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新型うつ病は甘えか?

「新型うつ病」という言葉をよく耳にする機会が増えています。
しかし、「新型うつ病」という病名は正式名称ではありません。

つまり新型うつ病は俗語ということになるのですが、どんなイメージで用いられているでしょうか?

「都合が悪くなるとうつ症状がでて何もできない状態になってしまう」

こんなイメージをお持ちかと思います。
ポイントは「都合が悪くなると」と言う部分なのでしょうが、これだけ聞くと「これって甘えでは?」と考えてしまうでしょう。

しかし現実に「新型うつ病」は病気として存在します。
先ほども言った通りこの正式な病名は存在しませんので、「非定型うつ病」がこの病態を示しているものと思います。

ここではこの新型うつ病(非定型うつ病)が甘えととらえられがちな理由について説明していきたいと思います。


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新型うつ病(非定型うつ病)とはどのようなもの?

先ほども説明しました通り、「新型うつ病」という正式な病名はありません。
非定型うつ病とよばれるものがこの「新型うつ病」を指すと考えます。

もっと正確に言うと、米国精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)」によれば「非定型の特徴を伴う」と言います。
つまりうつ病や双極性障害(躁うつ病)などと診断し、なおかつ「非定型の特徴を伴う」ものがここでいう「非定型うつ病」もしくは「新型うつ病」となるのです。

「非定型の特徴を伴う」というのは、うつ病や双極性障害の診断のときに一緒につけるわけです。

では「非定型の特徴を伴う」という基準はどんなものか見ていきましょう!

非定型の特徴とは?

先にも説明しました通り、非定型の特徴を伴ううつ病や双極性障害(躁うつ病)が俗にいう「新型うつ病」です。
ではその定義を確認してみましょう!

非定型の特徴を伴う

  • 気分の反応性
  • 落ち込んでいても、楽しいことがあれば反応する

  • 以下のうち2つ以上満たす
    1. 体重増加や過食する
    2. 過眠
    3. 鉛のように体が重い
    4. 対人関係で拒絶されることに過敏に反応する

定義なので分かりにくいかもしれませんが、簡単に言えば気分の上げ下げが激しく、それは周囲の環境やイベントによって容易に変わり、人間関係の不和があると過敏に反応してしまうものを言うわけです。
また本人に聞けば、寝ていることが多く体はいつもだるく身体が思うように言うことを聞かない感覚を持っています。

その日になってみないと調子が読めないのもこれらの特徴を示すのでしょう。
それでは具体的な例を示します。

これって新型うつ病かな?会社行きたくないよ・・・
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まゆみちゃんは27歳のOL。

会社に行きたくないなぁ。
なんだかだるくて、手足が重い。

この前もちょっとしたミスで課長にすごく怒られて全否定されているみたいでいやにちゃった。

学生のころからしっかり者だったのになぁ。

あんな叱り方されるとトラウマになっちゃうよ、まったくもう・・・。

最近ちゃんと寝ているのに仕事中眠い・・・・。

食欲も増えて間食いつもしてしまうし、体重が数キロ増えちゃっていやになっちゃう。

会社行きたくない。行っちゃえば大丈夫なのに行くまでが辛い・・・
まりおくんは23歳の会社員。
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自慢じゃないが、成績優秀でいつもほめられていた。

でも最近会社に行きたくない。

理由はわかっている・・・。

頑張って作った企画書を課長に見せたら、ケチをつけられたから。

思わず大きな声で言い返してしまった。
ついカッとなってしまった結果、周囲の人の空気が変わった。

課長の顔を見るのも嫌で、接待ゴルフをさぼってコミケに行ったらSNSでばれてしまって今の部署の居心地はもう最悪!

