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リストカット(リスカ)するのは人格障害か? -彼女にリスカされる男たち –

このコンテンツは医学論文データベース「PubMedパブメド」とわたくし医師個人の経験をもとに、正しい情報をわかりやすく解説することをモットーにしています。
リストカット(リスカ)するのは人格障害か? -彼女にリスカされる男たち –

リストカット(リスカ)はカッターナイフやカミソリを使って自分の腕を傷つける自傷行為をいいます。
「#リスカ」でツイッター上には多数のつぶやきがあり、その中には痛々しい傷の写真をアップしている投稿さえもあります。

「痛そう・・・」

「かまってちゃん」

「メンヘラ」

様々な反応が見られます。

実はリストカットのほとんどは自殺目的で行われるのではなく、自傷行為により激しい衝動(怒りや不安など)を抑えたり、ときには自殺衝動を抑えて死なないようにするためにやっているのです。

これに対して周囲は「自分に注意を惹かせようとするため」と思っていることも多く、リストカットする側とリスカに対応する側とで大きなへだたりがあると言えるでしょう。

※リストカットの心理や対応については以下の記事が参考になります。

リストカットをやめたいという目的よりは「苦しい・助けて」という辛い気持ちから解放されるべく精神科・心療内科にも通院しお薬を飲んでいる人も多いのですが、その診断名として「人格障害(パーソナリティ障害)」がつけられていることがあります。

今回は、リスカをしてしまう人格障害と診断されやすい特に若い女性に焦点を当てて、またそれに振り回される男性についてもお話します。


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リストカットと人格障害(パーソナリティ障害)

リストカットと言えば必ず出てくるのが境界性人格障害きょうかいせいじんかくしょうがいです。
英語で「Borderline Personality Disorderボーダーライン パーソナリティ ディスオーダー」と言い、通称「ボーダー」と呼ばれています。

彼氏がリストカットや大量服薬をした不安定な彼女をクリニックに引き連れて、「彼女はボーダーじゃないでしょうか?」とこられることがよくあります。

Dr.G
ボーダーラインパーソナリティ障害に触れる前にまずは「人格障害」についてお話します。

人格障害(パーソナリティ障害)について

人格障害といってしまうと、非常にネガティブで犯罪者のようなイメージが強いため最近は「パーソナリティ障害」と言われています。
さてこのパーソナリティ障害ですが、精神疾患の診断マニュアル(DSM-5)によれば主なものは10個あります。

  1. 猜疑性さいぎせい(妄想性)パーソナリティ障害
  2. シゾイドパーソナリティ障害
  3. 統合失調型パーソナリティ障害
  4. 反社会性パーソナリティ障害
  5. 境界性パーソナリティ障害
  6. 演技性パーソナリティ障害
  7. 自己愛性パーソナリティ障害
  8. 回避性パーソナリティ障害
  9. 依存性パーソナリティ障害
  10. 強迫性パーソナリティ障害

わかりやすいものをいくつか取り上げてみましょう。


自己愛性パーソナリティ障害
自分は優れた人物だという意識が異常に強く、成功や地位、名誉、才能、美貌などを限りなく求めます。
このため他人からの評価にはとても敏感で、他人から注目されたり称賛されることをとても喜びます。

逆に批判や無関心に関しては以上に怒りや不安を持つのです。

誰しもがこの傾向はあるのでしょうが、通常は自意識過剰ですむはずです。
ところがパーソナリティ障害ともなると自意識過剰、自己顕示欲が強いというレベルを超え、本人の関心が集められるように利用され、傲慢な態度がとられ周囲は常に巻き込まれるのです。


回避性パーソナリティ障害
対人関係を極度に避けようとするパーソナリティ障害です。

単なる恥ずかしがり屋ではありません。
周囲から拒絶されるのではないかと言う不安を常にもっているため、対人関係を避けようとするため友達付き合いがほとんどありません。

誰かが言った些細な一言で、思いもよらぬほど落ち込んでしまうのです。


このように通常にもみられるような特性ではあるのですが、極端にかたよってしまっていてこのことが本人や周囲に影響を与えすぎてしまっているものをパーソナリティ障害というわけです。

Dr.G
さて、境界性パーソナリティ障害(ボーダー)に話を戻しましょう!

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ障害)とリストカット

境界性パーソナリティ障害(ボーダーラインパーソナリティ障害)では、一見バランスの取れた性格に見えます。
ところが何らか心理的ストレスが加わると、楽しい気分から一瞬で攻撃的に変わり、相手を責めたり、評価していた相手さえも急に侮辱したりと対人トラブルを招くのです。

最初に会うときにはむしろ人付き合いがよさそうにも思わせる印象を与えます。
そして信用されると急速に仲良く親密になりやすい(異性であれば恋人まで発展しやすい)のですが、自分の思い通りの行動がなされないと途端に手のひらがかえるのです。
上げて一気にどん底に突き落とされるぐらいに反応が変わります。

またボーダーの人では、目標が実現しそうになる目前で台無しにする傾向もあり(例えば、卒業直前に退学する・信頼関係が深まったところで深刻な問題を起こして関係を壊してしまう)このことが余計に対人問題を作ってしまいます。

そして非常に強い怒りと衝動性が高まりやすく、ギャンブル・浪費・過食・薬物乱用・なりふりかまわぬ性行為を行ったり、自傷行為や自殺をほのめかしたりすることもあるのです。

