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ASKAさんの覚せい剤再逮捕から学ぶべきこと【精神科医のひとりごと】

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
ASKAさんの覚せい剤再逮捕から学ぶべきこと【精神科医のひとりごと】

ASKAさん覚せい剤再逮捕の報道を受けて

覚醒剤取締法違反で執行猶予中だった歌手のASKAさんが2016年11月28日に再び覚醒剤取締法違反(使用)の疑いで逮捕されました。

Dr.G
この報道を見て皆様はどう思いましたか?
  • 覚醒剤って恐ろしい?
  • もう絶対に覚醒剤をやらないっていっていたのに、何でまたやっちゃうの?
  • ASKAは本当に意志が弱い?
  • もうASKAの復帰なんて無理なんじゃない?
  • ファンとしてASKAを信じたい?
  • 復帰を心待ちにしたい?

多分、様々な思いがあることでしょうが、

「やっぱりASKAはもうダメだな・・・。」

ということを考える方はかなり多いのではないでしょうか?

今回はASKAさんの報道でしたが、その他にも芸能人の違法薬物に関する逮捕の報道は後を絶ちません。

そして、こうした報道に対しての意見を聞くと、「クスリに手を出してしまうなんて、もうダメだ。」というような全否定してしまうような意見も多く見られるように思います。

依存症の臨床に携わった者としては、こうした芸能人の報道を見る度に、「何とかクスリを絶って、回復のステップを歩いて欲しい。そして今、クスリの依存に苦しんでいる人達に、自分の体験談を発信して『回復できるよ、諦めないで』と勇気付けて欲しい。」と思う訳です。

ASKAさんの報道から学ぶべきこと

個人的に歌手のASKAさんは好きです

僕自身は歌手としてのASKAさんは大好きです。

CHAGE&ASKAとして一世を風靡し、「YAH YAH YAH」など、今でも歌われる数々のヒット曲を生み出してきました。

個人的にはASKAさんのソロの曲の方が好きですね。

ドラマの主題歌にもなった「ONE」とか「ID」とか。

あんまり知っている人いないですかね?

益田宏美さんとのデュエット曲の「Love is alive」も大好きでしたね。

結局は依存症のひとつ

合法であるか、違法であるかという違いはあるとはいえ、覚醒剤もアルコールも依存性のある薬物、精神作用物質であることには変わりありませんし、ひとたび依存を形成してしまえば、同じ「依存症」という病気であることにも変わりはありません。

でも、芸能人がアルコール絡みでトラブルを起こした報道と、薬物絡みでトラブルを起こした報道に対しての大衆の意見を比べると、圧倒的に後者の薬物関連の方が、その芸能人を全否定するような意見が多く見られるように思うのです。

「そりゃ覚醒剤は犯罪だろ?アルコールは普通に飲めるじゃないか?」
「覚醒剤はダメ、ゼッタイ!って昔から言われているだろ?」
「クスリやめますか?人間やめますかって言うくらいだから、クスリをやるということは人間をやめるということなんだ。否定されて当然だろ?」

そう言われてしまえば元も子もありませんが、そもそもどうして覚醒剤はダメ、ゼッタイ!なのか、説明できる人、いますか?

もしできるなら、同じ依存性薬物であってもアルコールはどうして認められているのか?(誤解のないように言っておきますが、決して覚醒剤などのドラッグを合法化すべきという話をしているのではありません。)

ドラッグは確かにダメ!絶対!だけど…

多分、「覚醒剤やドラッグがダメ!ゼッタイ!!」と習うのは小学校だったと思います。

僕も確か小学校の時に通学路の途中にポスターでそんな内容のポスターがあって、学校の授業でも「覚醒剤は幻覚などを引き起こして怖い。やると犯罪になるから絶対ダメだ。」という教え方だったような記憶があります。

とにかく、「ダメ!!ゼッタイ!!」と「クスリやめますか?人間やめますか?」ということだけが刷り込まれていったように思います。

恐らく大多数の方はそんなイメージなのではないでしょうか?

