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エビリファイ錠の効果と作用 -医師が教える抗精神病薬-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
エビリファイ錠の効果と作用 -医師が教える抗精神病薬-

エビリファイは「抗精神病薬」の1つです。
ですから一般的には統合失調症のお薬です。

統合失調症とは幻覚・妄想や思考の障害、意欲低下や感情の鈍麻、引きこもりといった症状を主症状とする精神疾患です。
さらにエビリファイは統合失調症に限らず双極性障害の躁状態、うつ病・うつ状態にも適応があります。

2016年には小児期の発達障害に伴う易刺激性にも適応が認められました。

ここではエビリファイの一般的な効果や特徴について解説します。


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エビリファイとは?

エビリファイは抗精神病薬の1つで、非定型抗精神病薬に分類されます。
オロナミンCやポカリスエットで有名な大塚製薬が開発したお薬です。

非定型ひていけいって何?」ってなるかとは思いますが、もちろん反対の定型抗精神病薬もあり、とにかく定型抗精神病薬というのは統合失調症で第一選択になっているお薬だと認識しておいてください。

その非定型抗精神病薬に分類されているお薬の1つがエビリファイというわけです。

エビリファイが効果のある疾患

エビリファイが有効とされている疾患を挙げてみましょう。
統合失調症のお薬というイメージが強いのですが、実に様々な病態に有効性を示します。

  • 統合失調症
  • 双極性障害(躁状態/混合状態)
  • うつ病・うつ状態
  • 自閉症スペクトラム障害における刺激性
  • 認知症における行動障害
  • 小児や青年の行動障害
  • 衝動が制御できない状態

これらのうち、日本で適応があるのは以下です。

<エビリファイの適応>

  1. 統合失調症
  2. 双極性障害における躁症状の改善
  3. うつ病・うつ状態(抗うつ薬で効果が認められない場合)
  4. 小児期の自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性(2016年追加承認)

統合失調症というのは、幻覚・妄想や思考の障害、意欲低下や感情の鈍麻、引きこもりといった症状を主症状とする精神疾患です。
具体的には①陽性症状・②陰性症状・③認知機能障害・④感情障害の4つの異常が現れます。

幻聴が聞こえたり、妄想があって現実にはないことを認知してしまう症状を陽性症状ようせいしょうじょうといいます。
一方、生き生きとした感覚が失われる、活動性が落ちる、感情が現れてこない、ひきこもりがちになるというような日常生活や社会機能に大きな支障が出るものを陰性症状いんせいしょうじょうといいます。

ここに、注意力・記憶力の低下や問題解決能力が低下し(認知機能障害)、不安やうつ症状(感情障害)を伴うわけです。

エビリファイは幻聴や妄想といった陽性症状、陰性症状、認知症状、感情症状を改善させます(ただし完全にとはいかなず、1/3くらいに軽減させる)。

双極性障害においても、症状は軽減されます。
双極性障害とは、うつ症状だけでなく躁症状(気分が上がった状態、ときに誇大な妄想をしたり混合状態といって興奮性や自殺念慮が出ることもあります)を伴う疾患です。

軽減のみならず、躁症状(もしくは混合症状によるイライラや不安、焦燥感)を予防する効果もあると考えられています。

自閉症スペクトラム障害とエビリファイ

自閉症スペクトラム障害は俗に「発達障害」といわれるものの1つで、対人コミュニケーションの質的な障害(コミュニケーション自体が難しいこともあれば、フレンドリーに接することができつつも一方的だったりいつの間にか相手を怒らせていたりしてしまう、もしくはその自覚も持てないかもしれない)、行動や興味の対象が非常に狭かったり、逆に広いけど自身の中で流行りがあったり(興味があり凝っているものが次々と変わっていく)、ルーチンを大事としてそこからはずすことが難しい(融通を利かせにくい、こうあるべきという考えが強い)などの特徴があります。

以前はアスペルガー障害と言われていたこともあり、こちらの方が有名な言いまわしかもしれません。

この障害では、こういった特徴が表立ちますがそれ以外にも攻撃性やキレやすい(かんしゃくを起こす)などの特徴があり、本人も衝動性として「カーッとする」感覚を持ちあわせています。

