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自傷行為やめられない! リスカ(リストカット)/アームカットの心理と対応

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
自傷行為やめられない! リスカ(リストカット)/アームカットの心理と対応

リストカットは無意識のうちにやられていることが多いでしょう。
そして、切っているときには驚くほど冷静にやることが多いのです。
死ぬわけではないので恐怖心もなく・・・。

ある患者さんは切ったあとに流れる血を見て思考停止して放心状態になるそうです。
そして「何も考えていない人たちにこの傷跡を見せてやりたい」と言います。

そうは言っていても切った傷跡を見て、「なんてことをしてしまったんだろう」と後悔したり、人に見られるのが恥ずかしいとも思うこともあるそうなのです。

しかし、うつ状態の強いときには電車の中などで何も考えていなさそうな人たちを見ると傷を見せたいと感じるのです。

「リスカ(リストカット)痛そう・・・。」

「心の傷より痛くない」

「何でそんなことするの?」

「わからない。でも楽になれる・・・。」

SNSでも投稿されていることの多いリストカット。
ひどい場合には切ったばかりの血がついた写真が投稿されている場合もあります。

リストカットやアームカットは特に若い女性に多く認められ、しばしば周囲からは「メンヘラ」として扱われ容赦ない言葉が浴びせられています。

これをアピールとして、気持ち悪いといって誤解していることが多くあります。
今日は、誤って認識されがちな自傷行為の心理と対応について解説します。

参考文献
松本俊彦.「自傷行為の理解と援助」精神神経学雑誌;114(8)983-988, 2012


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リストカット(リスカ)・アームカットとは

リストカットは若い人を中心に見られる手首をカッターやカミソリなどの刃物で傷つける自傷行為の1つです。
ツイッターなどSNSでは「リスカ」と呼ばれて、投稿の中には切って血がにじみ出している写真も数多く見られます。

リストカット(リスカ)は手首を切るのですが、手首では人に傷がばれやすいことから、腕(アームカット)や足(レッグカット)を切ることもあります。

このように刃物で自分の身体に傷つけたことがある人は、ある調査では中学生・高校生の1割にも及ぶことがわかりました(男子:7.5%、女子:12.1%)。
一方で学校が把握している自傷行為をする生徒の割合は0.3%前後ですから、周囲の大人はほとんどその実態に気づけていないのかもしれません(H18年:保健室利用状況に関する調査)。

リストカットやアームカットの原因

リスカじゃ死なない?

自傷行為と自殺は別です。

リストカットは、多くの場合で激しい怒りや不安、緊張や気分の落ち込みを緩和させる手段としてやっているのです。
あくまで自傷であって、自殺目的ではありません。

周囲の人は大きくここを勘違いしています。

おそらく直感的にリスカしても死なない(死ねない)ことは、リスカしている本人もその傷をみている周りの人もわかっているでしょう。
アームカットならなおさらです。

そこが問題で、だからこそ「誰かの気を引くために自傷行為をしている」と解釈されてしまうのです。

実際には自傷行為は1人きりの状況で行われ、周囲にはばれないようにしていることの方が圧倒的に多いのです。
ツイッターなどのSNSやブログで告白されるものは氷山の一角であって(このことがアピール行為と勘違いを生む原因になりますが)、本当は「人の気を引くためのアピール行動」ではなく「孤独な対処法」であることが圧倒的に多く、それが自傷行為の実態なのです。

つまり自傷行為は、本来は誰かに助けを求めたり相談したりすべきところを、自分一人で対処しきれない感情を自傷によってコントロールし耐えようとする行動であるのです。

リストカットは依存性のある心の痛み止め

自傷行為は、身体に痛みを加えることで心の痛みを鎮め抑え込んでしまう方法であり、「心の痛み止め」ともいえます。
実際にリストカットをしている人たちでは聞くと「もう何年も涙が出ない」「泣けない」ということをよく言います。
それくらい感情を抑え込むことに長けてしまったのです。

自傷による「心の痛み止め」は最初それを行うまでに恐怖心はあるものの、一度リスカしたことがある本人にとってそれは実に簡単で即効作用がある方法なのです。

例えば何かトラブル(絶対と言ってよいほど対人トラブル)があったとして相手が明らかに悪かったとしても、それを正そうとすればその力関係から自身がより不利な状況に追い込まれてしまうということがあるでしょう。

そうなると自分が我慢して感情を抑え込まなくてはならない状況になります。
建設的には周囲に相談してゆっくり解決していければ理想なのですが、そこには時間だけでなく勇気とパワーを要し、また周囲に気を遣う良い人であればあるほど自分が我慢して抑え込めばよいと考えてしまうでしょう。

