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磁気、磁石

経頭蓋磁気刺激治療けいずがいじきしげきちりょうは「TMS治療」の名前で知られている新しいうつ病治療の選択肢のひとつです。

よく電磁波と考えている方もいらっしゃいますが、磁石です。
修正型電気けいれん療法(mECT)とも原理はまったく異なります。

日本では保険適応はないため、行っている施設はかなり限られておりさらに治療費も数十万円はかかるようです。
効果については、薬物抵抗性うつ病(薬で効果がいまいちなうつ病)に対して注目されています。
ここではTMS治療の概要について説明したいと思います。


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薬を使わない最新うつ病治療機器「磁気刺激治療」とは?

Dr.GDr.G

うつ病治療としての新たな選択肢「磁気刺激治療(TMS)」について説明します。

正式には経頭蓋磁気刺激治療けいずがいじきしげきちりょう(Transcranial Magnetic Stimulation; TMS)といいます。

磁気刺激治療は、2012年にNHKスペシャル「ここまで来た!うつ病治療」で、アメリカのクリニックでのTMS治療が報道され一躍有名になりました。
残念ながら日本ではまだ保険適応はなく、この治療を受けることができるのは限られた施設のみで自費診療の扱いになっています。

どんな治療か想像もつかない方、英語の動画になってしまいますがご確認いただければと思います。

実際の治療風景は1分58秒くらいから見れます。

この動画はニューロスター®というTMSの治療機器のデモビデオです。
簡単に動画で何を言っているか解説しますと、

  • TMSは医師による処方が必要で、1回の治療は約37分、外来治療で行えるものです。約30セッションを行い、治療には麻酔なども必要としません。
  • 最初に磁気を当てて治療する部位を探ります。これは脳の運動野と呼ばれる顔や体、手足の筋肉を動かす指令をしているところで、ここに磁気を単発で当てて親指が動くところを探します。このときどの程度の磁器の強さで当てればいいかも測定します。
  • 治療部位はそこから約5㎝ほど前方です。
  • 1回の治療で磁気を3000ショット照射します。
  • 治療後はそのまま帰宅できます。

磁気刺激治療(TMS)の特徴

長所短所
薬物療法に反応しない患者さんにも効果が期待できる治療である効果が出るまでに時間がかかる
抗うつ薬にみられる副作用がない磁気刺激時に痛みを伴う事がある
認知機能の改善が期待できる通院が必要である
電気痙攣療法ECTのような、静脈麻酔や筋弛緩薬などを必要としない現在国内では、健康保険を利用できない(自費診療)
再発率が少ない

磁気刺激治療(TMS)の長所

磁気刺激治療(TMS)は、薬物療法に効果が出ないうつ病の患者さんにとって効果が期待できる治療法で、抗うつ薬による副作用で十分な投与量を服薬できない患者さんにとっても有効です。

たとえば、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込阻害薬)などに伴いやすい一般的な副作用(眠気・悪心・嘔気)や三環系抗うつ薬に見られやすい副作用(眠気・口渇く・便秘・起立性低血圧・尿閉など)、薬を中断・減薬したときに起こる離脱症状は、磁気刺激治療(TMS)では起こることはありません。

このように、副作用以外にも肝機能・腎機能に関する障害があって薬物療法の使用に制限があるような患者さんには、磁気刺激治療(TMS)が治療の選択肢としては有用性があると言われています。
また磁気刺激治療(TMS)はうつ病の改善だけでなく、認知機能の改善にも効果的であるという報告があります。

磁気刺激治療(TMS)の短所

もちろん磁気刺激治療(TMS)が万能というわけではありません。

個人差はあるものの磁気刺激治療(TMS)は、刺激時の痛み(きつつきにつつかれるような?)が生じる場合があります。
これは頭痛というよりも、磁気刺激の直接的な作用による神経刺激や筋収縮に伴う症状と理解されています。

痛みを伴ったとしても、ほとんどの患者さんが我慢できるレベルであり、治療を繰り返していく中で刺激時の痛みは徐々に緩和し、違和感は慣れてくると言われています。

他には、磁気刺激治療(TMS)は外来通院型の治療ですので、時間的な負担が伴います。
現在の標準的な治療の方法は、一回あたりの治療時間が約37分、週5回の連日のスケジュールで4~6週間の治療期間を要することになっています。

