすでに他の抗精神病薬を飲んでいたため、他の抗精神病薬よりも太りにくいエビリファイに変更することで相対的に体重が落ちたり、太る割合が少なくなったのでしょう。
体重減少して痩せる副作用がないわけではないですが、基本的には太る副作用の方が一般的であることがわかります。

エビリファイの抗精神病薬の中の位置づけと体重増加の他剤との比較

最初にもお話ししましたが抗精神病薬は太るお薬です。
抗精神病薬の副作用として有名なのは肥満ですし、コレステロールや糖尿病には気を付けながら処方するのが基本です。

現在、抗精神病薬と言えば非定型抗精神病薬が処方されることが多いですがエビリファイをはじめいくつかの抗精神病薬があります。
そしてそれらの種類によっても肥満やコレステロール異常を起こす頻度は違うのです。

エビリファイ以外にも抗精神病薬にはどんな種類があるのか全体像を見てみましょう。
非定型抗精神病薬には大きく3分類あります。

<非定型抗精神病薬の種類>

  • セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)
    • リスペリドン(リスパダール)
    • ペロスピロン(ルーラン)
    • ブロナンセリン(ロナセン)
  • 多元受容体標的化抗精神病薬(MARTAマルタ
    • オランザピン(ジプレキサ)
    • クエチアピン(セロクエル)
    • クロザピン(クロザリル)
  • ドパミン受容体部分作動薬(DSS:Dopamin System Stabilizer)
    • アリピプラゾール(エビリファイ

これらの抗精神病薬の中ではMARTAマルタ(ジプレキサ、セロクエル、クロザリル)が最も太りやすく、次いでSDA(リスパダール、ルーラン、ロナセン)、一番太りにくいのがエビリファイなのです。
他のお薬との比較をみてみましょう。

3つの非定型抗精神病薬とともに、第一世代の従来の抗精神病薬も載せてあります。

分類 系統 薬剤
(主な製品名)
体重増加の影響
第一世代抗精神病薬 ブチロフェノン系 ハロペリドール
(セレネース)
±
フェノチアジン系 クロルプロマジン
(コントミン・ウインタミン)
2+
ペルフェナジン
(ピーゼットシー)
第二世代抗精神病薬
(非定型抗精神病薬)
SDA
(セロトニン・ドパミン遮断薬)
リスペリドン
(リスパダール)
2+
ペロスピロン
(ルーラン)
±
ブロナンセリン
(ロナセン)
0
パリぺリドン
(インヴェガ)
2+
MARTA
(多元受容体作用抗精神病薬)
クロザピン
(クロザリル)
3+
オランザピン
(ジプレキサ)
3+
クエチアピン
(セロクエル)
2~3+
アセナピン
(シクレスト)
DPA
(ドパミン受容体部分作動薬)
アリピプラゾール
(エビリファイ)
0

参考文献
浦部晶夫ほか.「今日の治療薬2017 解説と便覧」 南江堂.

小児でのデータになりますが、3か月の服用でどれくらい太るのかを調べたデータがあるのでみてみましょう。
外国人のデータでしかも若年なのであくまで参考です。

エビリファイでの体重増加は他の薬と比べて軽度なのがわかります!


  • オランザピン(ジプレキサ):3.8-16.2Kg(353名)
  • クロザピン(クロザリル):0.9-9.5Kg(97名)
  • リスペリドン(リスパダール):1.9-7.2Kg(571名)
  • クエチアピン(セロクエル):2.3-6.1Kg(133名)
  • アリピプラゾール(エビリファイ):0-4.4Kg(451名)

参考文献
Maayan L, Correll CU. Weight gain and metabolic risks associated with antipsychotic medications in children and adolescents. J Child Adolesc Psychopharmacol. 2011 Dec;21(6):517-35.


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エビリファイで体重増加する理由

非定型抗精神病薬で太る理由は神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつの作用によります。

神経は脳だけでなく身体のいたるところに張り巡らされていますが、電車と同じく乗り換えなしでどこまででも行けるわけではありません。
運動に関連する神経であれば脳から始まり脊髄を通って手足の末梢まで伸びていますが、そこに到達するまでに何度も乗り換えるわけです。

神経は電気信号で伝っていきますが、乗り換え部分(神経と神経の接合部分)は神経伝達物質という物質でやり取りをしています。
その神経伝達物質で有名なのが、統合失調症ならドパミン、うつ病ならセロトニンなどです。
神経伝達