なぜそのように怒りが強まったりトラブルが起こるのか周囲はついて行けず、次はいつこの人の逆鱗に触れて爆発してしまうのかと振り回され巻き込まれるのです。

Dr.G
これが境界性パーソナリティ障害の特徴です。
実際の診断基準(DSM-5)を見てみましょう。
<境界性パーソナリティ障害の診断基準>
以下のうち5つ以上

  1. 現実に、または想像の中で、見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力
  2. 理想化とこき下ろしの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係の様式
  3. 同一性の混乱:著名で持続的に不安定な自己像または自己意識
  4. 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも二つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、過食)
  5. 自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し
  6. 顕著な気分反応性による感情の不安定性(例:通常は2-3週間持続し、2-3日以上持続することはまれな、エピソード的に起こる強い不快気分、いらだたしさ、または不安)
  7. 慢性的な空虚感
  8. 不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかを繰り返す)
  9. 一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離症状

診断基準としてしまうと難しいですが、とにかく不安定で怒りの感情がが発作的に起こるとどうにも制御不能になってしまうのです。

それでいて普段はとっつきやすく、相手を理想化して褒めまくってくれることもあったりするのでそれとわかるのはある程度親密になってからであることも多いのです。

ボーダーの診断基準の中に自傷行為のことがあります。

「リストカット」=「境界性パーソナリティ障害」のイメージも非常に強く、リスカしたり自殺をほのめかすと「ボーダー」と言われるのはこのためなのです。
ツイッターなどでメンヘラと言っているのはこの「ボーダー」のことを指しているのかもしれません。

リスカする女性に多い「自己愛性パーソナリティ障害」

ボーダー(境界性パーソナリティ障害)とは別に、リストカットしてしまう女性に多くみられるのが「自己愛性パーソナリティ障害」です。

自己愛性パーソナリティ障害とは、その名の通り自己愛が強く、常に注目と賞賛を求めます。
周囲の気持ちはまったくわかっておらず、周りは自分を妬んでいるとさえ思いこんでいます。

リストカットをする女性には魅力的な人が不思議と多い印象があります(もちろんかなり主観的なものですので誰もが皆そうだというわけではありませんしいろんな意見はあるでしょう)。
そして魅力的といっても表面的な美しさのことですが、実はここに心理的なものも働いていそうなのです。

彼女たちは周りからどう思われているかを常に気にします。
結果として常に美しくあろうという気持ちが強く、とにかく自分をどう思っているかを気にせずにはいられないのです。

自分は美しいと思い込んでおり、それでも幸福感は満たされていません。

むしろ不安の方が強いのです。
なぜなら「注目されなくなったら、愛されなくなったらどうしよう」という不安が常に付きまとうからです。

このナルシストのような感覚を強くもっているのが「自己愛性パーソナリティ障害」です。

注目を集めて中心にいられるときは機嫌が良くても、大したことない言動をきっかけにひとたび「愛されていないかもしれない」という不安に駆り立てられると不機嫌になり、不安定になってしまいます。
こうなると衝動的な行動をとることがあり、リストカットを行うことがあるのです。

「自己愛性パーソナリティ障害」と先ほどの「境界性パーソナリティ障害」は別の診断名ですが、区別は難しく実はどちらの特徴も併せ持っていることが多いのです。


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母親との関係性がうまく築けないと自分を愛せなくなる

リストカットが自分に向けられた攻撃性のあらわれであることもあります。
自分を愛せない結果としての行動です。

こういった場合、親子関係(特に母親)がうまく構築されていないこともあります。

子供を全面的に受け入れ、無償の愛が必要な乳児期に十分な愛情表現が母親からなされていない場合、正常な母親との関係性を作ることができずに成長していきます。
この時期に無条件に愛されたことがその後自分自身を信頼し愛することにつながるのですが、関係が作れていない場合には自分は愛されるに値しない、生きている価値がないと認知してしまうことがあるのです。

このことが慢性的に不安定な状態をつくることがあるのです。
この結果、感情がコントロールできない状況になると攻撃性を自身に向けてしまうのです。

彼女にリストカットやODをされる男性とはどんな男性?

これもしっかりした医学的根拠のある話ではありませんが、経験的にある特徴があります。
もちろんすべてが男性の責任であるというわけではありません。

女性側にも先ほどお話ししたパーソナリティ障害という特性や環境(親子関係)の問題はあります。

ここにある男性の特徴が組み合わさることで、自殺未遂や自傷を頻繁にさせる結果につながっていることがあるのです。

実は、「優しい男性」が問題なのです。

「中途半端に」、「表面的に」優しいという方が正解かもしれません。

女性をしっかり守ってやろう支えてやろうという気持ちが薄いのに中途半端に優しいのです。

素因として見捨てられたくない不安(ボーダー)、常に注目され愛されたい不安(自己愛性パーソナリティ)、愛されたことがないと感じている女性がそれを埋めてくれるかもしない男性に会うと依存関係になり、それでいて中途半端なところがあると女性は不安の発作を爆発させてしまうのです。

またそういった女性は自身の魅力を最大限に引き出せています(もともと見捨てられたくない、注目をあびたいという気持ちが強いため)。
男性はたちまちその魅力の虜になってしまっている場合もあるでしょう。

ある程度の距離があると大丈夫なのに、べったりされると困ってしまう、肝心なところで逃げ出そうとするために彼女たちのもつ特性を最大限に引き出してしまい自殺未遂や自傷行動を招く結果になるのです。

 

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