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「最高の休息法」マインドフルネスでわかるうつ病の本質と改善法-医師が教えるうつ病-

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
「最高の休息法」マインドフルネスでわかるうつ病の本質と改善法-医師が教えるうつ病-

ストレスが続くとうつ状態に陥り、だるさを感じやすく、体は常に疲労感を感じるようになります。
どれだけ休んでも身体がだるいとか、十分な睡眠がとれていない(と思われるくらい疲れがとれない)ということを訴えることが多くなってしまいます。

「ぐるぐる頭の中でずっと何かを考えていますか?」

とたずねると、やはり心ここにあらずでずっと過去や未来のことを考えて集中できないことを訴えます。
頭ではそんなに考えても仕方のないことがわかっていても何かにこだわり何度も何度も気づくと考えている・・・

この状態は身体が疲労しているのではなく脳が疲労しているのです。

それでは「脳の疲労」をどうやって癒すことができるのか?
休日にゆっくり休んで、よく睡眠をとって、気分転換に楽しいことをして、、、

しかしそれだけでは回復しないこともあります。
肉体疲労は休めば改善しますが、脳疲労はそう簡単に改善できないのです。
そしてそれが蓄積していけばパフォーマンスが低下し、落ち込みや体が思うように動かないなどうつ病の症状があらわれだします。

アメリカのイェール大学医学部を卒業し、現在はロサンゼルスで開業しマインドフルネスやTMS磁気刺激など脳科学の最先端の治療を取り入れたクリニックを開業されている久賀谷 亮くがや あきら先生(精神科医・医学博士)の著書「世界のエリートがやっている 最高の休息法-脳科学×瞑想で集中力が高まる-」では、その脳疲労に対するアプローチが紹介されています。



日米で25年以上のキャリアをもつ脳科学にお詳しい久賀谷先生自身が執筆し、その根拠となる論文もつけられています。
この本が単なるマインドフルネス本でないのは言いたいことを言っているだけでなく科学的根拠がつけられていることも大きな特徴でしょう。

久我谷先生はマインドフルネスのみならずTMS治療にもお詳しい先生で、私もアメリカ臨床TMS学会でお会いしたことがあり非常に聡明な印象を受けました。
日本では精神科の治療において薬物がまだ主流であることについて言及され、非薬物治療の有効性に対しては日本ではまだ懐疑的であることを残念に思われているようでした。(久我谷先生はアメリカで活躍されている精神科Drです。)

最高の休息法とはマインドフルネスのことである

現代人は忙しくビジネスの方法を追求するばかりで、休息については仕事ほど熱心に向き合っていないことのほうが多いかもしれません。
リゾート地に行って羽を伸ばしたり、一日中ダラダラと寝転んで過ごすことが休息と勘違いしてさえいるかもしれません。
確かにそれも休息のかたちですが、科学的エビデンスにもとづいた最高の休息ではありません。

休息はその場しのぎのリラックスではなく、より根本的・長期的な解決が求められていて、その最前線こそが脳科学の成果と結びついたマインドフルネスなのです。

「最高の休息法」と形容されるマインドフルネス。

マインドフルネスとはわかりやすい言葉で言えば瞑想です。
瞑想と聞くとちょっと宗教的で医学的なイメージではないかもしれませんが、脳科学は瞑想が脳にとって良い変化をもたらすことが実証されてきているのです。

これをアメリカのベーグルパン屋「モーメント」を舞台に繰り広げられる人間ドラマを通してわかりやすく描かれているのがこの著書です。

それでは少しだけマインドフルネスの世界をのぞいてみましょう。

最高の休息法「マインドフルネス」の前に知っておきたい脳の機能

マインドフルネス最高の休息法

脳は心臓や肝臓、消化管などと同じ1つの臓器です。
そして脳が消費するエネルギーは思っている以上に多いのです。

私たちの意識の中で何もしていないと思っている状態のとき、車で言うとアイドリング状態のとき、実は脳は非常に莫大なエネルギーを消費していることがわかってきました。
車は信号待ちをしている状態のとき、ちょっと停車をしているときエンジンはかかったままでアイドリングしています。
脳にもそんなアイドリングに相当する状態があります。

脳のアイドリング状態、これをデフォルトモードネットワークといいます。

何もしていないとき、ぼっーっと何かをしているとき、習慣的に物事をやっているとき、TVをみているときなどは脳が楽しているようにおもえますよね?