図でで囲ってる部分が神経接合部でここで神経伝達物質の授受をしています。

イメージしやすいように神経伝達物質の1つセロトニンを例にとってお話しましょう。
神経1から神経2にセロトニンを受け渡すイメージです。

抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み

セロトニンが郵便物で、その受け取り手(受容体じゅようたいといいます)が郵便受けで示されています。
実はその受け取り手である受容体がその後の作用に大きく関連します。

セロトニン受容体に関して言うなら、セロトニンを神経伝達物質として利用している神経は脳以外にも腸などの消化管にもあります。
さらに同じセロトニンでも受け取る受容体によって作用も異なりますし、様々な種類が存在しています。

セロトニン受容体の色々

数ある受け取り口(受容体)のどこをブロックさせるのかが薬の特徴となります。

この中で非定型抗精神病薬はドパミンとセロトニンに対する受容体のブロック作用(すなわち受け取れなくさせる)がメインです。

ドパミンの中でもドパミン(D2)受容体をブロックし、かつセロトニンの中でもセロトニン2c(5HT2c)受容体をブロックするのです。
この作用は陽性症状(幻聴や妄想)に効果を発揮しますが、セロトニン(5HT2c)ブロックがなんと体重増加につながるのです。

また抗精神病薬には同じく神経伝達物質の「ヒスタミン(H1)」受容体をブロックさせる作用もあります。
ヒスタミン(H1)ブロックは鎮静作用として働き落ち着かせる効果があります。
ヒスタミンブロッカーというと、ガスターのCMでおなじみの用語で胃薬が思い出されてしまいますが、これも受容体には様々な種類があり抗精神病薬で作用するのはそれの1番(ヒスタミン1)に対するブロックなんですね。
このヒスタミン(H1)ブロック作用も体重増加の副作用を起こします。

まとめると非定型抗精神病薬はセロトニン(5HT2c)とヒスタミン(H1)のブロック作用が体重増加を起こすとなります。
抗精神病薬に限らず抗うつ薬も太ることで知られていますが、実はこれとまったく同じ作用です(ヒスタミン1とセロトニン2cブロック)。
詳しい方はあれっ?と気付くかもしれませんが、抗うつ薬はセロトニンの伝達を増やすのでは?
その通りです。
しかし続けて抗うつ薬を服用するとセロトニン2cの受容体の数が減り、結果ブロックするような作用になります。ですから抗うつ薬の場合飲み始めは体重が落ちて後から太りだすという副作用の出方になります。

ではヒスタミン(H1)とセロトニン2cが伝達されなくなるとどうなるのでしょうか?

さて、聞きなれないかもしれませんがテレビでも肥満に関しての特集では必ずでてくる2つのキーワードを紹介します。


  1. レプチン
  2. グレリン

レプチンとグレリンですが、単純に食べるから太る、食べなければ痩せるだけと考えている方には絶対に知っておいてほしいキーワードです。

レプチン」は食欲に関連するホルモンで満腹中枢を刺激し満腹感を与えます。
皮肉にもこのホルモンは脂肪の細胞から分泌されるのですね。
ちなみに満腹中枢は脳の視床下部といわれるところにあります。

一方「グレリン」は胃から分泌される物質(厳密には摂食亢進ペプチドといってホルモンではありません)です。
通常は食事の前に胃の粘膜から分泌され、食欲を亢進させるとともに体内のエネルギー代謝に関連します。
肥満に関して言うならグレリンには脂肪を蓄積する作用があり、食欲に作用しないぐらい微量であっても動物実験では太る方向にいくことが確認されています。

つまり、抗精神病薬はヒスタミン(H1)とセロトニン2c(5HT2c)をブロックして、その神経機能の結果、レプチンというホルモンを低下(食欲は増進)、グレリンという胃から分泌されるペプチドを上昇させる(食欲増進、脂肪をためやすくする)ことで太りやすくさせます

参考文献
吉松博信. 肥満症治療のアプローチ. 第124回日本医学会シンポジウム

ここまで長く説明しておいて申し訳ないのですが、実はエビリファイは非定型抗精神病薬でありながら実はヒスタミン(H1)とセロトニン2c(5HT2c)をブロックする作用は強くありません。
ですから実際にはエビリファイに関しては体重増加の理由はまだはっきりわかっていません
他の抗精神病薬とは違う機序によるのかもしれないとも言われています。

ただエビリファイが他の薬より太りにくいのは確かですし、その理由はおわかりいただけたかと思います。
それは他の非定型抗精神病薬のようなヒスタミンに対する受容体のブロックやセロトニン2c(5HT2C)に対するブロック作用がエビリファイでは強くないためなのです。


