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エビリファイで不眠になる!?覚醒してしまう理由とは-医師が教える抗精神病薬-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
エビリファイで不眠になる!?覚醒してしまう理由とは-医師が教える抗精神病薬-

エビリファイは抗精神病薬の1つで、主に統合失調症やその他にも双極性障害の躁状態、うつ病、子供の発達障害の易刺激性(きれやすさ)に対して処方されるお薬です。
弱めではあるものの鎮静作用があることから眠気の副作用がありますが、逆に不眠になってしまうこともあります。

抗うつ剤では賦活化症候群ふかつかしょうこうぐん(アクチベーションシンドローム)といってかえってそわそわ感やおちつかなさ、覚醒状態になってしまう副作用が特に未成年者で起こりやすいことが有名ですが、実はエビリファイをはじめとする抗精神病薬でも似たようなことが起こりえます。
こうなれば当然不眠もでてしまいます。

エビリファイによる不眠について、またどのように対応することができるのか解説していきましょう。


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エビリファイによってどの程度「不眠」になるか?

エビリファイによる「不眠」-添付文書では?-

添付文書では「不眠」について以下の記載があります。

重要な基本的注意
7.(2)不安、焦燥、興奮、パニック発作、不眠、易刺激性、敵意、攻撃性、衝動性、アカシジア/精神運動不穏等があらわれることが報告されている。また、因果関係は明らかではないが、これらの症状・行動を来した症例において、基礎疾患の悪化又は自殺念慮、自殺企図、他害行為が報告されている。患者の状態及び病態の変化を注意深く観察するとともに、これらの症状の増悪が観察された場合には、服薬量を増量せず、徐々に減量し、中止するなど適切な処置を行うこと。

引用元:エビリファイ添付文書

ここに書いてある症状は、最初にもお話した通り賦活化症候群ふかつかしょうこうぐん(アクチベーションシンドローム)に相当するような症状です。
鎮静というより、むしろ覚醒方向に作用しイライラや落ち着かなさ、攻撃性がでて当然眠れない方向に作用してしまいます。

不眠が出てしまう割合について、臨床試験データを見てみましょう。

副作用
副作用等発現状況の概要

  • 統合失調症
  • 傾眠の記載はなし、不眠(27.1%)

  • 双極性障害の躁状態の改善
  • 傾眠(12.5%)、・・・、不眠(9.9%)

  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
  • 傾眠(9.0%)、不眠(7.3%)

  • 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性
  • 傾眠(48.9%)、不眠の記載はなし

引用元:エビリファイ添付文書

承認時や効能追加時の臨床試験データでは統合失調症患者では不眠の副作用が目立ち、双極性障害やうつ病においては不眠も眠気も10%前後、小児では多数に眠気がでたようです。

ちなみに「承認・効能追加の承認」においては、医薬品医療機器総合機構(PMDA; Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)が品質・有効性・安全性を審査して厚生労働大臣が承認します。
このときPMDAの審査は臨床試験をもとにしており、添付文書でもこの内容が記載されます。

医薬品を販売するためには、医薬品医療機器等法で規制されており規制当局(厚生労働省や各都道府県)の許可・承認を得なければいけないんですね。

エビリファイによる不眠の原因

エビリファイによって起こる不眠の原因は2つです。


  1. 興奮性が高まることがある
  2. むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

1.興奮性が高まることがある

本来抗精神病薬は鎮静作用があるので、興奮性とは逆に落ち着かせる方向に作用するはずです。
ですから眠気の副作用がきやすいことは容易に理解できると思います。

しかし、新しい抗精神病薬であるエビリファイは副作用を抑える変わりに鎮静作用が強くなくこのことが逆に興奮性と関連するかもしれないことが指摘されたりしています。

衝動性しょうどうせいと言って、かーっとくる衝動的な感覚というのは誰にもあるのでおわかりいただけると思いますが、普通はその衝動にも遊びがあり抑制してコントロールできる感覚があるはずです。
しかし、衝動がコントロールできないとなると衝動買いや性衝動が高まったり、過食になってしまったりちょっとしたことにキレることが多くなります。

衝動性が制御できないというとそれも精神科・心療内科領域ではひとつの病態(衝動制御障害 impulse control disorders)として見られますが、実はお薬によってこのことが誘発されることがあるのです。

興奮性が高まることがあることで有名なお薬はSSRIやSNRIといった、いわゆる抗うつ剤です。
抗うつ剤によって興奮性が高まることを特にアクチベーションシンドローム(賦活化症候群ふかつかしょうこうぐんと言ったりします。

抗うつ剤によるアクチベーションシンドロームではイライラ、不安、パニック、攻撃性、衝動性、不眠、躁状態を招きます。

抗うつ剤はセロトニンに作用してこの状態を招きますが、エビリファイはドーパミンに作用して興奮性を刺激してしまう可能性があるのです。
このことが不眠に関連していると考えられます。

参考文献

  1. Moore TJ, et al. Reports of pathological gambling, hypersexuality, and compulsive shopping associated with dopamine receptor agonist drugs. JAMA Intern Med. 2014 Dec;174(12):1930-3.
  2. Neil Smith, et al. Pathological gambling and the treatment of psychosis with aripiprazole: case reports. The British Journal of Psychiatry Jul 2011, 199 (2) 158-159