そんな中、自傷行為をすることでこのことから一瞬で気持ちを切り替えられる方法に出会ってしまうのです。

リストカットやアームカットなど自身を傷つけることで、その傷や血を見ることですぐに精神的な苦痛を感じている状況から気持ちを切り離せるのです。
実際、自傷直後には脳内に麻薬様物質が出ていることがわかっていて、これは自傷行為が確かに痛みを抑える作用があることの裏付けにもなってしまうでしょう。

参考文献
Coid J, et al. Raised plasma metenkephalin in patients who habitually mutilate themselves. Lancet,2(8349);545-546,1983

このような即効性のある気持ちをすぐに楽にさせる方法は、次々と来るストレスの対処法にもってこいの方法になってしまいます。

そしてついには建設的に問題を潜り抜ける方法はわからなくなり次第に依存していくことになるのです。
気付けば感情を抑え込みすぎて、泣くことすらできなくなっていることも少なくありません。

リストカットを使うことでこの苦境に適応しているという言い方もできるかもしれません。

もしこの状況で「リストカットをやめなさい」と言ったら、本人としては「〇〇のせいで私はリストカットをして自分の感情を抑えているのに」となり、より事態を悪化させかねないことはなんとなくおわかりになるでしょうか・・・??


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リストカットやアームカットの2つの問題点

①残る傷

手首では無数の線状の傷が目立つために、アームカットにしていることもあります。
これなら長袖を切れば隠せます。

問題はその傷は10年以上たっても残ることです。
おそらく、切っているときはその時の感情が払拭できることに意味を見出すと思います。

ところがリストカットが過去のものになっていても、気付けば無数の目立つ傷は残っており、それは明らかにリスカ・アムカの痕でありそれ以外には説明がつきません。
恋人、職場、友人に見られたくない、何て言おうという不安がつきまとうことになってしまいます。

②自傷行為の行きつく先の自殺

リスカやアムカは一時的でその場しのぎにしかなりません。
困難に対しての建設的な対処法とは決して言えず、その建設的な対処をしないことで長期的にはより問題が複雑化し、根の深いものになってしまう可能性があるのです(実際に親子の関係で、根が深くなってしまっている問題も数多くあります)。

さらに、対人トラブルなどの問題が起きるたびに自傷行為を繰り返すと、そのうちに耐性がでてきてしまい、リスカの頻度が増え、より深く切らないと効果がでないなど鎮痛効果を得るために、自傷行為がよりエスカレートしてしまいます。
そして最終的には、「切ったのに辛い、でも切らなきゃもっとつらい」となってしまうのです。

そしてこの先には「死にたい」「消えたい」という考えを抱くようになってしまいます。

なんと10代での自傷行為の経験は、自傷行為のない人に比べて10年間で自殺してしまう確率は数百倍高くなることが知られています。
さらには自傷後にその傷を手当しないものほどより強い自己嫌悪感や自殺への想いが強いことがわかっています。

参考文献
Owens D, et al. Fatal and non-fatal repetition of self-harm. Systematic review. Br J Psychiatry, 181;193-199, 2002.


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リストカットなどの自傷行為をやめるために

A. 本人ができること

リスカは自己流の自分コントロールの方法ではあるが・・・

リストカット(リスカ)などの自傷行為をやめるのにこれが一番良いという方法は残念ながらありません。
精神科・心療内科にかかって薬が出てもその瞬間からリスカしなくなることも少ないでしょう。

医療者としてもお話を聞いて付き合っていくスタンスのはずです。
薬だけが大量に出されたり、話もあまりされずに薬が次々変われば不信感はつのりもっと事態は悪化することさえあります。
リストカットはしなくなったが、大量服薬(オーバードーズ、OD)。
(だからといって通院しないほうがよいというわけではありません。)

それでも多くの場合、なにかをきっかけにリストカットさせるに至る背景の葛藤を話せるようになっていたり、他の解消法に出会えたりしています。
しかしそれまでどう克服していくか?

