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本当に効かない?セロクエルの効果を理解するために -医師が教える非定型抗精神病薬-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
本当に効かない?セロクエルの効果を理解するために -医師が教える非定型抗精神病薬-

セロクエルは「抗精神病薬こうせいしんびょうやく」の1つです。
ちなみにセロクエルは2001年よりアステラス製薬から発売されている商品の名称でして、成分名はクエチアピンです。

抗精神病薬というのは一般的には統合失調症とうごうしっちょうしょうのお薬です。

ですからセロクエルは統合失調症の診断に対して主に使用されます。
ちなみに統合失調症とは幻覚・妄想や思考の障害、意欲低下や感情の鈍麻(感情がない)、引きこもりといった症状を主症状とする精神疾患です。

ところがこのお薬を出されている方で一部の方は「おかしい、統合失調症とは言われていない」「うつと言われたのに、本当は統合失調症ってこと?」と思う方もいらっしゃると思います。

実はセロクエルは統合失調症に限らず双極性障害の躁状態、うつ病・うつ状態などにも効果があるのです。

それではこういった疑問にお答えすべく、セロクエルの一般的な効果や特徴について解説していきましょう。


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セロクエルとは?どんな状態に効果があるの?

セロクエルは抗精神病薬の1つで、特に非定型抗精神病薬ひていけいこうせいしんびょうやくに分類されます。
抗精神病薬は基本的に統合失調症に使用されるお薬ですが、非定型抗精神病薬の「非定型ひていけいって何?」という声が聞こえそうです。

もちろん非定型に対して定型抗精神病薬もあります。

簡単に言うなら定型も非定型もどちらも統合失調症に対して効果を発揮します

統合失調症とは?
10代後半~30代前半に発症し、幻覚妄想や思考障害、意欲低下や無関心、感情鈍麻や引きこもりなどの症状が出現する。一生の間に発症する率は1%とされる。初期症状は頭重感、倦怠感、睡眠障害でその後幻覚や妄想、陰性症状(意欲低下や無関心など)などの症状を認める。抗精神病薬は初発で70%の患者に有効だが、再発とともに効果は期待しづらくなる。

抗精神病薬とは、脳の神経細胞において統合失調症の原因となる神経伝達物質「ドパミン」やその受容体じゅようたい(神経伝達物質をやり取りする部位)の異常に対して作用するお薬です。

その中で定型抗精神病薬より新しい抗精神病薬が非定型抗精神病薬なのです。

セロクエルをはじめとする非定型抗精神病薬(新しい抗精神病薬)は、定型抗精神病薬(古いタイプの抗精神病薬)で出現しやすい副作用(錐体外路症状、ジスキネジア、悪性症候群など)が出にくいことが利点で、現在は統合失調症治療薬で第一選択になっているお薬だと認識しておいてください。

その非定型抗精神病薬に分類されているお薬の1つがセロクエル(成分名:クエチアピン)なのです。

セロクエルが有効なのは統合失調症だけなのでしょうか?

セロクエルが効果のある疾患 -統合失調症がすべてではない!-

セロクエルが有効とされている疾患を挙げてみましょう。
統合失調症のお薬というイメージが強いのですが、実に様々な病態に有効性を示します。

セロクエルが有効な疾患・状態

  • 統合失調症
  • 双極性障害(躁状態/混合状態)
  • 双極性障害のうつ状態
  • うつ病
  • 認知症における行動障害
  • 小児や青年の行動障害
  • 衝動が制御できない状態
  • 強度の不安

日本で適応となる病名は統合失調症なので、この薬が処方されると自分は統合失調症なのかと考える患者さんもいますが、実は双極性障害(躁うつ病)やうつ病、衝動性がコントロールできない状態や強度の不安に対しても有効性があるのです。

セロクエル(クエチアピン)は日本うつ病学会治療ガイドラインでも双極性障害やうつ病に対する有効性について言及されているのです(ただし適応外と書かれています)。

つまり日本では保険診療において公式には統合失調症以外にセロクエルは処方できないはずなのですが、通常の適応外の使用としてやむを得ない場合に使用しても間違いではないといったニュアンスになります。