しかし実はそんなときでも脳は活動をしているのです。
そのとき活動している脳の複数個所がネットワークを形成して働いている、これがデフォルトモードネットワークなのです。
そして以外にもそのときに消費しているエネルギーも小さくはないのです。

車ではアイドリングよりも走ることにガソリンを使いますが、脳ではアイドリング状態すなわちデフォルトモードネットワークに60-80%という大量のエネルギー消費をします。
脳のアイドリング状態は先ほど述べた通り、ぼーっとしている状態のとき(横になっているとき)、慣れている作業をしているとき(何も意識せずともできるような作業)、TVをみているときなどですが、実際には意識が内に向いて頭の中で何か考えられるような状態(内省している状態)がデフォルトモードネットワークなのです。

休日に何も活動せず1日休んだつもりが疲労感がとれないとき、その原因はこのデフォルトモードネットワークが過剰なのかもしれません。
身体は休めたつもりが過剰な内省状態(自分に意識が向いている状態)で、頭の中では過去や未来をぐるぐる考えてしまっていたのでしょう。

もし、休んでも疲労感がとれない、気づけば意識は過去や未来を反芻はんすうしている、なにか作業をしなければいけないのに頭のどこかで意識は他にいっていていわゆる「心ここにあらず」の状態では、デフォルトモードネットワークは過剰になっておりどんどんエネルギー消費してしまいます。

そんな状態では身体はだるくなり、頭痛を招き、余計に不安や緊張があふれだすことでしょう。
最近ではアルツハイマーはデフォルトモードネットワーク過剰の結果、デフォルトモードが働かなくなった枯渇した状態であると考えられています。
過剰に脳が使われた結果がアルツハイマーかもしれないとは驚きです。

脳が過度に疲労しないで正常なパフォーマンスを維持するためにはデフォルトモードネットワークが過剰にならずにコントロールされていることが重要です。
そうでなければ目の前のことに集中することができないのです。
たしかに何かを考えながら作業をしていればミスも多くなると思いませんか?

脳疲労による身体の異常や緊張不安、うつ状態を解除するためにマインドフルネスが有効なのです。
そして何よりも薬物を必要としないのが利点です(マインドフルネスは非薬物療法)。

最高の休息法「マインドフルネス」とはなにか?

マインドフルネスは「瞑想などを通じた脳の休息法」のことです。

グーグルやフェイスブックなどアメリカを代表する企業ではマインドフルネス研修が取り入れられているようですし、アップルの創業者である故スティーブジョブス氏も、マインドフルネスの実践者であったようです。

そのマインドフルネスの脳科学的な位置づけは進んでおり、デフォルトモードネットワークの過剰(アイドリングストップできない状態)はマインドフルネスによって正常な活動に修正されることが報告されています
つまりぐるぐると考えてしまうという思考から抜け出す科学的にも正しい方法なのです。
言ってみれば、瞑想は科学的に正しい脳の休息方法であることが実証されてきたのです。

脳は常に変化しています。

例えば、自転車に乗れない子供が1時間自転車に乗る練習をしたらどうなるでしょう。
乗れるようになるかもしれませんし、乗れなかったとしても上手くはなっているでしょう。
自転車に乗るために必要な運動が組み込まれ、いらない運動(力が過度にはいってしまうなど)は消されているでしょう。
それは神経の回路が再編成されていることを示します。

脳は神経のつながりによってネットワークが構成されています。
このつながりをシナプスと言いますが、シナプスは必要な部分は強く結びつき、不要な部分はその結びつきが弱くなります。
コンピューターで言えば、アプリケーションをインストールだけするのではなく不要なプログラム、キャッシュはしっかりアンインストールして削除していくことも大事なわけです。

これを神経可塑性しんけいかそせいといいます。
脳の柔軟性といっても良いかもしれません。

可塑性が良ければ融通が利きます。
融通が利くことはとても重要なことです。
逆に何かにこだわってしまい、融通が利きにくくなることは生きづらさのもとになってしまいます

神経可塑性において、不要な神経の接合を弱くすることはこの柔軟性、融通と関連します。

いろいろなことが「まあいっか」とスルーできる感覚、「ケセラセラ(なるようになるさ)」、「起こったらそのとき考えればよい」という思考があればどんなに楽か考えたことはないでしょうか?
これが神経可塑性が正常な状態、すなわちデフォルトモードネットワークが過剰ではない正常な状態なのです。

細かなことがいちいちひっかかってしまい、なかなか切り替えがかからずずっと考えてしまう、非常に敏感に過敏性の高い状態で反応してしまう、何かにこだわってしまう、考えても仕方のないことばかりずっと考えてしまい執着してしまうなどそれらの状態の存在は不要な回路がまだ強く結びついていることを示します。

何度も言いますがそれは神経可塑性(柔軟性、融通と言い換えたらわかりやすいでしょうか)が良くない状態です。
そしてそのことはデフォルトモードネットワークの過剰を意味します。

