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医者が教えてくれない精神科のことを医師がわかりやすく解説

死にたいと言われたら・・・

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
死にたいと言われたら・・・
研修医Ji郎
G先生、いつも診療している中で思うんですけど、患者さんに『先生、もう死にたい。どうしていいかわからないよ。』って言われたらどう返してあげればいいんでしょうか?
Dr.G
うん、我々精神科医が診療する中で必ず遭遇する難しい課題だよね。下手なことを言えば患者さんが死を選んでしまうかもしれないし、かといって『死んではいけない』って言ったところで、患者さんにその言葉が届くかどうかわからない。ちなみに、Ji郎君はそういうとき、どんな風に話しているの?

 

研修医Ji郎
患者さんにもよりますけど、大体は、『死にたいと思うほど、今つらい状態なのですね?でも、あなたが死んでしまうと悲しむ人がたくさんいます。僕もその一人です。来週また診察があるので、その時までは死なない約束をしましょう。もし、その時までにお辛いようであれば、途中でもいらして下さい。』というような言い方をしていますね・・・。

 

Dr.G
なるほどね。患者さんの死にたいほどつらい気持ちに共感を示した上で、死んで欲しくないという意思を伝え、死を選ばないですむための最大限のサポートをしたいという意思を伝える言葉だね。そして、『絶対に死んではいけない』という漠然とした言い方ではなく、『少なくとも次会うまでは死なないでほしい』という期限を区切った言い方をすることで、患者さんにより具体的な生きる目標を持ってもらおうとしているよね。
研修医Ji郎
はい、とにかく次の外来まではって約束しているんです。
Dr.G
それで患者さんの反応はどう?
研修医Ji郎
うーん、とりあえず死なない約束を守って外来には来てくれるんですけど、その時も相変わらず『死にたい』という訴えはあって・・・。どこまで自分の言葉が患者さんに伝わってくれたかわかりづらい部分もあります。
Dr.G
なるほど。でも、死なない約束をちゃんと守って、かつ外来にもちゃんと来てくれるという時点で少なくともJi郎君の言葉はちゃんと届いているのかもしれないよ。
研修医Ji郎
でも、いまいちどういう言い方をして良いのかわからないんです・・・。
Dr.G
ちゃんと約束を守ってくれたことに言葉をかけている?外来に来てくれた時に真っ先にまず『よく約束を守ってちゃんと外来に来てくれました。大変だったでしょう?』とねぎらってあげることは大事だよ。
研修医Ji郎
あ、それ抜けてました・・・・・。
Dr.G
ちなみに、Ji郎君は今までに死にたいと思ったことはある?
研修医Ji郎
うーん、とてもつらいなと思ったときに『死んだらどうなるのかな?』と思ったときはあります。G先生はどうですか?
Dr.G
僕は今までに何度かあるよ。実際に小学生時代にいじめを受けて、もうどうしようもなくて死のうとして止められたこともあるしね。これは自分自身の経験として言うんだけど、本当に『死にたい』と思うほど追い詰められてしまったときって、正直周りから『死んだらダメだよ!』という言葉をかけられたとしても耳に入らないことが多いんだ。
研修医Ji郎
たしかに。死んだらダメって当たり前のことを聞きたいわけではないですね。むしろ何がわかるの?って言いたくなるかも・・・
Dr.G
僕の場合、小学校時代のイジメって本当につらいものだった。家庭が複雑だったこともあって家に居場所がなかったし、仮に家族にいじめられていることを相談しても、イジメている奴らを勉強して成績を良くして見返してやれとしか言われなかった。でもさ、勉強して成績を上げたところでますます嫉妬を買うばかりで、何も心は休まらないんだよね。僕の場合、学校教師もイジメに加担していたからますます孤独感が強かったし、子供時代って生活している社会が狭い(家と学校しかない)から、その学校でイジメという形で存在を否定されると、もうどうにも抵抗しようがないんだよね。だから、あの時の僕には死しか選択肢がなかった。その後いろいろな紆余曲折うよきょくせつを経て今に至るけど、大学生になって精神科の授業を受けて『自殺とは追い詰められた末の死である』という言葉を聞いたときに、ああ、まさにその通りだなって思った。
研修医Ji郎
「自殺とは追い詰められた末の死である」たしかに。そこからどうやって抜け出したんですか?

 

Dr.G
今思えば、小学校時代に行っていた塾の先生は僕のことを普通に褒めてくれたからかな。いつ行っても『よく来てくれたね』って迎えてくれたし。学校のクラスメートが必死で九九を覚えているときに、僕は中学で習うようなプラスマイナスを含んだ計算とかやっていて、『何でマイナスとマイナスを掛け算するとプラスになるんですか?』って塾の先生に一生懸命聞いていたくらいだから(笑)今考えると、普通に塾の先生にとって僕は変わった生徒だったのかもしれないけど、そこまでやらないと自分には生きてる価値がないんだなって思ってたから必死だったんだ。僕にとって小学校時代の生きるための最後の砦は勉強だったんだと思う。

 

研修医Ji郎
小学校時代のG先生にとっては、追い詰められていた状況で唯一の拠り所が勉強だったのですね・・・・・。
Dr.G
うん。多分拠り所となるものがあれば、人は自ら死を選ぶことはないと思う。でも、拠り所が何らかの理由で失われてしまったり、もしくは実際にはあるのに見えなくなったりすると『死ぬしかない』という決断に至ってしまうのだと思っているよ。
研修医Ji郎
それは何かわかる気がします。恐らく、我々が診ている精神疾患で自殺してしまうケースは、後者の割合が多いのかもしれませんね。現実にはいろいろなサポートを受けられる状況にあっても、うつ状態だったり、妄想状態にあったりすると、追い詰められているように感じて、本当は存在する拠り所が見えなくなってしまうのですね。

 

Dr.G
環境が関係しているケースもあるから、すべてがそうとも言えないけどね。さて、では実際に『死にたいと言われたら』の話に戻るんだけど・・・・

 

研修医Ji郎
そうです、それが聞きたかったんです。

 

Dr.G
まず言えるのは、『死にたい』という訴えは『死にたいほど辛い、助けてほしい』という気持ちの現れであるということ。多くの場合は、『本当は生きたいんだけど、生きるのがものすごく辛い。』という思いが背景にある。
研修医Ji郎
「生きているのが物凄くつらい」は絶対ありますね。でも本当は生きたいんですよね・・・
Dr.G
だから、まずはその辛さに共感を示すこと。患者さんの状態によっては、その共感を示すだけで精一杯だという場合もあるけど、次にできることとしては、生きるより所を何らかの形で提供してあげること。Ji郎君の「次の外来でまたあなたに会いたい。」という気持ちを示すことも一つの方法だと思うし、具体的になんとか出来そうな方法が提案できる状況なら、『こうしてみてはどうだろう?』と提案してみるのもアリだと思う。そして、さらに言うと、患者さんのご家族が『うちの子が『死にたい』と言ってきたときにどうしたらいいですか?』と言ってきた場合でも同じことをお話ししてあげられるといいのかな、って思うよ。
研修医Ji郎
「本人の死にたいほど辛い気持ちに共感を示すこと」「生きる拠り所を何らかの形で提供してあげること」ですね?覚えておきます。
Dr.G
本当はもっといい方法、うまい接し方というものがあるのかもしれないけど、僕としては、基本的な心構えとしてこの二つをしっかり押さえておければいいのかな、って思うよ。

 

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