セロクエルのうつ病への効果

抗うつ薬に反応しづらい難治性のうつ病に対して、抗うつ薬と非定型抗精神病薬とを一緒に服用する増強療法ぞうきょうりょうほうというものがあります。
非定型抗精神病薬にはセロクエル(成分名:クエチアピン)以外にもジプレキサ(成分名:オランザピン)・リスパダール(リスペリドン)・エビリファイ(アリピプラゾール)などがありますが、抗うつ薬と一緒に内服したときの効果は抗うつ薬単独よりあることがわかっています。

ちなみにどの非定型抗精神病薬がより良いということはありませんが、うつ病に対する増強療法で適応外ではない公式な非定型抗精神病薬はエビリファイ(アリピプラゾール)のみです。

セロクエルの双極性障害(躁うつ病)への効果

双極性障害(躁うつ病)は、気分が高まるだけにとどまらず、衝動性が強まったり攻撃性が増したり、ときにかなりとんでしまったような妄想に入ってしまう躁状態が周囲を困惑させます。
これとうつ状態が入れ替わる病気です。

波のように入れ替わるきれいな双極性障害だけでなく、中には周囲からもわかりにくい弱い躁状態もあり、この場合は不安やじっとしていられない感覚の強いうつ病のようにも見えます。

この躁状態を落ち着かせるのにセロクエルは有効です(セロクエル単独というよりは、他の気分安定薬と一緒に使われます)。

一方で双極性障害で周囲を巻き込む目立った症状は確かに躁状態のときなのですが、双極性障害におけるうつ状態も薬に反応しづらく本人の困り感も強い病態です。

双極性障害のうつ状態にもセロクエルは有効ですが実はこれが適応外ではなくなりました。

厳密にはセロクエルの成分であるクエチアピンの徐放製剤じょほうせいざい(ゆっくり吸収され血中濃度を維持できる製剤)が「ビプレッソ」という商品名で2017年に販売されました。
もちろんビプレッソはセロクエルと同じアステラス製薬からの発売です。

ビプレッソについては今後別記事で取り上げましょう。

双極性障害の治療に関して詳細は以下の記事が参考になります。


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セロクエルの効果と特徴について

Dr.G
さてここまでで、セロクエルが精神病症状(幻覚や妄想など)以外にも双極性障害における躁状態、うつ状態にも効果を発揮することがお分かりいただけたと思います。
ここからはより実際的な内容をお話します。

効果が出るまでの時間

幻覚・妄想などの精神症状や躁状態を落ち着かせる効果は、飲み始めて1週間程度で効果を発揮します。

患者さんの行動面における異常は比較的早くに落ち着いてくることが多いのですが、感情の安定に関しては少し時間がかかります。

感情や認知などが安定してくるまでには薬を飲み始めてから一か月程度と時間を要します。
一部では薬が効きづらい方もいて、その場合には3~4か月してようやく安定してくることもあります。

セロクエルの効果

セロクエルは統合失調症を適応疾患とする抗精神病薬で双極性障害やうつ病の増強療法(抗うつ剤とあわせて飲む)にも有効であることはお話しましたが、疾患を超えて以下の症状を標的に使用されます。

  • 精神病(統合失調症)の陽性症状
  • 精神病(統合失調症)の陰性症状
  • 認知症状
  • 不安定な気分(抑うつと躁症状のどちらも)
  • 攻撃的な症状
  • 不眠と不安

このように症状に対しての期待される効果があるため、仮に病名が言われずにセロクエルが出されていたとしても「自分は統合失調症?」とか「自分は双極性障害?」などと考え悩む必要はありません。
この場合は症状に対して使用されていると理解すると良いでしょう。

以下では疾患ごとの効果についてお話しましょう。

統合失調症

統合失調症というのは、幻覚・妄想や思考の障害、意欲低下や感情の鈍麻、引きこもりといった症状を主症状とする精神疾患です。
具体的には①陽性症状・②陰性症状・③認知機能障害・④感情障害の4つの異常が現れます。

幻聴が聞こえたり、妄想があって現実にはないことを認知してしまう症状を陽性症状ようせいしょうじょうといいます。
一方、生き生きとした感覚が失われる、活動性が落ちる、感情が現れてこない、ひきこもりがちになるというような日常生活や社会機能に大きな支障が出るものを陰性症状いんせいしょうじょうといいます。