薬の治療であれば、1日に要する時間はさほど負担にはならないので、今後の課題としては、治療時間や治療にかかる期間を短縮し、さらに大きな治療効果が期待できる刺激の方法を見出すことが挙げられています。

一般的な磁気刺激治療(TMS)でのプロトコール(治療計画のこと)は週5回で行うことになっており、このことがかなりネックになりそうですが、治療に要する日数によらず効果があったとする報告もあるのでどうやらこの限りではなさそうです。

【参考文献(英文)】
Clinical Outcomes of TMS treatment. Brain Stimulation vol.8(5);page e4

最後にまだ日本においては保険適応がないことが挙げられます。現状行うとすれば保険適応外で自費で行うことになるため経済的負担も伴います。

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磁気刺激(TMS)機器の現状

磁気刺激治療TNS製品の認可状況

磁気刺激治療(TMS)は2008年にニューロスター®がFDA(米国食品医薬品局)に認可されたのを皮切りに目覚ましく発展してきています。

現在は各国から様々なTMS機器が登場しFDAが認可しています。
韓国製品のTAMASは、韓国のMFDSという韓国国内の医療承認を取得しています。

わが国ではMagstim(英)・Magvita(デンマーク)・TAMAS(韓国)が検査装置としての使用の承認を取得しています。
NeuroNetics社・Brainsway社はうつ病治療専用機器として開発された装置であるため、検査機器としての承認は取得していません。

まとめ

磁気刺激治療(TMS)は新たなうつ病治療の新しい選択肢として登場しましたが、まだどこでもこの治療が行える状況ではありません。
「脳の機能を調整する」という抗うつ剤の神経伝達物質とは違ったアプローチで、これまで抗うつ剤に反応しなかった難治性・治療抵抗性のうつ病に対しての効果が期待されています。

うつ病治療医療装置TMSが認可されないのはなぜか

国政モニターで「うつ病治療医療装置TMSが認可されないのはなぜか」という質問が挙げられました。
これに関して厚労省の回答もありますのでご覧ください。

うつ病治療の医療装置TMSをアメリカFDAが認可したのは2009年、EUでは2011年、NHKスペシャルで同装置が紹介されたのは2012年2月である。
日本への早期導入が期待されたが、厚労省の「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会」において審議されるも未だに認可されていない。
同検討会は2013年以降ほぼ年1回しか開催されておらず、2015年以降は厚労省のHPで議事録が公開されていない。
以下厚労省に質問したい。

  1. 年1回の開催で同検討会の目的を果たせるのか。
  2. 直近3回分の議事録がHPに掲載されないのはなぜか。
  3. アメリカとEUで既に認可済みの装置が日本で速やかに認可されない理由は何か。

この状況から察するに、製薬会社の反対と、医療費を削減したい厚労省の思惑が合致し認可を遅らせているのではないか。過去に厚労省が何度も起こしてきた薬害問題と同根の「悪意ある無作為」を感じる。

これに対する厚労省の回答は以下の通りです。

厚生労働省では、未承認又は適応外の医療機器等について、欧米での承認実績や論文等で公表された優れた試験成績等のエビデンスに基づいて、我が国の医療ニーズの高いものを迅速に医療現場へ導入するため、「医療ニーズの高い医療機器等の早期導入に関する検討会(以下「検討会」という。)」を開催しています。

昨年度に、より効率的な検討を進めるため、検討体制、開催回数等の見直しを行い、今後は年4回を目処に検討会を開催することとしています。過去に開催した検討会の議事録は、準備が整い次第、順次掲載します。

ご指摘の経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)によるうつ病治療装置は、平成24年11月14日及び平成25年8月9日に開催した検討会において、2品目が医療ニーズの高い医療機器にそれぞれ選定されました。これを受け、関係企業に対し開発要請が行われ、企業側で製造販売承認申請の検討を進めていただいています。

なお、欧米との承認までの時間差「デバイス・ラグ」は、承認申請時期の差「開発ラグ」と審査期間の差「審査ラグ」からなりますが、後者(審査ラグ)は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)の体制強化等により、ほぼ解消されており、課題となっている開発ラグについては、治験計画策定等に関する助言を行う相談事業の充実などにより、その解消に向けて取り組んでいます。

H29年7月、アメリカNeuronetics社のTMS装置「Neurostar」が医療機器の承認がとれたという情報が入っています。
しかしながら、保険適応になったわけではなくこの段階ではまだ何ら患者側にとってのメリットはありません。
いちはやく保険適応が進むことを願うばかりです。

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