2.むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

じっとした姿勢や横になったときにむずむずしてじっとしていられないような足の感覚がでてしまう症状のことをいいます。
これだけだと大した症状でないように聞こえますが、痒いのに搔けないときのむずむず感を想像してもらえばと思います。

その感覚が寝ようとして横になると出現し眠りを妨げてしまいます。
こんな症状のために医師も見逃しやすいものです。

様々な原因がありますが、抗精神病薬もその1つです。

エビリファイはむずむず脚症候群の改善のために使用されたりもします。
他の抗精神病薬でこの症状を引き起こしたためにエビリファイに変えたら改善したという報告があるものの、やはりエビリファイ自体がむずむず脚症候群を引き起こしたという例も散見されます

エビリファイによる不眠の出やすさ-他剤との比較-

現在、抗精神病薬と言えば副作用の比較的少ない非定型抗精神病薬が処方されることが多いですがエビリファイをはじめいくつかの抗精神病薬があります。
そしてそれらの種類によっても副作用を起こす頻度は違うのです。

エビリファイ以外にも抗精神病薬にはどんな種類があるのか全体像を見てみましょう。
非定型抗精神病薬には大きく3分類あります。

<非定型抗精神病薬の種類>

  • セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)
    • リスペリドン(リスパダール)
    • ペロスピロン(ルーラン)
    • ブロナンセリン(ロナセン)
  • 多元受容体標的化抗精神病薬(MARTAマルタ
    • オランザピン(ジプレキサ)
    • クエチアピン(セロクエル)
    • クロザピン(クロザリル)
  • ドパミン受容体部分作動薬(DSS:Dopamin System Stabilizer)
    • アリピプラゾール(エビリファイ

若年者でのデータですが、飲み始めてからどれくらいの期間でじっとしていられない感覚(焦燥感)がでたか割合を示すデータがあります。
不眠

参考文献
Zainab Al-Dhaher, et al. Activating and Tranquilizing Effects of First-Time Treatment with Aripiprazole, Olanzapine, Quetiapine, and Risperidone in Youth. J Child Adolesc Psychopharmacol. 2016 Jun 1; 26(5): 458–470.

このデータは不眠がどれくらいの割合で出たかを示すダイレクトなものではありませんし、若年者のしかも外国人のデータですがある程度の指標にはなるかもしれません。
0・4・8・12wは薬を飲み始めたその週数において副作用がどの程度出ていたかを示します。

一般に飲み初め直後はどの薬もある程度の割合がいるものの時間とともに少なくなっているのがわかります。
エビリファイの場合は、じっとしていられない感覚がでるとあくまでデータ上はそのまま継続して認めてしまう傾向があるようです。


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エビリファイによる不眠への対策

エビリファイによって不眠がでてしまっていると考えられる場合にはどのような対策をしたらよいか説明していきましょう。

様子を見る

薬を即座に中止したり変えたりを考えたくなるところですが、一時的な副作用であることも多いです。
不眠のみでその他じっとしていられなかったり攻撃性が出たりしていない限りは経過をみるのも良いでしょう。

ただし上記のデータで示した通り、エビリファイの場合はそのまま症状が持続する傾向もあるようです。

服用する時間をずらしてみる

エビリファイは統合失調症では1日1-2回、それ以外には1日1回服用が通常の用法となっています。
内服タイミングが夜かもしくは寝る前で、その後眠れなくなってしまうようなら朝に変えてみるのも良いでしょう。

内服タイミングについては黙ってずらしていることもありますが、遠慮せず主治医にはしっかり報告しておきましょう!
勝手に中断で注意されることはあっても内服タイミングの調整に注意が入ることはないでしょう。

エビリファイの減量もしくは変更

エビリファイは抗精神病薬の中でもともと鎮静作用が強いお薬ではありません。
興奮性がもともと目立っているような場合には鎮静作用の強いオランザピン(ジプレキサ)やクエチアピン(セロクエル)などに変更するのも手かもしれません。

飲み始めてから不眠になったのかもともと不眠が強かったかでも主治医の判断が変わりますので、もしエビリファイ内服後から不眠になったようであればしっかり報告してエビリファイをどうしていけば良いか相談しましょう。

睡眠薬などを併用する

もともと不眠がある場合には、睡眠薬の併用もありですがエビリファイを飲み始めてからの場合には薬の副作用を薬で調整するという事になりかねません。
この場合たくさんの薬になってしまうこともありますし、後々もともとの疾患の症状だったか薬の副作用だったかも分からなくなってしまいます。

睡眠薬は有効な場合も多いですが、なるべく薬の副作用は減薬などで対応していく方が賢明かもしれません。

まとめ「エビリファイによる不眠の副作用と対策」

エビリファイをはじめ抗精神病薬は基本的に眠気の副作用がありますが、逆に覚醒して不眠になることもあります。
特にエビリファイは非定型抗精神病薬の中でも鎮静作用が強いわけではありません。

興奮性が増して不眠になることもあれば、足がむずむずしてしまって不眠になることもあります。

飲み始めは様子見もしくは飲むタイミングを変えてみるのが良いでしょう(主治医と相談しましょう!)。
1ヶ月経過後も続く場合は減量や他のお薬への変更が検討されます。

 

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