統合失調症ではこういった陽性症状や陰性症状に、注意力・記憶力の低下や問題解決能力が低下し(認知機能障害)、不安やうつ症状(感情障害)を伴うわけです。

このため統合失調症患者さんは、独立して生活したりこれまでの仕事を続けることが難しくなってしまうことも少なくありません。

セロクエルはほとんどの場合で統合失調症の陽性症状を軽減させることができ、幻聴や妄想といった陽性症状以外にも陰性症状・認知症状・感情症状を改善させる効果もあるものの、症状は30%程度軽減にとどまります(完全回復とはいかず、1/3くらいに軽減させるイメージです)。

一方、一部の患者さんにおいてはかなり劇的な改善を認める人もいます。
割合としては統合失調症患者の10%前後と思いますが、かなりの改善を認めた場合には通常の仕事が可能ですし、独立して生活もできるようになります。

症状が落ち着いても最低1年程度はお薬を続けておく必要があり、何度も精神症状を繰り返す場合にはずっと飲み続けておく必要があります。

双極性障害やうつ病

双極性障害とは、うつ症状だけでなく躁症状(気分が上がった状態、ときに誇大な妄想をしたり混合状態といって興奮性や自殺念慮が出ることもあります)を伴う疾患です。

軽減のみならず、躁症状(もしくは混合症状によるイライラや不安、焦燥感)を予防する効果もあると考えられています。

双極性障害のうつ状態にも有効ですが、この場合には同じクエチアピンという成分ですがセロクエルよりも吸収のされ方の異なるビプレッソ(クエチアピンの徐放製剤)が適応となります。

うつ病に対しては、通常抗うつ剤(SSRI・SNRIなど)の効果が期待できないときに、増強療法としてセロクエルを併用して飲んでもらうことになります。

セロクエルの効果が出なかったら・・・

主に統合失調症の精神症状に対して効果が出ない場合をお話します。

この場合はセロクエル以外の非定型抗精神病薬をトライすることになります。

セロクエルは効果が出だすのに陽性症状なら1週間以内に、それ以外の症状は数週間を要することがあります。

十分な経過をみても症状が改善しない場合、非定型ではない従来の古いタイプの抗精神病薬を追加したり変えるか、気分安定薬(バルプロ酸<商品名:デパケン>やラモトリギン<商品名:ラミクタール>)を合わせて飲むなどをトライすることになります。

特に衝動性や攻撃性が強い場合や自傷行為があると効きづらいことがあります。

またセロクエルの容量は25mg~750mgと幅が広く、十分な量をトライすることなく効果がないという判定をその特性上受けやすいことは知っておくと良いと思います。

どうしても飲み忘れが多い場合

効果がないと言っても、飲み忘れが多ければ当然セロクエルの効果が出にくくなってしまいます。

統合失調症である場合には、注射(デポ剤といいます)で対応することが可能です。
ただし、セロクエルの成分であるクエチアピンの注射はないので他の抗精神病薬(リスパダール、ゼプリオン、エビリファイ)に変更となります。

※セロクエルにはデポ剤がないので、参考にエビリファイの注射剤の記事を載せておきます。


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セロクエルを飲み始めた時の注意点

セロクエルには2つのマイナスに作用しうる特徴があります。


  1. 太りやすい・糖尿病のリスク
  2. 鎮静作用が強い

太りやすいため体重管理に気を配らないといけません。
肥満によって、高血圧が進んだり、糖尿病になったり、血糖値異常を起こしやすいので病院で採血してチェックしておく必要があります。