しばしばこの攻撃性や衝動性が本人はもちろん周囲をこまらせている場合も多いです(子供が壁をなぐって穴をあけたり、自傷行為、物を壊すなど)。

この興奮性に対しては世界中で抗精神病薬が経験的に使われており、米国では2006年に非定型抗精神病薬であるリスペリドンが、2009年にはエビリファイが承認されていたのです。
この流れを受けて、2016年に日本でもエビリファイが承認されるに至ったのです。

これに関する詳細は別記事で扱いたいと思います。

エビリファイ錠の用法

エビリファイには散剤(粉薬)、錠剤、OD錠(口腔内崩壊錠)、液剤、注射薬といった様々なバリエーションがあります。



一番使用されている基本的な剤型は錠剤もしくはOD錠という水なしでも口の中で溶けていく形状の薬ですので、これについての用法を示しましょう。

<エビリファイ錠・OD錠のバリエーション>

  • 3mg錠・OD錠(¥82.50)
  • 6mg錠・OD錠(¥156.70)
  • 12mg錠・OD錠(¥297.80)
  • 24mg錠・OD錠(¥566.00)
  • ( )内は2016年4月改訂の1錠あたりの薬価。


実際の飲み方です。
エビリファイは半減期といって体内に入ってから代謝されるまでの時間が長く、代謝されたものもエビリファイと同様な効果を持ちそれもまた半減期が長いため1日1回内服で十分1日効果を発揮します。

半減期については以下参照。

各疾患に対する飲み方です。

  1. 統合失調症
  2. 1日6mg~12mgを1日1回ないしは2回に分けて
    改善後は1日6㎎~24㎎を1日1回ないしは2回にわけて

  3. 双極性障害の躁状態
  4. 1日1回24㎎から
    改善後は1日12㎎~24mgを1回

  5. うつ病・うつ状態(抗うつ剤のみで改善ない場合の増強療法)
  6. 1日1回3㎎から
    増量は3㎎ずつ、最大量は15㎎

  7. 自閉症スペクトラム症に伴う易刺激性
  8. 1日1回1㎎から
    増量は3㎎以内ずつ、最大量は15㎎

エビリファイの効果が出るまでの時間

激しい症状は早めに落ち着くことが多く、陽性症状などの精神症状や躁症状に対して1週間以内に効果が現れます。
統合失調症の陽性症状はそれでも完全に消失するわけではなく、軽減させるにとどまります。

認知や情動が安定してくるまでにはそこから数週間かかることもあり、薬が効きにくい方においては数か月要する場合もあります(薬の量などの調整も含めて)。


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抗精神病薬におけるエビリファイの位置づけ

第一世代と第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)

抗精神病薬は主に統合失調症に使用されるお薬です。
1996年に日本で承認された「リスペリドン」以前の抗精神病薬を第一世代、リスペリドン以降に登場した抗精神病薬を第二世代と分けます。
現在統合失調症に対して最初に処方されるのは第二世代の抗精神病薬です。

第一世代と第二世代を簡単に言えば、第一世代は副作用の多い抗精神病薬、第二世代は副作用が第一世代より少ない新しい抗精神病薬となります。

統合失調症は先にもお話ししましたが、①陽性症状・②陰性症状・③認知機能障害・④感情障害の4つの異常が現れますが、第二世代が第一世代に優れる点は副作用の面以外にもこの陰性症状(生き生きとした感覚が失われる、活動性が落ちる、感情が現れてこない、ひきこもりがち)や認知機能障害に対する有効性が優れている可能性が言われています(効果の面では差がないとする意見もあります)。

