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エビリファイのうつ病に対する効果 -医師が教える抗精神病薬-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
エビリファイのうつ病に対する効果 -医師が教える抗精神病薬-

エビリファイは抗精神病薬の1つですが、「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合)」にも適応があります。
これまでうつの治療はセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質に主に作用する抗うつ剤が中心でしたが、10-20%は抗うつ剤だけでは十分な効果が認められないのです。

難治性のうつに対してはドパミンに作用するエビリファイのような薬が有効であることがわかってきたのです。
ここではエビリファイのうつ病に対する効果について解説します。


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エビリファイと抗うつ効果

うつ病の多くは寛解しますが、10-20%は抗うつ剤が効かず慢性化してしまうものがあります。
薬を飲んで治っていつの間にか職場復帰しているパターンもあれば、薬の数が増えたり「双極性障害」とか「反復性うつ」と言われながら数年来治療しているというのが後者になります。

一般に、抗うつ剤はセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質しんけいでんたつぶっしつに作用します。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)がうつ病治療における主役のお薬です。

神経伝達物質

そんな中、セロトニンやノルアドレナリンに作用する薬(抗うつ剤)だけでなく、主にドーパミンに作用する薬物(抗精神病薬)も、もし通常のうつ病治療に反応しなかった場合(慢性の経過になってしまっているうつ)には使用できるようになったのです。
神経伝達物質の上の図を見てもわかる通り、ドパミンもうつに対して重要な位置にありそうですよね?

その一つが非定型抗精神病薬のエビリファイなのです。
エビリファイはドパミン受容体部分作動薬に分類され、ドパミンスタビライザーの異名があります。
これについては後述しましょう!

さて、抗精神病薬がうつ病に使用されるようになった背景をみていきましょう。
非定型抗精神病薬を抗うつ薬とあわせて飲むと抗うつ効果が増強することがはじめて報告されたのは1999年のことでした。
抗うつ剤(SSRI)を飲んでも効果がなかった患者さんがリスペリドン(リスパダール)をあわせて服用すると急速に改善したことを報告したのが最初です。

参考文献
Ostroff RB, Nelson JC. Risperidone augmentation of selective serotonin reuptake inhibitors in major depression. J Clin Psychiatry. 1999 Apr;60(4):256-9.

その後も非定型抗精神病薬の抗うつ効果の増強効果に関する研究・報告が次々になされ、2008年に米国でエビリファイが最初に大うつ病における抗うつ作用の増強薬として承認されたのです。

日本ではエビリファイは統合失調症の治療薬として2006年に大塚製薬から販売されました。
2012年には双極性障害の躁状態に対して、次いで2013年6月に「うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)」に公式に使用できるようになったのです。

非定型抗精神病薬にはエビリファイ以外にも以下のようなお薬があります。

<非定型抗精神病薬の種類>

  • セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)
    • リスペリドン(リスパダール)
    • ペロスピロン(ルーラン)
    • ブロナンセリン(ロナセン)
  • 多元受容体標的化抗精神病薬(MARTAマルタ
    • オランザピン(ジプレキサ)
    • クエチアピン(セロクエル)
    • クロザピン(クロザリル)
  • ドパミン受容体部分作動薬(DSS:Dopamin System Stabilizer)
    • アリピプラゾール(エビリファイ

ジプレキサ、リスパダール、セロクエル、エビリファイそれぞれにおいて抗うつ効果の増強作用があり、それぞれのお薬間で差はないことがわかっています。

参考文献
Nelson JC, Papakostas GI. Atypical antipsychotic augmentation in major depressive disorder: a meta-analysis of placebo-controlled randomized trials. Am J Psychiatry. 2009 Sep;166(9):980-91.

エビリファイがなぜ抗うつ効果を発揮するのか?

では、なぜエビリファイをはじめとする非定型抗精神病薬が抗うつ効果の増強剤として効くのでしょうか?

詳細はまだわかっていませんが、そこには2つの作用が考えられています。


  1. ドパミンに関連した抗うつ効果
  2. セロトニン受容体に対する作用

ドパミンに関連した抗うつ効果

現在使用されている抗うつ剤のほとんどはセロトニンやノルアドレナリンに作用する抗うつ剤です。
これらを変更しつつ経過をみても十分な効果を感じられないとなると、それ以上変更しても同じ薬理作用しか得られないためあらたに改善が見られる可能性は低いのです(もちろん副作用の観点からは症状が軽減する可能性はありますが)。

つまり、別の作用機序としての抗うつ効果が必要と考えられるのです。
そこに登場するのがドパミンです。

神経伝達物質(再掲)

うつ病において脳内にいけるドパミンの機能が低下していることが報告されています。

参考文献
Papakostas GI. Dopaminergic-based pharmacotherapies for depression. Eur Neuropsychopharmacol. 2006 Aug;16(6):391-402.