少なくとも本人としてできることは、リストカット以外に感情をコントロールする術がなくて困っていることをまずしっかりと再認識する必要があります。

襲ってくる強いこころの動き(怒り、不安、フラッシュバックする過去の出来事)に対処する術が自傷行為であり、それは衝動買いや過食、壁を殴るなどではなく、リストカットやアームカットによって自己対処しているのです。

もし衝動買いや過食なら、周囲はリストカットほどそこまで反応してこないかもしれません。
強いストレスに対する自己対処に衝動的な行動をとるということは、許容範囲においては誰もがやることでもあるのです。

それがエスカレートして衝動買い(借金が返済不能になるほど)、過食(毎日やめらず、しかも過剰に太ることを恐れて嘔吐も繰り返す)となると病的と判断されます。

リストカットやアームカットはその傷痕がひどくしかもいつまでも残ること、痛々しさなどから周囲の反応や影響力は大きく、「ストレスで衝動買いしちゃった」とか「今日はもう食べるしかない!!」「イライラして物を壊しちゃった!」のようなストレス発散としての衝動とは一線を画します。

そして周囲はリストカットを自殺のアピールや演技とも思いこんでいることが多いので、余計にリストカットしてしまう本人との理解されない確執を生んでしまうのです。

まずはこの構図「リストカットはストレスコントロールのための衝動的行動ではあるが、他の衝動的な行動とは周囲に与える影響や印象のレベルが違う」そしてこれにより「周囲からは理解されず孤立化していきやすい」ということを知っておきましょう。

本人としてはこんなにつらいんだということをわかってもらいたくて、リスカした写真をネットにアップしてもその反応は「そんなにつらかったんだ」ではなく「気持ち悪い」になってしまうのです。

自傷行為までいかない多くの人たちは衝動的な行動をとりつつもストレスの原因となった問題に(解決はできなくても)対応していくのですが、逆にリストカットをしてしまう人たちは自傷行為をして気分が切り替わっておしまいになっているのです。
つまりストレスの要因は見ないようにしている(本人としてはそうするしかないのかもしれない)のです。

腕に赤いペンで傷を描き、それを見ることで心を落ち着けているという人もいました。
リスカより建設的ではあるかもしれませんが、これもまた問題点を見つめず(向き合うことが怖い?)、気分だけを切り替えておしまいになっていますので根本的解決ではないので再発リスクはあるでしょう。

問題はリストカットそのものではない

リスカは自身の衝動を抑えるための1つの手段ですが、問題はリストカットそのものではありません
生きていることのつらさ、その背後にある葛藤です。「〇〇が悪い」、「××のせいでこうなった」、「もっと甘えたかった。あいつさえいなければ」と過去への怒りや執着がありそれを思い出すたびに強い衝動がおそい、これをコントロールするために切っているという悪循環があります。

リストカットは主に若い年齢に多く、成長とともにいつの間にかおさまっていることも多々あります。
しかし周囲に相談できない(もしくは相談しても理解されない)不信感が根底にあり、自分だけが辛い思いをしている感覚は強いでしょうからたびたび生きづらさを感じてしまうでしょう。

そして今度はリストカットとは違う自傷行為、もしくは自殺につながりかねません。

克服のために「リストカットを我慢する」といってもリスカは依存状態にあったり無意識に行っていたりするため、我慢することがどんなに難しいことかと思います。
ただ解決にはなりませんが、「リストカットを我慢しなくては」と思えることは大事なことです(再発はありきとして)。
そしてその背景にある葛藤を周囲に話せることも重要なことです。

そのためには人への不信感も克服しなければならないかもしれません。
不信感は、周囲への期待の裏返しでもあります。
こうあるべき、こうすべきという感覚があまりにも強いと、次々と裏切られた感覚を味わうことになります。

本人の考えが間違っているというより、こうあるべきという感覚に対するとらわれと気分の切り替えの難しさ(嫌なことがいつまでも残りやすい・フラッシュバックしやすい)、そして過敏性がリストカットせざるを得なくさせるのかもしれません。

本人としてできることは、リストカットが衝動コントロールの方法であることを再認識すること、その衝動は多くの場合誰かに向けられた激しい怒りや不安や恐怖なのですがそこに自身の過敏性が相まって非常に強い衝動を生んでいること、その問題は解決できないことが多いかもしれませんが人と話したり共有されることで緩和できそれによってリストカットしなくてもいられるようにコントロールできるようになることが解決への一歩と言えます。

B. 自傷行為をする人への接し方

①心構え

自分を傷つける行為は決して好ましい行為ではありません。
死にたいほどつらい状況を乗り越えるために自傷したことは、死を選択するよりははるかに良いのかもしれません。

何度も腹立たしい思いをすることもあるでしょうから忍耐は必要です。

こんなに心配しているのにまた自傷行為をしている、切った後に「切っちゃった」とあまりにも普通の事のように言ってくることもしばしばでしょう。

まず大事なことは肯定的な態度をとってあげて、傷の手当てを求めてきた場合にはそれを手伝ってあげる事です。
傷の手当をしているかしていないかは、自己嫌悪感の強さや自殺衝動の強さと相関することを言いました。