主な抗精神病薬を列挙してみましょう。
エビリファイは第二世代抗精神病薬に位置づけられます。

<主な抗精神病薬>

大分類 系統 一般名(製品)
第一世代
(定型、従来型)
フェノチアジン系 クロルプロマジン(ウィンタミン、コントミン)
レボメプロマジン(ヒルナミン、レボトミン)
ペルフェナジン(ピーゼットシー、トリラホン)
プロクロルペラジン(ノバミン)
ブロペリアジン(ニューレプチル)
ブチロフェノン系 ハロペリドール(セレネース)
ブロムペリドール(インプロメン)
ピモジド(オーラップ)
ベンザミド系 スルピリド(ドグマチール、アビリット)
スルトプリド(バルネチール)
チアプリド(グラマリール)
その他 ゾテピン(ロドピン)
モサプラミン(クレミン)
第二世代
(非定型)
セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA) リスペリドン(リスパダール)
パリぺリドン(インヴェガ)
パリペリドンパルミチン(ゼプリオン)
ペロスピロン(ルーラン)
ブロナンセリン(ロナセン)
多元受容体作用抗精神病薬
(MARTA)
オランザピン(ジプレキサ)
クエチアピン(セロクエル)
クロザピン(クロザリル)
アセナピン(シクレスト)
ドパミン受容体部分作動薬(DPA) アリピプラゾール(エビリファイ)

また第二世代の抗精神病薬は統合失調症以外にも効果があり日本でも適応が認められているものを示します。

<統合失調症以外の適応>

  • 小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
  • エビリファイ、リスパダール

  • 双極性障害における躁症状の改善
  • エビリファイ、ジプレキサ

  • 双極性障害におけるうつ症状の改善
  • ジプレキサ

  • うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合)
  • エビリファイ

第二世代(非定型抗精神病薬)の副作用とエビリファイの強み

第一世代のお薬の有名な副作用は錐体外路症状すいたいがいろしょうじょう高プロラクチン血症です。


  • 錐体外路症状 extra-pyramidal side effect; EPS
  • 錐体路すいたいろというのは、脳や脊髄における筋肉を動かす神経の通り道をいいます。
    一方、錐体路は筋肉を動かす神経の微調整を行う経路のことをいいます。

    ここが障害されると、手足が揺れてしまったり(振戦しんせん)、筋肉がこわばって動きづらさを感じたり(固縮・無動)してしまいます。
    この症状はパーキンソン病でみられる症状でもありますが、抗精神病薬によってパーキンソン症状が誘発されてしまうわけです。
    このことを錐体外路症状(EPS)と言います。

    本人は歩きにくい感覚、しゃべりにくい感覚を実感することが多く、周囲からは表情がなくなったように見えたり姿勢が悪く歩幅が狭くちょこちょこ歩くなったように見えることもあります。

  • 高プロラクチン血症
  • プロラクチンはホルモンの1つで、脳下垂体から分泌されます。
    乳腺の発育や乳汁の分泌に関連するホルモンで、通常は妊娠・出産時に多く分泌されます。

    抗精神病薬ではプロラクチンが分泌されてしまう副作用があるため女性はもちろん、男性でも女性のような乳房になったり乳汁が分泌されてしまうことがあります。


第二世代は当然これらの副作用が少ないわけですが、代わりに太る・糖尿病になりやすいという副作用頻度が第一世代よりも高くなります

その中でもエビリファイは第一世代でみられる錐体外路症状や高プロラクチン血症をおこす頻度は少なく、さらに第二世代抗精神病薬で認めやすい体重増加や糖尿病リスクも少ないのです。
他の非定型抗精神病薬に比べて太りにくくはあるのです。

逆に最もよく表れやすいエビリファイの副作用は、頭痛・眠気・興奮・胃腸の症状・不安・吐き気です。

エビリファイの副作用については以下参照。

エビリファイの作用機序

最後にエビリファイの作用機序を確認しましょう。

まず一般的なお話として、エビリファイだけでなくすべての抗精神病薬がターゲットとしているものを理解しましょう。
それがドーパミンです。

ドパミンは神経伝達物質のひとつで、神経と神経の間の情報伝達に関連する物質です。
ちなみにうつ病でよく出てくるセロトニンも神経伝達物質の1つです。

抗精神病薬のメイン疾患である統合失調症ですが、未だその病態がはっきりと明らかになっているわけではないのですが、ドーパミンとそしてその受け取り口であるドーパミン受容体じゅようたいが関連していることはわかっています。

ドーパミン

ドーパミン受容体には5つの型があり、この中で抗精神病薬の発展、統合失調症の研究とともによくわかってきたのはドーパミン2番の受容体(D2)です。

D2受容体

簡単に理解するなら、統合失調症ではドパミンが過剰になることで幻覚・妄想が出現しているので、抗精神病薬はドーパミンの受け取り口、特にD2(ドーパミン2番)受容体をブロックすることで統合失調症の症状をコントロールさせるわけです。