鎮静作用はボーっとする症状につながり日中の作業に支障が出る場合があります。
しかし逆に躁状態や不眠状態の場合にはメリットとして作用することになります。


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セロクエルの作用機序

最後にセロクエルの作用機序を説明しましょう。
やや難しい内容ですので、ここをクリックして次章に飛ばすことができます。

非定型抗精神病薬の主な作用点はドパミン

まず一般的なお話として、セロクエルだけでなくすべての抗精神病薬がターゲットとしているものを理解しましょう。
それがドパミンです。

ドパミンは神経伝達物質のひとつで、神経と神経の間の情報伝達に関連する物質です。

ちなみにうつ病でよく出てくるセロトニンも神経伝達物質の1つです。

抗精神病薬のメイン疾患である統合失調症ですが、未だその病態がはっきりと明らかになっているわけではないのですが、ドーパミンとその受け取り口であるドーパミン受容体じゅようたいが関連していることはわかっています。

ドーパミン

ドーパミン受容体には5つの型があり、この中で抗精神病薬の発展、統合失調症の研究とともによくわかってきたのはドーパミン2番の受容体(D2)です。

D2受容体

簡単に理解するなら、統合失調症ではドパミンが過剰になることで幻覚・妄想が出現しているので、抗精神病薬はドーパミンの受け取り口、特にD2(ドーパミン2番)受容体をブロックすることで統合失調症の症状をコントロールさせるわけです。

非定型抗精神病薬でない、古いタイプの抗精神病薬はすべてのドパミン受容体をブロックすることで副作用が目立ってしまいます。
これに対し、非定型抗精神病薬はそこに工夫が入ることで副作用を減らし、陰性症状や認知の障害などにも付加的に作用させることができます。

非定型抗精神病薬のセロトニンなどその他の神経伝達物質に対する作用が多様な効果を生み出す

古いタイプの抗精神病薬にはない薬の工夫はセロトニン(5HT)への作用です。
セロトニン(5HT)もドパミン(D)と同じ神経伝達物質の1つです。

セロトニン(5HT)もドーパミン(D)と同様受け取り口(受容体)が存在し、もちろん何種類か存在します。

セロトニン受容体の色々

セロクエルのセロトニン(5HT)に対する代表的な作用は2つあります。

  1. セロトニン2A(5HT2A)拮抗作用
  2. セロトニン1A(5HT1A)作動作用

セロトニン2Aはブロックして、1Aには作動する方向に作用します。

セロトニン2Aのブロックにどんな意義があるかと言えば、陽性症状の改善と副作用の高プロラクチン血症を抑える作用です。
統合失調症においては、セロトニン2Aが直接幻覚や妄想と関連があるわけではありませんが間接的にドパミンの経路に作用しています。

そしてもうひとつはセロトニン1Aのこちらはブロックとは逆に作動方向です。

セロトニン1Aに作動する方向と言えば、抗うつ薬のミルタザピン(NaSSA、商品名:リフレックス/レメロン)の作用方向と一緒です。
抗うつ薬と一緒の方向に作用しますから、当然不安や抑うつに作用することがわかると思います。

このようにセロクエルはドパミンに対する作用を中心に、セロトニンにも作用し統合失調症以外にも多くの効果を引き出しているのです。

ネガティブな点では、ノルアドレナリン(α1受容体)やヒスタミン(H1受容体)といった神経伝達物質のブロック作用もあるため、過剰な鎮静や体重増加といった副作用をもたらします。

まとめ「セロクエルの効果と特徴」

セロクエルはアステラス製薬から発売されている非定型抗精神病薬です。

主な適応は統合失調症ですが、それ以外にも双極性障害の躁状態とうつ状態、うつ病に対し効果を発揮します。

統合失調症の精神症状に限らず、躁状態・うつ状態、攻撃性、不安など多彩な症状に効果があるため汎用されています。

躁状態であれば気分安定薬(リチウムやバルプロ酸、ラミクタール)と併用しますし、うつ病に関しては抗うつ剤とあわせて使われます。

「双極性障害のうつ状態」に対しては、セロクエルと同じクエチアピンという成分ですがよりうつ状態に対して有効な徐放製剤じょほうせいざい(ゆっくり吸収され血中濃度を維持する)タイプのお薬が「ビプレッソ」という名称で2017年に発売され、今後はセロクエルからこちらに変わっていくかもしれません。

セロクエルは体重増加と鎮静作用が特徴的ですから、飲み続ける場合には肥満・高血圧・糖尿病に注意する必要があります。
また強い鎮静作用で頭がボーっとしすぎて日中に支障がでてしまう場合もあります。

 

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