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エビリファイで太ってしまったら

抗精神病薬で太らないようにするために、食事に気を付けましょうということが言われます。
しかし実際には食事の量が変わらなくても太ることがあるのが事実です。

なぜなら前章でも説明しましたが、薬による食欲に関するホルモンなどの変化によって食欲は増進しさらに脂肪がつきやすくなっているのです。
食欲増進させられる方向に作用することに勝つのは非常に難しく、仮にそこをコントロールできても脂肪はつきやすくなっているためにこれまでと同じ食事であっても太りやすくなっているのです。

それを念頭において対応について考えてみましょう。

1.エビリファイの減量もしくは変更

エビリファイは抗精神病薬の中でもともと体重増加が目立つ薬ではありません。
エビリファイから他の非定型抗精神病薬への変更であれば体重に関しての影響が少ないお薬にロナセン(一般名:ブロナンセリン)がありますが適応承認は統合失調症のみとなります。
エビリファイのように多くの疾患に対しての適応はありません。

抗精神病薬の効果や特徴がすべて一緒というわけではないので、主治医の先生がエビリファイを選択したことには意味があるはずです。
病気の治療を目的とした薬ですから、太ることを過度に恐れるあまり本末転倒にならないように注意して主治医と相談するようにしましょう。

ちなみに、抗うつ薬は抗うつ効果の面においてその量は大事ですが、抗うつ剤の内服量と太る度合いの相関関係は明らかになっていないため、減薬が体重増加の副作用に有効かはわかりません。

また医療者側は体重増加しても糖尿病や脂質代謝異常はチェックしていますが、見た目的な美容の観点の問題では太ってきていること気付いていないときもありますので、もし気になれば自分から言うことも大切です。

2.生活習慣を見直す

間食が多くなっていないか、一回の食事量が多くなっていないかは注意しましょう。
適度な運動も大事です。

筋力が落ちてしまってはこれだけで基礎代謝が落ちてしまい、薬とは無関係に太りやすい体質になってしまいます。

よく過度なダイエットをしているとあとで反動で太るのはこの基礎代謝が落ちるためかえって以前より太りやすい体質になっているのです。
筋肉は太りにくい体質に重要な要素です。

また、神経伝達物質のヒスタミンが薬でおさえられていると、脂肪の代謝が落ちているため、薬を飲む前と同じ食事量でも比較的高カロリーな食事をもともとしていた場合には、以前はあまり体重がかわらなくても薬をのんでいると太ることがあります。
飲み始めた時にはやはり日頃の食事量やカロリーに意識を払う必要があります。

よく噛むことはダイエットになる

精神病薬によって食欲や脂肪の蓄積をコントロールするホルモンなどの働きが中枢から変化してしまい食べ物を求めるようになってしまいますから、こうなると食欲が自分のコントロール下にはなく制御できずに太るようになってしまいます。

食事をするときに咀嚼そしゃくをしっかりすることは健康に良いことは聞いたことがあるかもしれませんが実は科学的に根拠のあるお話です。

実際、咀嚼しているときの口の中の感覚をよく脳に伝えることは、なんと神経ヒスタミンがよく作用する方向に働くのです。
神経ヒスタミンは食欲をおさえ、脂肪の代謝を上げる方向に働く作用があるので満腹感を促進させるようにはたらくのでヒスタミンをブロックする抗うつ剤の作用に対抗するには合理的なのです。

抗精神病薬を飲んでいるときこそよく噛んで食べよう!

まとめ「エビリファイで体重増加?太ってしまった場合の対策」

エビリファイをはじめ抗精神病薬は基本的に体重増加の副作用があります。
しかし、エビリファイは非定型抗精神病薬の中でも体重は増えずらい特徴があるため、主に他の抗精神病薬からの切り替えによって体重が落ちることもあります。

一般に、抗精神病薬はその抗ヒスタミン作用、抗セロトニン2c(5HT2c)作用によって食欲や代謝に関連するホルモンなどの動態を変化させ太りやすい方向に誘導してしまいます。
そしてそれは仮に食事量に変化がなくても太ってしまうことさえあるのです。

薬の変更や減薬は有効ですが、それによって精神疾患が不安定になってしまうのも問題です。
食事のコントロールや適度な運動はもちろん、食欲や代謝に関連するホルモンの変化の点からは咀嚼(よく噛むこと)に意識をおくことも有効である可能性はあるでしょう。

 

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