もちろん勘違いしてはいけないのは、傷の手当そのものが大事と言うわけではありません。

自傷行為の背景には、家庭内での様々な虐待、両親の不和、学校内でのいじめ、まだ誰にもいえていない性犯罪被害などがあることはめずらしくありません。
こういった問題に孤独に対処した結果、「自己治療」が自傷行為なのです。

切ってしまったことがわかり、それが肯定的に受け止められることは実は治療の始まりです
当人たちの根底には人間不信が見え隠れしているはずです。

おそらく当人のかかえている自傷行為という自己流の治療法の裏にある問題は、解決できるような簡単な問題ではないでしょう。
葛藤した結果が、リストカットだったのですから。

問題を共有し、自傷行為以外の建設的な対処法を一緒に考えられるのが理想です。
実は自傷行為をやめさせる以上に、その背後にある本人の困難な問題を共有し軽減させてあげられるかのほうがはるかに大事です。

当の本人もなぜこんなに感情が不安定でイライラするのか自覚していないこともあります。
どんな出来事でどんな感情を抱いたのか、なぜその出来事に深く傷ついてしまったのか、場合によっては本人にもあやふやになっている認知をしっかりさせてあげることも重要です。

②リスカをやめるように頭ごなしに禁止しない

「自傷行為をやめなさい」という特に支配的な上からの言葉はまったくもって意味がありません。
意味がないどころか百害あって一利なしというレベルで良くないのです。

本人からすれば「死なない程度に自分を傷つけることのどこが悪いのか」という思いがあります。

どこでもリスカできるようにカッターを持ち歩いている人も中にはいます。
そこからカッターを取り上げることは間違いではないのですが、頭ごなしに禁止して取り上げるのは違います。

自傷行為はすでに依存の1つであり、自傷行為を止められたら自分をコントロールできなくなってしまうことをよくわかっているのです。

③切らない約束を求めない

「もう切らないと約束して欲しい」

「・・・わかった、切らないって約束するね。」

このように切らない約束をうまく結べることは確かにあります。
しかしほとんどが約束をとりつけた人の自己満足で終わり、その約束は大抵が破られてしまいます。

切った後はすっきりしていることも多く、自己治療の後なのです。
おびただしい数のあのリスカの線状の傷をみたことがあると思いますが、自傷行為は再発が当たり前なのです。

もし約束が破られてしまうと、そのときの自己嫌悪感はこれまでよりも大きなものになり、「もう合わせる顔がない」とせっかくの理解者を失う結果になりかねません。

大事なことは話せる相手がいることです。
誰にも助けを求められずに辛い状況に入り込まないことです。

そのためには、「切らない約束」ではなく「切りたくなったら切る前に一度話してほしい、切ってしまったならその後でもかまわない」というリストカットをある程度前提としていることは必要なのです。

C. 精神科・心療内科への受診

「今度切ったら精神科へ連れていく」ということは絶対NGです。
そもそも精神科に通院したからといって、お薬を飲んだからといってそう簡単に治療が上手くいくものでもありません。

ましてやリストカットした罰として病院に来ても、医者と本人との良好な関係は結べないでしょう。
自傷行為は本人にとっては自己治療の手段であり、そもそもその背景に困難な葛藤すべき問題があるからです。

また薬がだされれば、リストカットはオーバードーズ(OD、大量服薬)に形を変えるかもしれません。
大量に服薬して今度は救急車で運ばれるようにもなりかねません。

ただし、以下の場合には積極的に受診を勧める必要があります。

  • 自傷行為がエスカレートしてきている(心の痛み止めとして効きずらく耐性ができてきている)
  • 自傷行為の前後で記憶が飛ぶ
  • 摂食障害を合併している(他の精神障害も合併している)
  • アルコールや薬物乱用がある
  • 性的虐待の被害を受けた

大事なことは本人の意思で通院し治療に取り組みたいと思えるかどうかです。
無理やり連れてこられる方を治療することは、信頼関係が結べずかえって自傷行為を悪化させることにもなりかねないのです。

まとめ「リストカット/アームカットの心理と対応」

リストカット(リスカ)やアームカットなどの自傷行為は、決してかまってほしくて行うアピールではありません。
激しい怒りや不安、緊張や気分の落ち込みを緩和させる手段としてやっているのです。
いわば自己治療の目的で行っており、感情的な不安定さをこれによって処理しているのです。

その衝動をコントロールすることは難しく、何度も再発します。
再発していく中でエスカレートして自殺につながってしまう場合もあります。

近くで支えるものにとって重要なことは、自傷行為をやめさせることに目標をおくのではなくその背後にある困難な問題を見極めて、共有し軽減してあげられるかが重要なのです。

 

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