仕事に行っても以前と違って集中できない。

昼間から眠いし、ずっと体が鉛のように重くてつらい。

このままだと、どうなるのか心配でたまらない。

二人の様子を新型うつ病(非定型うつ病)の特徴と照らし合わせてみましょう。

典型的なうつ病とは違うけど、なにかつらい。
甘えかもしれない・・・。
甘えやわがままではない非定型うつ病の可能性があります。
ちなみにいわゆる新型うつ病は正式な病名ではありません

気分反応性

「気分反応性」は非定型うつ病の特徴です。

  • 楽しいこと → 気分が上がる
  • つらいこと → 気分が下がる

この反応が極端にでてしまいます。

  • まゆみちゃん:会社行きたくない → でも女子会楽しめる
  • まりおくん:接待ゴルフの仕事ムリ → でもコミケ楽しめる

なんとなく甘えやわがままのように見えますが二人とも以下の感覚があるのです。


  • 得体が知れない浮き沈み(気分の波)に二人とも苦しんでいる
  • 自らこの波をコントロールできない
  • もともとこんな状態でなかった二人ですが、そうなってしまった

楽しいときは普通に行動してしまえているので、逆にだめな波の時は怠けているように見えやすいのです。
これは甘えではなく気分反応性の特徴で非定型うつ病の特徴が疑われます。

対人関係に対する過敏性

相手からの拒絶に過敏になる 衝動的に行動することも!

まゆみちゃん:ちょっとしたことで上司に怒られたことで「トラウマ」とまで思えてしまっています

まりおくん:企画書にケチつけられて衝動的に自分でコントロールつかないように言い返してしまって、周囲をどんびきさせています

通常では「まあ、いいか」「反省して直していこう」など思えるのですが、非定型うつ病だと拒絶として過剰に反応してしまい、場合によっては衝動的に逆ギレすることもあります。

このことが原因で社会生活が困難になることもあります。

拒絶に過敏になることは偏差値が高い学校を卒業している、トップで走り続けてきた人などいわゆる優秀な人に多い傾向があります。

食欲増加・過食

まゆみちゃん:食欲・体重増加です。女子にとってこれはつらいです。

過眠

二人ともちゃんと眠れているのに昼間眠い→過眠状態です
休みの日などときに12時間以上眠ってしまうこともあります。

そしてどれだけ寝ても疲れが取れない感覚があるのです。

疲労感・鉛のように体が重い

「体が重い(鉛みたい)」は非定型うつ病に特徴的です。

無価値感・罪責感が少ない

自分に価値がないと思ったり、罪の意識に悩まされること。

これは定型うつでは出てきますが、非定型では乏しいです

二人ともかつては優秀と自覚しており、自分を責めていません。

周囲にその原因を求める傾向にあります。

夕方に調子悪い

定型うつ病では朝に調子悪いですが、非定型うつ病はまりおくんのように、夕方に調子悪くなることもあります。
ただこれは必ずしもこのパターンになるとは限りません。

一方でまゆみちゃんの夜の女子会など楽しいことがあると気分反応で調子がよくなります。

これは非定型うつ病に特徴的です。

不安・緊張

二人とも「なんだか今までの自分と違う」、「これからどうなるのだろう」と不安を感じています。
不安の種類は様々で、ときにパニック発作を起こすこともあり、不安や緊張が非常に強い状態があります。
非定型うつ病はこの不安が強く出てきます。

まとめ「新型うつ病は甘え?」

「新型・非定型うつ病」にはこんな特徴があります。

  • 若年者に多く、全体的にうつは軽症にみえる
  • 仕事では抑うつ的になり、仕事を回避する傾向にある一方で遊びは問題なくできることも多い
  • 仕事や学業上の困難をきっかけに発症する
  • 他者への配慮が乏しいことがある

非定型うつ病はちょっとした指摘に過敏に反応し落ち込み、場合によっては逆ギレすることもあります。
これでは社会生活をおくることが難しくなってしまいます。

しかも調子がいいときには普通かむしろアクティブなので、調子が不安定な時があるとわがまま・甘えと見られがちです。
うつもこれによって軽症にさえみえてしまいます。

しかし本人にはやりだすまでが大変という感覚があり、やりだせば今度は完璧にこなそうとする傾向をもちます。
ですから周囲からするとできるなら最初からやってよと思われがちなのです。

この周囲と本人の感覚の差異や結局体が動き出すと普通にできてしまうところ、情緒が不安定にみえるところから人格に問題があるようにすら見えるのです。

非定型の特徴をもつうつ病・双極性障害は確かに存在しておりこのことは脳の機能に関連しています。
その正体は過敏性と切り替えの悪さ(ひとつのことを考え出すとぐるぐる考えが回ってしまったり、気持ちを切り替えて動き出すまでの大変さ)にあるのです。

新型うつ病は確かに存在するひとつの病型なのです。

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