非定型でない、第一世代の抗精神病薬はすべてのD2受容体をブロックすることで副作用が目立ってしまいます。
これに対し、非定型抗精神病薬すなわち第二世代においてはそこに工夫が入ることで副作用を減らし、陰性症状や認知の障害などにも付加的に作用させることができます。

ドパミンスタビライザーとしてのエビリファイ

さて、話をエビリファイに戻していきましょう!
エビリファイは、ドパミン受容体部分作動と呼ばれますが、その作用機序にどんな工夫があるのかを見ていきます。

大きく3つの工夫があります。


  1. ドパミンのブロックに関して
  2. セロトニンのブロック
  3. セロトニンへの作用

まずエビリファイには、第一世代の抗精神病薬がもつドーパミン(D2)受容体をブロックする共通の作用があります。
これは先にもお話した通り、統合失調症はドパミン過剰による症状であるとイメージすると、ドパミンを受け取る部分をブロックすれば良いのはわかると思います。

しかし単純にブロックするだけでは、第一世代抗精神病薬でよくある副作用「錐体外路症状」と「高プロラクチン血症」をきたしてしまいます。

そこでエビリファイはドパミンの完全ブロックだけではなく部分的には作動するように作られているのです。

つまりドパミンが過剰な時(陽性症状が強いとき)にはD2受容体をブロックして通常通り抗精神病効果を発揮しますし、逆にドパミンが低下した状態(陰性症状が強いとき)ではドーパミンの活動を助け、陰性症状・認知・感情を改善させます。
このように一部でドーパミンをブロックしつつも、ドパミンの作用を維持する働きは副作用の錐体外路症状や高プロラクチン血症(女性化乳房、乳汁分泌)を抑えるようにも働きます。
一方的なドーパミンのブロックではないのです。
このことがエビリファイがドパミンスタビライザーとも呼ばれるゆえんです。

エビリファイのセロトニンに対する作用

そして第一世代にはない薬の工夫はセロトニン(5HT)への作用です。
セロトニン(5HT)もドパミン(D)と同じ神経伝達物質の1つです。

セロトニン(5HT)もドーパミン(D)と同様受け取り口(受容体)が存在し、そしてそれは何種類か存在します。

セロトニン受容体の色々

エビリファイのセロトニン(5HT)に対する代表的な作用は2つあります。

  1. セロトニン2A(5HT2A)拮抗作用
  2. セロトニン1A(5HT1A)作動作用

セロトニン2Aはブロックして、1Aには作動する方向に作用します。

セロトニン2Aのブロックにどんな意義があるかと言えば、陽性症状の改善と副作用の高プロラクチン血症を抑える作用です。
統合失調症においては、セロトニン2Aが直接幻覚や妄想と関連があるわけではありませんが間接的にドパミンの経路に作用しています。

そしてもうひとつはセロトニン1Aのこちらは作動方向の作用です。
セロトニン1Aに作動する方向に作用すると言えば、抗うつ薬のミルタザピン(NaSSA、商品名:リフレックス/レメロン)の作用方向と一緒です。
抗うつ薬と一緒の方向に作用しますから、当然このことが不安や抑うつに作用することがわかると思います。

エビリファイは、ドパミン(D2)受容体に対する部分作動を中心に、セロトニンにも作用し統合失調症以外にも多くの効果を引き出しているのです。

まとめ「エビリファイ上の効果と特徴」

エビリファイは大塚製薬から発売されている抗精神病薬です。
主な適応は統合失調症ですが、それ以外にも双極性障害の躁状態、うつ病・うつ状態、発達障害の易刺激性に対し効果を発揮します。

抗精神病薬の中でも第二世代に位置づけられ、その作用機序であるドパミン受容体部分作動は第三世代の抗精神病薬としてとらえる研究者もいます。

抗精神病薬の主な副作用である錐体外路症状(振戦や筋固縮などパーキンソン症状)や高プロラクチン血症(女性化乳房、乳汁分泌)を起こしにくく、また非定型抗精神病薬の中でも太ったり糖尿病を起こしにくい特性があります。
欠点として逆に鎮静作用は弱く、飲み始めに不安・焦燥やアカシジア(じっとしていられない、静座不能)がでてしまう場合があることが挙げられます。

 

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