そんな漠然としたイメージを持ったまま大人になって、「○○さんが覚醒剤使用で逮捕された!」という話を聞いたとしたら当然、どんな状況であったとしても

「○○さんはもうダメな人間だ。」
「○○さんは人間としてもう終わった。」

という意見を抱いてしまうと思います。

ではもし、誰かから「このクスリ、やってみない?大丈夫、みんなやっているし、犯罪とか言われているけど、ちょっと気持ちいいだけだから。ちょっとだったらバレないって。」と言われたとしたらどうでしょう?

当然、「ダメ!ゼッタイ!」の教育に従って断るという選択にはなるでしょうが、それがとても仲の良い友達だったとしたら?

「ダメ!ゼッタイ!」という知識として知っていたとしても、どうしてダメなのか知らなかったら、絶対にその誘いを100%断れると自信があるでしょうか?

これが、違法薬物が蔓延する大きなきっかけのようなのです。

大事なことは何故ダメか知り、教えること

学校教育の中で「ダメ!ゼッタイ!」だけじゃなく、「何故ダメなのか?」「何故、人間をやめますか?とまで言われているのか?」というところまでちゃんと教育する必要があるのではないかと思うわけです。

実は、薬物依存症の当事者の方が、学校教育の現場に出向いて、実際にクスリをやるとどうなってしまうのか、そこから回復して現在の状態になるのにいかに大変か、そして現在でも薬物への欲求といかに闘っているか、実体験として生徒たちの前で話すということが薬物の害の教育の一環として取り組まれている自治体もあるのです。

こういった取り組みが広がってくれればと切に思っています。

覚醒剤は「ダメ、ゼッタイ!!」というのは間違いないけど、一度使ってしまい依存症になってしまった場合にどうなるのかという教育も同時にしないといけないですよね。

日本はこの点がかなり遅れていて、ただ単に薬物のみならず、薬物に手を出してしまって「依存症」となってしまった人に対しても「絶対悪」として全否定するだけの現状になりがちです。

そういえば、外国の芸能人って割と「僕はドラッグにハマっていたけど、その後病院で壮絶な思いをして治療して、矯正施設に入って今はやっと出てきたところだ。」なんて体験談を普通に話しているように思うのですが、日本でも薬物で逮捕された芸能人はたくさんいて、そこから回復の道を辿っている人だっている訳ですから(もちろん、何度も繰り返している方も多いですが)、その発信力を生かして、薬物依存症からの回復の道の険しさ、実際に経験した者でないと分からないような壮絶な実体験をもっとTVなどでも話せるような社会になって欲しいと思っています。

数年前にハワイに行ったときに、何となくTVを見ていたら、アルコール依存症の自助グループであるAA(アルコホーリクス・アノニマス)のCMがやっていました。

「アルコールの害で困ったら、この電話まで。」みたいな感じで、AAのオフィスらしき連絡先までTVでは表示されていました。

日本では、アルコールのCMはやっていますが、依存症になった場合の大きな回復の助けになる自助グループのCMなんて一つもやっていません。

それどころか、前任の病院のあった県では、断酒会のための会場として公民館を借りようとしたときに、「アル中の集まりのために貸せません!」と言われたこともあったそうです。

まとめ

どうやら、まだまだ日本は「依存症」という病気に対しての誤解・偏見が根強いようです。

まあ、前任の病院でもアルコール病棟以外の部署ではそうでしたから、まだまだそんな現状は続くのかもしれません。

とはいえ、日本でもアルコール健康障害対策基本法という法律が平成26年5月から施行されています。

今後、この法律に基づいて各自治体でもアルコール依存症を含めたアルコール健康障害への施策が少しずつでも実行されていくことと思われるので、それを機にもっとアルコール依存症、更には薬物依存症やギャンブル依存症を含めたその他の依存症に対しても一般の方々の理解が進んで行くことを願っています。

Dr.G
ASKAさんの薬物依存の関連の報道でしたが、依存症を専門にやってきた医師としてはどうしてもコメントしておくべきと思い、今回僕の意見を言わせてもらいました。

 

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