エビリファイはドパミン受容体部分作動薬という名前の通り、ドパミン2(D2)受容体と前頭葉におけるドパミン1(D1)受容体を刺激することで効果を出すと考えられます。

セロトニン受容体に対する作用

まず非定型抗精神病薬より前に、抗うつ剤がなぜ抗うつ効果を発揮するかについて簡単にお話しておきましょう。
現在においてはうつ病の病態には諸説あるものの、神経伝達物質セロトニンが関与していることはあまりにも有名です。

神経そのものは電気の流れですが、神経と次の神経のやりとりにおいては神経伝達物質が作用します。

神経伝達

で囲っている部分において神経伝達物質が作用します。
神経伝達物質

神経伝達物質にはドパミン、ノルアドレナリン、ヒスタミンなど様々なものがありますがその1つにセロトニンがあります。

セロトニンは次の神経に到達すると郵便受けに相当する受容体じゅようたいと呼ばれる入り口から取り込まれます。

抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み2

そしてセロトニンを多く届けられるように、抗うつ剤と言うのはセロトニンを自己回収するシステムを邪魔するように作用してセロトニン供給を増やすお薬なのです。

抗うつ薬のセロトニン増強の仕組み3

話を、非定型抗精神病薬に戻しましょう。
抗うつ剤と違ってエビリファイはセロトニンを自己回収してしまうシステムにはもちろん作用しません。
そうではなく一部のセロトニン受容体そのものに作用するのです。

実はセロトニン(5HT)の受容体(受け取り口)には様々な種類があります。
(5HT-1、5HT-2、5HT-3のように分類されています。)

セロトニン受容体の色々

ひと口にセロトニン(5HT)といってもどの受容体に作用したかで反応は異なるのです。
エビリファイをはじめ非定型抗精神病薬は5HT-2A受容体を邪魔します。

以下の図は、同じくセロトニン2番の受容体をブロックするリフレックスという抗うつ薬の作用機序を説明したものですが同様の機序ですので借用しています(エビリファイに置き換えてみてください)。

リフレックス・レメロンの作用機序

こうすることで2番がブロックされますから、他のセロトニン1A受容体に相対的に多くのセロトニンを届けられるようになります。

セロトニン1番に多くのセロトニンが届けられると神経機能の回復が行われやすくなります。
一方、逆に2番をブロックすることで抗うつ薬の副作用に関わっていたセロトニン2番受容体の機能を抑えます。

SSRIやSNRIといった抗うつ剤ではセロトニン(5HT)の1番も2番も療法を増強してしまいますが、非定型抗精神病薬が一緒に服用されることで5HT-1A受容体(セロトニン1番の受容体)に効率よくセロトニンを届けることができるようになるのです。
(これはリフレックス錠/レメロン錠のようなNaSSAと呼ばれる新しい抗うつ剤による効果とよく似ています。それゆえこのお薬も抗うつ薬と併用されることが多いです。今回もその図を上で使用しています。)


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エビリファイ添付文書でみるうつ病への使用法

添付文書では以下のようになっています。

<効能・効果に関連する使用上の注意>
うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)の場合

  1. 選択的セロトニン再取り込み阻害剤又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤等による適切な治療を行っても、十分な効果が認められない場合に限り、本剤を併用して投与すること。
  2. 抗うつ剤の投与により、24歳以下の患者で、自殺念慮、自殺企図のリスクが増加するとの報告があるため、本剤を投与する場合には、リスクとベネフィットを考慮すること。

引用元: エビリファイ添付文書

うつ病に対しての使用はエビリファイ単独ということではなく抗うつ薬とあわせて処方されます。
抗うつ薬同様、エビリファイもときにアクチベーションシンドローム(賦活化症候群ふかつかしょうこうぐん)を起こすことがあり興奮性、攻撃性、自殺念慮を強めて逆効果になってしまうこともあります。

またどのような内服の仕方をするかですが、添付文書では以下のように記載されています。

<用法・用量>
うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)の場合
通常、成人にはアリピプラゾールとして3mgを1日1回経口投与する。
なお、年齢、症状により適宜増減するが、増量幅は1日量として3mgとし、1日量は15mgを超えないこと。

引用元: エビリファイ添付文書

エビリファイ3㎎を1日1回からスタートし最大容量は15㎎までとしています。
つまり基本的には低用量での使用が推奨されています。

低用量でその効果が発揮できる点や、抗うつ薬との併用もあり非定型抗精神病薬の量が増えると副作用(体重、女性化乳房、錐体外路症状など)も増えることから薬を飲み続けていくことが大変になることも加味されていると思います。

まとめ「エビリファイのうつ病に対する効果」

これまでセロトニン(5-HT)やノルアドレナリン系に作用するお薬がうつ病の治療に用いられてきましたが、10-20%の患者さんでは有効性がいまいちでした。
ドパミン系に作用するお薬がこのような難治性のうつの治療に有効であることがわかり、抗うつ剤に追加して「抗うつ薬の増強療法」としてエビリファイをはじめ非定型抗精神病薬が使用されるようになったのです。

また難治性大うつ病の1/4で双極性障害が潜在していることも言われていますが、単極性のうつ・双極性のうついずれにもエビリファイを抗うつ薬に併用することで有効性が確認されています。

 

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