脳が常に変化していくことが可能な、環境に柔軟に適応していく、ストレスに耐性をもつために必要な神経可塑性こそが脳疲労改善のためのキーワードなのです。
そしてそこにおいてマインドフルネスは有効なのです。

それではこの著書で書かれているマインドフルネスの一部を紹介しましょう。

マインドフルネスが有効な7つの状況

1.脳疲労-マインドフルネス呼吸法-

脳疲労のサインは注意散漫、無気力、イライラしやすいなどです。
クリニックに来る方の主な症状でもあります。
うつ症状とは脳疲労なのです。

根本的な原因はなんといってもぐるぐる思考です。
意識が常に過去や未来ばかりにむかい「いまここ」にない状態が慢性化しているのです。
マインドフルネス呼吸法は、そんなぐるぐる思考から脱却し現在に意識を向けることができるように脳に練習させるのです。

2.気づくと考え事をしている状態-ムーブメント瞑想-

ぐるぐる思考になってしまう原因は何でしょうか?

実は現代のマルチタスク、つまり何かをしながら別のことを行う「ながら」が日常的に行われることで脳は「自動操縦モード」に入ります。
習慣的に行っていることは何も考えずにできてしまうでしょう。

裏返せば、自動操縦でできるタスクは別のことを考えながらできてしまうのです。
この状態が1日のなかで多くなればなるほど、脳はぐるぐる思考の方にシフトしていってしまうのです。

グーグルの社員研修にも取り入れられているムーブメント瞑想は脳を結果的に疲労しやすくさせる「自動操縦モード」から脱却させる方法です。

3.ストレスで体調に影響がでるとき-ブリージングスぺース-

ストレスは脳内の現象ですが、身体の不調につながります。
身体のだるさや重い感じ、肩こりから内科にかかるような胸の痛みや腹痛、冷え症など身体症状にも顕著にあらわれます。
もちろん内科にかかっても何もないといわれてしまいます。

ストレスによる身体への影響に気づき、脳を改善させることで身体症状を改善させます。

4.思考のループ・ぐるぐる思考から脱却したい-モンキーマインド解消法-

雑念は疲労のもとです。
いろんな考えがまわっている状態は、頭の中で猿を暴れさせている状態、モンキーマインドといいます。
脳の機能で言うなら、デフォルトモードネットワーク過剰な状態です。

その状態では、膨大なエネルギーが脳で消費されるため疲労感を感じやすくなります。
脳本来の機能が働くために、集中、判断、読み書きなどの処理が適切にできるためにはモンキーマインドをコントロールしなくてはいけません。

頭の中のぐるぐる回る思考を「モンキーマインド」と言います。
モンキーマインドとはいわゆる雑念です。
その雑念が消えないとき、脳のエネルギーは大量に消費され疲労は蓄積し、睡眠の質も低下してしまいます。

雑念そのものに対する「認知」を変えることはモンキーマインドに有効です。

「こうでなければならない」という「べき思考」は脳の疲れを生み出します。
心理学的には「認知の歪み」そのものです。

ぐるぐる回らないための方法は、その思考に名前をつけることから始まります。

まずはラベリングする
認知の歪みに名前をつける、言語化する
そのラベルがおそってきたら以下の対処法をとる。

  1. 捨てる
  2. その考えはもう十分として考えを外に送り出す。

  3. 例外を考える
  4. その考えが当てはまらないケースを考える。いつも同じ目線で考えていないか。

  5. 賢者の目線で考える
  6. 自分の尊敬する人ならどう考えるか考えてみる。

  7. 善し悪しで判断するのをやめる
  8. いいか悪いか判断するのをやめる
    例 家事ができないのは悪いことだ

  9. 由来を探る
  10. なぜその考えがぐるぐるまわるようになったのか原因を探る
    繰り返し出てくる理由は満たされない願望があるから

5.怒りや衝動に流されそうなとき-RAIN-

脳に過剰なストレスがかかると、これまでコントロールできていた扁桃体がコントロール不能な状態に陥ります。
扁桃体は恐怖や不安を司る部分ですから、これが暴走したら大変なことは想像に難くないでしょう。
怒りを感じた時のRAINの4ステップが紹介されています。

怒りは脳の緊急モード

扁桃体は外から過度な刺激を受けると脳全体を乗っ取って暴走をはじめ、そうなると脳の思考活動はできず衝動のみが生じるようになります。
この衝動に遊びがあれば正常ですが、なければ暴走状態です。

怒りへの対応法-RAIN-

  • 怒りを認識する Recognize
  • 怒りが起きた事実を受け止める Accept
  • 体にはどんな変化がおこっているか認識する Investigate
  • 心拍は?体のどこが緊張しているか?

  • 怒りと自分を同一視せず客観視する Nonidentification
  • 「他人事」のように考えてみる

6.他人へのマイナス感情があるとき

ストレスの大半は人間関係です。
嫌悪、妬み、怒りといったネガティブな感情は脳の疲労を加速させます。

他人へのマイナス感情を抑制させ、ポジティブな感情を育むことでデフォルトモードネットワークの過剰を抑えます。

7.身体に違和感・痛みがあるとき-ボディスキャン-

脳の状態は自律神経やホルモンを通じて身体に反映されます。
脳疲労が強くなると、自律神経失調症状があらわれ痛みすら感じ始めます。

マインドフルネス瞑想は慢性の痛みや更年期障害などでみられるホットフラッシュにも有効であるとされます。

しかし、なぜ瞑想で痛みが改善してしまうのか。
前頭葉にある前帯状皮質や島の活動が増し、身体の感覚を司る感覚野の活動が低下するためです。

マインドフルネスでデフォルトモードネットワークの活動をコントロールすることが最高の休息法

マインドフルネス、その起源は東洋にあります。

非常にマインドフルネスに考え方が近いものに森田療法があります。
森田療法は現在でも行われていますが、その歴史は古く1919年に創始されたものです。
一定の作業に没頭させることで、考えにとらわれない「あるがまま」の状態を作ることを目標としており、過去や未来に意識がいってしまわないよう、ぐるぐる考えが回らないよう何かに意識を向けさせる点はマインドフルネスと共通です。

一方マインドフルネスは認知行動療法の新しいかたちとして考えられます。

認知行動療法は1960年代にアメリカ人の精神科医が編み出したカウンセリング手法で、考え方を変えることで心の不調を改善させる方法です。
身体の疲労感は筋肉などの物理的な消耗だけでなく、疲労感という脳の感覚的な異常、脳の現象として捉えられます。
認知行動療法はそのとらえ方、感覚をカウンセリングを通じて疲労感とうまくつきあっていく術を学ぶ方法です。

これが進化して考え方の悪い癖を修正させるようにかわり、第三世代としてマインドフルネスとなっています。
マインドフルネスは頭がすっきりする感覚をもたらし疲労感が低減します。
この感覚は非薬物療法として最近注目されるようになった磁気刺激治療(TMS治療)で得られるようなすっきりする感覚と同じかもしれません。

アメリカも以前は精神医療の現場で薬を使うことは多かったのですが今は減りつつあります。

そこにはマインドフルネス認知療法が薬物と同等な効果であることが示されていることもあるでしょう。
最近では摂食障害においてもマインドフルネスは有効性が示されており、これによりほとんどの研究で過食や感情的な食行動がコントロールされていると報告されているのです。

またマインドフルネスの有効性は脳科学的にも証明されています。
マインドフルネスストレス低減法によって、右脳の扁桃体(不安や恐怖を感じる部分)で灰白質(神経細胞が集まっている部分)の密度が減っているとの報告があり、実際この部位の密度減少はストレスの低下を示すのです。

まとめ「最高の休息法」の書評

この本ではマインドフルネスが紹介されています。
マインドフルネス認知行動療法やTMS治療など脳科学に基づく治療に携わる医師が執筆しているだけに、科学的根拠に基づいた情報が書かれています。
それでも難しくなりすぎないように、ベーグルパン屋を舞台に繰り広げられる人間関係の中でマインドフルネスが語られているため、非常に読みやすい内容になっています。

大事なことはマインドフルネスそのものを実践すれば身体の重さやぐるぐる考えてしまう思考、身体の症状がすっきりよくなるというわけではありません。
しかし、これまでどれだけ脳に負担をかけていたのかがわかると思います。

うつ病と診断されていた多くの人のイメージは、車で言えばアクセルやエンジンに問題があったと考えるのではないでしょうか?(エンジンがかからない、アクセルを踏めない)
しかし実際にはむしろエンジンは回っているんだけど空回りしている事が多いのです。
エンジンはかかっているけどパワーがタイヤに伝わらない、アクセルは全開なのに徐行運転になっているそんなイメージなのです。

本人はとっても一生懸命なのにパフォーマンスはでない、しかしパワーが伝わることもあるため周囲からは怠けているようにみえてしまう・・・

そこにマインドフルネスで意識を内に向けすぎない練習がなされると、以前と違う切り替えられる感覚、不要なことはながすことができる感覚が得られてくることと思います。
マインドフルネスが決して、身体症状を全くなくしたり気分があがって楽しくなにかをやれるようにするものではないことは付け加えておきます。

しかし、現代社会においてはこの方法による脳疲労への改善アプローチは非常に有用であると考えます。

 

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